file.30 DOOM
「みんな、集まってくれてありがとう。
さっそく話し合いを始めようか」
ティーパーティーのテラス。セイアが起立し、そこにいる皆に声をかけた。
着席しているのはナギサ、ハスミ、ミネ、サクラコ、ハナコ
「わかっているとは思うが、主に佐藤の件に関して話していく」
各々が頷いたり、軽く返事を返した
「あ、ミカさんからは欠席すると。そう連絡がありました」
ナギサが皆に伝えると、サクラコが口を開いた
「あら、これほどまでに重要な話し合いを欠席するとは………何かよっぽどの事情があるのでしょうか…」
「……」
サクラコの発言に場に緊張が走り、セイアが考えを巡らせた
(……シスターフッドはミカを疑っている…?……正直、私にもミカが欠席している理由はわからない…。どう彼女の立場を守ろうか……、)
「……か、彼女は自身の立場を考慮し、あえて欠席したのであろう。特に気にする必要はないさ」
「そうですか……彼女の体調になにかあったのではと思いまして……なにもないなら良かったです」
サクラコが微笑むが場の空気は凍りついたままであった。
「それより早く本題に入るべきです。彼の最後の標的になっているのはトリニティです。時間はありませんよ」
ミネが咳払いをしながら促す。セイアがそれを受けて話し始めた
「そうだな、わかった。ではまず、結論から言おう。
佐藤はトリニティに来ない」
「「……………」」
静寂が広がる。
「………な、えっと、なにか根拠があるのですか?セイア様」
ハスミが眉をひそめながら問う
「私の〝勘〟だよ。」
「…勘…?…………ああ…」
ハスミが一瞬だけ怪訝な表情をしたが、すぐに納得した様子を見せる。
「先生からモモトークで聞かれたんだ。私の勘で佐藤のテロの気配を感じ取れないかと。
結果的にここトリニティでは佐藤の脅威を感じられなかった。私の〝勘〟が正しいならば、ここに佐藤は来ないだろうというのが結論だ。これは先生にも伝えてある」
「なるほど。セイア様の勘の正確さは先の決戦でも証明されています。確かな判断材料として扱って構わないでしょう」
ハスミが頷く
「正確に言えば、トリニティではないどこかで起こる予感がした。それもとてつもなく尋常ではない気配だ」
セイアが続ける
「テロ行為自体は行われると?」
ハナコが質問する
「ああ、そうだ。だが日時も場所もこれ以上のことは詳しくわからない。しかし予感がするということは近いうちに始まるのだろう」
ナギサが机の上で指を組む。
「では、我々トリニティが取るべき対応としては、外部への支援に注力する、ということでしょうか」
「…そうなるな」
セイアが椅子にもたれかかる
ナギサの発言にミネが挙手をする
「トリニティの防衛を放棄なさるつもりですか?」
ハスミも続く
「そうです。外部の支援をするとしても、トリニティでも最大限の警戒を敷くべきです。
予想外は起こり得るですから。例えば佐藤に感化された暴徒がトリニティに襲撃をかけたりなど…」
「もちろん、ここの警戒を怠るつもりはないさ。外部の支援も、防衛も、どちらも手を抜くつもりはない」
セイアの発言に2人は納得したように頷く。
「両手に花、聞こえはいいですが二股ではどちらかとのセックスが淡白になりますよ」
「「…………!?」」
ハナコの言葉に皆が固まる。
「ハ、ハナコさん…?このような場でそのような発言は…」
サクラコがハナコを止めようとするそれを無視してハナコが発言を続けた
「トリニティの防衛、外部への支援、やるならばどちらかに絞りましょう」
「いや、だからそれは…」
セイアが腕を組む
「どちらかに絞らなければ、どちらも不十分なまま佐藤に対抗できずに終わるでしょう。
これまで連邦生徒会の特殊部隊が、ゲヘナの兵士が、ミレニアムの精鋭が、それらに先生の指揮があったのにも関わらず、敗北を喫してきました。半端な戦力で挑んで勝てる相手ではありません」
「……………」
セイアが口を閉じる
「な、ならばどうすれば…」
ナギサが頭を手で押さえて尋ねる
「私に任せてよ」
ミカが後ろから現れ、ナギサの肩に手をかける。
「…!…ミカさん?!今までどこに?」
「う〜ん…ちょっとネズミが付き纏ってて…追い払うのに苦労しちゃった」
ハナコが微笑みながらミカの方を見る
「ああ、追い払えたんですね、ミカさん」
「うん、ありがとうね、ハナコちゃん。アドバイス通りに言ったら逃げてってたよ」
「…?」
ナギサの困惑を余所に、ミカが空いている椅子に座る。
「それじゃ。続きだけど、トリニティの外部への支援は私に任せてほしいかな。みんなには学校の防衛に専念してほしい」
「君は…いったい…どういうつもりだ…ミカ?
もしかして君が単独で佐藤とやり合うつもりかい?」
セイアが目を細めてミカを睨む
「違う違う。ハナコちゃん、あれ出せる?」
「ええ」
ハナコが何枚かの紙を机の上に置いていく。
それを不思議そうにナギサが見つめる。
「というか………あなたたち、いつの間にか仲良くなっていたんですね…」
「まぁ、守りたいものが同じでしたから」
ハナコが微笑みを保ちながら答える
「ま、それよりさ、これ見てよ。私が作った部隊に関する資料だよ」
それぞれが資料を手に取る。
「こんなものいつの間に…」
「ふむ…装備からして…対亜人用といった感じでしょうか……」
「5人…?まぁ、多くはないな…」
皆が資料に目を通していると
「…!ちょっと…!これは!」
ミネが持っていた資料を机に叩きつけ
「これ、隊員…!……」
ミカの肩を掴む。
「………ん?」
ミカが肩にかかった手を払いのける
「…これは…どういうつもりです…?ミカ様!」
ミネが見ていた資料を皆が読み始め、
読んだ者から顔が青ざめていった
「不味かった?」
ミカが薄ら笑いを浮かべながらミネを睨む
「まずいも何も、これが世間にバレればあなたは失脚どころでは済ませんよ…!」
「私はもう象徴だけの権力だよ?失脚なんて今さら気にしない。それに気にするべきは私じゃなくてあなたたちだと思うけどな…?」
「どういうことだ、ミカ…!」
セイアの声が張り上がる
ハナコが散らばった資料をまとめて整える
「ミカさんの言う通りです。ここにいるあなた方はトリニティの政治の中枢も中枢。この極秘の部隊が世間に露呈したときに困るのはあなた方も同じでは?」
「……!」
全員が固まる。
「そういうわけだからさ。申し訳ないけど認めてもらうよ。別に放っておけばいいわけだよ?それに手伝ってくれるんだったら歓迎するしさ!」
ミカの発言に皆が固まる
「………はぁ、わかったよ。あくまで我々はその部隊に対しては静観だ。協力は何もしない。ミカ、君一人でやってくれ」
セイアが手で額を抑える。ため息も漏れだしていた
他の面々も渋々納得したような態度をとっていた。ただナギサは信じられないといった顔でミカを見上げる
「……ミカさん、どうして、こんなことを……」
「ん?…しょうがないよ、だって先生の頼みなんだもん」
ミカがその場をあとにした。ハナコも立ち上がりそれに続く。
残された面々は席にくぎ付けだった