漣はおんぶしているルーミアに気をかけてながら全速力で森の中を駆け抜けている。背中にいるルーミアはさっきの泣き顔はどこへやら、この状況下で楽しんでいる。幸せそうな顔をしてくれるのは嬉しいことなのだが、少しは緊張感を持って欲しいものだ。しばらく走っていると目の前に陰陽師が現れる。あっちも走って追いかけてきたようで息を切らしている。
「はあ……はあ……れ、漣さん。その方は……?」
「怪我人だ。俺と妖怪との戦いに巻き込まれた。」
「……では、私が手当します。こう見えても人の治療をよくやってましたので……」
漣はそう言われてルーミアを背中から降ろして寝かせる。ルーミアも寝ているフリをして、さっきルーミアが勢い余って腹に作られた傷を見せる。陰陽師は包帯やらなんやらをどこに隠し持っていたのか分からないがいつの間にか救急箱を取り出していた。
陰陽師は漣には見えないように傷口の具合を見るふりをして小型のナイフを取り出し、腹を切ろうとする。だが、突如として感じた後ろからの殺気のせいで殺しそこねてしまう。
漣にも捉えることのできない速度で漣とルーミアから離れる陰陽師。すぐさまルーミアは立ち上がり、漣の後ろに移動する。漣は霊剣を持ち、矛先を陰陽師へと向ける。
陰陽師は落ち着いた様子で話かける。
「漣さん……その方が妖怪だということはわかっていますよね?」
「何を当たり前のことを……」
「何故ですか?妖怪とは私たち人間を喰らい生きていく非道な生き物です。そんなものを助けたところでその方は言わずと知れた『人喰い妖怪』の『
「……お前なんかには一生分からないだろうな。陰陽師……」
「知る必要もありません。私はその妖怪を消します。どいてください。」
「仕事以上に感情移入が強すぎるな陰陽師。妃香梨も到着したぞ。」
陰陽師が後ろをちらっと見るとそこには険しい顔をした妃香梨がザッザッと地面の土をしっかりと踏みしめこちらへと近づく。
紫side
紫は一人、団子屋で団子をほおばっていた。団子屋の女店員も嬉しそうに紫を見ながら次々と団子のおかわりを紫の前の机の上においてくる。目を輝かせながら団子の串を一本とって一つ口の中へ入れる。頬を支えるように手を頬に当て、幸せそうに噛む。そして団子を飲み込むと思わず空を見上げる。
「……荒れるかしら。」
空を見ればわかる妖力の強さからして京の妖怪たちが一箇所に群がっていることが分かる。陰陽師が言っていた『異変』なのだろうか……それならば漣と妃香梨が心配だ。そう思えば行動するのは早い。団子屋から出て、都を離れる。
漣と妃香梨が行った。森に向かって歩くと行き先を塞ぐように大量の妖怪が群がっている。わかっていたことだが、量は凄まじいものだ。
「ヒッヒッヒッ!中々上玉なのが来たぞぉ!」
いやらしい目で値踏みするかのように舌をだし、下品に涎を垂らす妖怪たち。流石に紫もそういう好意は受け付けていない。そもそも紫が受け付ける好意は絶のものだけなので気持ち悪いという感情しか出てこないのだが。
「「「ガガガガアアアア!」」」
するとさっきの気持ち悪い妖怪たちは地上から、火車が空中から襲いかかってくる。
やれやれと紫は肩を落としながらため息をつく。
不敵な笑いが起こると紫は右手を静かに握り締める。
バッ!!
妖怪たちが見ている場所に紫はすでにいなかった。紫はもう妖怪たちの後ろにいた。右手には……
霊剣を持って……
「遅すぎる……無音―
妖怪たちは全員上半身と下半身が分かれていた。皆何を言うこともなく、死に絶える。
紫はそれを見て一言。
「全く……私を誰の娘だと心得ているのかしら?」
紫かっこいい。
次回「浄死期」