「てめーは誰だ!陰陽師ィィッッ!!」
漣はさっきの陰陽師の速度に負けないぐらいの速度で陰陽師の懐へと潜り込み、霊剣を振り上げるように斬りつけるが、白く薄くなんとか肉眼で見えるぐらいの結界が張られていて、陰陽師の喉元にまでは届かず、跳ね返されてしまう。
「ククク……私が……誰か……ですか。」
「そうだ……ただの陰陽師ってのがお前を基準にしちゃ駄目だろうが。」
「ほぉ……私のご存知で?」
「だから聞いてんだよ!」
漣は連続で斬りつけるが、結界の内側にいる陰陽師は涼しい顔で漣を見ている。すると急に結界の波のように揺れ動き、大量の針のような形に変形する。
「…………っ!」
ぽたぽたと漣の頬から血が流れる。横目で見ればすぐそこに針が頬の肉を突き刺している。足も何箇所か刺されて見事に神経が切れている。漣が行動しようと手を動かそうとした瞬間に結界の一部が槍のように変形し、結界から孤立し、更に増殖までしてこの場にいる陰陽師以外の人物にめがけて飛んでくる。
「妃香梨!」
咄嗟に漣は妃香梨の心配をするが、妃香梨は既に結界を張って槍状の結界を見事にガードしている。そしてちらっとルーミアを見れば狂気の笑みで闇を纏った素手で結界を相殺している。流石と感心していると漣の方へも槍が飛んでくる。
漣は後ろへと飛び、突き刺さっていた針を抜いて目の前にまで来ていた槍を、
「
霊剣の応用で霊力を盾を作り出し、槍を弾く。それを見て陰陽師は流石と小さな声でいい、不敵な笑みを浮かべながらこういう。
「申し遅れました。私、『
妃香梨は驚きのあまりしばしの間硬直してしまっていた。あの安倍晴明だと……と。だが、今目の前にいる人物は女性だ。もし彼女が本物なのらば歴史上の安倍晴明は一体なんなのかとか、もしかすればこの女性の方が嘘をついているのかもしれないなどと思考するが、
「本物でも偽物でもお前がその名を語るというのなら俺たちの敵だ。」
遠くにいる漣がずばっと切り捨てるようにそう言う。確かにこの女は妃香梨の結界で作った慧音が偽物であることを知っていて無視してルーミアを殺そうとしたのだ。敵であることに変わりはない。
妃香梨は身構える。だが、晴明はこちらに注意を向けているようだが、漣を短気な性格だと思い込んでいるのか、漣から目を離さない。妃香梨はその場から助走なしで10m以上飛ぶ。
「二重に重なる旋律よ、」
空中で詠唱を始める妃香梨。それに気づいた晴明は結界を変化させて迎撃しようとするが、真上を見てしまったせいで漣の攻撃に気づき、なんとか対処するまでが限界であった。
「七つの金合わせし楽奏よ。」
妃香梨の周りに突如として現れるミミズ文字のような字がかき綴られた魔法陣。
「全も一も統一せんとする無の理よ。」
妃香梨の体内から現れる黄金色の球体。それは半透明だが、高速で回転している。
「今こそ我の問いかけに答え、混濁とした煉獄を一興を持ちいて全てを晴らせ!」
妃香梨の問いかけに答えるかのように球体は輝き出す。まるでそれは一つの太陽のような美しいものであった。
「禍々しい暗黒を一興消して光を灯せ!見ろ!『天上結界』!」
結界は妃香梨の手のひらに収まるほどに凝縮され、それを晴明の結界にぶつける。衝突の寸前、漣は後ろへとさっと飛びながら両手を普通ではしない形にし、霊力を注ぎ込む。
(駿……お前の技借りるぜ!)
「紅黒銃!」
霊力は赤くなり、そして黒色が混じったそのまんま赤黒い銃が二丁生成される。この時代ともあって晴明はそれがどういうものか理解していないようだが、銃口や、引き金を見て瞬時に吹き矢と同じ原理ものだということを理解し、今度動いたのは結界ではなく、彼女自身であった。
紅黒銃から放たれた血塗れのような色をした弾丸は晴明の頬を掠め取り、もう一発はすんでのところで結界に弾き返される。漣は悔しそうに歯ぎしりをしながら霊剣を口にくわえ、二丁の紅黒銃を構える。
妃香梨は天上結界を放った直後に結界が尖鋭になって襲いかかってきたのだが、空中で体を捻りなんとか躱す。だが、躱しきれず足を少し傷つけられる。晴明は漣に紅黒銃を突きつけられた時は脂汗を浮かべていたが、一瞬のうちに形勢を逆転したかのように不敵な笑みを浮かべる。
次回「吼悪堕塢」