ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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遅れて申し訳ありません。言い訳をいいますと
物語をどうしようかと悩んでいたのと、発売日当日に買った『ドラクエⅧ 3DS版』をやりこんでてすっかり忘れかけていたのを思いだし、ついでに物語の内容も浮かんだので、投稿させてもらいました。

楽しみにしていた方々。実に申し訳ありません。すみませんでした。m(__)m

さて、今回で、またまたあの人が出てきます。乞うご期待!

それでは、ゆっくりしていってね♪


3話 裏京都と大妖怪

俺たちは一度、全員がロビーに集まり、そこで待っていたアザゼル先生にロスヴァイセと合流する。

 

「すまない、待たせたな」

 

「別に大丈夫ですよ。アザゼルはきっちりと先生の仕事をしてからきたのですから。遅れたとしても文句はないですよ~」

 

「すまんな。じゃ、行こうか」

 

その後、俺たちはアザゼルの案内のもと、町の一角にある料亭へ向かった。

 

中に入ると、和風感が漂う雰囲気を感じた。その中を通されて通路を抜けると、個室が現れる。

 

戸を開けると――そこには着物姿のセラフォルーさんが座っていた。

 

「ハーロー!赤龍帝ちゃん、リアスちゃんの眷属の皆、それと、優子ちゃんとつーちゃん♪お久しぶりね~」

 

いつも通りの挨拶をするセラフォルーさん。

 

「貴女はいつも通りね、セラフォルー。」

 

「それが私だからね~」

 

そんな会話をする優子姉さんとセラフォルーさん。本当、この二人は仲がいいよね~。

 

「お、兵藤たちか」

 

匙がイッセーに声をかける……生徒会二年生も来ていたようだ。

 

「ここのお料理、とてもおいしいの。特に鶏料理は絶品なのよ☆赤龍帝ちゃんたちも匙くんたちも食べてね♪もちろん、優子ちゃんとつーちゃんもね♪」

 

俺たちが席に着くや否や、セラフォルーさんが料理を追加してくる。まぁ、正直、少しエネルギー不足でホテルの料理じゃ足りなかったからスゴく助かるんどけどね

 

「あ、セラフォルー。例の件はどうだった?」

 

優子姉さんが座ってすぐに訊いていた。

 

「……京都に住む妖怪の報告では、この地の妖怪を束ねていた九尾の御大将が先日から行方不明なの」

 

「やっぱり……」

 

どうやら、優子姉さんにも心当たりがあるようだ。

 

「もう、みんな分かっていると思うけども、十中八九、『禍の団(カオス・ブリゲード)』だよ」

 

またあいつらかぁ~……

 

「ったく、こちとら修学旅行で学生の面倒見るのに精一杯だってのにな。やってくれるぜ、テロリストどもが」

 

アザゼルが忌々しそうに吐き捨てた。額には小さく青筋が出ている……。

 

「どちらにしてもまだ公にすることはできないわね。なんとか私たちだけでことを収束しなければならないの。私はこのまま協力してくださる妖怪の方々と連携して事に当たるつもりなのよ」

 

セラフォルーさんがアザゼルの杯に酒を注ぎながら言った。

 

「ということで、お前らは旅行を楽しんでこい」

 

「え、でも……」

 

遠慮がちのイッセーにアザゼルは言った。

 

「何か事があれば呼ぶ。だが、おまえたちにとって修学旅行は貴重だろ?この件で動けるのは俺達だけ。それに、いざとなれば光輝達に手伝ってもらうさ。だから、任せておけ」

 

アザゼルが珍しく、いい事を言っていた。

 

「そうよ、赤龍帝ちゃん、ソーナちゃんの眷属ちゃんたちも。いまは京都を楽しんでね。私も楽しんじゃう!」

 

セラフォルーさんがそう言う。……貴女が一番京を楽しんでいる気がしているのは、俺だけでしょうか?

 

まぁ、とりあえず、明日に備えますかねぇ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、京都の観光日。

 

「じゃあ、野郎ども!行くわよ!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

桐生がメガネをキラリと光らせて、バス停を指し、男子は雄叫びをあげた。二日目は京都駅前のバス停から清水寺行きのバスに乗ることから始まる。そして、バスが来ると俺たちは乗り込んだが、松田と元浜がイッセーに嫉妬の眼差しを向けている。

 

そして、目的地に到着して俺たちは周囲を軽く探索し、坂を上って清水寺を目指す。

 

「ここ三年坂って言って、転ぶと三年以内に死ぬらしいわよ?」

 

「はぅぅぅぅっ!それは怖いです!」

 

アーシアが怖がり、イッセーに抱きついた。

 

「ど、どうしたゼノヴィア?」

 

「……日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな」

 

ゼノヴィアもイッセーに抱きついて怯えていた。

 

別になんともないんだけどね~。

 

清水寺につくと、教会トリオは異教徒やらなんやらと、叫んではしゃいでいた。

 

いい忘れていましたが、お寺や神社などでそのような事を言っていますと、日本の八百万の神々に丸聞こえ何ですよ?それ。

 

しばらくのんびりとしていたら、イッセーがアーシアと恋愛のくじをやっていた

 

「大吉だって。将来安泰。イッセーとアーシアはお似合いのようだね」

 

俺はアーシアのくじを見てそう言った。

 

「はい!嬉しいです!………うれしいです、本当に……」

 

アーシアは涙ぐんでいた。

 

「よかったな」

 

「えぇ、よかったわ」

 

「私もなんだか安心したわ」

 

ゼノヴィア、イリナ、桐生が嬉しそうにうんうんと頷いていた。

 

そんな事を見ながら、俺も嬉しいと思えたのだった。

 

「さーて、次は銀閣寺。パパッと行かないと時間なんてすぐに過ぎてしまうわよ」

 

どうやら次は銀閣寺のようだ。教会トリオの三人は銀だ銀だと騒いでいる。きっと銀閣寺を見たらショックをうけるんだろうな~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「銀じゃない!?」

 

俺たちは銀閣寺に着き、寺を見たゼノヴィアが開口一番に叫んだのがそれだった。

 

予想通りの反応で少しおもしろいと思ってしまった。

 

「……ゼノヴィアさんはお家でも『銀閣寺は銀で金閣寺は金。きっとまぶしいんだろうな』って瞳を輝かせて言っていたものですから」

 

アーシアが震えるゼノヴィアの肩を抱きながら、そう言った。

 

まぁ、そこまで信じていたら、誰だってショックをうけるよね~。

 

「建設に携わった足利義向が死んだから銀箔を貼るのを止めたとか、幕府の財政難で中止になったとか、諸説あるけど、銀箔じゃないわね」

 

銀閣も一通り回ると、近くのお店で昼食を済ませる。そのまま次は金閣寺へ向かった。

 

そして、金閣寺に着くと………

 

「金だっ!今度こそは金だぞ!!」

 

寺を見たゼノヴィアが開口一番に叫んだのがそれだった。

 

「金だぞぉぉっ!」

 

両手をあげてゼノヴィアが喜んでいる。金閣寺はすんごい金ピカだ。

 

金閣寺を見て回ったあと、お土産を買い、休憩所――お茶屋で一休みをすることに。

 

「どうぞ」

 

和服のお姉さんが入れたての抹茶を運んできてくれた。和菓子も添えて。

 

「……金ピカだった」

 

皆が茶菓子をいただいているのに、ゼノヴィアはいまだ覚めぬ夢の中のようだ。よほど金閣寺を見た感動がデカかったようだ。

 

……と、違和感を感じてお茶屋の方を振り返ると――松田、元浜、桐生が眠りこけていた。

 

俺は人間じゃない気配を感じていた。それはゼノヴィアが睨みつけている女性店員を見たときに確信した。

 

女性店員の頭部に獣耳が生えている。尻尾も出ていて……ふと周囲を見回せば、獣耳の方々ばかりだ。

 

イッセーたちは警戒して、それぞれが得物を握ろうとしたとき――。

 

「待ってください」

 

聞き覚えのある声に俺たちは振り返るとそこにはロスヴァイセさんがいた。

 

「ロスヴァイセさん!どうしてここに?」

 

……と、イッセーが叫んだ。

 

「えぇ、あなたたちを迎えに行くようアザゼル先生に言われました」

 

「先生に?何が起こっているんですか?」

 

「停戦です。というか、誤解が解けました。――九尾のご息女があなたたちに謝りたいと言うのです」

 

停戦?誤解って……あぁ~、もう狐さんや天狗さんに襲われることはないということだね

 

いまだ疑問に残るイッセーたちに獣耳のお姉さんが一人、前に出て深く頭を下げてくる。

 

「私は九尾の君に仕える狐の妖でございます。先日は申し訳ございませんでした。我らが姫君もあなた方に謝罪したいと申されておりますので、どうか私たちについてきてくださいませ」

 

どこに?――とイッセーが訊く前に狐のお姉さんが続けた。

 

「我ら京の妖怪が住む――裏の都です。魔王さまと堕天使の総督殿、他の皆さまも先にそちらへいらっしゃっております」

 

どうやら、俺たちが観光している間に上が誤解を解いてくれていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが足を踏み入れたのは――異界のような場所。

 

そこは江戸時代のような街並みで、古い家屋が建ち並び、扉や通りから面妖な者たちが顔を覗かせていた。

 

『妖怪がたくさんいる……』

 

そんな事を思いながら俺は歩いていた。……でも、やっぱり幻想郷の妖怪さんたちを見ていると、どうしても迫力や面白味がなくて、困るね。

 

…………そう言えば、紫さんが昨日の風呂場で言った、説明っていつ来るんだろう?……案外遅いんだね~。

 

すると、ヒソヒソと喋り声が聞こえてきた。

 

「……人間か?」

 

「いんや、悪魔だってよ」

 

「悪魔か。珍しいなや」

 

「あのキレイな外国の娘っこも悪魔か?」

 

「龍だ。龍の気配もあるぞ。悪魔と龍……」

 

「我々と同じ臭いのする者もいるぞ………」

 

妖怪たちの話し声が聞こえてくる。……ゴメンなさいね~、最後のそれは俺なのよ。

 

家屋が建ち並ぶ道を抜け、小さな川を挟んで林に入り進むと――巨大な赤い鳥居が出現した。

 

その鳥居の先に大きく古い屋敷が建っている。

 

「お、来たか」

 

「やっほー、皆☆」

 

アザゼル先生とセラフォルーさんがいて、近くに光輝兄さんたちの姿が見えた。

 

光輝兄さんの姿に俺と優子姉さんと夕麻以外のメンバーが驚いていた。

 

そんな中で、アザゼル先生とセラフォルーさんの間には――先日、奇襲を仕掛けてきた九尾のお姫様がいる。

 

「九重さま、皆さまをお連れ致しました」

 

狐の妖の女性は報告を済ませると、ドロンと炎を出現させて消えてしまった。

 

お姫さまは一歩出てきて口を開いた。

 

「私は表と裏の京都に住む妖怪たちを束ねる者――八坂の娘、九重(くのう)と申す」

 

自己紹介と共に深々と頭を下げてきたお姫さま。

 

「先日は申し訳なかった。お主たちを事情も知らずに襲ってしまった。どうか、許して欲しい」

 

「ま、いいんじゃないか。誤解が解けたのなら、私は別にいい。京都を堪能できれば問題ないよ。二度と邪魔をしない限りね」

 

「そうね、許す心も天使に必要だわ。私はお姫さまを恨みません」

 

「はい。平和が一番です」

 

「えぇ、私も邪魔さえされなければ何もしないから」

 

「私もも同意ね。争い事は好きじゃないし」

 

ゼノヴィアやイリナ、アーシア、夕麻、優子姉さんは昨日のことを許すみたい。

 

「てな感じらしいんで、俺も別にいいって。顔を上げてくれよ」

 

「し、しかし…」

 

腑に落ちない様子の九重ちゃん。

 

そんな九重ちゃんの前に立った俺は、膝をついて目線を合わせる。

 

「えーと、九重で良いかな?なあ、九重はお母さんのこと心配なんだろう?」

 

「と、当然じゃ」

 

「なら、あんな風に間違えて襲撃してしまうこともあるよ。もちろん、それは場合によって問題になったり、相手を不快にさせてしまう。でも、九重は謝った。間違ったと思ったから俺たちに謝ったんだよね?」

 

「…………もちろんだとも」

 

俺は九重ちゃんの頭に手をそっと置い撫でながら言う。

 

「それなら俺たちは何も九重のことを咎めたりしないよ」

 

九重ちゃんは俺がそう言った途端、顔を真っ赤に染めてモジモジしながらつぶやいた。

 

「……ありがとう」

 

あら?なんで顔が赤いのかな?……もしかして、頭を撫でられるのは慣れていなかったかな?

 

「やりやがったな、あいつ」

 

光輝兄さんが遠くで呟いた。

 

「……なにさ、やりやがったって」

 

俺は光輝兄さんにいい放った。

 

「なに、気にするな。ただの独り言だ」

 

光輝兄さんはそう言った。……なんだか流された気がするのは気のせいかな?

 

「それよりも優子、ツバサ。お前らも確りと挨拶をしろよ」

 

レイジ兄さんがそう叫んできた。……あ、ほんとだ。忘れてたよ。

 

「そうね。自己紹介がまだったわ。

 始めまして、私の名前は結城 優子と申します。私はそこにいるツバサの双子の姉です。地球連邦軍に所属しております。どうぞ、よろしくお願いいたします。」

 

「俺は結城 翼と申します。俺は結城 優子姉さんと双子の弟で、同じく地球連邦軍に所属しており、地球連邦軍 特殊部隊 特別調査班 総隊長をやっております。どうぞよろしくお願いします…九重姫」

 

優子姉さんと俺は正座をして頭を下げる。

 

「あ、こちらこそ、よろしく頼むぞ」

 

慌てて正座をして頭を下げた九重ちゃん。それでも、作法が乱れていなかった。

 

九重ちゃんは頭を上げると、皆の方を向いて再度頭を下げた。

 

「……咎がある身で悪いのじゃが……どうか、どうか!母上を助けるために力を貸して欲しい!」

 

それは、九重ちゃんの心からの悲痛な叫びだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

この京都を取り仕切る妖怪の大将――九尾の狐こと『八坂』は、須弥山の帝釈天から遣わされた使者と会談するため、数日前にこの屋敷を出たという。しかし、八坂は帝釈天の使者との会談の席に姿を現さなかった。不審に思った妖怪サイドが調査したところ、八坂に同行していた警護の烏天狗を保護したそうだが、瀕死の状態に陥っていた。その烏天狗が死の間際、八坂が何者かに襲撃され、さらわれたことを告げたらしい。それで、京都にいる怪しい輩を徹底的に捜していたとき、イッセーたちは誤解によりあの社で襲撃を受けた。

 

その後、アザゼルとセラフォルーが九重たちと交渉し、冥界側と関与が無い事を告げ、手口から今回の首謀者が『禍の団(カオス・ブリゲード)』の可能性が高いと情報を提供した。

 

ちなみに、光輝兄さんいわく、アザゼルに呼ばれてここに来た際に…九重たちに「地球連邦軍も関与していない」ことを告げておいた。

 

「かなり面倒だな……」

 

光輝兄さんがため息を吐いた。

 

「ま、各勢力が手を取り合おうとすると、こういうことが起こりやすい。オーディンのときもロキが来ただろう?今回はその敵役がテロリストどもだったわけだ」

 

アザゼルが不機嫌そうに言った。

 

「総督殿、魔王殿、光輝殿、どうにか八坂姫を助けることはできんのじゃろうか?我らならばいくらでも力をお貸し申す」

 

と、天狗のお爺さんもそう言う。

 

すると、天狗のお爺さんが一枚の絵画を見せる。

 

「ここに描かれておりますのが八坂姫でございます」

 

そこに描かれているのは、巫女装束を着た金髪の女性。面影が九重に似ているな…。

 

……まてよ。でも、もう一人、何処かで見たことがあるようなぁ~。……うぅ~ん。何処だっけ?

 

「八坂姫をさらった奴らがいまだにこの京都にいるのは確実だ」

 

アザゼルがそう口にした

 

「どうして、思うんですか?」

 

イッセーが訊く。アザゼルはうなずきながら説明をする。

 

「京都全域の気が乱れていないからだ。九尾の狐はこの地に流れる様々な気を総括してバランスを保つ存在でもある。京都ってのはその存在自体が大規模な力場だからな。九尾がこの地を離れるか、殺されていれば京都に異変が起こるんだよ。まだその予兆すら起きていないってことは、八坂姫は無事であり、さらった奴らもここにいる可能性が高いってわけだ」

 

アザゼルの言う通りの考えで合っているね。俺も龍脈やらいろいろな力を感知しているが、乱れ事態が起きていないし…。何より、京都に張っている結界がなんの異常もみられないもの。

 

「そう言えば、ツバサ。京都に張られている結界には異常はないのか?」

 

光輝兄さんが俺に聞いてきた。

 

「えぇ、全く異常はないよ」

 

「そうか…。ならセラフォルー、悪魔側のスタッフはすでにどれぐらい調査をおこなっている?」

 

「つぶさにやらせているのよ。京都に詳しいスタッフにも動いてもらっているし」

 

それを聞いたアザゼルはイッセーたちを見渡すように視線を向ける。

 

「おまえたちに動いてもらう事になるかもしれん。人手が足りなさすぎるからな。特におまえたちは強者との戦いに慣れているから、対英雄派の際に力を貸してもらうことになるだろう。悪いが最悪の事態を想定しておいてくれ。あと、ここにいないシトリー眷属には俺から連絡しておく。それまでは旅行を満喫してていいが、いざというときは頼むぞ」

 

『はい!』

 

イッセーたちはアザゼルの言葉に応じる。

 

「……どうかお願いじゃ。母上を……母上を助けるのに力を貸してくれ……。いや、貸してください。お願いします」

 

九重が三度手をつき、深く頭を下げる。両脇の狐の女性と天狗の爺さんも続く

 

――悲痛だ。

 

小さな子が頭を下げ、声を涙で震わせていた。

 

俺は体の奥底から怒りが沸々とこみ上げてくるのが感じ取れた。

 

「ところで、お前さんが言っていた、京都の結界ってなんのことだ?……あれは京都の御大将『八坂姫』が管轄しているはずじゃないのか?」

 

アザゼルが俺に聞いてきた。

 

「アザゼル。それは俺がツバサに頼んだんだ。京都の結界を強化できないのかってな。」

 

「そうだったのか?」

 

「うん。光輝兄さんの言う通りだよ。結界の強化をするのに、初めて京都にきたさいに、八坂さんと出会って、いろいろ喋ってるうちに仲良くなって京都の結界を任されるようになったんだよ。ただ、裏京都には来ることがなかったから、八坂さん以外の京都の妖怪に会うのは初めてだけどね。」

 

俺がそう言うと、アザゼルが納得したような顔になった。

 

「なるほどな。……でも、その言い方だと、まるで京都以外の妖怪には会ったことがあるみたいだぞ?」

 

「そうだよ?だって、俺の部隊には――――」

 

「私達がいますからね」

 

突然俺の言葉に被るように女の人の声が聞こえてきた。

 

突然、ここにはいない別の誰かの声にいっそうに慌て出して、戦闘体制になるアザゼルやイッセー達。……しかし、俺や光輝兄さん達はどうやら気配で誰かが分かったようで、全く慌てず落ち着いていた。

 

「いまやっと来たんですね――紫さん」

 

「はぁ~い。光輝達はお久しぶりね~。ツバサは昨日ぶりかしら」

 

突如、空中に割れ目が出来たと思えばそこから女の人が出てきた。独特な紫色のドレスの様なものを着た人がいたのだった。

 

そう、この人はあの八雲紫さんだ。

 

「……お前はいったい何者だ」

 

アザゼルが光の槍を出しながら、警戒心MAXで紫さんを睨んでいた。他のメンバーも同じ様に戦闘状態になっており、九重ちゃんは、使者の二人に守られるようにしていた。

 

そんなメンバーの中で、光輝兄さんが前に出て、紫さんを庇うように立った。

 

「そう警戒するな。こいつは俺達の仲間でツバサと同じ部隊にいる奴だよ。だから、その武装を解け」

 

光輝兄さんがそう言うと、アザゼル達が武装を解いた。

 

「そうか、それは悪かったな。いったいこいつは何者なんだよ。いきなり気配もなく現れたと思えば、空中に割れ目が出来てそこから出てくるなんて。非常識だぞ」

 

アザゼルが呆れた様にそうはいた。

 

「そんな事を言われてもな。なぁ、ツバサ」

 

すると、光輝兄さんが俺にふってきた。

 

「まぁ、そうだね。幻想郷では非常識が常識で、常識にとらわれない場所だからね~。こうして、あり得ない力を持つ人たちが沢山いるんだもの。

……あ、そうだ。因みにだけども、あのときアザゼル達が武装をしていたけども、たとえあの場で戦闘になっても、そこにいる紫さんには誰も勝てないよ?だって、光輝兄さんを負かす数少ない実力者なのですもん」

 

俺の言葉に驚くアザゼル達。それはそうだ。そもそも、“伝説の大妖怪”や“妖怪の賢者”なんて呼ばれている人物相手に戦おうとするやつなんて、余程の戦闘狂ぐらいだよ。

 

「ツバサの言う通り、この人は俺でも倒せないぜ?そもそも、能力的に相性が抜群に悪すぎるからな。

 ましてや、“伝説の大妖怪”やら“妖怪の賢者”なんて呼ばれている人物相手に戦うほうがおかしいさからな」

 

どうやら、光輝兄さんも俺と同じ考えのようだ。

 

すると、九重ちゃんが妖怪の賢者の言葉に反応していた

 

「妖怪の賢者………ってもしかして、あなた様はあの“八雲 紫”様でございますか?」

 

八雲紫?っとイッセー達が声を揃えて“?マーク”を浮かべていると、アザゼルも驚きの声で叫んでいた。

 

「八雲紫って、大昔に存在していた伝説の大妖怪じゃねぇーか!? 最強の妖怪と言われて、その力は神をも越えると言われていた。だが、あるとき突然姿を消したと聞いたことがあって、そもそもそんな妖怪が存在するかどうかも怪しいとさえ言われていた伝説の大妖怪が、まさか本当に存在するなんてな。」

 

どうやら、アザゼル並みの古い人物なら妖怪じゃなくても知っていたようだ。

 

「イッセー。かなり前に、ライザーやソーナさん達と戦う前に、特訓したのは覚えてる?」

 

俺はイッセーたちに聞いた。

 

「あ、あぁ、覚えてるけど、それがどうしたんだ?」

 

イッセーは困惑しながらも俺に聞いてきた。

 

「じゃ~、その時にいろんな人達をあなた達に付けたのは覚えてるかな?」

 

俺の言葉に全員頷いていた。

 

「もちろんだ。あの人の扱きは地獄だったから、忘れられるわけがないぜ」

 

震えながらそう言うイッセー。どうやら、幽香さんの扱きはイッセーにトラウマとなっているようだ。

 

「なら話は早いね。その時に、その人達の事を軽く説明したでしょ?幻想郷とかいろいろ」

 

「そういえばそうだっけ?」

 

「そうなの。話は続けるけども、そんな桁違いな力を持つ人達の住んでいる“幻想郷”を造った人こそ、そこにいる八雲 紫さんってわけなんだよ~」

 

『えええええええええぇぇぇ!!!』

 

俺の言葉にまた驚いて叫ぶイッセー達。やっぱり反応がおもしろいや。

 

「はは、マジかよ…」

 

「あと、更にぶっちゃけますと、イッセーを扱いてくれた、幽香さんは、強者揃いの幻想郷でも、五指に入るほどの実力者なんだよ~。だからハッキリ言うとね、あの人がかなり手加減してたとはいえ、よく生きていたよね~イッセー。」

 

その言葉にイッセーはまるで絶望しきった顔になった。……どうやら、イッセーはあの人がしてきた攻撃は手加減などないと思っていたらしい。あれ以上の攻撃がまだあると思うと、本気で死ぬんじゃね?と思っているみたいだ。

 

「話は終わったか?なら、紫さん。どうして貴女がここ京都に?」

 

光輝兄さんが俺達が話終わったタイミングで喋りだした。

 

「それはね…私――じゃなくて、私の家族で式神でもある藍がお話があるのよ」

 

そう言うと、紫さんのいる隣に一際大きなスキマが開いて、そこから二人の女の人が出てきた。

 

片方は九尾の狐の妖怪でもう片方は猫又の九重ぐらいの小さな女の子だ。

 

「藍、橙。挨拶をしなさい」

 

「はい、紫さま。私の名前は八雲 藍。私は紫さまの式で、此方が私の式神の橙です」

 

「八雲 橙です!よろしくお願いしましゅ!」

 

「橙、久しぶりだね。元気だった?」

 

俺が橙に話しかけると、橙は嬉しそうに此方をみて走って胸に飛び込んできた。

 

「お久しぶりです!つばささま!」

 

「よしよし、橙はいつも元気だね~」

 

俺は橙をあやしている間に紫さんに、アイコンタクトで『いまのうちに』と伝えた。

 

紫さんはわかったようで、藍さんに話をしかけた。

 

「藍、話があるのでしょう?その九尾のお姫様に…」

 

どうやら、藍さんは九重ちゃんにお話があるようだ。

 

「はい。そうです紫さま。九重…といったかな?」

 

「は、はい。私は九重と申します」

 

九重ちゃんは藍さんにどうやら緊張しているようだ。

 

藍さんって、紫さんに負けないくらい、スゴく綺麗な人だからなぁ~……

 

「すまんな、お前のお母さんを守れなくて…」

 

「え…」

 

藍さんの言葉に九重ちゃんは固まった。他のみんなもそうだ。俺や光輝兄さんたちも同じ反応をしている。

 

「実はな、お前の母『八坂』は、血の繋がった私の実の“妹”なんだ…」

 

えぇ!?マジですか!……藍さんの言葉にこの場にいた全員が驚いていた。藍さんと一緒にいた優子姉さんだけは驚いていなかった。

 

「ほ、本当ですか?」

 

その中でも特に九重ちゃんは驚いて動揺していた。

 

それはそうだよな。九重ちゃんの母親の八坂さんのお姉さんとなれば、九重ちゃんにとっては同じ母親の血を受け継いで、おば様にあたる人物になるのだからな。

 

「私は小さいとき、紫さまの式となり、お前の母『八坂』とは離ればなれになったが、忙しい中も、八坂は私に手紙を送って来てくれた。私もそんな八坂が可愛くて、いつも手紙を書いて送り返していたんだが、ある日突然手紙が来なくなった。私は不思議に思いながらも、待ってた所に……八坂が何者かに誘拐されたと紫さまに聞かされた。それを聞いた私は絶望と怒りに苛まれた。私はすぐにでも京都に乗り込んで、八坂を連れ拐った輩を殺そうと思ったが………ふとあることに気がついたんだ。――そう、それはお前……九重の事だ」

 

「……え?」

 

突然の事に驚く九重ちゃん。

 

「実はな、お前の母 八坂は手紙で『藍姉様、私に子供が出来ました。しかも女の子です。私に似ていてとても愛らしい子です。私はいま物凄く嬉しゅうございます!』と…、八坂はお前が生まれてからずっとお前の話を手紙に書いていたんだ。私はその手紙を見るだけで、どれほどお前のことが大好きかがわかってな。とても嬉しかった。――だからこそ、おもったんだ。八坂が連れ去られたと聞いたとき、一番ショックを受けるのがお前だと思ってな。」

 

すると、突然藍さんが九重ちゃんを優しく抱き締めた。

 

「辛かっただろう。悲しかっただろう。一国の姫君とはいえ、お前はまだ子供だ。主がいないからとて、そんなに気張らなくてもいい。

だからいまは、存分に泣くといい。お前はいままで感情的になりつつも、頑張って絶えていたんだろうが、もう、辛いのは我慢をしなくてよい。さぁ、泣いて全てを吐き出せ。なんせお前は――――まだ、子供なのだからな…」

 

藍さんは優しい声で九重にいいながら頭を撫でていた。

 

すると、九重ちゃんはフルフルと震えだし、嗚咽を出しだした。

 

「……ぁさま………おかぁさま…ヒック…グス…おかあさまァァ………うわぁぁぁぁぁん!!会い、会いたいよぉぉ…おかあさまァァァ!うわぁぁぁぁぁん」

 

九重ちゃんはとうとう泣き出してしまった。藍さんは服が汚れるのを気にせず、ひたすら九重ちゃんを優しく抱き締め頭や背中を撫でていた。

 

そんな様子をみんなは悲痛な面持ちと決意した瞳で見ていた。――どうやら、全員の気持ちは同じ様だ。

 

『禍の団(カオス・ブリゲード)』……こんな幼い子を不安で押し潰し泣かした罪は重たいぞ?覚悟は確りできてるんだろうな……

 

お前らを…絶対にゆるさねぇ

 

俺たちは新たな決意を胸に、いずれ来る戦いの準備をするのだった

 




どうでしたか?久しぶりに頑張りすぎて気づけば10000字を越えていました。

ツバサ「駄作者…遅い…」

『いや、誠にもう訳ありませんでしたぁぁ!!』orz←ドゲザ

そして、紫さまの実力…予想以上だったのです。あの光輝が数少ない負ける人物だったとは……恐ろしきスキマ妖怪。

ツバサ「あの紫さんですもの。だてに幻想郷 最強なんて言われていませんよ」

『まぁ、それもそうだねさて、次回は戦闘回!……だと思いたいです。』

ツバサ「次は、こんなにも遅く投稿しないでくださいね。……次はありませんから」

『サー、イエッサー!!』

『ゴホン…さてさて、そんなこんなではありますが、また次回お会いしましょう。それでは――』

「『バイバ~イ!』」

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