「晴明………お前。」
漣は倒れた晴明を見ながらその場に腰を下ろし、慈悲のような言葉をかける。晴明は漣を見るやいなや、ため息をつく。自分が敗北したことを悟ったからだ。自分のために死んでいった部下たちに会わせる顔がないと自らをあざ笑う。
「どうせなら……ひと思いに殺してください。」
さっきの覇気はどこへやら……一気に頼りなくなってしまった。いや、これが本当の彼女の姿……安倍晴明の姿なのだ。漣や妃香梨が最初にであったときの晴明のように今の彼女からはあたたかいぬくもりのような優しさを感じた。
妃香梨が口を開く。
「私はひとを殺したことないから無理よ。ほかのみんなは?」
続いてルーミア……
「今さら人を食べても……ねぇ?どうしようもないというか陰陽師なんか食べたら死んじゃうわよ。馬鹿言わないで。」
皮肉のように苦笑いをして言う。それにつられて晴明もふっと笑う。さっきのような不敵な笑みであった。どうやらルーミアの皮肉が骨身に染みて晴明の状況を理解させたようだ。晴明に伝わったのはそれだけだが、実際のところルーミアの瞳には戦って殺してしまった妖怪たちへの罪悪感が見られた。
そして妹紅……
「人を殺すことよりも人を助ける方が心が清らかになる……つまり私の生きがいなんだすまないが死ぬのなら自分でやってくれ。殺すよりも見殺しにするのは自分で言うのはなんだが、得意なんでね……」
と自分の過去を悔やむように言う。そういった妹紅の瞳にも罪悪感が映る。泣く、泣かないの問題ではなく、ただ悔しいのだ。父親はあの輝夜に見入ってしまい、母と妹紅を捨ててしまったどうしようもない父親ではあったが、どれだけ腐り堕ちても妹紅の実の父親なのに変わりはなかった。だからこそもう少し長い時間を『家族で』過ごしたかったのだろう……
その気持ちは晴明も十分に理解できた。
晴明は一人の強い力を持った人間と古代から存在する最強種の妖怪……化け狐の子供であった。そのため、生まれながら両者としての才能を持ち、妖怪も人間も支配できるような力をもっていた。だが、その力を良き方へ……つまりは人間のため、妖怪のために使い、両種を共存させる世界を創ろうとしたのだ。
だが、そのために陰陽師として名を馳せ、天皇にさえ認められるまでの実力を身につけたときのことであった。修行が終わり、家に帰ればいつもいるはずの母がいない。
まさかと思い、天皇のもとへと急いだ。やつは老い先短いというのにも関わらずに不老不死を求めている存在であった。
そのまさかであった。あの
恐らくではあるが、
そのため、父を殺した妖怪を母を殺した人間を憎んだ。
だが、今重要なのは、漣の言葉だ。
「人間はどうしようもない生き物だ……親から子へと受け継がれる中に他人が関与する場所なんてあるわけないというのに人は他人を嫌う。理由は単純、自分とは全然似てないからだ。無論、みんながみんなそういう観点を持っているとは限らないがな。」
漣は少し間を置いて再び話す。
「晴明の場合はそういう心を入れ替えさせてくれる人との出会いがなかった……」
「出会いがなかった……ですか。」
晴明は言われたことを繰り返す。
「でもっ。」
「?」
「お前のその想い……人間と妖怪が憎いのに、また人間と妖怪のことを愛しているお前の想いは部下の心にしっかり伝わっていたんじゃないか?」
「っ!」
「なあ晴明、誰かを憎むことは罪であったとしても誰かを愛することは罪じゃないはずだ。憎しみを終わらせろなんて言わない。ただ過去ばかり見るのもやめないか?」
「……わ、私は……許されるのですかっ?」
「誰かを憎む自分がいやで幻想郷を希望だと思ったんじゃないか?だったらいいじゃないか。希望を誰かに預けても……少なくとも俺は必ずお前の期待に答えてみせるさ。」
漣が言い終わると晴明は起き上がって手を差し出していた。漣はその手をぎゅっと握り、何も言わずに晴明の目の前からいなくなっていた。
ルーミアは自由に生きると言いながら漣についていくことを決めたらしい。妹紅はまだ少し旅を続けたいといって漣たちから離れていった。そのあと紫が藍を連れて戻ってきた。そしてゆっくりと時間をかけて帰っていった。
数日後……
「遅かったなお前ら。」
絶が背を伸ばしながらそういう。
久しぶりに見たためかどうも違和感を感じる。顔色が悪いように見える。漣たち三人がいなくなったことにより、少しは息抜きできたと思ったのだろうが、むしろ逆にいつもの覇気が消えていっている気がした。だが、そんな気を見せないように笑顔を振り向く。
「さあ、お前たち京へわざわざ行ったのだからいい話があるのだろう?聞かせておくれよ……『息子たち』よ。」
漣たちは気付かなかった。絶が今……
次章「激怒する世界編~今世の転生者達~」
次回予告はなしにしといた。