ダンジョンで『神おま』を求めても出てこないんだけど   作:ぱきのら

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食糧庫にいこうぜ(1)

 

 私は今、『24階層の食料庫(パントリー)調査』というクエストを受けてダンジョンに潜っています。

 

 私も普段は【炭鉱夫】を名乗っていますが、これでも【狩人(ハンター)】のはしくれ。今までも多くのクエストを受けたという自負がありました。しかし世界は広いのですね……このクエストは初めてなことばかりで、本当に心が踊ります。

 フェルズ……貴方はいつも、私に新しい出会いをくれる。素敵だ……。

 

 まずこのクエストには、他の参加者が、それも大人数でいらっしゃるのです。初めての出会い、初めての共同作業、初めての友人……!

 そんな素敵な人たちと私はこのクエストで上手に踊れるでしょうか?心配だ……けれどそれより、ずっと楽しみです。

 

「私に触れるなっ!!」

「……アァ……ッ!?」

「ま、待ってくださいベートさんっ!あの、その……エ、エルフには他の種族との肌の接触を許さない風習があって……だからこれは、反射的に……」

 

 新しいご友人!さぁ楽しみましょう!と、意気込んだのですが、あぁ、残念。

 

 もう既に彼らは何やら特定のコミュニケーションを築いていたようで、私には入りづらい雰囲気が完成していました。

 既に出来上がっている人の和に入るのって、ちょっと怖いですよね……。

 

「……チッ、どいつもこいつも……さっさとアイズたちと合流するぞ」

「あ、ベートさ……」

「……」

「フィ、フィルヴィスさんも……あ、う、その……」

「レフィーヤッ!その野郎は放っておけ!」

「っ……は、はい……」

 

 なんと彼らは私の心の準備が出来るまで、私を一人にしてくれるようでした。あぁ、ご友人……これが祝福なのですね……!花はどこだ……手向けなければ……。

 

 でも、そんな彼らの涙ぐましい心遣いに水を差すような人が、一人だけいたのです。

 

「僕たちも急ごうか【炭鉱夫】。これ以上遅れたら、また叱られてしまうからね」

 

 それがこの人、ロキ・ファミリアの団長、フィン・ディムナこと【勇者(ブレイバー)】さんでした。

 

 彼は共にダンジョンに潜ってからというもの、何かとつけて僕に話しかけてきます。おやおやおや……クエストに集中もせず、私とお喋りですか、【勇者(ブレイバー)】さんは可愛いですね。

 

 しかし困りました。

 

 この状況では、今回のクエストのサブターゲットである『【剣姫】への謝罪』をクリア出来そうにないのです。

 

 情けない話ですが、私はまだ怪物祭(モンスターフィリア)で【剣姫】にやらかした、神をも怒れる大失態を謝れていないのです。

 今回のクエストには【剣姫】も同行しています。クエストとは何よりも互いの信頼感が大切。後ろめたいことがあっては、どんな事故に繋がるか分かりません。

 

 だからちゃんと謝るべきだと思ってます。

 それも内容が内容なので、他に人目のつかないところで、面と向かって場を整えて。それで喜んでもらえたなら……素敵だ……。

 

「【炭鉱夫】、何か気になることでもあるのかい?」

 

 ですがやはり、今回のサブターゲットはクリア出来ないかもしれませんね。

 もう【勇者(ブレイバー)】が私に付かず離れずですもの。サプライズをさせてくれないのですか!?

 

 何なんですか?彼はランゴスタの物真似でもしてるんですかね?それともブナハブラ?

 

 だいたいフェルズがクエストを依頼したときだって、その時いたのは【剣姫】と【九魔姫(ナイン・ヘル)】だったよね?それがどうして【九魔姫(ナイン・ヘル)】はいなくて、代わりに【勇者(ブレイバー)】が入ってきてんの?狩猟環境不安定なのかな?

 

 ……失礼。取り乱してしまいました。

 スロー、スロー、クイック、クイック、スロー……。

 

 まぁとにかく、今回の依頼に関してはクエストリタイアする訳にもいかないと重々承知しています。サブターゲットクリアも出来そうにないですからね。不憫だ……。

 

 だから私は諦めません。止まりません。

 

 どうか、どうか私たちの旅路に、溢れんばかりの呪いと祝福を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「様子のおかしい人です」

「へあぁっ!!?」

 

 頭をぶんぶんと振り回して周囲を見渡す。

 

 お、俺は今まで何を……何か、頭の中にいたような……。

 

「【冒険者ギルド直属の冒険者】?信じられるか、初めて聞いたぜそんな存在」

「絶対あの黒ローブの仲間だよ!ホントに同行するの?」

「私にも思うところはありますが、元はといえば弱みにつけ込まれた貴女の責任でしょう、ルルネ」

「そ、それは謝るけどさっ。そもそも私の仕事量が他の皆と比べて多すぎるんだよ!だから多少のミスや粗が出るのは仕方ないっていうか……」

「貴女が自分で仕事を増やしているだけですよ」

「ウソだぁ!だって地上で流行り始めた、謎の疫病の調査だって私が……」

「ルルネッ!お喋りが過ぎます!」

「ぴっ!?ごめんっ、ごめんって……!」

 

 そ、そうだ。俺はこのクエストの合流地点であるリヴィラの街で、クエストが開始されるのを待っていたんだ。

 だけど離れて警戒してくる周囲の俺への評価があんまりなもんだから、何も聞こえない態度を装って、考えないようにして……考え……くっ、頭が痛い……ナニカされたようだ……。

 

 ……深く考えるのは止めよう。もう数回首を振って周囲の状況を確認すると、今回のクエストに参加するメンバーも揃い終えているように見える。

 

 もうすぐクエストが始まる。ボーッとするのはここまでだ。

 

 ……しかし、周囲のヘルメス・ファミリアの冒険者が持つ俺への評価を盗み聞くに、今回のクエストは相当に厳しいものになるだろうなぁ……。

 ヘルメス・ファミリアはその主神の方針もあって、オラリオ都市外でも広く活動している奇特なファミリアらしい。つまり、ここ最近で急激に増加し始めた俺の世界のモンスターの出現現象を調べるにあたって、彼らは非常に貴重な情報源となるはずだ。

 

 情報のヘルメス・ファミリア、影響力と戦力のロキ・ファミリア……双方と協力関係が結べれば、俺たちの活動もより広範囲かつ効果的に行えるようになる。

 その先駆けとして、このクエストを通して彼らを知り、そして俺を知ってもらい、互いに信頼を獲得する。

 

 それがダンジョンの異変調査と併せて設定された、このクエストの2つ目の主目的なのだが……。

 

「くそっ、あの野郎ばっかり【勇者(ブレイバー)】の近くでベタベタと……あんな不審者野郎がなんで……!せっかく俺たちの実力を見てもらうチャンスだってのに……っ!」

「落ち着いてポック。むしろ怪しいから、【勇者(ブレイバー)】がすぐ近くで目を光らせているのよ。その邪魔をするなんてもっての他。私たちに出来ることは、不審な動きを見せたらすぐにその助力が出来るよう備えることだわ」

「【勇者(ブレイバー)】が警戒する程か……何者なんだ……」

「モンスターは潰す、潰す、潰す潰す潰す潰す潰す……!」

「世に平穏のあらんことを……!」

 

 ふえぇ……。

 今はいなくとも、【勇者(ブレイバー)】が俺にくっついていたという事実が恐ろしい逆風になっている。それとは関係なく様子のおかしい冒険者も何人か見受けられるが。

 

 俺はただでさえ身元不明という厄介なステータスが付いているというのに、この状況……どうしたものか。

 

「……そう難儀するなら、せめて顔でも見せたらどうだ」

「……声に出ていたか?」

「どれ程重厚な鎧を纏っていても、態度は隠せない。特に貴方は分かりやすい」

 

 フィルヴィス・シャリア。

 

 ディオニュソス・ファミリア所属の彼女が、ただ真っ直ぐ遠くを見つめながら呟くように言った。その言葉には、感情の欠片も感じられない。

 リヴィラの街に来る途中、そしてここに来てからも、彼女を怖れるように遠巻きに見て、何処のファミリア所属とも知らない冒険者たちが語っていた小さな言葉が反芻する。

 

 27階層の悪夢。

 呪われている。

 共にダンジョンに潜ろうものなら、彼女を残して全滅する。

 

 

 ー死妖精(バンシー)

 

 

「……何故、私に構う」

「……何の話だ?」

「貴方は分かりやすい、そう言っただろう。周りの冒険者から私の噂を聞いていたはずだ。しかし貴方は、今もこうして、私と一定の距離を保とうとしている」

「……」

「率直に言おう。私は顔も見せないお前を警戒している。お前は……何者だ」

 

 ぎろりと、視線が強くなる。俺を見ていないのに。彼女からの敵意を、はっきりと感じる。

 ……やっぱりレフィーヤさんのようにはいかないなぁ……あの純粋な優しさを、思いやりを、俺は一度だって持ち得たことがない。

 

 ばか正直に、真っ直ぐぶつかることしか俺には出来ないということか。

 

「俺を残して、パーティーが全滅したことが一度だけある」

「……」

「いや、俺が……全滅させた」

「……同情で、私に付きまとうのか」

「貴女の心が理解できるなんて血迷い事を言うつもりはない。だが……気付いた時には死んでしまいそうな貴方を、見て見ぬ振りも出来なかった……力になりたいと思った。それだけだ」

「……っ!!ふざけ……っ!!」

 

『フィルヴィスさーんっ!!』

 

 彼女の名を呼ぶ声。

 レフィーヤさんが、大きく腕を振って俺たちのところへと駆けてきた。

 

「もうすぐ出発だから集まるようにって、団長から……あれ、何かお話の途中でしたか……?」

「……何でも、ない。集合か……直ぐに向かう……」

 

 ぐっと握り拳を作り、レフィーヤさんと顔を合わせることもなく、彼女が来た方向へと歩いていく。

 そして数歩先で、フィルヴィスさんは振り向いて……初めて、俺を見た。

 

「……余計なお世話だ。関わるな……!」

 

 フィルヴィスさんは踵を返して歩き出し、今度こそ振り返らなかった。

 

「フィルヴィスさんと、何かあったんですか……?」

「……いや。俺が馬鹿だった、それだけの話だ」

「……そ、そういえば!ここに来てからちゃんとお話出来てませんでしたねっ!えと、お久しぶりです。あ、あの時は助けて頂いて、本当にありがとうございました……!」

 

 何を言ったものか。レフィーヤさんが目に見えて狼狽えているのが分かる。彼女にも迷惑ばかりかけて、申し訳ないことこの上無い。

 

「その、お一人なら、24階層までご一緒出来ませんか?色々とお聞きしたいこととかもあって……」

「……あぁ、俺で良ければ」

「良かった……!それじゃあ行きましょう。炭……じゃなかった。えと……【銃槍(ガンサー)】さん」

 

 こっちです、と牽引するように緩く走り出したレフィーヤさんの後に続く。

 

 俺が【炭鉱夫】であり、怪物祭(モンスターフィリア)での【髑髏】であったことはとっくにロキ・ファミリアにはばれている。だからこそあの【勇者(ブレイバー)】も鬼人薬のことやら何やらを聞き出すためにくっついてくるのだろうが……何も知らないヘルメス・ファミリアに情報が流れることは避けたいのか?だから面と向かっては聞いてこない……?

 

 ロキ・ファミリアが俺たちについて把握していることを知らないことには、俺も何をどこまで話して良いのか分からない。

 ヘルメス・ファミリアもいるから下手には動けないし……。あれ、信頼関係って何だっけ?それってどこの採集ポイントで手に入るの?

 

 ……こんな状況で、まともにクエストなんて出来るのだろうか。あの"謎の痕跡"だって何も分かっていないのに。

 

 せめて。せめて何事もなくこのクエストが終わってくれることを願うばかりだ。

 

 




■今回の【炭鉱夫】装備一覧
 ※装備の名前はMHXX以前が基準

頭:ブラキXヘルム(匠珠)
胸:ブラキXメイル(爆師珠)
腕:ブラキXアーム(爆師珠×2)
腰:ブラキXフォールド(匠珠)
足:ブラキXグリーヴ(体術珠)
護石:(ガード強化Lv.2、体術Lv.2)
武器(ガンランス):デオス・ラートゥム


■発動スキル
 ※スキル内容、システム、スキルスロットはMHW、MHRが基準
挑戦者、砲弾装填数UP、スタミナ奪取、爆破やられ耐性、爆破属性強化、砲術、ボマー、ガード強化、体術、匠


■個人的誰得メモ

・ランゴスタ
……近づいたら離れて他の作業中だと麻痺針を打ち込んでくるかまってちゃん。かわいいね(殺意)

・ブナハブラ
……ランゴスタの後輩。皆はどっちがマシだと思うかな?

・狩猟環境不安定
……3から実装された。主目的のモンスターとは別の大型モンスターがフィールドに放り出されている可能性がある場合に、クエスト選択時に不安定のアイコンがついている。とくにイビルジョーが猛威を振るったとか振るわないとか。
P3では、目的のモンスターを倒すと特殊な演出が入り、追加で狩猟対象に入るようなシステム。普通に怖い。皆も『ざわめく森』をやろう。

・ガンサー
……ガンランス使いの俗称。ガンランサーとも言うらしい。最近のモンハンはガンランス弱いね風潮が流行ってて悲しいって、ガンランス好きなお兄ちゃんが泣いてた
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