東方二重録【完結】   作:咲き人

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どうも咲き人です。


第六四話「京からの訪問者」

滅は精神世界で絶へと体の主導権を変えようとしていた。絶はさっきのこと(前々回)をみていたのかむすっとしている。

 

 

「なんだ?」

 

「……お前が泣くとはらしくない。」

 

「仕方ないだろう。誰だって別れは辛いものだ。絶、お前だって……」

 

「…………まだいい。別れなんて……まだ言わなくたってさ。」

 

「いや、早めに言った方が覚悟を決められるだろう。」

 

 

絶は何も言わずに結界を超えていった。滅は結界のなかで一人でぷかぷかと浮いている。そして絶の背中を見て目を細める。

 

 

「…………っ!」

 

 

ギリリと悔しそうに歯ぎしりをした瞬間、気づく。何者かに背後を取られていることに……ばっと振り返るとそこには滅にとって知った顔であった。

 

 

「てめえ……!」

 

『我ガ貴様等ノ中ニ住ミ着イテ何カ問題カ?』

 

「大有りだ!どういう了見でここにいる!」

 

 

滅はすかさず能力を発動する。だが、近くにいる『何か』は右手を滅へとかざすだけで一向に変化は起きない。まるで効いていない様子だ。滅は怒りを表せんほどのオーラを放つ。結界の中とは言え、結界が軋むような音がたつ。滅と『何か』はその場で立っているだけなのだが、二人からの殺気は絶えない。

 

 

『ククク……焦ルナ滅ヨ。我トテ汝ヨ。計画通リニ進メバ良イ。』

 

「くそ!」

 

 

滅は『何か』から目を背け、絶の見ている光景を眺める。だが、その『何か』のことを横目でじっと睨みつける。

『何か』は顔は長い黒髪が邪魔をして表情も分からないが楽しそうに絶の見ている光景を見ている。

 

 

(絶……本当にこいつの言いなりになるというのか……!?)

 

 

 

 

絶side

 

 

絶は左目を慎重に開くと目の前にはいつもの我が家があった。自分以外に人がいない。孤独な空間へといつの間にか周りの存在に飢えていたことに気づいた。昔は自分一人であの洞窟にこもっていたというのに彼らが来てから一人じゃない時のあの感覚……とても懐かしい感覚を実に四十億年ぶりに感じることができた。

 

 

「……俺は馬鹿だな。」

 

 

自分を卑下する。いつの間にか計画よりも楽しむことを優先してしまっていたのだ。心に決めたことも一瞬の出来事で崩れ去ってしまった。ビルが一匹の蟻に壊されるかのようにいとも容易く…………

 

 

笑いが止まらない。自分がつまらないと思っていた世界が一気に輝きはじめたのだ。快楽が押し寄せる。常識が一瞬の内に裏返る。手のひらを返すように世界が『希望』に見えてくる。狂喜の笑い声が家の中で響く。笑い終わると滅の言い分を思い返していた。今すぐ伝えるべきか困っている……というよりはどう伝えるべきなのかということを悩んでいる感じだった。絶は悩み、悩みに悩み。ある一つの決断をした。その決断を実行するため、家の玄関のドアノブに手をかけた瞬間、

 

 

『絶様!』

 

「風間か?どうした……?」

 

『く、九時の方角から……ひ、百鬼夜行が!』

 

「なんだと!?チィ……周囲の人間と妖怪の安全性を考慮し、迅速に対応しろ!百鬼夜行自体には俺が行く!」

 

『はっ!』

 

 

絶はドアノブを破壊してまで外に飛び出た。九時の方向の遠くからは膨大な妖力が群れをなしてこちらに向かってきているのが分かる。今まで気付けなかったことにはなんの不思議も持たなかった。絶は己の最高速でそちらへと向かう。

 

 

たどり着いたそこには群れを成す妖怪の数々。

 

 

「どーいう了見だ『ぬらりひょん』!!」

 

 

絶が叫ぶ先には一人の男……後頭部から突き出したような上が白、下が黒というなんとも変わった髪をしており、黒の着物に白い帯で結び、青色の羽織を羽織っている。ぬらりひょんと呼ばれた男は豪快に笑いだし、絶の殺気もものともせず、話を切り出す。

 

 

「カッカッカ!そう騒ぐではない絶よ。儂らはお主に頼みごとがあってきたんじゃよ。」

 

「頼みごとだと……?(こいつ……何を考えている?)」

 

「そうじゃ、儂らをお主の娘の話を聞いたのじゃ。」

 

「紫がどうかしたのか……」

 

「そうそう!紫とな。そのお主の娘が夢の世界を作っておると聞いたじゃが、儂らをそこに住まわせてくれんかのう?」

 

「………………は?」

 

 

あまりの出来事に絶は口を開けたまま硬直してしまう。

 

 

「なんじゃ?定員オーバーというやつかの?」

 

「い、いや……そういうわけじゃないが、お前ほどの奴がどうして……?」

 

「そんなことを言えば鬼もあの風見 幽香もおるではないか。」

 

「それは……そうだが……(何も考えてない訳じゃないだろう……本当にのらりくらりと……掴み所のない奴だ)」

 

「お主の『計画』も手伝ってやったではないかー。」

 

「気楽に言うな!気楽に……ったく……お前らは数が多すぎるから一屋敷建てることになるんだぞ。敷地は……適当に決めとけ。」

 

 

「カッカッカ!そういうところがお主の優しいところじゃよ。」

 

 

 

ぬらりひょんがまた豪快に笑うと突如、西の方角から多大な力が衝撃波のように風が吹く。まだ台風の季節というわけではあるまいし、何か嫌な予感を感じる。絶は途端に運命の子三人のことが心配になった。

 

 

(なんだこの感じ?……京が荒れているのか……紫、漣、妃香梨が危ない。俺が行くしか……いや!何を考えているんだ俺は……!これも修行の一環とすればあいつらも本望だろう。)

 

 

絶はぬらりひょんにしつこく絡まれているが、それを無視して考え事をする。

 

 

(……もう……1年もないか。出来て……10ヶ月。)




次回「狂異の陰陽師」
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