絶の姿が迅真から元に戻る。何故よくわからないが、少し気まずかった気分が良くなった。
そして迅真は超光速で絶の周囲を走り回る。だが、それを絶は見たところで何も行動を起こそうとはしない。
(いきなりだが………さっさとぶっ殺してやる!)
「全ての力の源よ、」
迅真の詠唱が始まる。その言葉をまるで待っていたかのように絶も指で印を結び詠唱を始める。
「"雷鳴の馬車"」
絶の詠唱を聞き、何が来るのかわからなかったが先制することにこしたことはない。
迅真はこのまま光速で走りながら詠唱を続ける。
「輝き燃える赤き炎よ、」
周囲は熱せられ、
「"糸車の
ありとあらゆる隙間から光が集まり、
「我が手に集いて煉獄となれ」
手は灼熱と化し、
「"光もて此を六に分かつ"」
六つの光が輝き、
「【
「縛道の六十一 【
六つの板のような光の集合体が飛んでくる。
「ちっ。」
ドカーン!という音が絶の周囲で聞こえる。烈火球が直撃とまではいかなかったが足元の地面にぶつかったのだ。ちょうど六杖光牢を使ったばかりで周りが確認できなかったというのもあってか避けるのが少し遅れる。
「くっ。」
迅真は六つの光の板を避けていたのだが、一つの板に腕が貫通する………だが、痛みは感じない。だが、その代わり左腕が動けなくなる。縛道というのはそういうことかと絶を見る。
絶はいつの間にか持っているはずのないの剣を持っている。そしてそれの剣先が触れている地面よりも後ろは何も焼けていなかった。ちっ、と舌打ちをする。
迅真の次の行動は早かった。六杖光牢が突き刺さっている地面を抉り、まず左腕を自由にする。そしてすぐに能力を使用する。諏訪子の能力で絶の周囲の地面を隆起する。これで絶は動けなくなった。今がチャンスだと地面を蹴り、隆起した地面よりも高いところまで飛び、攻撃しようとする。
「
炎の矢の威力も当たり判定も強化された番のようなものでもの凄い勢いで絶がいる穴に飛ぶ。
その槍は何かに衝突すると爆発するという技なのだが、
それが起きることはなかった。なぜなら………
その槍は『消滅』したからだ。それだけではない。絶を囲っていた周囲の隆起した地壁さえも『消滅』している。そして残ったのは絶と絶が持っている剣だけであった。
「ふ………この技を見せたのは紫、漣、妃香梨だけだったが………特別だ………お前にも見せてやる。」
迅真は身構える。炎の槍を爆発させずに消滅させたほどの技だ。それなりの技なのだろう。
「しかと目に焼き付けろ!『無音奥義――絶――』!」
絶が消える。瞬間、後ろから殺気を感じ、飛び退きながら振り向く。そして右腕を確認する。
何もない。
正確には右腕が消滅したのだ。あの技名的には『絶やされた』といったほうがいいのだろうか、否そんなことはどうでもいいのだが、とにかく『リジェネ』で再生させる。絶は迅真も不死であることに気づいていたのであんまり驚いていなかったが、少し顔には顕なさそうな表情を浮かべた。
「なんだ今の………?」
攻撃も表情にも通用する疑問を言われたので絶は返答に困った。だが、とにかくどっちについても黙る。タネをすぐ教えては敵に遅れがとられてしまうからである。
「
絶が突進してくる。どう考えても罠である。もう一度さっきの光速をしようと走るが、思ったよりも動きが鈍くなる。絶の能力だ。脳が痺れて足に命令が行き届いていないのだ。ならばと絶の突進を迎えうつ。今度はアクセラレータの能力を使用し、全ての攻撃を反射する。そうして攻撃のタネを見切ろうという魂胆だ。
ギャリンッッッ!!
これは反射によって剣本来の性質が跳ね返っているせいで音が発生しているわけだが、絶からは何も聞こえてこない。『無音奥義――絶――』という技はあの一本の剣を超光速で振り回し、周囲を切り刻んでいるのだ。だが、絶は目を瞑っており、確認しているはずはないのだが、どうやっているのだろうかと思ったのだが、絶のテリトリーに入っているからやっとわかったのだ。絶はとても薄い霊力を膜のように体外に排出しているのだ。それが円のようになっており、障害物が入った時にそれが入ってきた感覚を感じてそこを集中的に切り刻んでいるのだ。果てしなく終わりのない剣技についにアクセラレータの能力の限界がやってきてしまう。そう判断した迅真は後ろに下がり、テリトリーから抜け出す。
「解除………」
どうやらさっきの奥義は大量の集中力を使うようで相当体力が減っているように見える。だが、迅真もかなり消耗している。そして迅真は一つ咳き込み、周囲に闇を振り向く。
「
「やる気か………『スキマ』………こいつらに名前はない。しかし、これだけではつまらんだろう?こいつらは『
絶はスキマから剣のようなキーストラップを大きくしたみたいな剣と見た目ただの剣を持ってくる。
だが、見た目が全てではない。一見力的な問題ではダーインスレイブの方が強そうに見えるが………これ以上は実際に戦ったほうがいいだろう。
迅真は走り出す。ダダダという地震のような地鳴りとともになっているため、世紀末のようなものだと錯覚してしまう。
ブン!
迅真はダーインスレイブを振り下ろす。絶は逆撫と呼んだ剣でそれを防ぐ。そしてすかさず鏡花水月で横槍を入れようとするが、これはダーインスレイブを横に傾けられ防がれてしまう。
絶はなんと逆撫を投げる。迅真もこの行動には意表を突かれてしまい、動きが鈍くなってしまう。はっと我に還ったときには逆撫はすぐそこまで迫ってきていた。相手の剣の能力がわからない以上下手に当たるわけにはいかないのだ。
避ける………いな、正確には避けたはずだった………だが、持ち手がリングとなっている逆撫のリングの部分が何故かいつの間にか自身の首の位置まできており、そのまま後ろに引っ張られる。呼吸出来ないと判断すると人とは無意識の内に呼吸ができるようになろうとまず喉の安全を図ろうとする傾向があるため、迅真はリングを両手で取ろうとする。だが、もの凄い速度で移動しているので息が苦しくなって力が全く入らない。
ぐさっと木に突き刺さる。その衝撃で木にぶつかりリングからやっとこさ離れる。
「ぐはぁ!げほ、げほ!」
流石にむせる。
だが、次の行動はさせまいと逆撫を素早く抜き取り、鏡花水月を振り下ろす。
しかし、その攻撃は突如としてキャンセルされた。後ろから飛んできたダーインスレイブを受け止めるために二つの剣でふせいだからだ。
「何………?」
さすがの絶もこのことには困惑のようだ。
実は逆撫に引っ張られているときに迅真が諏訪子の能力で地面を隆起させ、ダーインスレイブをこっちに持ってこようとしていたのだ。異常なまでの速度で地面が隆起すれば途轍もない速度で剣が飛んできたとしても妙に実感が沸いてしまい、あんまり不思議ではないであろう。
「次はこっちの番だ!」
ダーインスレイブを振り下ろし、振り上げ、横一閃、攻撃が来る、なぎ払いといった感じで攻撃と防御を繰り返す。
そして絶は少し離れたところで逆撫の持ち手のリングを人さし指でクルクルと回転している。そして逆撫の剣先が下を向いた瞬間、背景が変化する。まず、いつの間にか上空に放り出されている。しかも、上を見ると木々が逆さに生えており、地面が見える。そして下を見ると青い空が晴れ渡っている。どう考えても異常である。
「どうした?おかしいのはこの甘い匂いを嗅いで普通にしているお前の方だろう?」
「!?」
「慌てて息を止めてももう遅い………ようこそ『逆さまの世界』へ………」
「逆さまか………確かに………」
迅真は右手を動かそうと脳が命令する。だが、実際に動いたのは左手だった。つまり少なくとも左右は逆だということだ。そして上下も逆か………
「さあ行くぞ!」
絶は逆撫で斬りにかかろうとする。迅真はなるほどと言いながらダーインスレイブを握り締める。
「上下左右さえ逆か………それに………前後もか!」
迅真は後ろを振り向く。さっきまで正面にいたはずの絶が後ろから斬りかかる姿を捉えていたのだ。ダーインスレイブで下から上に左右も逆にして攻撃する。だが、迅真の攻撃は成功しなかった。絶がいつの間にか後ろに見える。そして逆撫を構えていた方向と斬られている場所も反対になっている………まさかと思うと絶が解説する。
「見ている方向と触れられる位置も逆だ………さあどうする?」
「どうするって言われてもだな………慣れるしかねえだろうがよ!」
迅真は絶が見えている位置とは正反対の場所へと走る。全てが逆なら………考えても本能でも戦えないというのなら直感で戦う。それだけであった。迅真は左足で蹴り上げる。つまり右足で踵落としをする。一瞬の出来事で絶はすぐさまには反応できなかった。絶の後頭部に迅真の右足がぶつかる。手応えありだ。どうやら触覚などは制御できないことを知ったようで迅真は後ろに手を回しぎゅっと手を握る。すると何かを握り締める。絶の胸ぐらだ。胸ぐらをつかんでいる手で思いっきり上へと飛ばす。実際には下に叩きつけようとしているのだ。絶は咄嗟に逆撫でガードする。だが、勢いが強すぎたのか逆撫が粉々になってしまい、逆撫の能力がなくなる。
「これであとは………その刀だけだな。」
「………」
迅真は絶の持っている鏡花水月を見ている。絶もその刀の刀身を見て黙っている。だが、何を思ったか鏡花水月の刃をへし折る。
「なっ!?」
「………この刀は強すぎるからな。手加減してやっているというのにハンデなしはお前もきつかろう?この刀はこれで十分だ。」
そう言って絶は折れた鏡花水月を見せる。確かに折れたというのにその異彩は少しも欠けてはいない。禍々しい渦のような邪悪さもあまり変化していない。そしてひと振りがくる。その衝撃波は大地を切り裂き、空を覆うほどである。なるほどこれがハンデだというのなら………
――――覚悟しろよ
そう迅真がいった。その瞬間、迅真が4人ほどに増えていっている。分身か複製なのだが、どっちであろうと絶は驚かない。狼狽えない。不動を貫く。それだけであった。迅真(コピー)の三人はいっきに絶との距離を縮め攻撃してくる。凄まじい攻防と言っていいだろう。殴り、払われ、蹴り、受け止められ、殴り、蹴り、殴り、殴り、払い、払い、払い………一対三だという不利な状況であったとしても戦いの最中で相手に一瞬たりとも隙を見せないその姿勢に圧倒されてしまう。コピーたちにもちゃんと思考はある。学習するロボットのようなものなのだが、絶の一言で彼らは一瞬で消え去ることとなる。
「破道の七十『断空』」
一瞬のうちに消えてしまったコピー体たち。だが、迅真は臆することなく、詠唱を始める。
「闇よりもなお暗き
周囲は暗闇に包まれ、
「"
絶の周囲だけ輝かしい光が集まり、
「夜よりもなお深き
黒さはより深く深くなり、
「"
世は闇へと………………
「混沌の海にたゆいし、」
更に終幕へと………………
「"
そこから見える一つのあかり、
「金色なりし闇の王、」
再び絶望が身を包む。
「"光を落とす道"、"火種を煽る風"」
光は砕け、火は勢いを増し、
「我ここに汝に願う、」
一つの願いは一つの魂の消滅。
「"集いて惑うな"、"我が指を見よ"」
一本の指を天を指している。
「我ここに汝に誓う、」
誓いは招来。
「"
全ての力はここより、
「我らが前に立ち塞がりし全ての愚かなるものに、」
一人の存在へと………
「"弓引く彼方"」
光は集まり、徐々に数を増やしてゆき、
「我と汝が力もて、等しく滅びを与えんことを」
地面は浮き上がり、終焉の警鐘を響かせる。
「"
霊力が莫大に絶の中からなくなり、
「ギガ・スレイブ!」
「破道の九十一"
今、虚無を操る存在と全てを亡き者にする一撃が放たれた。
爆音といわれるものはなく、鼓膜は破け、周囲の小動物たちはその衝撃で心臓の鼓動を止めてしまう。
勝った攻撃は………
迅真であった。
だが、
時折として俺の能力を油断すると死ぬ。
このことだけは覚えて帰れ。
パリーン
世界はひびが入り、壊れ、さっきの攻撃はまるでなかったかのように………元へ戻っている。迅真は呆然としいた。馬鹿な………いつからだ。いつから………
「いつからその剣は折れてない!?」
「最初からだよ。」
それは絶が持っていた剣………鏡花水月であった。さっき折ったばかりのはずの刀身は禍々しくもその姿を保っていた。
「この剣の能力は『完全催眠』。刀身を見れば一瞬だ。戦う前からこれを発動していた。」
「………どうしてだ?」
「倒さなかった理由か?気づかないかなぁ~って思ってたら、まじで気が付かなくてね。少し焦ってちょっと夢の中で戦いを強めたら案の定気が付いてくれたからよかったが………」
「ちっ。」
迅真は絶に聞こえるようにわざと舌打ちをする。それもそうだろう。まさかプライドを汚され、そのうえ、試合に勝って勝負に負けたということだ。苦い思いとしてすぐに記憶に刻み込まれた。絶はどうしようもなく佇んでいた。すると奥の森から一人の女性が現れる。紫だった。
「……この世界の紫か?」
「まあな。そっちよりはタフだぞ。」
「お父様。もしかしなくてもその方は客人なのでは?だったら家に上がらせても……」
「は?」
迅真は時が止まったかのようにぴしっと固まる。紫の衝撃的な言葉は元の世界よりも非常識であったからだ。
「お父………様?」
「あれ、言ってなかったか?俺は絶。八雲 紫の父親だ。」
「え、だって……え?」
「容姿は同じだろ。」
「ちょ、ちょっと待て。父親!?ってことはお前……既婚者ぁ!?」
「………さあ、どうかな。」
そしてすっと手を挙げると迅真の足元が境界になる。
「あっ!次は確実にてめーをブッ飛ばすからな!」
「おお、怖い怖い。じゃ、さよーならー。」
迅真がいなくなるとすっとまた境界を閉じる。
手加減してあげるとはなんだったのか………いや、これで手加減だったんだよ!というわけでコラボありがとうございます!またコラボ出来る日を楽しみに待っております。あと、ごめんなさい。
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