パンドラの背後に冥府の門が突如として出現する。
それが、ギィィ……と開くと、白い閃光が皆を照らした。皆は異世界へと誘われた。そこは真っ白な空間……そして地平線が見えるほど、真っ平で無限に広がる世界……
「ここは……オリジナルの妃香梨がいたと同じ世界か……?」
「うん。すごく似ている……」
「感傷に浸っている場合じゃなさそうだぞ」
文谷の一言に気を取り直す漣と妃香梨。目の前に映るのは、一人の少女。
黒髪のストレートで、漆塗りのような漆黒に塗られた黒のワンピースを着たその少女は、皆を嘲笑うかのようにクククと笑う。
「この姿で……人前に出るなど、何億年ぶりか……さぁ、始めようか……虹色の糸の諸君」
パンドラから異常な量の妖力が噴き出た瞬間、紫のスキマがパンドラの背後に現れる。そして同じタイミングで、妃香梨の天上結界に押され、スキマへと落とされたかと思えば、スキマが破れる。
「スキマの端と端を掴んで破ったですって!?」
「ちっ!行くぞ絆!」
「はい!」
迅真は妖刀「常闇」を絆はスペルカード絆『ダーインスレイブ』を使用し、血渦ダーインスレイブを作り出す。
二人は同時に斬りかかったが、パンドラはそれを少し後ろに下がっただけで回避する。そして、妖力を右手に込め、妖刀を作り出し、それを1
「
いきなり妖刀から大量の冷気が生み出され、それが、迅真と絆の体を凍結させる。
迅真はほぼ反射的に能力を使用するが、何の反応も起こさない。
「こいつも能力が効かないのか!」
「ククク……これは防げるかな?
パンドラは妖刀を能力的に厄介な方の迅真に向けて、剣を振り下ろすが、それは紫の境界の中へと吸い込まれてしまうが、皆が一瞬、己の目を疑う光景が現れたのはその次だった。
落ちてきているのだ……隕石そのものが……
「こいつは……マジモンの隕石かよ!?」
「妹紅!力を借りるぞ!『フジヤマヴォルケーノ』!」
漣は妹紅の力であり、『フジヤマヴォルケーノ』を使い、パンドラにフェニックスが襲い掛かるが、
「全くもって……いい火加減だ」
そう、余裕をかまされるが、漣の目的はそこではない。凍結している二人を炎で溶かすことだ。
「火加減を考えてください!」
「だが、よくやった!俺は隕石をやる!」
「今度は俺達だ!」
迅真がその場から空へと飛ぶと、後ろから現れた漣と文谷がパンドラを斬る。更に駿は後方から紅黒銃の引き金を放ち、弾丸はパンドラの足を撃ち抜くが、
「効かぬわ、小童共が」
「「うわぁ!」」
妖刀を横に一振りするだけで、漣と文谷は弾き飛ばされてしまう。傷口は既に見当たらない。やはりというべき相手だと漣は舌打ちし、剣を懐にしまい、居合いの構えを取る。
「無音『連鎖』!」
「続けて行くぞ!日向『カゲロウデイズ』!」
「紅黒剣!」
漣の攻撃に続けて、文谷もスペルカードを使用し、紅黒銃を剣にして駿も前線に移動するが、その攻撃たちが当たるよりも前にパンドラの剣が動く。
「
「何!?」
「ちぃ!」
「ぐおっ!」
地面がいきなり地響きを鳴らし、割れる。そして三人は下半身が埋まるほどまで落ちてしまう。霊力で空を飛ぼうと力を込めるが、それよりも早くパンドラの剣が振り下ろされる。
「本物の火加減というものを教えてやろう。
「……まさか!」
地割れの奥からボコボコと強烈な熱さが唐突に吹き出てくる。……溶岩だ。それが一気に沸騰し、噴き出す。
「「「ぐわあぁぁぁ!!」」」
肌が焼け、すぐに地割れに挟まっていたのを解放されるが、その代わりに大ダメージを受けてしまい、遥か上空に吹き飛ばされてしまう。
「漣!」
「私たちがよそ見している場合じゃないわ!」
「その通りだ。まぁ、避けられないだろうがな……
今は夜だが晴天であるというのに、いきなり空から稲光が走ると、妃香梨と紫に雷が直撃する。
「結界が……貫通して……まで……」
「…………!!」
「この程度か…………む」
パンドラは後ろから回し蹴りを喰らい、少し前のめりに倒れ込みそうになるが、一瞬で消え、元のポジションに戻る。蹴りを出したのは迅真であった。既に隕石を消し、パンドラの腹に妖刀「常闇」を刺している。
「ほぉ……?痛みの侵食か……だが、このパンドラには無意味だ!」
パンドラの一喝により、刺さっていた妖刀「常闇」は抜けて、
「こいつは細やか乍らも我から貴様らへの終局の一撃だ……『judge is Guilt』」
パンドラのその一言により放たれた7本の剣は無情にも皆の心臓を突き刺していた。既にその軌道は見えず、刺したところから血も流れはしない。ただ、その剣がしたことは「過去」として処理されていた。「今」は存在せず、あるのは結果だけ……皆が吐血した辺りで、気づける。これは先ほど相手していた『ダイ・アウター』の能力なのだと、奴もその能力を持っているのだと……
「ごほっ……」
「み、んな……く」
「ち……」
「……」
「諦め……られ……」
「うぅ……ああ……」
「これで……終わりだな」
「それはどうかな?」
そう呟いたのは……迅真であった。
「貴様……まさか」
「気づくのが少し遅いぜ。発動しているんだよ……壊れろ『不死結界』!」
皆の上で薄い膜にひびが入り、崩壊していく。すると、倒れ込んでいた皆の体が消え、パンドラを取り囲むように四方に全員が現れる。
「ば、馬鹿な……!不死結界にこのような能力は……」
「ああ、ないぜ。
「なっ!既に『錯覚結界』と融合させていただと!?」
「今だぜ!」
「ああ、行くぞ皆!」
皆の持っている剣が虹色に光り出す。
「「「「「「「無音『虹』!!」」」」」」」
まず、漣の一撃が入り、パンドラは悲痛の声をもらす。
「ぐわあぁ……!!おのれ!」
「まだ続くぞ!」
「させるか!」
文谷と駿の攻撃はパンドラの手から放たれた青白い膜が防ぐ。だが、その隙に妃香梨と紫、絆、迅真の攻撃がパンドラの背中に当たる。
「ぐうぅぅ!我の能力一つにすら敵わない小童共が……調子に乗るなァ!弾けろ!」
「「「『禁忌封印結界』!」」」
「「「『
攻撃があさっての方向に行こうとした瞬間、妃香梨と紫と文谷が即座に結界を張り、パンドラのステータスを下げ、漣と迅真と駿は方向を一方通行にし、それを回避する。流石に学習しているのだ。パンドラとパンドラが作った物質に能力は効かない。だが、今回はパンドラが能力をかけたのは己自身であり、漣達が能力をかけたのは己の剣にのみ……これならばパンドラの無効効果を意味をなさないのだ。
「おのれおのれおのれ!貴様等7人程度が集まった程度で……!我の全てを支配し、纏めた『ありとあらゆる程度の能力』を超えられると思うな!『死ね』!」
「言葉対決か……やってやろう!『生きる』!」
パンドラ『ありとあらゆる程度の能力』とは言葉どうりに『全ての能力』を使用できるということだ。それしかできないという意味が『程度』だというのに、その程度の限度というものが果てしなく壊れているというのは今更だろうか。
『言葉の意味を具現化する程度の能力』の効果を使用したパンドラの言葉すらも文谷が逆の言葉で相殺し、持っている本に封印される。
「ならば……『老化』!」
「次は俺だ!お前が言ったことは『成長』だ!」
パンドラの次の能力さえも駿の想像力には通用しない。
「どうやら別の能力は一回しか使えないようだな……今のは『速度を加速させる程度の能力』か……」
「くっ!」
「これで、終わりにするぞ!無音『我龍戦永斬』!」
「……
「なっ!させません!合絆『ホーミングフリーズ』!」
「無駄だ」
パンドラの剣が動くのと同時に絆は懐から取り出した弾幕で阻止しようとしたようだが、その意味はなく……一瞬で皆がパンドラの周囲から消える。虚空となった空を見上げ……パンドラはフッと笑ったのは、この技は大量の力を使うが故に己に禁忌と戒めていたものであったが、己そのものが禁忌なのに何をためらう必要があるかと昔の自分にツッコミを入れていたからであり、単純に疲労からなる緊張の緩みからでもあった。
「……」
後は、世界が壊れていくように魔法陣が動くのを待つだけ……自分の力をそれに使うのはそこまで酷ではないがために、パンドラは……己が飛ばした7人の運命に選ばれた子らを睨んだ。
「一体何が起こっていやがる……!氷河期にでも来ちまったのか!」
迅真が立っていたそこは氷という名の地面。1m程先も見えない極地の中、真横に吹き荒れる吹雪が迅真の体力を削り、身動きを取れなくしていた。
「畜生、こんなところで立ち往生している場合じゃねえってのに!」
折角、感知できた魔法陣を止めなければいけないというのに……と、迅真が歩を進めようとする度に体が凍り付く感覚を無視できなかった。
「溶けろ!くそっ駄目か!なら不死鳥となれ!」
氷に自分の能力が通用しないことを悟ると、今度は自身を不死鳥と化し、その炎で溶かそうとするが、これでも溶けない。先ほどのパンドラの能力ならばこれなら溶けるはずなのだが、こればっかりはグレードアップしているようだ。
迅真は何もできず、全身が凍っていってしまう。
「くそ!くそ!俺は自分から誓った約束は破る気はない!絶対に!」
駿が落とされたのは先ほどの地割れの奥。マグマ溜まり。吹き上がるその灼熱に必死に自身の能力で下げようとするが、どうしても限界がある。
「あっつ!いや、熱くねぇ!」
そうやせ我慢に近いことをしなければ今頃、体は燃え尽きてしまっていただろう。だが、ずっとこうすることもできない。だが、強くイメージしようにもこの熱気が邪魔してくる。
「早く……こっから出て、皆と合流しなきゃいけないってのに……!こんなところで……!」
すると、溶岩は嵩を増して、駿の足を沈めていく。
「……ッ!俺は……期待を裏切るなんて……恰好悪いことしたくねぇ!」
「こ……こは……うわぁ!?」
絆は遥か上空へと吹き飛ばされていた。そこは黒雲の中……風が荒れ狂う積乱雲の中に彼は居た。
「グ……ぅぅ……!」
明かりもなく、暖かさもなく、風に逆らうこともできず、耳に届く音は雷の音だけ……
「ガァッ!?」
突如、雷が直撃する。普通の人間なら既に死んでいるが、かけがえのない人の心の支えが絆を立ち直らせていた。
「ぐぬぬぬ……!」
精一杯自身を動かし、舵を切ろうとするが、どうも上手くいかず、再び雷に直撃する。
「か……はぁ……はぁ……絶対に……諦め……ません!」
「くそ、鴉天狗たるものが、地面に埋まるとは何たる不覚……なんて冗談かましてる場合じゃないな……」
そう、文谷は山と山の渓谷に挟まっていた。表現がおかしい。
訂正:山と山と渓谷の部分に文谷は居て、そこに双方の山から土砂崩れが起きて、挟まっている状態である。抜け出そうにも自然に積み上げられた土は重くがっしりとしており、困難である。
「ぐ、おおお……!!」
幸いにも両手は塞がっていないためにその手で這い上がろうとするが、みしみしと土砂に埋もれた自分の下半身が悲鳴をあげる。だが、そんなことお構いなしに這い上がろうと、自身の肩についている黒い翼を必死に羽ばたかせる。
「動け、翼!何のために俺の肩についている!」
すると、左右の山の方からごろごろと何かが転がってくる音がする。
「まじか……」
それは雪崩にも似た量の土砂であった。
「恩返し一つできねぇなんて、俺は絶対嫌だからな!絶対……飛ぶ!」
「ここは……う、海!。お父様に水着をもらって遊んだあの海!」
紫は昔の思い出の場所に似た海を見て、興奮が隠し切れないが、すぐにその興奮はさめることになる。
「ん?波って、こんなに荒々しかったかしら?」
そう……波は少しずつ大きくなっていっている。それは……やがて、海辺を飲み込み。紫すらも飲み込んでしまった。
(……まずい!早く上に上昇しなければ……)
だが、スキマは開かず、かといって海面に辿りつこうとしても遠のいていくばかりである。いくら不死身に近い妖怪であったとしても呼吸の都合上、これでは溺死してしまう。
(海中で身動きがとりにくくて……剣が上手く振れない!でも、お父様の遺志を失う訳には行かないのよ……絶対に!)
妃香梨は砂嵐の中、彷徨っていた。荒れ狂う風は視界なぞ頼りになるわけもなく、口に砂が当たり、乾いていく。それだけでなく、体と服の間に砂が入り、体内の水分を吸い取っていく。
「くっ……!結界で弾ける訳もないか……」
それだけならまだ耐えることもできたかもしれないが、砂は徐々に質量を持っていき、風は強さを増していく。
「っ!皮膚が切れた……!」
ブウォンっと妙な音が鳴ったのを皮切りに前方から来る大量の砂煙に紛れて現れる砂たちに全身を切り刻まれる。
「ぐっ……!でも、この程度では音を上げる程、私は軟じゃないのよ!私には漣がいる!皆がいる!だから……絶対に諦めない!」
漣は暗い暗い闇の中にいた。凍える程寒く、目を開けていては冷たさで凍り付いてしまいそうで、目を閉じればその静けさを感じられる。
「どこだ……ここは……」
痛みを感じられぬほど体は凍り付き、感度は麻痺してしまう。だが、一瞬で背景は変わり、灼熱の世界に落とされる。燃え盛る炎に溶岩の波。それによって、凍り付いていた体は一気に溶け、熱気に打ち負かされる。
「あっっっっっつ!!」
漣の痛みももっともだが、すぐにまた世界が変化し、また暗い世界。だが、今度は風に吹き飛ばされ、地面につくことはできない。ゴロゴロと鼓膜が破れそうになるほど、うるさい雷に何度か直撃する。
「~~~~!!!」
言葉にならない叫びとなって、風に抗う力もなく、ただ風に吹き飛ばされて、暗い世界から次は海水につかる。
「……っ!ぷはぁ!はぁ……はぁ……う、海?ごぶ……」
一気に海面が上昇し、漣は一瞬で海底に近いところまで落ちて行ってしまう。だが、闇に潜れば潜るほど、いきなり、地面に落っこちてしまう。
「ぐっ!お、あだ!こ、今度は……砂嵐か……か、さっきまで水浸しだったのにすぐに乾いて……地面に触れているだけでか!ちっ!」
地面が湿っていく代わりに自分の手が軽くなっていくのを感じると、バッと体を跳ねさせ、空を飛ぼうとするが、目の前に砂嵐が現れ、弾き飛ばされ、再び地面に着地してしまう。
「ぐおっ!」
だが、着いたのは乾いた大地ではなく、土砂崩れしてくる渓谷の奥。
「がぁ!」
土砂が漣の体を埋めていく。圧倒的な物量の一撃に漣の体はぺっしゃんこにつぶれてしまう。
「う……アァ……ま、だ……」
遂には土砂の量の多さに漣は埋まってしまった。
そして、辿り着いた場所は土の中ではなく、
「まさかこれは……!?」
ブラック・ホールの超引力に四肢がそれぞれが4方向に引き寄せられ、関節が引き裂かれかける。
「あ……ああ”……ああぁぁぁぁぁ!!」
ギチギチと体から出てはいけない音が鳴り響き、漣の体から血飛沫が噴き出る。
「~~~~~っ!!ああああああああああああああああ!!俺は……俺は……」
超重力にも負けず、引力にも引かれず、己の体は潰れず、一切の水分も失わず、溺れることも燃え盛ることも凍り付くこともない。
そのような過去があった事実もなくし、清算し、捻じ曲げ、都合の言いように運命を変える。
我が全力を持って、一つの禁忌を捻り潰す。
「『境界を操る程度の能力』、『ありとあらゆるものを拒絶する程度の能力』、『文字に変える程度の能力』、『本を操る程度の能力』、『言葉を操る程度の能力』、『文字を操る程度の能力』、『絆を扱う程度の能力』、『想像を具現化する程度の能力』、『存在を司る程度の能力』、『感覚を絶やす程度の能力』、『ありとあらゆるものを滅する程度の能力』、『未来と過去に飛ぶ程度の能力』……そして我が『常識を超える程度の能力』と『常識を奪う程度の能力』……それら全てがパンドラ。貴様の計画の何もかもを否定し、俺が終止符を討つ!」
「無音『超越』!!」
その剣技の速度はもはや光さえも超え、ありとあらゆるものを凌駕した。
「ああ、そうだよな……ルーミア。お前はこんなところで負けるような男を望んでねぇよな!」
「まだ……負けられん!」
「ここで負けたら葉に顔向けできません!」
「俺は負けない!勝つ!」
「自身とお父様の名誉のために負けるわけにはいかない!」
「負けない!未来を掴むから!」
「「「「「「「これが