ここは絆が知っている魔法の森とは少し違い、森全域に魔力が漂っているわけではなく、ある場所ぁら異常な濃度の魔力が噴出しており、それが拡散して大抵のところは危険地帯になっているのだ。終わらないそのガスに似た魔力を横目にダイ・アウターを見る。そして何故かほっとする。
「え、っと……良かった~。今度は流石に上空には登場しなくて済みました。あと……あなたは誰ですか?」
「……我は絶滅を運ぶ者……ダイ・アウター」
「漣と妃香梨の友人。仲光 絆です。明日、葉の買い物に付き合う約束をしているので、さっさと終わらせます」
高濃度の魔力を噴出するガスを尻目にダイ・アウターと対峙する絆ではあったが、お互いに殺気を放っておらず、沈黙を貫く。動いた方が負けるようなそんな雰囲気が漂っているが、ここで沈黙を破ったのはダイ・アウター。大鎌を振り下ろしたのを絆は二本の剣を一瞬で繰り出し、受け止め、はじき返す。どちらも体力を使わず、この結果だったので、これ以上展開しても結果は変わらないだろう……
「ほぉ……我を殺さずして倒す方法を考えるか……」
「生憎だけど僕はそういうのは好まない。暴力や殺し合いでは何も解決しないから」
「……昔の我もそういうことを言った」
「?」
「だが、悟った。人は優しいだけでは大切な物を守れないと!残虐にならなければ、何も知りえないのだと!他人の死を背負ったこともない昔の我によく似た男よ……覚悟するがいい!」
「ええ!……絆の力が僕の覚悟だ!」
両者はその場から高速で移動し、剣と大鎌をぶつけ合う。ダイ・アウターが大鎌を真横に振ると、絆はその場から飛び、大鎌の刃に乗り移り、左手で持っていた剣をダイ・アウターに向けて振り上げる。だが、当たる寸前でダイ・アウターが突如として姿を消す。さっきの高速の移動とはわけが違い、存在そのものがいなくなったようなイメージを受けた。霊夢の力を借り、弾幕で追尾を行うが、反応が現れない。とここで絆がふと思いつく。
(瞬間移動じゃない……?違うのなら咲夜さんのように時を止めて、移動している?それでも追尾は行われるはず。なら……)
と、いきなり正面に現れたダイ・アウターに驚きつつも、しっかりと攻撃を回避し、考察を再開する。
(ならば、『この世界』から一旦どこかに移動してからもう一度、『この世界』に移動しているのか!……ん、待てよ?なんだか、そんな能力……どこかで見たような……かなり頻繁に……まだ、結論は出てないけど……僕は僕のやり方で答えを見つける!)
「合絆『ホーミングフリーズ』!」
絆がおもむろに取り出したスペルカードがキラキラと輝き出す。すると、さっきまで発動していた霊夢の力を使った弾幕が凍ってしまい、ダイ・アウターに向かって飛んでいく。だが、ダイ・アウターは驚くこともなく、すいすいとかわしていく。だが、急に懐へと飛んできた絆がダイ・アウターを真横に真っ二つに斬る。上半身と下半身が分かれるが、かなり洗練された剣捌きは刀身に一切の汚れが一つもついていない。ダイ・アウターにとってこれはかなり由々しき事態だが、動揺してすらいない。
「……なんだ。殺さないのではなかったのか?」
「よく言いますね。自分で焚きつけておいて……それにあなたは死なない。不老不死の敵を容赦なく斬っても罪悪感は全くありません。それに友人の世界を滅ぼそうとする者に容赦なんてしません」
「一理有り。だが、所詮は他人の集いだ。本当に信じられるのは己と己の大切なものだけだ」
「それは違う……絆がつながっている限り、信じられる!」
「ならば我が貴様の絆というか細い線を絶やし滅してくれよう!」
(……もし、あの時、紫さんがいなければ僕はこうやって他人を信じられなかっただろうな……そう思えば……この人は……僕にどこか似ている気がする……)
「他人の絆なぞ、意味のないもの……さっさと散るがいい!」
「そんなことはない!僕は絆に助けてもらった!僕は、他人を信じないお前を信じてやる!そして外道に染まったその心を叩き斬ってやる!絆符『マスタースパーク』!」
既に一枚目の『ホーミングフリーズ』と一緒に取り出していた二枚目のスペルカードは散りさえ残さず、ダイ・アウターの周囲のものを消し去っていく。だが、ダイ・アウターは自身の能力で消える。
(……理解……した!お前の能力!)
そして服のポケットに一枚のスペルカードを発見する。このスペルカード……使う時が来た!外道に染まってでも僕は……己と大切な物を見失わず、使いこなして見せる!
「スペルカード!絆『存在種変』!」
強く掲げるスペルカードの膨大な光が小さな紐のようなものが絆の体にまとわりつき、服、髪……持っている剣さえも変化させる。それがどうしたと突如として目の前に現れたダイ・アウターが大鎌の乱舞を炸裂させるが、それを止めたのは……
同じ、大鎌……そう……絆の恰好がダイ・アウターと酷似しているのだ。その姿に驚いたのか、すんなりとカウンター攻撃をくらい、吹き飛ぶダイ・アウター。一瞬、意識が飛びかける程の威力を持っており、
「ガハッ!」
大量の血が傷口からあふれだし、切り裂かれた腹を押さえ、「割に合わぬな」と言って、姿を消す。だが、絆は大鎌を左手に持ち替え、右手を正面に突き出し、怪しい呪文を唱えると、消えていたはずのダイ・アウターが突如として現れる。ダイ・アウターも自分の能力が無効化されたことにただただ驚くばかりで、大鎌で肩を深く抉るように斬り付けられる。更に絆は追い打ちのスペルカードを発動する。
「絆符『イグニッション・デスサイズ』!」
はっと我に還ったダイ・アウターは慌てて距離をとると、絆が振り下ろした大鎌が地面に突き刺さり、大爆発を起こす。そして爆発した場所から破片のように赤い弾幕が飛び散り、物凄い速さで傷負いのダイ・アウターへ襲い掛かってくる。弾幕の速度と自分のなぜか治らない傷の量を見て、回避に限界を感じたのか大鎌を回すし、弾幕を弾く。そして急に背後から気配を感じ、後ろから襲い掛かってきていた赤い弾幕を魔力弾で撃ち落とす。
「……挟み撃ちか」
こうなるとダイ・アウターの勝ち目は薄い。今だと絆が大鎌を大きく振り下ろす。次の瞬間、
「なっ!?」
「時間制限……ぎりぎりか」
そう……絆『存在種変』と絆符『イグニッション・デスサイズ』の両方の時間が終わってしまい、消えてしまったのだ。それにより、大鎌から剣に変わって、虚空を斬る。驚きを隠しきれない絆に対し、容赦なく、大鎌を思う存分振り回す。剣で防がれるよりも早く四肢を切り、最後の持ち手で絆の顎目掛けて振り上げ、クリーンヒットさせる。やり返され、吹き飛び、絆は近くの木にぶつかる。すたすたとこちらへと近づく音が聞こえ、どうにか体勢を立て直そうとする絆だったが……傷が深すぎたのか、力が入らない。
(もう……動けな……)
もはやこれまでだと思ったその瞬間、脳裏に何かが過ぎる。迫りくる大鎌……怪しくキラリと光るその切っ先に触れる寸前に絆が消える。直後、ダイ・アウターが地面に伏せてしまう。何なら、突如として絆がダイ・アウターの頭上に現れ、頭を踏み砕いたからだ。頭蓋骨を粉砕し、そして回復せず、ダイ・アウターの体は消滅していく。絆は息を切らしながら、額の脂汗を袖でふき取る。その時に気づく、左右の前髪の色がそれぞれ違うことに……左が白、右が黒髪なのだ。それに服も袖にギザギザの模様が描かれているものに変わっており、目も朱色に近い、赤色に変化していた。ふぅ……とため息をつきながら、尻餅をつく様に腰を下ろし、一枚のスペルカードを見る。絆『存在種変』のカードだ。そして足元にさらに二枚のスペルカードが落ちていることに気づく。一枚は絆符『イグニッション・デスサイズ』。そして二枚目は見たことのないスペルカードであった。そして服を見ながら絆は思う。
(これは……漣の服。なんで今になって発現したんだろうか……?う~ん、それに『常識を踏む程度の能力』か……なんかSっぽい?っていうか……なんでだろうか……僕だけなのかな?
男物の服が似合わないと思うのは……)
???「絆……なるほどなるほど。夢と希望であふれている、その通りの名を持つ少年だ……人選のセンスが良いな。流石我」
咲き人「……はぁ……これだから