およそ2年前
アビドス砂漠から少し離れた場所。そこにある一つの学校があった。名前はサハラ科学技術高等学校。主に化学、工業、電子技術などに力を入れている中規模の学校だ。
砂漠から離れているとはいえ、近年は砂漠化に飲まれつつあり、生徒数は年々減っていた
「ふぅ……部活とかどうしようかな」
その学校に新入生として入ってきたのが田中ヨウコ
「とりあえず、ゲーム同好会とかに行ってみるか…そんなに根詰めなくてよさそうだし」
ヨウコは部活紹介のパンフレットを頼りに、ゲーム同好会の部室を訪ねた
「失礼しまーす!………あれ?」
「あ…」
部室には1人の生徒がいるだけであった。しかもその子は見る限り、先輩には見えなかった
「もしかして、あなたも1年生?」
「あ、はい。そうです。ゲーム同好会に入ってみたくて……でも何故か人がいないみたいで……」
「ええ?そんな事ある?活動中って書いてあるのに?」
「ええ、そのはずなんですが………
あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。
私は高橋マスミって言います」
「おう、私は田中ヨウコ。よろしく、マスミ」
高橋 マスミ。オドオドとしたこの生徒。後に副リーダーと呼ばれ、ヨウコと共に佐藤に従うことになる生徒だ。
「なんか案内みたいなのもないの?」
ヨウコが部屋に入ってキョロキョロと周りを見渡す
「さあ?私も今さっきこの部室に着いたばっかりなので……」
「ん?これは…」
ヨウコが机の上に置かれた置き手紙のようなものを見つける。
そこにはこう書かれていた
『ゲーム同好会 前会長より
自宅が砂に埋もれた。もうこの砂漠に住むことはできない。よって急遽、転校することになってしまった。ここまで耐えてきたが、これでこの同好会の会員は0名になってしまう。先輩から受け継いだこの同好会がつぶれてしまうのは惜しい。
だからこれを読んだ新一年生に伝えたい。
部の継続と部室の確保は学校側に伝えてある。置いてあるゲーム機やパソコンも自由に使っていい。
どうか、どうかこの思い出の場所を引き継いでくれないだろうか?
ささやかな願いだ。自由にやってくれて構わない。
この部室で私たちがそうしたように、青春が紡がれていってほしいのだ』
「…………だってさ……」
「砂漠化…最近またやたらとひどくなってますもんね……。」
「そうだね…。てかどうする?私たちで同好会を運営するのこれ?」
「せ、先輩もなしに……会の運営…ですか?」
しばらく黙る二人
「ま、面白そうじゃん、やってやろう。私が会長やるよ」
ヨウコが軽く言った
「か、会長…いいですね。じゃあ私は副会長で…」
「いいね〜。1年から会長、副会長になれることなんてなかなかないでしょ。楽しんでこう!」
「そうですね。楽しんでいきましょう…!」
こうして二人は出会い、ゲーム同好会として活動を始めた。ヨウコは会長、マスミは副会長として
学校では電子技術を主に学んだ。ゲームの攻略、プロングラミング、ゲーム制作、砂のかき出し。
色々とやった。
そして何より、大いに楽しんだ
それから1年と数カ月………
連邦生徒会長が失踪する数日前
「マスミ……そっちの砂かき終わった…?」
「いえ………外に出す砂の量の、倍の量が校舎に入ってきて…………終わるどころか仕事が増える始末です……」
「私もだよ………」
「単純に人手が足りませんね…」
「なんせ生徒は私たちだけだからね……はは」
「みんな、転校しちゃいましたからね」
サハラ高校に残ったのはヨウコとマスミだけ。最新の電子機器も高温下では動作させるのも困難になり、学校としてのまともな活動は行われなくなっていった。今では形骸化した校舎が残るのみだった。
「マスミは、転校とか考えてる?」
「さあ?分からないです。けどとにかく会長と一緒にいたいです」
「そう……じゃあしばらく砂かきはやってもらうよ。私はまだこの学校に愛想が尽きてないからね」
「はい、頑張ります」
数日後
〜廃校のお知らせ〜
ペラ一枚の紙が二人に配られた
「……………」
「……………」
簡潔なその内容にただ立ち尽くすしかなかった。
「………速やかな転校を推奨する、だってさ」
「廃校の期日となる二週間以内に学生証は失効する………つまり、それまでに新しい学校を見つけなきゃならないってことですね………むちゃくちゃです……」
二人で大きくため息をつく
「ま、しょうがないだろ。原因は自然災害なんだし。それより新しい学校探そう」
「ずいぶんとあっさりしてますね……」
「もう砂かきをしなくて済むんだ。最高じゃん?」
「はは…それもそうですね」
「それに、お前と居られるんなら、私は何でもいいよ」
「ふふ、私もです」
二人は拳を突き合わせた。
「にしても新しい学校はどこがいいですかね?」
「ミレニアムなんてどうよ?この学校と同じようなことやってるらしいし」
「ミレニアム…!三大学園で、また都会ですね。色々とお金がかかりそうな……」
「なら二人で同じところ住もうよ。そうすれば色々と安くなる」
「いいですね!それ!」
「じゃ、とりあえずミレニアムに決定ってことで〜…レッツゴー!」
二人は転校の手続きをしに、窓口に向かった
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転校手続き 窓口
「ですから…現在システムが停止してまして…」
「はあ!?なんで!?」
「なんでと言われましても………なんでもキヴォトスのあらゆるシステムが機能していないようでして……」
職員に怒鳴りつけるヨウコ
「連邦生徒会長の……失踪……?!」
マスミがスマホのニュースを見て声を漏らす
「え、何?」
ヨウコがスマホを覗く
「これ…」
連邦生徒会長の失踪。キヴォトスのさまざまなところで混乱が起きている。彼女の権限で動いていた仕組みが機能不全になっているようだ
「え、は?は?……これ……いつ治るの……」
ヨウコの指が震える
「さぁ…?……連邦生徒会長が帰ってきて……そこから色々な復旧を行って………それから……」
「それって………………
学校が廃校になるまでに間に合うの………?」
「………………」
2人の顔が青ざめる
とりあえず二人は職員に自分たちの学校が廃校になる旨を話した
すると
「なるほど………事情は、よくわかりました。システムが復旧次第、あなた方の手続きは最優先で行いますので…………まぁ、その、なんというか……」
職員も気まずそうだった
「………ありがとう……」
「色々と……すみません」
二人もそうとしか言えなかった。
ただ祈るしかなかった
2週間後
「申し訳ありません……………力及ばずで…………」
職員が頭を深々と下げる
「……いえ………あなたが悪いわけじゃないから…………」
「…………………」
二人は学生としての身分を失った。
「私たち……学校……どうなるの……」
「ははは…終わりです…終わりですよ…ははは」
マスミはおかしくなったように笑う
「はあ……おわり…か…」
二人はトボトボとその場をあとにした
砂に埋もれ、廃校となった母校。
2人が使っていた部室は埋もれ、砂まみれだ。使っていた機材を引っ張り出す。ほとんどは壊れて機能しなくなっていた。
「クソが…………」
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現在 シャーレのオフィス
「なるほどね………それで君たちは行き場を失ったと…………」
先生が額に手を当てて少しため息をつく
「うん、言うのもなんだけど、なんていうか、不運だった。」
ヨウコはあっけらかんと言う
「傲慢かもしれないけど……助けられなくてごめんね…。」
「たしかに……あの時にシャーレがあれば、もう少し違ってたかも……はは」
「………」
先生はその言葉に黙るしかなかった。
「………それで、その後は?」
先生は口を開き、質問を再開する
「その後はまともなバイトにも就けなかったから、マスミとサイバーヘルメット団を結成して、ハッキングとかで金を盗んで食いつないでた」
「ハッキングの技術はどこで?」
「プログラミングの基礎はわかってたから、勘で。最初は下手だったけど、死ぬか失敗するかの状況で勝手にうまくなった」
「順調だったの?」
「全然。食うものには困ってたし、
最後の方なんか普通にバレて、やばい勢力に追い回されてた。
それで、逃げて、
逃げて、
逃げたその先で
佐藤に出会った」
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佐藤のアジト
「副リーダーさん、メッセージの方は?」
「送りましたよ。いくつか反応も返ってきて多分人数は大丈夫そうです」
「よかったよかった。じゃ、そろそろ出発しようか」
「ええ」
二人は荷物を持って歩き出した
「あ、そうだ佐藤さん」
マスミが佐藤を呼び止める
「なんだい?」
「リーダーがもういないんで、私のことは副リーダーよりも高橋とかマスミとかで呼んだほうがよくないですか?」
「え、いいの?」
「いやまぁ、役職呼びを強要してたのはリーダーなので、彼女がいない今、何でもいいと思いますよ」
「へぇーじゃあ『マスミさん』でいこうか」
「下の名前ですね……わかりました」
佐藤が少し首をかしげる
「そもそもリーダーさんはなんで本名で呼ばせなかったんだ?」
「あー…なんか昔に本名を普通すぎるってバカにされたのがすごい嫌だったみたいで…。ずっと役職で呼ばせてきますね。会長とかリーダーとかで」
「へえー……そういえばあの子の本名はなんだっけ」
「田中ヨウコ、ですよ」
それを聞いた佐藤は少しだけ口角を上げた
「田中、ね。はは」
「やっぱり面白いんですか?あの人の名前。私にはさっぱり……」
「いや、とてもいい名前だ、ふふ」
「……?」
(佐藤さん、たまに話が噛み合わないんだよな…。
そういえば初対面の時もそうだったような………)
「ま、いいや」
マスミは小声でつぶやいた
高橋 マスミ
→亜人の高橋兄弟と奥村の下の名前から取ってつけました