file.17 ストライク
「どういうことです、佐藤がやって来るって。部下の救出に来るような質には思えませんが……」
ヒマリが先生を見つめる
「多分、あいつ…飽きてる」
「……?」
「シロコのヘイローと佐藤のIBMの頭部が接触したとき、記憶だけじゃなくて精神状態まで交差したらしいんだ。
一回目の精神状態は冷静と興奮。まるでゲームでもしているみたいに楽しんでいたらしい。
そして二回目のときは冷静ではあったがそこには興奮は微塵もなかったらしい」
「はぁ……まぁ、理解はできませんが…時間が経って飽きたのならそれでいいのでは………捕縛しやすい部下だけ送り込んでくるくらい興味が失せているならなおさら……」
「佐藤が飽きたのは時間が経ったからじゃない……
ヒナと私を倒したからだ…」
「………」
「最強の裏ボスを倒したあとに、そこら辺の中ボスに真剣にはなれない」
「はぁ…」
「佐藤は私を重症で動けないか死んだのかと勘違いしているかもしれない。でもさっき部下を通して私の存在が発覚したら……あいつは確実にやって来る。私という楽しいゲームを遊ぶために」
「……ずいぶん…自惚れているようですが…あなたに興味があるという根拠は……?」
「根拠は……ない…」
「あら…」
「けど確信はある………。それにどっちにしろ予告の日付は過ぎていない。今日の間だけでも守りを固めておく価値はある」
「それは……そうですね。早急に全員の配置をもとに戻していきましょう」
「あぁ、その方向で頼むよ…」
先生が生返事を返す。
「…………………」
ヒマリが拳を握る
「それと!」
「うん…?」
ヒマリの突然の大声に先生がビクッとした
「私達ミレニアムはそこらの中ボスなんかじゃありませんから」
「…あ…それは……ごめん…。変に例えようとして……」
「もっと私たちを期待してくださっていいんですからね?」
「ああ…そうだね……。………………。」
ピコン!
シッテムの箱から通知が鳴る。先生が取り出し画面を見る
「……、」
「どう、なされました?」
「……ヒマリ、みんなの配置を変えてもいいかな?」
「え、まぁ…その意図次第ですが…」
「対亜の書類を読んだ後、一回シャーレの方に戻っていた。そこのクラフトチェンバーを使って生成していた物があるんだ。それがたった今完成した」
「それは…?」
「IBMの生成だ。IBMも物質の一つではある。だから生成できないか試していたんだ」
「…!……まさかそれを佐藤にぶつけるのですか?」
「いや、人形には成型できなかった。形の定まらない霧状のものが大量にあるだけだ」
「え……それをどうやって作戦に組み込むのですか?」
「大量のIBMを使った亜人専用の煙幕を作り出す作戦…。対亜の作戦案に載っていた…。永井って人が考えたらしい。
普通の人間は条件が揃わないとIBMを視認できない。けど亜人はいつでも視認できる。
それを逆に利用して亜人との戦闘中にIBMをばらまいて、亜人の視界だけを奪って圧倒的な有利に持ち込む……それを実行したい」
「なるほど…それはすごい…。……ですが…その大量のIBMはどう運んでくるのです?」
「最近シッテムの箱に新しく追加された転送機能を使う。私にはよく理解できなかったけど、先の脱出シーケンスを応用したものらしい。重量にかなりの制限がかかってるけど煙幕に使うIBMくらいは用意できる」
「へぇ…脱出シーケンス……ですか…」
ヒマリが机に肘をつく
「……?…。まぁとりあえずだ。換気扇のある部屋がいいかな。そこにc&cのみんなを待機させる。そして佐藤が現れたら、ウタハのドローンとかでそこまで誘導する」
「だとすると……10階の食堂がいいですかね?」
「あぁ、そこがいいな」
「早速配置の変更を皆さんに伝えましょうか」
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戦闘態勢の続行と配置変更を全員に伝える
『ふ〜ん…面白えじゃねぇか』
『どっちにしても私達がやることは変わらない…か』
ウタハが椅子にかけ直す
「みんな…急な変更ですまない」
『別にいいけどよ……なんでこの作戦のこと黙ってたんだ?これを使えば佐藤なんてイチコロだろ』
「それは……煙幕用のIBMはさっき完成したばかりでね……。そもそも生成を始めたときはいつ完成するか不明で、今回の作戦に組み込む予定はなかった。あんまり不確定なものを作戦に持ち込みたくなかったんだ」
『ま、変に期待して実行できずに失敗、よりかはマシだね』
チヒロが言う
『ま、それもそうだな。………お〜い03?爆弾の処理は終わったか?』
『はい、処理し終わりました。どうやらこれで柱を破壊してビルごと倒壊を狙ったようですが…………効率が悪いですね。私ならもっと………』
『何言ってんだ……。…ま、終わったんならとりあえず移動するぞ!』
『『了解』』
「あ、そうだ。シロコもそのままc&cについて行ってくれるかい?佐藤を食堂におびき寄せるまでひと悶着あるかもしれない。人数は多いほうがいい』
「ん、わかった」
『ここの護衛はロボたちにやらせるよ。君は行ってくれ』
ウタハが扉の前にドローンとロボを集める
「了解。気を付けて」
先生が扉に手をかける
「それじゃ、私も準備を始めるよ。ユウカ、ヒマリ、トキ。ここを頼んだよ」
『ええ、先生も気をつけてくださいね』
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先生が11階の機械室に入る
「アロナ、ここらへんの制御盤イジれるかな?」
「任せてください、先生!」
アロナが作業を進めていく
「終わりました!」
「よし、よくやった………。チヒロ、タイミングになったらファンを回してくれ」
『了解……あ、ハッキングとかもまだあり得るから、ヒマリの方からも操作できるようにしておくね』
『わかりました。』
「よし……あとは佐藤が来るかどうか…………」
先生がシッテムの箱を握りしめる
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しばらく時間が経過した。もう昼が過ぎてしばらくたった。
「おつかれ、次トイレ行く人いる?」
アスナが食堂に帰ってくる
「一旦休憩は一巡したし……しばらくは全員で待機できるな……」
ネルがメンバーを目視で確認する
「……佐藤は本当に来るのかな?」
アスナが座り込む
「さぁな、ただ今日はまだ犯行予告の日付だ。最後まで気は抜けねぇ。
それに佐藤が来なければ来ないでハッピーエンドだろ……少し物足りないかもだが…」
「それもそうですね……」
アカネが麻酔銃の点検しながら言う
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セキュリティルーム内
「ウタハ、なにか異常はある?」
「いや、目視できる部分ではなにも…………
ふぅ……………少し、座りすぎたな……」
ウタハが立ち上がりストレッチを始める
「チーちゃんも……少し休んだらどうかな?監視くらいなら私でもできるさ」
「そうしてもらおうかな……少しだけ休むよ……」
チヒロが立ち上がり、スマホを開く
「………………は?」
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機械室
「先生、少し気を張りすぎですよ」
アロナが声を掛ける
「いや、IBMの霧は作戦の要だ。気を抜いてる暇はない」
「ですが………」
『みんな!ニュースを見て!』
チヒロから無線が入ってくる
「…………ニュース……?」
先生がスマホを開いてニュースを見る
「!?」
『【速報】カイザー軍事基地襲撃、佐藤の仕業か?』
「……これか…?カイザーのやつか?」
『そうそれ!』
先生がニュースを開く
『今日の夕方、カイザーの軍事基地が襲撃に遭いました。周辺の目撃証言などから佐藤の犯行と見られています。
ミレニアムへの襲撃を宣言した佐藤がなぜ基地にいるのか、真相は明らかとなっていません。
またこの基地にはカイザー社が新たに開発したステルス戦闘機が保管されているとの情報もあり、近隣には不安が広がっています。』
「カイザーの……基地…?…なんで……?」
『わからない……犯行予告はブラフだった……とか…?』
『ん……佐藤に限ってそれはない……と思う』
シロコが交差した記憶をたどりながら考える
『じゃあなんでここじゃなくて、カイザーなんかを…』
『なにかここを攻めるための足がかりがあるのでしょうか………』
ヒマリが思考を巡らせる
(佐藤の目的が変わらずにここだとする……ならば軍事基地を襲った理由はなんだ……?………攻めるための足がかり……まさか…戦闘機…!でもそれならミレニアムのレーダーに引っかかって撃ち落される………。いくらステルスだからと言ってもミレニアムの技術なら……………………………)
「まさか…………」
先生の顔が青ざめる
「スプリンクラーを起動するんだ!早く!!!」
『え?わかった…』
ビル内に水が降り注ぎだす
(エデン条約のときの……あのミサイルのステルス技術が………もしカイザーに渡っているなら…………ありえなくない……ゲマトリアと繋がっている時期はあったんだ………)
「全員衝撃に備えろ!!!佐藤が戦闘機を______」
「やっほー」
ビル全体に衝撃が伝わる。
リセット。