ダンジョンで『神おま』を求めても出てこないんだけど 作:ぱきのら
「それで結局その、ナルガクルガっていうモンスターの亡骸は、ギルドが回収したんですか?」
「複雑な事情もあって、そう易々と他所に引き渡す訳にはいかなくてね。代わりになるか分からんが、討伐した少年には相応の金銭を報酬として支払うそう……だあっ!また"なぞのお守り"ぃ!ゴミおま確定hoo!!」
「もはや貴方の人間性も限界に見えますね……」
そりゃ当然だよレットくん。だって【炭鉱夫】なんて人間性が終わってなきゃ成りえないんだから。
「もう帰ろうか……出ないときはとことん出ない。これ経験則ね」
どうにかこうにか死者を出すことなく
俺は変わらずダンジョンに潜ってつるはしを振るい、ゴミおまを出して発狂し、そしてまたつるはしを振るう生活に戻っていた。というより、フェルズから半ば強制されていた。
オラリオ都市内にディアブロスが現れるという最悪の事態を、最善の手を尽くして討伐を成功させた功績はしっかりと誉められ感謝されたが、またロキ・ファミリアに喧嘩を売ったことはしっかりと怒られた。
最後のあれは喧嘩などではなく、超人たる冒険者から逃げ切るためにやった苦肉の策だとガーグァフェイクを振り回して弁明したが、ほとぼりが冷めるまで地上に上がることを禁じられた。
ダンジョンにこもってお守り堀りをする生活は以前と変わらないが、改めて外出禁止を明言させると悲しいものだ。
「しかしそんな凶暴なモンスターを檻から出すなんて、悪戯じゃすみませんね。全く、誰の仕業か知りませんが、何を考えているのか……」
自分のことしか考えてないんだろうなぁ。
鉱石の詰まった籠を背負い直しながら呟いたレットの言葉に、ぼんやりと思う。
今回の事件についてフェルズ、ウラノスと意見を共有したとき、真っ先に「神のしでかしたことだろう」ということでほぼ結論が出た。当時、モンスターを監視していたガネーシャ・ファミリア団員の様子からまず間違いないと判断されたそうだ。
彼らの意見に俺もかねがね同意した。
超常的な能力と永遠の時間を手に入れた、人の姿。それがこの世界における"神"である。この世界にきて八年目、少なくとも今の俺はそう認識している。
だからやりたいことを我慢できないし、楽しいことをしたいし、玩具が手に入ればきゃっきゃと喜ぶ。
どこかで、羨ましいと思った。
俺の世界はそうじゃなかった。
俺の世界の神は、人なんかじゃなかった。
言葉も解さない。願いなんて聞かない。泣きわめいても笑わない。命乞いをしても意味をなさない。だけど、そこに生きていて、存在していて、消して、創る。
もしも、神が人であったなら。
あいつは。
「ミスター【炭鉱夫】?大丈夫ですか?」
「……ん。ほら、モンスターが突然現れる現象。今回はオラリオ都市内にまで出た訳だし、どうにか解明できないもんかなーって考えてた」
「ああ、以前言っていた……私はその現象を見たことがないので何とも。正直、信じがたいと思うところもあるくらいで」
「だよねぇ、意味分かんないよねぇ……」
そもそも俺がこの世界にいる意味も分かってないんだ。
そして、あっちの世界のモンスターがこちらの世界に現れる理由も不明。
分からないことばかり。だから俺たちは現れたモンスターを被害拡大前に狩猟するという、後手に回るしかない現状。せめて手がかりの一つでもあればなぁ……。
「ダンジョン内はどうだ?何か異変というか、変わったことはある?」
「うーん……私は心当たりがないですね」
「他の皆にも改めて聞いてみるか……よし。お疲れ様レット。付き合ってくれてありがとな」
「いえ!お力になれて良かったです!」
もはやマイホームとなりつつある20階層の未開拓領域は、幸運なことに未だ冒険者らに見つかっていない。
「お帰りなさい【炭鉱夫】さん。レットも、お疲れ様でした」
「ただいまレイ。ここも何事もなかったみたいでよかった」
「えぇ、まあ……」
ーーレットばかりずるいです!私も【炭鉱夫】さんと宝探しに行きたいのに!
ーーそ、そんなこと言われても……
「……フィアが少しばかり愚図ってしまいましたが、他は特に問題なく」
「元気そうで何より」
しかしフィア、安心したまえ。
今回のは宝探しなどではなく、ほぼゴミ拾いだったから。
「たんこっち!戻ってきたか!」
「リド、いいところに。ちょっと聞きたいこと……おお、綺麗にまっぷたつ」
リドがアイアンソードの持ち手から中間までを持って申し訳なさそうに話しかけてきた。
もう半分の刃先にかけての部分はいずこに……と思ったら、隣のグロスがそっぽを向きながらがっつり刃の部分を掴んで持っていた。
怒られてすねた子供かお前は。いやまだ怒ってすらないし、別に怒るつもりもないけど。
「すまねぇ、訓練中に折れちまった……」
「より実戦に近い形でやるためにと言い出したのはリドだ」
「おおい!遠回しに責任をなすりつけんな!グロスものりのりだったじゃねぇか!」
「はいはいそこまで。別に怒ってないから。それより他の奴らや、二人に怪我はないか?」
リドがぶんぶんと頭を振って頷く。ならばよし。
彼らは決しておふざけで剣を振るった訳でもない。
それに壊れたのもアイアンソードだ。替えは十二分に効くだろう。
「だけど武器の手入れも課題だな。俺も専門知識はないし……」
俺は武器を採掘してくることは出来る。鑑定することも出来る。応急的な研磨も問題ない。
しかし装備の強化や本格的な修理、メンテナンスとなると、それは無理だ。だから今までも、少しでも損壊した武器や防具は廃棄するしかなかった。
そもそも姿形さまざまな
命と安全には変えられないとはいえ、泣く泣く装備を破棄することが惜しいという気持ちに嘘はつけない。
まともな鍛冶職人に頼めば、いくらでも伸び代があるのに。しかし身元不明の俺が鍛冶系のファミリアに直接行って仕事を頼むなんて出来っこないし。
代わりにギルド職員に行ってもらう……こちら側の装備に関しては易々と他者を頼る訳にはいかない。
俺たちの事情に精通していて、かつ
神おまを見つける可能性より低そうだ。
「ふんっ。そもそも練習用なら、もっと壊れても構わないような、どうでもいい武器を使うべきだったんだ。今度は錆びているどころか、もはや風化しているあれらの武器を使って」
「くたばれグロスウウウゥゥゥーーッッッ!!!!」
「がああああぁぁぁぁーーっっっ!!!??」
こやし玉をグロスの鼻先に投げつけた。
壊れてもいい?どうでもいい武器?そんなことを言ってくれるなよ、グロス。
憐れじゃあないか。俺たち狩人たちが……。
あんまりにも、憐れじゃあないか……。
「また同じことを宣ったら、"特大サイズのフン"を投げつけてやるからな。ほれ消臭玉だ」
「鼻が……鼻が……」
「あ、相変わらず恐ろしい……」
「会ったばかりの時のおっかねぇたんこっちを思い出したぜ……」
「あのぼろぼろの武器たちが、ああも厳重に保管されている理由の一端を垣間見た気がします……」
「アイアンソードが壊れても軽く流したのに、この差はいったい……」
他の
どれだけ……この世界であれらを手に入れるのにどれだけ苦労したか……!八年かけて、ようやく得た、数本の"すごく風化した武器"……俺が守らねばならぬ。
しかしこれらも強化ができない……!
"大地の結晶"はいくらでもある。
でも"モンスターの濃汁"もしくは"モンスターの特濃"がない!こればっかりはこの世界で入手する伝手もない。そもそもこの世界の虫型のモンスターが少ない気がする……。
どこかで虫のモンスターでも大量発生してくれないものか。縁起でもないな。
……鍛冶職人も濃汁も、目処すらつかない。
今は考えても仕方ない。
「そ、そういえばたんこっち。俺っちのこと探してたのか?聞きたいことがなんとかって」
そうだ、その話の途中だった。
「リドに限った話じゃないんだけどな。最近、このダンジョン内で何か変わったことがないか皆に聞きたくて」
「変わったこと?」
「ああ。見慣れないものを見たとか、聞いたとか……ちょっと不思議や違和感に思ったこととか、なんでもいい」
「うーん……殺人事件の噂はもう話したしなぁ……」
「【炭鉱夫】のたたりだー、とかになりかけてたって話ね。まあ、うん。その件以外で」
先日のリヴィラの街の一件なぁ。
俺は炭鉱夫をやってるだけなのに、本人の預かり知らぬところで真っ先に犯人にされそうになってたらしい。
冒険者の思考回路ってホントに怖いよね。ダンジョンでつるはし持ってるのがそんなに怪しいか?失敬な。
とにかくこの件についてはフェルズからも気にしなくていいと言われているので置いておく。
「なんかあるー?」
「あ、虫の死骸を集めてる人を見かけた」
「倒れてる人の前で屈伸してる奴もいたな」
「ただの変人でしょ」
「ねー"こんがり肉"焼いてよー」
「なぁ【炭鉱夫】!この綺麗な鉱石もらっていいか!?」
やんややんやと好き放題に喋り始めた。
まぁ、そんな簡単に異変なんて起こるはずもないか。むしろ起こってくれない方がいい……でも起こらないと調べようがない。ジレンマだなぁ……。
「……なに?何でこんなに騒がしいの?」
「ラーニェ、お帰りなさい」
「おー。いや、最近変わったことがないかって皆に聞いててさ……あれ、というか何処行ってたんだ?」
いつもはグロスらと共に行動することが多い彼女の姿が見えないとは思っていたが。
「マリィに会いにいってたの。相変わらず無警戒に歌を唄ってたからしっかり怒ってやったわ」
「とか言って、寂しがってないか、怪我してないか心配してたんだぜ」
「彼女はマリィの歌が誰よりも好きなんですよ」
「リド!レイ!訳分かんないこと言うなっ!」
彼女はその種族上、水辺から離れられない。
俺も定期的に様子を見に行っているし、護身用アイテムも渡している。
そこまで過剰に心配する必要もないとは思うが、さすがラーニェ。優しいじゃん。
「おお、お前がマリィに変なことしてないかの確認も含めてだっ!変態っ!!」
ラーニェの俺へのなつき度皆無。泣きます。
「そ、それでラーニェ?貴方も何か最近、ダンジョン内で違和感に思ったこととかありますか?」
「……ん」
肩にかけていた携行バッグをごそごそと漁る彼女。
突き出すように渡された、それ。
「……
半分は黒く、半分は白い、触れるだけで斬れそうな棘。
それがたったの一本。俺の腕と同じくらいの大きさ。それだけで、尋常ではない存在感。まるで……生きているかのような。
「……どこでこれを?」
「25階層の、冒険者が来ない外れの方。地面に十本くらい突き刺さってて、その内の一本がそれ。それとマリィも怯えてたんだけど……凄い叫び声と揺れがあったって」
それ以外は、特に何もなかった。
ラーニェ自身は、何も聞いていないし、この刺以外にそれらしい不審点もなかったという。
リドを始めとした
俺もじっと、それを見つめた。
何かの武器の破片?魔法の副産物?ダンジョンから生じたアイテム?
……モンスターの残した、痕跡?
俺は知らない。
こんな棘のような特徴を持つモンスターを、俺は見たことも聞いたこともない。
そして俺は知っている。
あの世界には、俺の知らないモンスターなんていくらでもいるということを。
「……ダンジョン内に来るとか生まれるとか、勘弁してくれよ。ホントに」
「?モンスターがダンジョンから生まれるのは当然だろ?」
「……ああ……そうだな……」
■個人的誰得メモ
・すごく風化した武器……
研磨するとすげー武器になるが強化がめんどくさい上に他の生産武器の方が強くて作成が楽だったりするので中々使ってる人を見なくて悲しい。
しかしモンハンX、XXでは、まさかの風化したまま強化を行えた。切れ味や会心率は涙無しには語れないが、スキルを組み合わせればアホみたいな攻撃力になる。
MHP2Gまではテーブル回しっていう方法を使えばけっこう楽に手に入ってた。
・モンスターの濃汁……
体液、濃汁、特濃、どれも以外に貴重で素材として使う機会が多い。個人的に濃汁はいつも求めてた。
・大地の結晶……
どこのエリアでも手に入るはずなのに、気づいたら何故か在庫がない不思議な結晶。だって錆武器や太古武器の強化に数百個単位で使うから。
モンハン新シリーズが出る度に強化必要数が少なくなってるし入手手段も増えてるから、昔より強化は楽……とか言ってる人らはちょっと狂竜症にかかっちゃってるよって僕思うんです。
ちなみにMH4、4G、XXではそれぞれ『天空の結晶』『星石の結晶』『アルティマ結晶』なる大地の結晶の上位互換染みた素材が追加されていて、お察しの通り発掘装備と太古武器の強化に相応の数が求められる。追加で。
もう……赦してくれ……赦して……くれ……ヒッ、ヒヒヒヒヒヒヒッ……
・虫の死骸……
虫の死骸(公式テキスト抜粋)。
コゲ肉と調合すると生肉になり、山菜爺さんに渡すと喜ばれ、調合屋で10ゼニーで販売されている可能性溢れる素材。
はちみつ寄越せと言ってくるハンターに渡すと喜ばれる。
・モンスターの痕跡……
MHWに登場したシステム。フィールド場に残されたモンスターの毛や鱗、破壊跡などを調べることでそのモンスターに対する様々な恩恵が得られる。調査団らしい。