ダンジョンで『神おま』を求めても出てこないんだけど   作:ぱきのら

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ひと堀りいこうぜ

 

 かつん、かつん。叩く、叩く。

 

 やぁ、【炭鉱夫】って知ってるかい?なに?知らない?全く、最近の若い連中はこれだから。

 

 本業であるはずの狩りをそっちのけで火山に籠り、ただひたすらにピッケルを振り回して『神おま』を追い求める亡者のことさ。

 ……はぁ?今度は『神おま』が何かって?おいおい困るぜ、その冗談はもえないゴミと一緒に捨てておいてくれよ。

 

 読んで文字のごとく『神がかったお守り』のことだよ。正式な名称なんて知らん。重要なのは、そのお守りのスキル構成が『神おま』か『ゴミおま』かだろ。

 ちなみに『ゴミおま』は『ゴミみてぇなお守り』な。俺がいつも出してるやつだ。言わせんな泣きたくなるから。

 

 ……察しがついたか?ああそうさ。俺も【炭鉱夫】の一人だよ。

 

 ま、最近の若い奴らはマカ錬金とかいううさんくさい方法でお守りを産み出してるらしいけど?

 甘ちゃん共め。【炭鉱夫】たるもの、火山に通ってピッケルを振るい『神おま』を見つけ出すのが王道さ。

 

 よく聞け?このピッケルで叩く、かつん、バキリッ!って音が……は?

 

 ーーーピッケルグレートが壊れてしまった!

 

「はー!!まだ3回しか使ってないけどー!はー!?」

 

 やば、裂傷状態でもないのに怒りで血が吹き出そうですわ。そのまま力尽きてベースキャンプで起きたらポーチの中が『神おま』で埋まってたりしないかなー。

 

 ……いや、ごめんなさい調子乗ってました。

 俺にもマカ錬金とかいう錬金術使わせて下さい。聞けば最近のハンターのピッケルって最早壊れないらしいじゃないですか。それも錬金術で作ったピッケルだったりします?

 

「……神おまどころか、お守りすら出てこないんだけど」

 

 いやマジで誰だよ。「欲しいと思うと出てこない」とか、「この世界にはなんちゃらセンサーなる概念が働いてる」とか言うから、神おまの説明で思考を満たしてたのに。一人ぼっちで。効果ねーじゃん。

 

「砥石、砥石、砥石……ははっ、砥石の神様かな?」

 

 あれ、ここって44?45?恐らく後者の階層だけどそれはもうどうでもいいや。

 ここってこのダンジョンとかいう場所だと"深層"なる部類なんだよね?つまり元の世界で言うところのG級……最近はマスターランクって呼び方になったんだっけ。とにかくその位のクエスト難易度の素材が手に入るはずだよね?

 実際数日前に掘ったら"風化したお守り"が出たよね?『砥石使用高速化』と『ブレ抑制』とかいうゴミおまだったけど。

 

 今日どうしちゃったの俺?『招きネコの悪運』は出してないよ?

 

「……落ち着け、落ち着くんだ。そうさ、元の世界に比べたら、採掘環境自体はこっちの方がマシじゃないか……多分」

 

 このダンジョンなる場所には、リノプロスもウロコトルもブナハブラも、ラングロトラもウラガンキンもイビルジョーもいない。

 横から飛んでくるロケット生肉に邪魔されることも、地面から飛び出しカチカチと嘴を鳴らして煽ってくる奴もいないんだ。

 

 代わりによく分からないフレイムロック(岩石のモンスター)が出てくるが、邪魔にならないよう全て処理済みだ。俺は出来る【炭鉱夫】なのだ。偉い。

 倒すと出てくる魔石なるものは当然放置だ。これ以上アイテムポーチを圧迫して堪るか。

 

「……」

 

 改めて、今度はボロピッケルを構える。

 これでピッケルグレートより頑丈だったらどうしてくれよう。

 

 ……無心になれ。

 そうしてボロピッケルを振り下ろそうとしたとき、いつの間にか沸いていたフレイムロック(岩石のモンスター)に殴られて、俺の意識は飛んだ。怒りで。

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 ねぇ、【炭鉱夫】って知ってる?

 

 ダンジョンの何処かで耳をすますと……かつん……かつん……って、変な音が聞こえるんだ。それを聞いた人は、何の音だって不審に思って、その音の正体を確かめにいく。

 

 すると、そこにいたのは一人の人間の男だった。

 

 そう、一人。その男はダンジョンの何処に、いつ現れるかも分からないけど、絶対に一人なの。

 一人ぼっちで、ただひたすらにダンジョンの壁に向かって、かつん……かつん……って、つるはしを振り下ろし続ける。ある冒険者がその様子に心配になって声をかけても、ぼそぼそと「カミオマ……カミオマ……」って呟くだけで、何の反応も示さない……。

 その不気味な姿から、誰が言い始めたのか、【炭鉱夫】って呼び名が広まったの。

 

 気味が悪いから、【炭鉱夫】と遭遇しても誰も関わらなかった……。

 

 だけどある時……とある冒険者たちがね?【炭鉱夫】と出くわした時のこと。

 その冒険者たちは無視して進もうとしたんだけど……【炭鉱夫】の足元がきらきら輝いてたんだよ。そう、【炭鉱夫】が掘り集めたであろう沢山の鉱石が、宝石がきらきらと袋に詰まって。

 

 【炭鉱夫】は相変わらずつるはしを振るうだけで、足元の袋には目もくれない。

 だから冒険者たちはね、つい、手が伸びた。【炭鉱夫】は採掘に夢中だから盗ってもどうせばれない……って。

 

 でもね、ふと顔を上げたら……いなかったの。【炭鉱夫】がどこにも……。

 どさり、どさり……音がした。振り向くと、袋を盗った冒険者の仲間たちが倒れていて、【炭鉱夫】がつるはしを振り上げて叫んだの……。

 

「またお前らかあああぁぁぁーーー!!!??」

「ぎえぇぇぇーーー!!?」

「そして【炭鉱夫】はつるはしを冒険者の身体に突き立て、内臓を掘り起こ……いったぁ!?」

「いい加減にしなさいよあんた!ここは深層よ!?遊びに来てるんじゃないの!」

「だってさっきからモンスターの気配すらないし暑いんだもん!怖い話をすると涼しくなるって聞いたから~……!」

「だからって騒がない!団長に迷惑でしょ!」

 

 ティオナさんも確かに騒がしかったけど、ティオネさんも大概では?なんて思いを、彼女らの言い争いを苦笑いで見つめるレフィーヤは飲み込んだ。

 ここで口を挟めば、もはや苛立ちを隠そうともしていないあの人の飛び火を被ると察していたから。

 

「鬱陶しいぞバカゾネス共が!てめぇもだラウル!見えもしねぇ雑魚人間の話なんぞで、みっともねぇ声を出すな!」

「うえぇっ!?で、でも【炭鉱夫】の話って冒険者の間じゃ有名ですし……!」

 

 やっぱりお二人も十分声が大きいと思います、という言葉をレフィーヤは改めて飲み込んだ。

 そしてこんな状況でも冷静沈着を貫く憧れの少女へと視線を向けるが。

 

「目の前にいたのに、後ろから音がした時には冒険者が倒されていて、自分に対してもつるはしを振りかぶっていた……速い。それに一切の無駄がない……宙を飛んで回り込んだ?でも……」

「ア、アイズさん?今の話はそれなりに脚色されていたと思うんですけど……」

 

 戦闘狂の気質があるアイズは脳内で過激(純粋)な戦闘シミュレーションを繰り広げる。

 

 言い忘れていたが、ここはダンジョン45階層、深層。そして彼らロキ・ファミリアは遠征の最中である。

 オラリオ屈指の実力派ファミリアであれば、このような余裕も許される……という訳でもない。深層はどれ程の強者であろうと油断を餌に喰い散らかす。

 

「騒がしいぞお前たち!モンスターが現れないことこそが異常なんだ、少しは気を引き締めろっ!」

 

 ついにロキ・ファミリアのママこと、副団長のリヴェリアから雷が落ちた。

 

「【炭鉱夫】か。耳にしたことはあるが、実物は見たことがないのぉ」

「ガレス、お前まで話に乗るな……!」

「リヴェリア。無駄話にはならないよ」

 

 冗談だろう。団長のお前まで何を言っているのか。

 唖然とした顔でフィンを見つめ、誰よりも大声で怒鳴り声でも出してやろうかと口を開きかけるも、それより早くフィンは言った。

 

「【炭鉱夫】はモンスターの気配が欠片もないときに現れる傾向がある。今の状況みたいな、ね」

 

 ロキ・ファミリアの喧騒がぴたりと止まった。

 

「……はっ、下らねぇ。かの団長様まで噂話に踊らされやがって」

「【炭鉱夫】は噂の産物じゃない。フレイヤ・ファミリアが深層で複数回遭遇。他のファミリアからも、下層、中層、上層……時間や時期を問わず、【炭鉱夫】らしき人影を見たという報告がギルドに挙がっていることは確認済みだ」

 

 ロキ・ファミリアの団長として、それなりに顔が広いからね。と、フィンは空気を和らげるように笑って見せた。  

 

「……フィン、結局何が言いたいんだ。まさか自分もその幻の【炭鉱夫】に会ってみたい、などと言うつもりか?」

「【炭鉱夫】は闇派閥(イヴィルス)に与している可能性がある」

「!?」

 

 ロキ・ファミリアに緊張が走る。

 奇怪な噂話などではなく、現実として、過去の記憶が疼いたのだ。あの凄惨極まりない光景が。

 

 フィンは続ける。

 【炭鉱夫】の共通点は、必ず単独であること。

 この情報から考えられるのは、【炭鉱夫】が深層まで一人で潜れる程の実力者である可能性。それ程の強者であれば必然、名が売れる。しかし誰も【炭鉱夫】の素性を知らない。つまり表に出られない存在と推察される。

 もしくは誰も把握していないダンジョンの出入り口を使っているのか……であればそれこそマトモな人物ではないだろう。

 

「どうして今になって話した……!?」

「【炭鉱夫】による実害は確認されていないし、ギルドも動きを見せない。ティオナのしていた話も事実ではないね。だから、今までの話はあくまで僕の想像だ。これで皆のイメージを固めたくなかったし、真実が異なれば名誉毀損どころか冤罪になりかねない。色々な意味で危険の種だったから胸の内にしまっていたけど……」

「けど?」

「どうやらついに、【炭鉱夫】本人と相見えることになりそうだから、ね」

 

 火山に似たこの階層は地面の複雑な隆起も多い。

 フィンたちが見下ろすそこには、魔石が無造作に散らばっていた。そしてそれらの持ち主であっただろうモンスターの灰の山も同じように。

 

 そして聞こえる。かつん、かつん、と、石を叩くような音が。見える、たった一人でつるはしを振るう人の姿が。

 

「……【炭鉱夫】」

「総員、警戒陣形を組め。前進する」

 

 【炭鉱夫】はつるはしでダンジョンの岩壁を叩き続けている。ロキ・ファミリアの包囲に気付いていないのか。それとも気付いた上で不干渉を貫いているのか。

 どちらにしろ、ロキ・ファミリアには、深層に一人という不審極まる人物を放置する選択肢はなかった。

 

「そのつるはしを置いて、ゆっくりとこちらを向け」

 

 フィンの警告に、その人物はピタリと動きを止めた。

 そして指示通りにつるはしを足元へ投げ捨て、ゆっくりと振り向いた。

 

「ひっ……!?」

「なんだ、こいつ……」

「……っ」

 

 レフィーヤが小さく悲鳴を挙げ、誰が相手であろうと決して臆さないベートが一瞬たじろぐ。

 冷静沈着を絵に描いたようなリヴェリアでさえ、その顔を歪ませた。

 

 それは、体格からして男であった。

 装備は革を基調とした軽装備。どう控えめに見ても初心者装備と分かるそれは、まず深層で纏うものではなかった。

 背負った二本の歪な短刀が彼の武器なのだろうが……それだけだった。それとつるはしを除けば、彼の持ち物はそれらしか確認できなかった。

 

 ここまででも十分に異質と分かる存在。

 少なくとも、相対するアイズには確かな実力者に見えた。

 

 しかし何よりも不気味でおぞましいそれが、ロキ・ファミリアの思考を乱すのだ。

 

「な、なんなんすか、あの黄色くて不細工な……鳥?の被り物は……!?」

「鳥の首の部分は布製、なんでしょうけど……いや無理ですっ……布のせいで顔の輪郭がはっきり浮き出てる感じが生理的に無理ですっ……!」

「気色わりぃ……何だって深層でその格好なんだ、変態かよ……」

「信者の装いか何かか知らんが……悪趣味だな。冒涜的とすら思えるぞ」

「そうかな?私はちょっと抜けてて可愛いと思うけど……アイズはどう思う?」

「……強い、と思う」

 

 そうじゃねぇだろ。

 どこか緩みかけた空気を、フィンが一つ咳払いをして払拭した。

 

「初めまして。僕はロキ・ファミリアの団長、フィン・ディムナだ。君にいくつか尋ねたい」

「……」

「まず、君の名前は?所属ファミリアはどこかな?」

「……」

「……何が目的で此処にいる?周囲の魔石なんて歯牙にもかけないほど随分な採掘好きみたいだけど……そのポーチに詰まった石や、傍らにいくつかある、君の背丈ほどの"錆びた塊"は、何に使うのかな?」

「……」

「てめぇ団長を無視してんじゃねぇ!ぶちのめすぞ!?」

 

 頑なに動かず何も語らない男に痺れを切らした……のではなく、愛する人の問いかけに全く答えないことに激昂したティオネが怒鳴り散らす。

 しかしフィンは片手を上げて彼女を抑える。そして、こちらから強硬的手段を取らなければまともな問答も出来ないと察したフィンは、これだけは答えてくれと、問いかけた。

 

「この階層周辺に出現するフレイムロックからは『火炎石』というドロップアイテムが出る。文字通り、強い発火性と爆発性を持つそれは、強力で無慈悲な爆発物となる。それこそ、人に持たせて爆発させれば、原型を維持できない程の威力だ」

 

 言い逃れは許さない。はっきりと問いかけた。

 

「君は、闇派閥(イヴィルス)に加担する者か」

「違う」

 

 低く、若い、男の声だった。

 フィンが槍を下ろし、続いてロキ・ファミリアが臨戦態勢を緩める。

 

「……そうか。分かった。だけど正体不明の君をこのまま見過ごす訳にもいかない。ご同行願えるかな」

「今日は散々だ」

「……何?」

「帰る」

 

 唐突に男が腰のポーチから拳大の球体を取り出し、地面に叩きつける。緑色の煙が直上に吹き出し、男を包み込んだ。

 

「く……っ!」

 

 毒物か。それともただの目眩ましか。

 一瞬の逡巡。その数秒にも満たない間に、煙が晴れたときには。

 

「なっ……」

「いない……!?消えた……っ!?」

 

 男の姿も、そして傍らに放置されていた"錆びた塊"や鉱石の類いも、最初から何もなかったようになくなっていた。

 

 ただ、へし折れ砕けたいくつかのつるはしだけが、物悲しく転がっているだけだった。

 

「ベート!匂いを辿れるか?」

「犬扱いしてんじゃねぇっ!クソ、完全に消えやがった。あり得ねぇ……!」

「先程の煙……魔道具(マジック・アイテム)か?いや、実体そのものを消す代物など聞いたことがない……!フィン、どうする?」

「……深追いはできない。予定通り、50階層を目指そう」

 

 フィンは男の立っていた岩壁沿いにしゃがみこみ、一つの石を拾い上げた。

 男がポーチから球体を取り出す際にこぼれ落ちたものだ。

 

「悪い人ではない……そう思いたいけどね」

 

 

 





■今回の【炭鉱夫】装備一覧
 ※装備名前はMHXX以前が基準

頭:ガーグァXフェイク(早気珠Ⅱ)
胸:レザーXメイル(体術珠Ⅱ)
腕:レザーXアーム(体術珠Ⅱ、地学珠)
腰:レザーXフォールド(体術珠)
足:レザーXグリーヴ(早気珠Ⅱ)
護石:(回避距離UPLv.3)
武器(双剣):封龍剣【極絶一門】


■発動スキル
 ※スキル、システム、スキルスロットはMHW、MHRが基準
幸運、地質学、植生学、体力回復量UP、特殊射撃強化、回避距離UP、体術(装飾品)、スタミナ急速回復(装飾品)


■個人的誰得メモ
・【炭鉱夫】…『神おま』を求めてハンターから転職した人たち

・初代ロケット生肉…ブルファンゴ

・二代目ロケット生肉…リノプロス

・ホーミング生肉…アプケロス

・ピッケルグレート…最高品質のピッケル。運が悪いと数回使って壊れる(最近のモンハンシリーズでは廃止)

・ボロピッケル…最低品質のピッケル。運が良いのか悪いのかグレートより長持ちすることがある(最近のモンハンシリーズでは廃止)

・砥石…G級火山クエスト採掘で出てくるのホントやめて。

・さびた塊/太古の塊…入手すると壮大なファンファーレが流れて気分が上がる。後者は鑑定するとフォッシルギアとかブルークレーターとかディーエッジとかが出てきて虚無る。モンハン界隈で当たり武器と言われるものも別にある。

・回避距離UP…走るより双剣抜いて回避した方が速いんだもん。

・モドリ玉…地面に叩きつけると緑色の煙が噴き出しいつの間にかベースキャンプに戻っている謎の玉。最近では煙で目くらまししている間に翼竜に掴まって離脱したり、翔蟲で離脱したりしてるが、それまでは何故か気づいたらキャンプにいる。ちなみに使った直後に攻撃を受けると戻れず、モドリ玉だけ無駄遣いしたことになる。

・ガーグァフェイク…身に着けるだけで幸運スキルが発動する神装備。【炭鉱夫】も幸運を信じて被っている。フェイクの首にハンターの首がすっぽり入り、毛も生えているお茶目さがある。覗き穴がないためハンターは視覚に頼らない狩りを強いられる玄人向けの装備。決してキモくないし変態装備でもない。
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