またどこかで二つの次元との間に不具合が生じた。空間が裂け、そこは一種のブラックホール。その次元からもう片方の次元へと吸い込まれる『境界』そのもの。そこに偶然近寄ってしまった哀れな鬼が一匹、片方の次元へと誘われてしまったのであった。
絶はやっとこさあの地獄のような争いごとから解放され、自分の家でのんびりとくつろいでいるところであった。紫が境界を開いて現れる。最近の紫は出会う度に頬を紅潮させている。前の出来事がよほどだったのだろう。紫はすうっと絶の体に身を任せるように沿って上目で絶を見てくる。
「……今日はどうした?」
「お父様。またあの時みたいに熱い夜を……」
「用件は?」
「教えたら代わりにいいですか?」
「さっさと教えろ。」
「また別の世界からお客様がお見えに……」
「またか。」
絶はうんざりしたようにはあっとため息をつく。実際短期間に何人もというわけではないのだが、こうも沢山来られると対応に困るというものだ。絶は珍しい奴は好きだが、果てしなく面倒くさい奴は嫌いなのだ。
だが、客は客。絶は紫の全体重を支えている状況なのだが、紫の背中に手を回し固定すると軽々と立ち上がり、紫に客の居場所を教えてもらい、境界へと足を運ぶ。紫が何か言っているが、錯覚を与えて夢を見させておいた。
???side
「……やっぱり雰囲気は似ているけどここは違う……場所?いや、世界と言った方がいいのか?」
男は今、目に見ている光景を何度も確認しながらそうつぶやく。いつも山から見下ろせる光景も、似てはいるものの自分の家がなかったり、『四天王』とも判断されないところを見るとここは似たような別の世界ということなのだろうか。そうぶつぶつ小言のようにつぶやきながら考察していると、いきなり目の前の光景が目ん玉で一杯になる。これは紫の境界だ。そう思い、少し後ろに下がると、目の前の境界から髪と服装が違うだけの紫が現れる。
「紫?……じゃ、ねえな。あんたどっかで見たな。」
「迅真に落とされた時、お前に当てるつもりでやらされた被害者だ。」
「ああ!」
男はポンと手を叩く。
「迅真に手も足も出なかった奴か。」
「そんなの手加減したに決まっているだろう。勿論その次に出会う機会があったが、ボコボコにしてっやたよ。」
「おいおい。まじか?」
「当たり前だ。あんなの脳ない鷹、同然だ。」
「あれを弱えって言うか……」
驚愕する男。迅真の強さを知っている分、それを弱いと言い切る。4人がかりでも一撃さえ喰らわせることができなかったのにとぼそっとつぶやく。
「お前名前は?」
「あ、俺か?俺は『閃鬼』だ。」
「は、なんだと?」
「え?」
「ああ、いや何でもない。」
「なんかあんのか?」
「なんでもだ。」
「いや、なんだよ。」
閃鬼がすかさずツッコミを入れる。だが、絶は無視して周囲を見渡す。誰もおらず、また人目にもつかなさそうだ。
「おい、閃鬼。」
「ん?」
「俺と戦え。」
「いきなりどうした?」
「いいから戦え。お前鬼なんだろう?だったら」
絶がひどすぎる。
次回「感づいた情は絶え」