突如として現れた妹紅により、勝利の風が吹き始めた漣たち。妃香梨の結界の時間制限が終了し、三人は一旦離れる。ザッという音とともに周囲の草ばらが揺らめく。その上の木々を見るとその上に晴明が乗っているのが分かる。痛そうに腰を辺りに手をやってさすっている。妹紅はそれを見て一歩も動かなかった。昔なら弱っている相手に対し、特攻しかけそうなものだったが……
「……漣兄。」
「ん?」
「私ね?家に帰ったんだ……」
「!……でも……お前の」
「うん。家族も皆……死んぢゃったの……周りにいた知り合いはいなくなってた。後悔はしたけど……でも、泣かなかった。」
「……そうか。そうだな。お前の生きる道は辛くても生きなければならないからな。」
「…………」
二人の会話を黙って聞いていた晴明はどこか遠い目になる。自分にも思い当たる節があるのだろう……少しだけ同情を向ける。だが、敵は敵と一瞬でその目を引っ込める。
「やってくれましたね……」
「来るか……!」
「お返しです!」
赤色の結界の次は黒色の結界……より禍々しさが増しており、一筋縄ではいかないことは明白……だが、果敢にも漣と妹紅は立ち向かい、走り出した。不死コンビである。ゾンビではない。
黒の結界はさっきよりも流動体へと変化し、液体のように波みたくゆらゆらと揺れ動きながら漣に向かって飛んでくる。漣は霊剣を地面に突き刺し、それを踏み台にして液体状の結界を避けるが、生命感知するかのように逆巻き、回転する槍のようになって飛びかかる。
「霊圧!」
漣は咄嗟に周囲に霊圧を作り出し、結界をガードして、更に霊圧さえも飛び越え霊剣を上に上げ、構える。
「…………っ!」
晴明は当然追わず、結界だけが追いかけているのだが、晴明は今ピンチであった。漣に結界をすり抜け直接攻撃しようとしてきている。更には燃えている妹紅。闇を使い妖怪どもを殲滅し終わったルーミア。そして……
「天上結界!」
「ぐっ!」
一番厄介なのは同じ結界を扱える妃香梨。攻撃を加えようにもさっきの拒絶結界(詠唱破棄、効果は一瞬)に阻まれ、困難である。しかも他の二人もそれぞれ連携する動きこそ見られないものの妃香梨が結界で守っているため、じょじょに押されてしまっている。
だが、晴明も負けてはいなかった。新たに結界が生み出され、連携を崩していく。
「っ!?」
妃香梨は目を疑う。さっきまで晴明を必死に守ってきた結界が突如として晴明の頭上へと移動し、大量の剣となってまるで迎え撃つかのように静止する。濁流のような濁った色の結界は急に上空へと飛び立つ。咄嗟に妃香梨も妹紅もルーミアも上を見上げる。
そこにいたのは……
「無音ぉ……っ!!」
空高くから漣が霊剣を居合の状態までもっていっていた。
「
燃えるように赤くなった霊剣が刀身を顕にしたとき、漣は空中にいるとは思えないほどの身体能力で黒剣を躱す。頭を向かい風に委ね、少し傾ければ剣の一本を1mmだけ回避し、その次の剣たちはなんと噛み砕いた。一本噛み砕いただけでその反動は大きかったらしく、他の剣たちも弾き飛んでいた。
「なんだとっ!?だが……」
漣への攻撃を無力化された剣たちは再び液体に変わり、晴明の元に集まろうとする。だが、その瞬間であった。
「森羅万象全てを消し去り、混沌を照らし、」
妃香梨の詠唱が始まる。
「黒くまた異なる終焉を迎え、」
「形無くして闇を払い、光を覆い、革命の旗を取りし若人よ。」
「付き従えるは命の如く。時狭間に閂を開けよ。季節に四季なく、死期あり。」
夢幻に過ぎない虚無の数の希望よ。絶望を来たし、力に溺れ叛旗翻せ!
止めだ!『夢現結界』!」
今度は天上結界とは正反対に黒い結界であった。まるで晴明の結界に呼応しているかのように邪な色で輝いていた。その結界は一瞬の内に広範囲に広がって晴明の結界とぶつかる。すると晴明は目を大きく開け、驚く。さっきまでいとも簡単に扱っていた結界が突如として重くなったかのように動きが鈍る。そうしているうちに漣の攻撃が来る。漣の攻撃を対処したとしても妃香梨、ルーミア、妹紅の次の攻撃は耐えられない。もうここまでかと思われた……次の瞬間であった。
妹紅の炎をまとった拳、ルーミアが持っている大剣……『ストームブリンガー』、妃香梨の天上結界がエンチャントされている右手が一斉に襲いかかる……ほぼ触れる……そんな時であった。
グシャッッ!!!
彼女たちの攻撃は突如として現れた晴明の部下である妖怪たちが変わり身になって受ける。勿論すぐさま絶命したが、妖怪たちは晴明に顔を向けてニコリと笑っていた……
晴明は涙を流しながら結界を精一杯操り、漣を睨む。
これが最後漣と晴明の一騎打ち……
「無音……
「……これで終わりだ!」
オリキャラは16人でした……(呆)
次回「誓いと褒美」