東方二重録【完結】   作:咲き人

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意識は時として、心と精神を変える。何かのきっかけによって、良くも悪くも人は変わってしまう。それは、決して本意じゃなかったとしても……その運命が変えることができるのはその本人だけなのだから……


第百四話「頭の中だけの繁栄」

藤永 駿は別世界の博麗神社のに位置する家の前にいた。この世界のここは絶や漣達の家になっていたなと駿は思い出しながら周りを見渡す。人気のない場所だからか、死角となっている階段からダイ・アウターが来ているのが、見えずして分かった。

 

 

階段を上がって来た死神を彷彿とさせるダイ・アウターに戦慄がはしる駿ではあったが、

 

 

「ん……ここは……漣達の世界だな。今回で3回目だから流石に分かるぜ……!お前みたいな敵がいること以外はな!」

 

「我が名はダイ・アウター。絶滅を運ぶ者……」

 

「俺は藤永 駿!あんたはかっこいい名前だとは思うが、漣達の世界を滅ぼうそうとしている奴に容赦はしないぜ!」

 

「そうか……我は貴様の名など興味はないが、夢の中で散るがいい」

 

無限の空想(ゆめ)の中で俺に敵う者はいないぞ!」

 

 

駿は瞬時に紅黒銃を生み出し、血にも似た色をした弾丸を放つ。ダイ・アウターは大鎌を勢いよく地面に叩きつけ、その衝撃で跳躍する。弾丸が買わせてもたった一発。弾幕ごっこではありえない数である。だが、紅黒銃に残弾もリロードもない。ただ照準をダイ・アウターに合わせて引き金を引くだけで、大量の弾丸と連射速度はダイ・アウターにとっては知りえない、未知の技術であり、異常なことなのである。空中に飛び上がったせいで身動きの取れないダイ・アウターは、目の前に広がる光景、一面にを埋め尽くす血塗れの弾丸たちに驚き、一瞬、まるで時が止まったかのように動かなくなり、初撃を喰らう。

 

 

「よし!」

 

「……」

 

 

我に還ったダイ・アウターは大鎌を目いっぱい振り、他の弾幕を切り裂く。だが、それだけでは収まらず、斬撃は徐々に大きくなっていきながら駿を襲う。

 

 

「防符『イージスウォール』!」

 

「……!」

 

 

薄い白い幕が駿を守り、斬撃をなんとか防ぎきる。だが、『イージスウォール』の範囲外は酷く抉れ、切り口から毒々しい色のスライム状の液体が流れてくる。

 

 

「これは……場所を変えた方が良いな。漣たちの家も危ない」

 

 

駿は近くの林の中を走る。空からは駿の姿が見えなくなる。ダイ・アウターは地上に降り立つと、その姿を消す。

 

 

「……!何!?」

 

 

駿はすぐにそのことに気づけた。何故なら自分の『想像を具現化する程度の能力』で『ダイ・アウターの場所をサーチ』していたのにも関わらず、いきなりそのサーチがerrorを起こしたからである。これは……

 

 

「奴の能力か……!」

 

 

駿がダイ・アウターの能力について考えを巡らせようとした次の瞬間、

 

 

「なるほど……学んだ」

 

 

と言って、ダイ・アウターが現れる。手元には大鎌だけでなく、光り輝く札を持っている。それは駿には見覚えのある札だった。

 

 

「学んだ……ってお前まさか!?」

 

「スペルカード絶符『誘霊の死技』」

 

 

フワフワと浮遊するまるで幽霊のような青白い弾幕が大量に現れ、駿を取り囲むように回りだす。たまらず、駿は一枚のスペルカードを取り出す。

 

 

「もう一回だ!防符『イージスウォール』」

 

 

2枚目の『イージスウォール』を発動するが、

 

 

「何!?すり抜けただと!?」

 

 

幽霊のような弾幕は駿の『イージスウォール』をすり抜けて、駿にぶつかる。すると触れた場所から激痛が走りだす。

 

 

「グウウゥゥ!い、いてぇ……!」

 

 

その弾幕が次々に被弾する。激痛に苦しみながらも紅黒銃の引き金を必死に引くが、放たれる弾丸はダイ・アウターの体に触れるよりも先に大鎌に真っ二つにされ、さらには一気に距離を詰められて、大鎌が右腕を襲う。

 

 

「ぐあああ!!」

 

 

痛みは考えを鈍らせる。

 

 

(痛ぇ……痛すぎる!)

 

 

斬れた腕をまじまじと見る人などそうはいないだろう……だが、受けた痛みからどんな傷跡かは容易に想像できてしまう。それが、駿にも同じことが言えてしまう。つまり、結論は傷を自らの力で抉ってしまうのだ。最悪の考えを能力で具現化してしまい、また痛みが増えていき、その痛みをまた具現化するといった苦痛の無限ループに入ってしまっているのだ。駿は不老不死ではない。だから右腕を斬られ、血を大量に流しているのだが、これほど大量出血を起こしているのにも関わらず、それでも死んでいない駿にどこか、駿に止めの一撃を打って出るダイ・アウター。かなり大振りだが、瀕死の駿には何もできないと踏んでだろう。振り下ろされる大鎌を……駿はしっかりと見てしまった。そこからあふれ出るのは……自分の死の姿……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではなかった。

 

 

 

キンッッッ!!

 

 

 

大鎌は左胸に振り下ろされたが、なぜか、心臓まで届かない。

 

 

「ゥゥウウオォラアアアア!!」

 

 

大鎌を掴み、片手だけでダイ・アウターごと投げ飛ばす。

 

 

「……何故」

 

「……俺はお前とは違って、仲間と切っても切れない絆があるんだよ!」

 

 

そう言って、駿が左胸のポケットから取り出したのはとあるペンダント。

 

 

「それが……我の攻撃を防いだのか……」

 

「そうだ……これは絶から貰ったペンダント。こいつには少しずつ俺の魔力を溜めこみ、俺の魔力の変わりに魔法を使うことができる。いざという時のために防御魔法を張っておいたのさ!これが友の力だ!」

 

 

そしていつの間にか手にしていたスペルカードを発動する。

 

 

途端に駿の体内から闇が周囲を包み込む。そして、真っ黒な翼を生やした全身血塗れな駿が現れる。さっきまでの体力の衰えも見れず、冷徹ともとれるその無表情さに思わず凍り付く。

 

 

「これは……」

 

 

ダイ・アウターの頭の中で今起きたことを理解しようとしていると、駿は自身の右腕を再生させる。どうやら相当冷静のようだ。再び紅黒銃を創造する。銃口をダイ・アウターへと向け、冷たく冷たく口を開く。

 

 

「銃は剣よりも強い、何故なら音もなく、手を血に染めることもなく、人を殺せるからだ」

 

 

ジャキンッというリロード音がその場に響く。ダイ・アウターは駿の体から殺気があふれ、放たれた瞬間、その場から姿を消す。だが、駿は動かず、思考を巡らせる。

 

 

(まさか『時が止まった状態』でも能力を使えるとはな……では『姿を現した図』を描いても無理……ならコイツはどうだ?)

 

 

駿には似合わぬ下卑た笑みを浮かべ、眼光を鋭くする。すると、地面に付着していた駿の血が空中へと飛び、制止して散っていた草花はまた咲き誇り、ダイ・アウターが何もない空間から突如として現れる。そう駿がやったのは『時を遡る』だ。駿の都合により、この時の止まった空間で駿は自由に行動でき、ダイ・アウターの眉間に紅黒銃を突きつける。

 

 

「『消えろ。跡形もなくな』」

 

 

パーンッ!時が本来の進み方に戻ると駿の表情も段々と明るさを取り戻していく。すると、急に駿は頬を赤く染め上げてしゃがみ、悶える。

 

 

「なんて厨二臭いことを……あーあー!恥ずかしい!」

 

 

そして左手に持っていたスペルカードを右手に持ち替えて、確認する。

 

 

「助けてくれてありがとう……だけど、もう厨二病はやめてくれ!」

 

 

そう言って意識が闇の中へと沈んでいった。そしてそのスペルカードは光輝くことを止めなかった……

 

 

 

 

 

無音『残虐』……と言う名のカードは……




???「どんな聖人君子でも血を見ればどことなく、胸の高鳴りを抑えることはできないだろう……残虐な心よな」

咲き人「それはぁ、あなたもでしょうがぁ……」

???「我は血に癒しなど求めていない。我の血は涙。故に永遠に流れないのだからな」
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