ソードアート・オンライン ー 天剣の哀唄 ー 作:水城透
以前書いた話のリメイク。
どこかで見た覚えがある方いたら、またよろしくお願いします。
2020年、全世界が待ち侘びていたある日がやって来た。それは『Virtual Reality』、通称VRの次世代型フルダイブを可能とさせたVRMMO専用機『ナーヴギア』の開発。
そのナーヴギアを使用して遊ぶフルダイブ型ゲームVRMMORPG。
VRMMORPGは『Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game』の略で、現代科学の最先端技術が駆使されたと言っても過言ではないゲームの最先端。
それから2年後の2022年。茅場晶彦という天才科学者の手により作られたナーヴギアは、ゲーマーだけでなく全人類が歓喜の声を挙げたと言っても過言ではなかった。
さらに続けて世に発表されたのは、世界初のフルダイブ型VRMMORPGナーヴギア専用ゲームソフト『ソードアート・オンライン』。
人間の五感全てを、フルダイブさせる事が可能とされるナーヴギア専用ソフト。『ソードアート・オンライン』は約1万人限定で発売され、多くの人が店に駆け込んだ。
瞬く間に売り切れ、誰もが仮想世界に謳歌していた。
そして、日本中が大注目している『ソードアート・オンライン』の実装日である2022年11月6日。
それが今日であった──────────
視線の先、机上には数列が書かれた1枚の紙切れ。
そこに書いてある数字は、知らない人が見れば何かのパスコードにも見えるかもしれないが、この数字の羅列は何かのパスコードではない。
その紙切れから一旦視線を離し、隣に置いておいたスマートフォンを起動させ、メッセージアプリを開いて幼馴染だけのグループに間違えないように送り付ける。
幼馴染から返事が来たのを確認したあと、机にスマホを置いてからデジタル時計へと視線を向ける。
カチッと変わったばかりのようで『12:55』と表記されている。
ベッドに寝っ転がるように倒れ込んで、枕の近くに置いておいた一生分の運を使い果たしたのではと思わせる倍率の中から当選し、見事手に入れたナーヴギアを手に取って何をする訳もなく見つめる。
「あと5分か」
しっかりと配線コードが繋がっている事を確認し、ナーヴギアをかぶろうとした瞬間、机の上に置いていたスマホに通知音が鳴る。
起き上がるのは、正直めんどくさい。
1度、ナーヴギアを腰近くに置いて手だけを机上へと伸ばし、適当に手を動かすとカツンっと指に当たる硬いもの。
それを取って目の前まで持ってくれば、先ほど返事を見たはずの幼馴染からのメッセージ。
開いてみてみれば、興奮状態なのがひと目でわかる内容と沈めようとさせてるもう一人のメッセージに思わず、笑いが込み上げてきてスマホの画面にあるキーボードで『あと少しだから落ち着いて』と送る。
勧めてきた張本人であるから誰よりもこの日を待ち望んでいたし、3人中1人だけβテスターに選ばれた時は、物凄く羨ましがられて一日交代で回していた。
新たなメッセージを見て、最後に確認したという意味を込めて『了解』と送ってからスマホを再び机の上へ戻してナーヴギアに手を伸ばす。
電源ボタンを入れ、電源が入った時になる起動音を聞き、ナーヴギアをかぶって、少し灰色がかった視界の右斜め上に表記されてる時刻を見る。
残り1分も無い、あと数十秒ぐらいだろう。なんて考えていた時、タイミング良く13時に変わる。
──さぁ、久しぶりのあの世界へ行く言葉を。
「リンク・スタート」
その瞬間、目の前が真っ暗になったかと思えばすぐに無数の色の線が現れ、通信状況の確認やスキャニングをされていく。
無事にスキャニングが終わると、そのまま『ようこそ、ソードアート・オンラインへ』と女性のような声が聞こえてチュートリアルが始まるとウィンドウが一つ展開される。
βテスターである自分にとって、別に今更と思いつつも従っていくと前回のデータ。つまり、βテスター時の時に保存したデータをコンバートするかと言う質問。
正直、どちらでもいいのだがアバターの作成とかを改めてやるのは面倒なので『Yes』のボタンをタップしてプレイヤーネームの設定へ。
これも変えるつもりはないので、βテスト時に使用した名前を打ち込んで誰とも被らなかったらしくスムーズに進む。
全ての設定を終わらせると、再び目の前が明るく眩しくなり思わず目を瞑る。
次に目を開けた時は、普段見慣れている自分の部屋でも学校でもなければ景色でもない。
「……戻ってきた」
数ヶ月前から夢見たソードアート・オンラインの世界。
現実世界と何ら変わらない再現度の高い風景、頬を掠める優しい風が吹いている所なんて特に凄い。
現実世界と違うのは、自分の周りに青い光が発生しては新たなプレイヤーがログインしている事や少し日本というより洋風な建築物が多い事ぐらいだろう。
とりあえず、幼馴染が新規でログインしてくるはずだろうからメールが届くのを待ちつつ、何もしないのも暇なので自分の身体を前や後ろを見たり、手足を動かしたりと軽く動く。
現実の自分と違うのは髪色や瞳の色、髪型、あとは背丈ぐらいだろうか。
ゲームの世界だから、もっと変えても良かったのだがやればやるほど分からなくなって、結局見慣れた現実の自分を少し変えた程度で落ち着いた。
「あのー、すみません」
「はい…?」
「もしかして、
「…え、その呼び方」
この人は誰だ。それが一番最初に抱いた言葉であり思いだった。
話しかけてきた女性プレイヤーと身長の高い男性プレイヤーというのは分かるが、βテスターの時の知り合いにこんな人はいなかったはずだし、正直1人で自分の体見て動いても舞い上がってた所を見られてかなり恥ずかしかったりもする。
ここでは普段得意なポーカーフェイスも崩れやすい事を思い出し、冷静になろうと必死に深呼吸をすれば、女性プレイヤーはクスッと笑って僕に抱きついてくる。
「ちょ、ちょっと!」
「良かった!こっちでは問題なさそうね!」
「…は、はぁ?」
「セツ、僕らだよ」
「…え、ほんとに?」
「良かった、本当に良かったぁ……。βテストの時から問題ないとは聞いてたけど一緒にダイブ出来なかったから心配だったの。本当にセツくんなんだよね?」
「う、うん。僕はセツナだけど、二人は本当に…?」
「落ち着いて、まだセツが追い付いてないよ」
「あ!ごめんね、これ見れば分かる?」
嬉しそうに微笑みながらウィンドウを可視化させ、僕にプレイヤーネームと性別を見せてくれて事前に教わってたユーザーネームなのを見て僕が待っていた幼馴染である事をやっと理解出来た。
喜んでくれるのは嬉しいけれど、もう少し落ち着いて欲しいと思い、溜息を吐くと何か不思議に思ったのかジロジロと見てくる。
「ねぇ、髪色や瞳の色を黒にしちゃったの?それに髪型まで変えてる!」
「うん、変えた」
「あんまり現実と変わらなくないかい?」
「最初は変えようと思ってたんだけど、だんだん分からなくなってさ。結局、髪色とかは流石に変えないと現実と変わらなくなるから変えた」
「…ねぇ、気の所為ならあれだけど。普段から私より大きいのに更に身長も高くなってるよね?」
「ノーコメントで」
ツンツンっと突っついてくる彼女に苦笑しながらもスルーし、隣にいるもう1人の幼馴染の彼へ助けてと視線を向けるけど苦笑い。
苦笑いしてないで助けて欲しいんだけど、と思いつつも自力で止めて武器屋に行こうと言ってみれば、すぐに笑顔に戻って僕らの手を掴む。
「まあいっか、早く行こ!」
「ちょ、ちょっと待ってって!」
「いや、二人とも方向逆」
「「え?」」
「鍛冶屋はこっちだよ」
「ふふ!ごめんごめん!」
2人の腕を掴んで、βテスターの時からお世話になってた最初の鍛冶屋へ走って向かえば、僕の手をぎゅっと掴んで嬉しそうに笑う彼女と僕らを暖かい目で見つめる彼。
何だかむず痒くなってきて、早くお世話になっていた鍛冶屋に向かうことに集中する。その後、鍛冶屋に着いて武器を見る前にウィンドウを開き、初期金額されてるコルがβテスト時と変わってないかを確認する。
「ん、βテストの時からコルの初期金額は変わってないね」
「そうなのかい?あれ、βテストの時よりも沢山の武器があるんだね」
「ソードアート・オンラインって言うぐらいだし、βテストはあくまでβテストだからリリース前より少ない事もあるって叔父さんが言ってたよ」
「へぇ〜、あ、それで二人はどうするの?」
「僕はβテストでも使ってた片手剣が慣れてるから片手剣かな、細剣も魅力的だけどね」
「僕も片手剣にしようかな」
「うーん、何ですぐに2人とも決まるの……」
「戦うの苦手なんだし、無理に前に出る武器じゃなくてもいいと思うけど」
「それは嫌。せっかく3人で出来るんだもん、3人でやりたいの。んー」
色んな武器をウィンドウでスクロールして眺め、睨めっこしながら唸ってる彼女を横目に、ウィンドウを操作して『スモール・ソード』をタップして購入して装備する。この世界のスタート地点である、ここ始まりの街ではあまり好ましい武器はない。
ある程度の村まで進めれば『アニールブレード』という片手剣が入手出来るクエストがあると、βテストの時にお世話になったプレイヤーに教わったし、とりあえずそこまでは『スモールソード』で我慢だろう。
そろそろ決まっただろうかと思って目を向ければ、ウィンドウを操作して細剣カテゴリーの『スモール・レイピア』を購入して装備している。
「やっぱり使い慣れてるのじゃなきゃね。OK!」
「それじゃあ、セツに教えて貰いながら行こうか?」
「え、僕よりも2人の方が絶対上手いよ……」
「そんな事ないよ、実際にモンスターを倒した数を言い合った時1番多かったのはセツくんでしょ?」
「…そうだけどさ」
「じゃあセツに教わりつつ、僕らも教えるよ」
「うんうん、3人で頑張ろう!」
「…まぁ、それならわかった」
興奮状態の彼女に思わず苦笑いを浮かべながら、鍛冶屋のNPCにお礼を言ってから3人で街の景色を眺めつつ、モンスターが生息してる迷宮区の方へと足を運ぶ。
その途中もやはり、今日は平日ではないし実装日当日と言うこともあってプレイヤーが多く、様々なプレイヤーが僕らの横を通りすぎたりしていく。
元々、爆発的な人気もあったしβテストに当選していた僕は完成版も手に入ったけど、2人は彼女のお父さんが2人分用意して「3人で時間を守りながらやりなさい」という約束で貰ったと聞いた。
聞いた時は1万本しかないというのに、良く2本も手に入ったなーと聞いた時はもちろん驚いたけど、そもそも当たった自分の運も相当だと2人に言われて言い返せなかった。
とりあえず、ソードスキルの使い方やモーションがβテストの時と変わってないかを確認するため、1番近くにいた猪のようなモンスターであるフレンジーボアに片手直剣用のソードスキル『スラント』を使用してみる。
「うん、ソードスキルの使い方はβテストの時と同じだね」
「了解だよ」
「はーい!」
「…心配」
「どういう事!?」
「それは僕も……」
「ちょっと!2人とも !」
「あ、来たよ。行くよー」
「こらー!セツくんのバカー!」
一方的に文句を言われつつ、僕は装備していた『スモール・ソード』を抜き、青色の豚のようなイノシシ──フレンジーボアがこちらに走ってきてるのを見て、一体を彼女に任せてモンスターに向かって走れば、後ろで僕に怒りながらも彼女は細剣を振るう。
彼もフレンジーボアを倒す彼女を見ていたけど、すぐに自分の近くにいたフレンジーボアに走っていき片手剣を振るう。
やっぱり、2人とも慣れてるじゃん。僕いらなくない?
そんな事を思いつつ、もう一度『スモールソード』を握り直して近くにいるフレンジーボアに向かって切りつける。
「次のーって。あれ、いない?」
「僕ら大分ここにいたからね」
「流石にポップが多いとは言っても、3人でこのスピードじゃいなくなるか」
「うーん、時間的に一旦ログアウトする?」
「現実世界だと何時頃かな」
「今は17時、2人ってご飯早くなかった?」
「流石に17時からは食べません!って、セツくんは平気?」
「大丈夫、今日は一人だから」
「それなら食べに来る?お母さんに伝えとくよ?」
「え、悪いよ……」
「全然大丈夫!一緒にご飯食べよ?」
「うーん、じゃあ迷惑じゃないなら」
「ふふ、わかった!それなら私、一旦ログアウトしてお母さんに伝えてこないと。……あれ?ログアウトボタンってどこ?」
「え?βテストの時と変わってないと思うけど」
「僕の方も確認するよ。…無い、ね」
「私も見つかんない………」
「…そんなまさか」
2人の言葉があまりにも信じ難くて、右手を軽く振ってメニューウィンドウを表示して慣れた手つきで操作する。
それから、βテストの時に使い慣れたログアウトボタンがあるはずの場所までタップしたりスクロールするが、肝心のログアウトボタン見つからない。
「…大丈夫かな、これ」
「ど、どうだろ……」
「まぁ、運営側が気付いてないわけないよ。実装当日からログアウトボタンが無いなんて大問題だよ」
「…そう、だよね」
「…とりあえず待つしか僕らには出来ない」
「だ、大丈夫!2人がいるんだもん!」
「…うん、そうだね」
「セツ、GMに問い合わせするフォームとかって……わっ!」
「きゃ!?」
「強制転送…!?」
ウィンドウで問い合わせページが無かったかを見ていたら、突然、目の前にいた2人の周りが青く光出し、自分のアバターまでもが光出して咄嗟に目を瞑る。
視界はすぐに晴れて、狩りきっていたダンジョンではなく一番最初に2人と合流した場所である始まりの街の真ん中にある広場。
周りを見間渡せば、プレイヤー達で溢れ返っていて正直、普段なら見えるはずの左端から右端まで全く見えず、ただただプレイヤーだらけで何も見えない。
「……こ、これって」
「…わからないけど、僕達から離れちゃダメだ」
「…もしかしたら、その説明を今からしてくれるかもね」
「…え?」
「──あれ、多分だけどGMだと思う」
上へと視線を向けて、2人に伝えれば2人とも息を呑む。
それもそうだろう。突然何も無くて綺麗な夕焼け空だったのに真っ赤に染まって、その中心には赤いローブを着た巨大なアバター。
多分GM本人か、それともGM以外の運営側。
これから起こることが想像つかないが、叔父さんがゲームにはチュートリアルというものがあると言っていたからそれのようなものだろう。
それか、さっき見つけたログアウトボタンが消滅している事の説明か。
一人でそんな事を考えていれば、やっぱり予想した通りでGMだったらしく、自身はGMの茅場晶彦だと名乗って話し始めた。
そして次々に語られる内容は、赤ローブを着たGM──茅場晶彦から言われた言葉は想像を遥かに超えた言葉だった。
あの日を、一生忘れる事が出来ない──────
「……キリト」
「相変わらず頭の上に眼でもあるのかってぐらい、気付くの早いよな……」
「…何の用?」
「いや、見かけたから声をかけた。もしかして寝てたか?」
「寝てない、ただ」
「ん?」
さっきまで聞こえていた2人の声ではない、黒髪に真っ黒装備という全身真っ黒の少し平均の男子よりも高めな声を持つプレイヤーに目を向けるわけでもなく、目線の先にある空に目を向けて呟く。
脳裏に浮かんでいた景色を思い出しながら。
「──この世界に来た時の事を思い出してた」
「……あれからもう半年だな」
「…キリトは何でここに」
「あぁ、閃光様がセツナのこと探してたんだよ」
「…何でまた」
「ギルド勧誘じゃないか?」
「キリトが入ればいい、実力は君の方が上だ」
「いや知ってるだろ、俺は既に所属してるって」
そう言って、ポンっと胸に手を当ててるキリトを横目で見れば猫のシルエットに三日月の模様のマークの刺繍。
最近キリトが助けて加入する事になったギルド、月夜の黒猫団のマークだ。今は確か中層らへんを主に活動してるとかだったはず。
「…掛け持ち」
「無茶言うなよ!?」
「…はぁ、何であの人も諦めないのさ。そもそも僕は彼女に会った事すらない」
「さぁな、俺も諦めろって言ったんだがあれは諦める気は全くないな。まぁ面識無くとも向こうは攻略で見てるんだろ」
「……面倒くさ」
「セツナ」
視線はキリトには向けない。
どうせ、視線を向けたところでフードを被っているのだからキリトにこちらの顔は見えないし、話をするぐらいなら別にこれでもいいだろう。人と話す時の礼儀としては最悪だと思うけれど。
でも、キリトはこんな態度で話していても何も言わないし、普段通り後ろで座った音がしたから気にしてないんだろう。
「…その、もしお前が良かったら俺たちのギルドに」
「入らない」
「…はぁ、だよなぁ」
「…この会話何回目?」
「…いや、その、ケイタ達もセツナが一人なの気にしてるんだ」
「僕、彼らともまともに交流ないと思うんだけど」
「それは……」
寝っ転がっていた草むらから起き上がって、AGIにも振ってはいるがSTRを優先していたからか、軽くジャンプするだけでキリトとの距離は離れる。
僕のステータスはSTRとDEXを最優先した速攻型、次に優先してるのはAGIという完全にプレイスタイルがキリトから見ると狂戦士並らしい。
こっちからすればAGI特化型のキリトの方が狂戦士だと思う。
そう言えば、今日は確かキリトはギルドメンバーとレベリングだったはず。何でこんな所にいるんだか。
振り向きも足を止めることもしない。ただ、一応言っておく。
「それよりギルド全体のレベリングするのはいいとは思うけど、階層によっては最近罠が多発してるから気を付けなよ」
「…ありがとう」
「別に、それとサチって子にあんま無理させない方がいいと思う」
「…え?」
「彼女は前衛には向いてない。恐怖を感じるのは仕方ないとはいえ、モンスターの前に立って硬直し、目を瞑ってしまう人を前衛に置くのは完全にアウト」
「……そう、だよな」
「…まぁ、気が向いたらサポートぐらいはする」
「っ、ありがとう」
キリトとの関係はβテストまで遡り、当時は紫色の髪をした大鎌のプレイヤーの姿もあったが、βテスト時に駆け抜けたボス戦でよく顔を合わせていた仲だったし客観的な意見も必要だろう。
正直、それだけの理由なのもあるが交流があまり無いとはいえ、月夜の黒猫団の人たちはキリトを通して何回か会ったことはあるから他人では無い。知り合いの知り合いだ。
転移門まで歩いていき、キリトに言われた閃光という二つ名を持つ人から逃げるために別の場所へ転移する。
月夜の黒猫団よりも面識がないと言うのに、良くもまあ攻略の時のプレイスタイルと噂だけでスカウトしようと考えるものだ。
最近出来たばかりで少数精鋭で、最前線で戦えるギルドを目指してると鼠から聞いたし、キリトの事も目に付けていたなら分からなくもないが、そのキリトは相手側もお互いに嫌ってるから分からない。
「転移 ロービア」
ホームタウンとしてる水の都と呼ばれる第4層の名を発したと同時に、目の前の景色が青い光へと移り変わる。
スキルによってプレイヤーが近くにいないことを確認し、視界を狭めていたフードを外して視界を広げる。
「久しぶりね、セツ」
「……ミト」
水の都と呼ばれるだけあって水に恵まれた景色は、どことなく現実世界のヨーロッパを連想させる風景は電子で作られたものであっても何度見ても美しい。
その美しさに何度目かの目を奪われていれば、最近ではよく聞く声に驚くことなく振り返れば大鎌を持つ薄紫色の髪を束ねたプレイヤー。
ソードアート・オンラインが始まって約半年。
現在の最前線は第27層。