「な、な……」
「ふむ?帰ってきてたのか迅真」
「なんじゃこりゃ!?」
迅真が驚くのも無理はない。なぜならそこにあったのは迅真の何百倍もある鍋がアドバイザーの隠れ家にあったのだから……
だが、アドバイザーは首を傾げ、
「どうした?ただでかいだけの鍋だが……」
いやいや……
「どうもこうもでかすぎだろ!巨大ビルぐらいあるぞ!材料足らねえだろ確実に!」
「ククク……見せかけだよ!」
「見せかけかよ!」
「こんなの使う機会あるわけなかろう……ふつうの鍋がここにある」
アドバイザーが見せたのは一般家庭によく見かけるごく普通の鍋であった。ほっと胸をなでおろす迅真。
「よかった普通だ……入れる材料は普通じゃねえけどな。昆布とワカメ以外……っていうか、本当に使う予定あんのか?昆布とワカメは……」
「……そんなことよりも……」
「おい。置いとくんじゃねえ」
「肉を用意してないだろう?」
「ああ、意味わかんなかったからな」
そう言って、迅真は再びメモ紙の肉の部分を見る。『VS』としか書かれていない。
「つまりだな……これから貴様にはある実験体と戦ってもらう」
「嫌な予感しかしないんですがそれは……」
「そいつがいるのは……ずばり巨大鍋の中だ」
「ん~やっぱりな!」
さっきからおどろおどろしい雰囲気とけたたましい獣特有の叫び声。更にガンガンと鍋を内側から叩きまくっている。
「……で、どんなやつなんだ?」
「ターキーだ」
「は?この時期に?」
「いつ食っても美味いだろうが」
「まぁ、それはそうだが……ターキーで一体どういう実験したんだよ」
「頭を増殖……むしろ移植か、そうやって鳥頭の知能がどうなるかの実験だ」
「なるほど
「いや、それではつまんだろう?なので
「は?」
「だから七七面鳥と書いて、セブンスターキーとな……」
「何その中二病じみたダサい名前……」
「命名者は絶と滅だぞ?」
「あいつらかよ!」
「しかも酒に酔ってた時にだ」
「悪酔いテンションで決めんじゃねえよ!……ん?ていうか絶と滅はこれ知ってんだな。まさか、言い出しっぺはあいつらじゃねえだろうな……」
「我が思いついて、やった。と言っても前々からやりたいと思っていたようだが……」
「絶の意思だ。」
「カレー作んのがか」
「男の絶と漣ばっか料理が出来てしまうというのが一つ。簡単に教えられる料理というのも一つ。最後に……迅真、貴様の問題だ。」
「?」
「そろそろ―――――――――――――だろうと思ってな。まあ、言ってしまえば……―――――というやつだ」
「…………はっ……上等だ」
何を吹き込まれたのか急に眼に炎が灯り、その場から一瞬で巨大鍋に張り付くように飛びつく。鍋の側面に触れ、更にその側面を蹴って鍋の中へとその身を投じる。
「があああぁぁぁ!あっあっああああああああああ!!!」
「おいおい……七七面鳥じゃねぇのかよ……」
やれやれと呆れる迅真が相対したのは七面鳥の化け物……七足す七で十四の頭を持っていると思っていたなんてそんな甘い考え方は見た瞬間に拭い去った。
「二十……四十九?……七七……あ~そういう。妙に納得」
『ククク……因みに捕獲レベル3000ぐらいあるぞ』
「ト○コかよ!」
どこからか聞こえたアドバイザーの声にツッコミをいれる迅真だったが、そんな悠長なことをしているのに腹を立てた……否、腹が空いている七七面鳥の四十九個の頭の内、八個ほどが、迅真に向かって襲ってくる。
「はっ!やっぱり鳥頭じゃなくても戦闘が獣臭ぇ……問題は頭の数だけ脳があることだな。首が何個もある奴は一つ一つ独立している司令塔のようなもの……体を狙うのはかなり難しいな……なら狙う場所は一つ!」
迅真は大きく飛び上がり、どこからともなくダーインスレイブを手にし、こちらに向かってくるいくつもの巨大な嘴を見ながらタイミングを合わせ、振るう。すると、嘴のいくつかはひびが入り、押し返される。とんでもない質量を持っていることに少し顔を歪める迅真だったが、それよりも嘴の硬さに驚く。
「ちぃ……!それにこいつらの体温なのか!?熱すぎる……」
「ギャアアアア!!!ギュルウゥアアァァァ!」
「あー!四十九匹いるから余計うるせえ!さっさと終わらせる!…………っ!?」
迅真がダーインスレイブを強く握り、一気に勝負を決めようとした瞬間、立ち止まる。それは突然の出来事に目を奪われているからだ。
七七面鳥は迅真を完全な敵だと視認したのか、突如体を震わせその場から
消えた。
「どこへ……」
その問いに答えるものはいなかった……ただ迅真は聞くまでもなく答えがすぐに導き出された。
迅真がいた鍋の底は上空から光が遮られたため、真っ暗となる。その原因こそが………七七面鳥であった。迅真ほどの戦闘上級者ですら動きを捉えることができないほどの動きをあの巨体ながらにやってのけたのだ。
「……やっぱト○コだ。化け物すぎる……」
眼を鋭くし、野生(実験体)の生き物を上を向いて睨む迅真。それと同じように四十九個すべての頭が迅真を敵だと判断し、本気で潰そうとしているのだ。
一瞬、ほんの一瞬の出来事であった。
「「「「「「「「ギャッギャアアアァァァァァアアア!!!」」」」」」」
四十九体の口が開き、エネルギーのようなものが一つに収束していく……どうやら一撃で終わらせようとしているらしい。だが、それは……
「行くぞ……一匹で四十九匹分の鶏風情がぁ!」
迅真も一緒であった。
「(今、この瞬間を待っていたんだ!)」
迅真の予想では首一本持っていったところで他の四十八個の頭が生きているため、すぐに復活してしまうということだった。だが、先ほどの嘴でつつくような攻撃では流石に鳥頭ではなくなっているため、四十九本の首がまとめて攻撃することはない。またこちらから攻撃したとしても結果は同じだろう。だから迅真の考えはこうだ。あいつらがまとめてでしか放てない技をくぐり抜け、四十九本の首をまとめて切り落とす!
七七面鳥の光線が放たれる。その瞬間、迅真は鍋の壁を駆け上がるようにして、思いっきり蹴る。丁度、光線の太さのせいでどの首も迅真を視認できていない。迅真はダーインスレイブに全霊力を乗せ、
「あばよ……どんな耐性があったとしても斬れちまえばどうってことはないんだよ!」
振り下ろす。
――――――――数分後――――――――
「はぁ……はぁ……」
「ククク……さっさと中身をかき混ぜろ。そろそろご飯が炊けるぞ」
「ちくしょー……めんどい~」
「回せー!輪廻の輪のようになー!」
「うるせえ!変なテンションで盛り上げんな!後、例えがおかしいだろ!」
――――――――もう数分後――――――――
場所変わって絶たちの家……そこには食卓を囲む漣、妃香梨、紫、アドバイザー、迅真の姿があった。
「へー、迅真はカレーをねぇ……なんか意外だな」
「うっせ」
「でもありがとぉー私まだ勉強中だから助かるわー」
「俺はバイトじゃないんだ」
「フフフ……迅真さん、このたびは本当にありがとうございます。」
「お、おお……」
自分の世界の紫はこのような性格ではないため、弄れない。むしろ絶に育てられたからか、ちょっと自分が弄ばれそうな気がして悪寒が走る。
「ククク……では、迅真が我々のためを想って作ってくれたカレーに感謝を込めて、」
「「「「いただきます」」」」
「……いただきます」
「うん、意外とうまいな……このニンジンとかさ……」
「あ、アア ソウダネ」
「?」
「すごーい!カレーなのに昆布の匂いがする!面白いわねー」
「エエ、ヨロコンデモラエテナニヨリ」
「?」
――――――――食後になって―――――――――
「「「「「ご馳走様でした」」」」」
「いやー美味かったな!」
「本当!また頼みましょ?」
「妃香梨……また迷惑になるわよ」
「ククク……ほれみろ。意外と好評ではないか」
「……本当驚きだよ」
「今度、皆で食べようぜ」
「えー?だって呼んできてくれるの妹紅ちゃんとか文とかルーミアとかでしょ?ヤダ。漣が攻略した女の子ばっかりなんだも~ん」
迅真「ピクッ」
「攻略とか言うな。友人だよ」
「よし、今から漣をカレーの具材に変えてきてやる」
「なら我はお前の世界のルーミアに迅真が他世界のルーミアを襲おうとしていると言って来よう」
「すいません許してくださいそれだけはやめてください」
――――――――二時間後――――――――
小動物たちは皆眠りにつき、妖怪たちも静かになる静寂の時間……月明かりの中に二人はひっそりとした場所で話し合っていた。
「……ではそういうことだな?」
「ああ……『当日』の動きは貴様に今教えたので最後だ。後は……」
「……それが計画……
『この世界を全部消し、幸せになる』………いい計画だな」
この時の迅真の顔は酷く歪んでいた。
文章をちょっとだけ変えてみた。迅真もラスボス説あるね。
次章「計画始動編~紫色の決意~」
次回「阻む者」