ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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4話 観光

昨日は、大変だったね~……。え?なにが大変だったって?それはね~……あの九重ちゃんと別れた後、藍さんがヤル気満々ならぬ殺る気満々で、それを紫さんと橙と俺の三人で頑張って止めてたの。流石に骨が折れました~(物理的に…)

 

そんなダメージを負いつつも、俺と優子姉さんはイッセーと同じ班なので、天龍寺に来ているのですよ。

 

「おぉ、お主たち、来たようじゃな」

 

……と、天龍寺に着くと九重ちゃんが待っていたのだ。

 

「九重ちゃんだ」

 

「うむ。約束通り、嵐山方面を観光案内してやろうと思うてな」

 

イッセーが九重と会話を交わしていると……

 

「はー、かわいい女の子だな。なんだ、イッセー、おまえ現地でこんなちっこい子をナンパしてたのか?」

 

「……ちっこくてかわいいな……ハァハァ……」

 

イッセーの悪友が変態的な目で九重ちゃんを見ていた。

 

……そして元浜さん。なんでそんなに、人一倍興奮しているのかな?―――あ、そういえばこの人ロリコンさんだったっけ?……絶対に九重ちゃんには近づけさせないでおこう。でないと、さっきから、スキマの中から片目だけを覗かせて殺気を出しながら睨らんでいる藍さんに殺されちゃいそうです。……あ、元浜が冷や汗を滝のように流しだした。

 

そんな事を思っていたら、桐生が元浜を突き飛ばして九重ちゃんに抱きついた。

 

「やーん!かわいい!!何よ、兵藤、どこで出会ったのよ?」

 

「は、放せ!馴れ馴れしいぞ、小娘め!!」

 

抱きついて頬ずりしている眼鏡女生徒――桐生から、九重ちゃんは嫌がって離れようとしている……が、どうも、その行動と言動が桐生を喜ばせるだけみたいだ…。

 

「お姫さま口調で嫌がるなんて、最高だわ!!キャラも完璧じゃないの!」

 

そんな二人を横目に、俺はイッセーに念話を送った。

 

「(イッセー、いまのうちに適当な自己紹介をしなくてはいけませんよ!)」

 

「(わかった。確かにその方がいいな)」

 

俺とイッセーが念話を終えると、イッセーが口を開いた。

 

「こちらは九重。俺やアーシア、それにツバサちゃんや優子ちゃんのちょっとした知り合いなんだ」

 

「九重じゃ、よろしく頼むぞ」

 

イッセーが紹介すると、九重は堂々とした態度で名乗る。

 

「それで、九重。観光案内って、何をしてくれるんだ?」

 

イッセーが訊くと、九重は胸を張って自信満々に答える。

 

「私が一緒に名所へついて回ってやるぞ!」

 

「じゃあ、さっそくこの天龍寺を案内してくれる?」

 

「もちろんじゃ!」

 

俺が頼み込むと、九重は笑顔を輝かせた。

 

――――――――――――――――――――――

 

九重に案内され、天龍寺を回る。

 

一生懸命に京都の町を案内している九重の微笑ましい姿を見ながら、あとをついて行く俺と優子姉さん。

 

その更に後方に、こちらの様子をひたすらジー…っと見ている藍さんと、その付き添いの紫さん。どうやら橙は疲れて紫さんのスキマの中で寝ているようだ。

 

いまは、大方丈裏の庭を見ているが、色づいた秋の山景色と池で泳ぐ鯉がマッチして、実に見事なものだった。さすが京都だねっと思うのでした。

 

「ここの景色はどうじゃ。絶景じゃろ?何せ世界遺産じゃからな」

 

世界遺産だけはある庭をあとに、法堂に案内される。

 

堂内に入ると、そこの天井には――。

 

「でかいね~、ルーツ」

 

『えぇ、大きいわね。』

 

俺はルーツにも聞きながらそんな感想が口から出たのだった。

 

「これは雲龍図。どこから見てもにらんでいるように見える『八方睨み』じゃ」

 

確かに、全角度から見てもにらまれているように見えるね~。おもしろい。

 

あ、そうそう。“睨み”で思い出しとけども、ダラ・アマデュラの睨みは凄かった。人生で初めて睨みが怖いなんて思ったぐらいだもの。……そのあと、つい漏らしちゃったのは、恥ずかしすぎて死にそうだった。更に、涙目になっていたせいか、ダラ・アマデュラさんに逆に心配をかけられる始末…。あれほどの黒歴史があるのだろうか。

 

「さて、九重。次はどこだ?」

 

イッセーが訊くと、九重ちゃんは各方向を指差して楽しそうに言う。

 

「二尊院!竹林の道!常寂光寺!どこでも案内するぞ!!」

 

――あはは♪こりゃ参ったね~。

 

俺は九重の天真爛漫っぷりを見てちょっと笑ってしまった。

 

なんせ、九重ちゃんは心の底から楽しそうにして笑っていたからだ。……昨日まではだいぶん精神が参っていたようだけども、藍さんのおかげで和らいだようだ。

 

そして、後ろをチラッと見ればスキマから嬉しそうな顔で見ている藍さんがいたのだった。それを見た優子姉さんが苦笑していたのは記憶に新しい…。

 

こうして俺たちは九重ちゃんの先導のもと、嵐山観光をすることになった。

 

――――――――――――――――――――――

 

「かなり回ったね~」

 

俺たちはいま九重ちゃんの勧めで、湯豆腐屋で昼食を取っている。

 

軽く息を吐いた俺は、イッセーたちが座っている席の一つ隣にある、二人掛けの席に優子姉さんと座っている。

 

天龍寺のあと、九重の案内で嵐山を見て回った。二尊院に竹林の道を見て回って…竹林の道では、人力車に乗って移動した。運よくペア人数分停まっていたから、全員で移動することができたんだよ。

 

「ほら、ここの湯豆腐は絶品じゃ」

 

隣の席では九重ちゃんが全員に湯豆腐を救って器に入れて渡していた。

 

みんなが湯豆腐を堪能していた。

 

俺も食べてはいたが、隣の優子姉さんは猫舌なので、ハフハフ言いながら頑張って食べていた。たまに熱すぎたのか、顔を赤くしながら涙目になって悶えていた。

 

そんな優子姉さんを介抱しながらも、俺も湯豆腐を堪能していた。……うん、美味しい。

 

「あ、イッセーくん」

 

すると突然、聞き覚えのある声が聞こえてきた。あ、この声は。

 

「おおっ木場か。そういや、今日はおまえのところも嵐山攻めるんだったな」

 

「うん。天龍寺行ってきたのかい?」

 

「ああ、見事な龍が天井にあったぜ」

 

イッセーと木場がそんな話をしていると「秋の嵐山、風流なもんだぜ」とまたまた聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「おう、おまえら、嵐山堪能しているか?」

 

やっぱりアザゼル先生だった。しかも真昼間から日本酒を飲んでるし……

 

「先生!先生も来てたんですか?って、教師が昼酒はいかんでしょう」

 

イッセーが非難すると、「その通りです」と対面の席に座る女性――ロスヴァイセさんが同意する。

 

「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです。生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三言ってはいるのですが……」

 

ちらりとロスヴァイセ先生の顔を見ると、物凄く嘆息しながら呆れていた。

 

「まぁ、そういうな。嵐山方面を調査した後でのちょっとした休憩だ」

 

――調査ね~。

 

「だがな、ロスヴァイセ。ちったぁ要領良くいかないとよ。そんなだから、男のひとりも出来ないんだぜ?」

 

バンッ!アザゼル先生の一言に真っ赤になってテーブルを叩くロスヴァイセ先生。

 

「か、か、彼氏は関係ないでしょう!バカにしないでください!もう、あなたが飲むぐらいなら私が!!」

 

アザゼル先生の杯を奪って、ぐびっぐびっ……と見事に酒を飲み干したロスヴァイセ先生。……あんなに一気に飲んでも大丈夫なのかな?

 

「ぷはー。……だいたいれすね、あなたはふだんからたいどがダメなんれすよ……」

 

「い、一杯で酔っぱらったのか?」

 

驚くアザゼル先生だが、ロスヴァイセ先生は二杯めの酒を注ぎ、豪快に飲み干した。目の座ったロスヴァイセ先生は、アザゼル先生に絡みだす。

 

「わらしはよっぱらっていやしないのれすよ。だいたいれすね、わらしはおーでぃんのクソジジイのおつきをしてるころから、おさけにつきあっていたりしててれすね。……だんだん、おもいだしてきた。あのジジイ、わらしがたっくさんくろうしてサポートしてあげたのに、やれ、おねえちゃんだ!やれ、さけだ!やれ、おっぱいだって!アホみたいなことをたびさきでいうんれすよ。もうろくしてんじゃないかってはなしれすよ!ヴァルハラのほかのぶしょのひとたちからはクソジジイのかいごヴァルキリーだなんていわれててれすね、やすいおきゅうきんでジジイのみのまわりのせわしてたんれすよ?そのせいれすよ!そのせいでかれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできないんれすよぉぉぉぉぉぉ!!うおおおおおおおおおんっ!!!」

 

ロスヴァイセ先生が大号泣して、イッセーたち…いや、俺や優子姉さん、それに原因のアザゼル先生もどうしたらいいのかわからなくなってきた……。

 

そんな中、アザアゼル先生が頭をポリポリとかきながら言う。

 

「わかったわかった。おまえの愚痴に付き合ってやるから、話してみな」

 

アザゼル先生がそう言うと、ロスヴァイセ先生は明るい表情になる。

 

「ほんとうれすか?アザゼルせんせー、いがいにいいところあるじゃないれすか。

 てんいんさーん、おさけ、じゅっぽんついかでー」

 

「………大丈夫なのかな?」

 

『仕方がないわ。ああなっては、全てを吐き出すまで戻らないものよ。巻き込まれる前に早く離れた方がいいわ』

 

ルーツがそう言ってきた。

 

「そういうことだ。おまえら、さっさと食って他に行け。ここは俺が受け持つからよ」

 

イッセーたちが顔を見合わせ、アザゼル先生の言う通りに昼食を急いで平らげる。

 

「ひゃくえんショップ、サイコーれすよー!アハハハハ!」

 

店を出る寸前、酔ったロスヴァイセの爆笑が背後から聞こえてきた。

 

……アザゼル先生、頑張って…。

 

――――――――――――――――――――――

 

店を出た俺達は、次の目的地――渡月橋をめざしていた。

 

それから数分ほど観光街をあるくと目の前に桂川が姿を現した。

 

すぐ目の前には、古風な木造の橋が架かっている。

 

『着いたわ。渡月橋!』

 

「着いたねぇ~、ルーツ、優子姉さん」

 

「えぇ、着いたようね」

 

そんな、会話をしているなか、橋を渡る寸前でイッセーたちの会話が盛り上がりだした。

 

「知ってる?渡月橋って渡りきるまでうしろを振り返っちゃいけないらしいわよ」

 

「なんでですか?」

 

「それはね、アーシア。渡月橋を渡っているときに振り返ると授かった知恵が全て返ってしまうらしいのよ。エロ三人組は振り返ったら終わりね。真の救いようのないバカになるわ」

 

「「「うるせえよ!」」」

 

「あと、もうひとつ。振り返ると、男女が別れるって言い伝えもあるそうね。まぁ、こちらはジンクスに近いって話だけど――」

 

「絶対に振り返りませんから!」

 

桐生の説明を遮って、アーシアが涙目でイッセーの腕にしがみついた。

 

ぎゅっ。

 

――すると、右隣から誰かが引っ付いてきた。……いや、誰かじゃないよね、一人しかいないし………で?

 

「何してるの?――優子姉さん」

 

俺は右腕にしがみついている優子姉さんに訊いた。

 

「だ、だって振り替えると男女が別れるのでしょう?それって、別に恋人同士じゃなく、家族にも言える事だと私は思うのよ。私は、絶対につーくんと離れたくないわ!……絶対に、死ぬまで――いや、死んでも永遠に家族でいるんだから!」

 

優子姉さんはそんな事を言った。……うれしいんだけどね?――そのぉ~、もうちょっと人目の無いところで言って欲しかったなぁ~なんて思ったりしちゃった。

 

――だって、むちゃくちゃ回りがみているんですもの。

 

「気にせんでいいと思うのじゃが……。男女の話は噂に過ぎんのじゃ」

 

九重ちゃんはそう言ったが、優子姉さんも、イッセーにしがみついたアーシア達も離れなかった。

 

俺はそんな様子を見ながら苦笑していると、無事に渡りきることができて、対岸に到着した。くっついていた優子姉さんは、パッと腕から離れてくれた。

 

 帰りはどうしようかな?

 

俺は帰りの渡月橋を渡ることを考えていると―――

 

「――っ!!」

 

俺は嫌な予感を察知し、全員に呼び掛けようとした

 

「みんな――」

 

俺の声が届く前に、全身を生暖かい感覚が襲った――。


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