ダイ・アウターはすぐにその場から消える。後方支援型である
(今……奴の能力がわからなければ……死ぬ。だが、見当もつかないな……消える……ではない……じゃあ、一体……)
「来るわ!二人とも!」
紫が叫ぶ。トライアングル状に組んでいた陣形のど真ん中に現れるダイ・アウターに気付けたのは奇跡といっていいだろう。大鎌が3つに分裂し、それぞれの刃が三人の首元に当てられる。しかし、それらはスキマの中へと消えていく。一番厄介だった大鎌が消えた瞬間、ダイ・アウターと漣が動き出し、空中で衝突する。取っ組み合いダイ・アウターの背後に妃香梨は飛び込み、『天上結界』を当てようするが、またその場から姿を消す。
飛んでくる妃香梨を受け止め、漣は紫を見る。
「……何か分かったか!?」
「いえ……ただし、ただの『瞬間移動』でないのは確かよ」
「それは私も思った」
漣に抱き着きながら妃香梨も口を開く。
「私の攻撃が当たる寸前にこの空間から消滅した。自分を消して、その後に自分を再構築するのだったら私の能力に引っかかるし、それも違う。時空間係の能力だと思う」
確かに。テレポーテーションといえば、瞬間移動の際に追尾できないのも納得がいくが、それなら気配を察知できないのはおかしい。俺が察知できない範囲まで飛ぶ必要はないし、なおさら一瞬で妃香梨だけではなく、俺ら三人をまとめて相手してもまだ余裕がある程の実力があるにも関わらず、この2秒間のクールタイム……というか、『世界からいなくなる時間』は一体何だ?テレポーテーションにこんなものはない。
漣が『
また、漣の攻撃が当たる前にダイ・アウターは消える。そして、2秒後に二人の前に現れる。疲労感、妖力の減り具合が全く感じられない。
なぜ?なぜだという絶え間なく浮かぶ謎の中に紫は一つのことを思い出した。
~『きっとお前の能力が進化すれば過去から未来へと繋ぐ架け橋となれるだろう……でも決して慢心することは許されないぞ。上には上がいるのが世界だ』~
まさか!?そう思っては試さなければいけない。スキマを開き、大量の妖力を無数の剣へと変えて、ダイ・アウター目掛けて発射させる。剣たちが地面に突き刺さり、砂煙が巻き上がる。姿を現したのはダイ・アウター……だが、両足に紫の剣が刺さっていた。つまり能力を使わなかった……使えなかったということだ。
絶は言った。能力の効果は上位互換がある……だが、同時にデメリットも上位互換だということだ。ダイ・アウターの能力は紫の能力の上位互換で『スキマ』を開かずに『ハザマ』へと姿を消すことができるのだ。その『ハザマ』の正体とは過去と未来の間。つまり『
そう……ダイ・アウターの能力は『過去と未来に飛ぶ程度の能力』。
もう一度妖力を込め、スキマを開き、剣を取り出す……ありがとう……お父様……最後の最後まで……剣を発射させるとダイ・アウターは苦々しくその場から消える。
「ダメージを与えた!?」
「凄い……!」
吃驚する二人だったが、
「今がチャンスよ!ダイ・アウターの能力の正体について説明するわ!」
それを聞いた漣は一つ考える。
「もしかしたら……妃香梨、対策を……」
「結界でしょ?今、創ってる」
「流石。そら来たぞ!無音『雪』!」
吹雪のような斬撃が突如として現れたダイ・アウターを襲うが、それらは全て、鎌技によって、はじかれてしまう。足のケガが消えており、衣服も破けていないところも見ると、奴の能力は生命以外にも適用されていることがわかる。……今更だが。
「
一瞬、ダイ・アウターが能力を使ったのだと錯覚してしまうほど速く動いた。その速さは時さえゆっくり動いてしまうほど、超人の域さえ超えた人ととして最後の技。人間が……ダイ・アウターが行き着いた限界を示した技であり、誇り……漣たちは反応するよりも早く、全身を斬り刻まれる。
そして……これが本当に最後の一撃……大鎌にダイ・アウターの全力が注ぎこまれる。
ブンッッ!!
本気で振った大鎌の切っ先から大量のエネルギーが放出される。全身に切り刻まれたのは痛みだけではない……ダイ・アウターの武器……『デスサイス』ががその身を最強とするための糧のすべてを身に刻んだのだ。だが、三人はもう怯えない……ブレない……
「『究極防御結界』!」
「……なんだと?」
最後の一撃が防がれたことにダイ・アウターが驚いた隙に紫が動く。
「無音『月』!」
太陽の光を受け、影で強くなっていくその月の力強さを体現したこの技、無音『月』は正面から飛んできた斬撃を大鎌で斬ったダイ・アウターには理解できた。紫に背後に回られている。……決して……他の者が見えなくなるまでその姿を見せない。ダイ・アウターが振り向き様に右腕を斬られる。すかさず、妃香梨も入る。
「無音『花』!」
咲き乱れる花の如く優雅な舞に片腕だけとなったダイ・アウターの大鎌さばきでも2、3発喰らう。そして気づく。
(まさか……)
「「「無音『雪月花』!!」」」
雪、月、花それぞれの技が同時に繰り出される。大鎌の耐久力を遥かに上回るその一撃に……ついに大鎌が砕けた……
(デスサイス……ふっ)
「見事だ……我を超える力見せてもらった!」
ダイ・アウターは能力が使えないのは初めから分かっていた。『弱体化結界』……そして漣はダイ・アウターの常識さえ超えていた。その名も……『一人一個しか能力を持てないという常識』を超えたのだ……2個以上能力を持っている迅真や文谷がいなければ漣はこの考えに辿り着かなかっただろう。『常識を奪う程度の能力』。未来もそして過去にもダイ・アウターの能力という常識はありはしない。あるのは今だけとなり、その今さえ、己が越える……そんな能力……
ふふふ……パンドラよ……どうやら『あの約束』は果たせそうにないな……
「無音『
鮮やかな七色が目を奪わせ、ダイ・アウターを斬った。ダイ・アウターは満面の笑みを浮かべながら死んでいった。
直後、4人がそれぞれ別の場所から現れる。
「迅真に駿に文谷さんに絆まで……お前たちがこの世界に」
「とりあえず、文谷さんっていうのはやめてくれ漣。お前には借りがあるからな」
「フン……それよりも俺たちが戦った相手は何者なんだ?顔を整形手術した跡や、人間としておかしい部分が多々見られたが……」
「おそらく絶の前世だ……」
「前世……そんなのまで生き返らせちまうのかよ!敵のボスは……」
「いや、それにしては分身や分裂ではなく、一気に5人も同じ姿の敵が現れるというのは考えにくいです!」
「確かに……もしかしたら俺たちが戦ったのが本物で、残りは劣化コピーの肉人形だったのかもしれない……」
「パンドラは……そんなことまで……」
「ふん、
「そう……」
「「「「「「!」」」」」」
「我との戦いで勝利しなければここで朽ちゆく塊となるのだ……」
「パンドラ……今度こそ決着をつけよう!」
「フッ……俺は絶に借りがあるからな」
「友のため……そして……
「漣には俺の世界を救うのを手伝ってくれた借りがある。今度は俺が助ける番だ」
「皆の意志が一つになっている……皆、友達だから……僕も戦う」
「過去ばかり見てきた……でも私はもう未来を見る!」
「お父様はもういない……だからこそ幻想を見るのはもうやめました……これからは夢を見る!」
「ククク……そうか。ならばつかみ取って見せろ!これが最後の戦いだ!」
咲き人「まさか、肉人形のオリジナルがやられるとは……」
???「まさか、なんて言葉は彼らには似合わない。天の川に咲く清き花が、彼らに微笑んでいる……まさに勝利の女神だ」
咲き人「……あれはいつでも誰にでも笑ってる気しかしないんですが……」