ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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これを始めてから100話目。明後日でこの作品を作ってから一年ですよ。時が経つのは早いですね~。

そして、お気に入り件数がなんと581件も!本当に、この作品を見てくださっている皆さま方には感謝しきれません!本当にありがとうございます!!

さて、今回は戦闘シーンでございます。……主人公、ツバサちゃんはどのような仕事をしてくれるのでしょうか。

前置きは置いておいて――さぁ、どうぞ……


    ゆっくりしていってね♪


6話 ツバサVS英雄派

俺達はいま、英雄派の人達とたたかっている。

 

俺やイッセーといった大火力メンバーは前衛で戦っている。

 

そんな俺だが、日本刀であり、妖刀の『村雨』を持って敵を凪ぎ払っていた。

 

「一刀流――“紫電”」

 

バチチチ!!

 

刀から放射線に紫色の電撃が飛び目の前の敵を焼き払う。

 

「一の太刀……鳴神!」

 

ゴロロ……ピシャン!――ズガガガガ!

 

俺は今度は刀を天に上げて電撃を放ち、空から雷を落とす。

 

『ギャァァァ!?』

 

ドガァァァン!

 

盛大な爆発とともに敵は吹っ飛んだ。

 

「……むぅ…敵が以外と多いいな…。少し面倒だ…」

 

ざっと見積もっても、あと百人位はいると思う。

 

「…………こうなれば、二刀流でいくか…」

 

俺は、右手に『村雨』を持って、空いた左手はスキマから妖刀『村正』を取り出した。

 

「二刀流一式――“紫電双雷斬”!」

 

これは、二刀に紫色の雷を纏いて、それを二刀同時に振って雷の斬撃を飛ばす技だ。

 

雷の斬撃は綺麗な三日月の様な形で敵を切り裂いていく。威力は弱めており、殺傷能力は低く触れて気絶する程度だ。

 

「――ふぅ~、あらかたこっちの敵は片付いたかな?……さて、他の人達は大丈夫かな?」

 

俺が後ろを向くと…

 

イッセーのもとに襲来する複数の影――制服姿の女生徒が数名いた…。

 

さっきから気になっていたんだけれども、どうも、曹操たちが着ている制服は英雄派のユニホームらしい。

 

「赤龍帝の相手は私たちがします!」

 

そう言いながら槍や剣を携えた数名がイッセーに突貫していく。

 

「――っ。やめておけ、女性では赤龍帝に勝てないよ!」

 

腰に何本も剣――魔のオーラをまとっているのを帯剣している白髪の優男が叫ぶ。

 

……てか、あれ全部魔剣なの?……へぇ~。あんなに魔剣を扱う人って、地球連邦軍のメンバー以外で初めて見たかも…。中々の潜在能力ですね~。

 

「『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』ッッ!!」

 

バババッ!!と、女生徒の服が弾け飛ぶ音が聞こえてきた。

 

そっちの方向に向くと、なにか変な決めポーズ?らしき事をしているイッセーが全裸になって大切な所を隠している女性の前で立っていた。

 

「い、いやぁあああああああっ!!!」

 

「魔術で施させた服が……まるで役に立たないなんて!!」

 

女生徒たちは悲鳴をあげて、力強く自身の裸体を手で隠している。そして、そのまま素早く近くの家屋に逃げ込んでいった。

 

「さ、最低な技じゃな。こんなに酷い技を見たのは生まれて初めてじゃぞ……」

 

九重がイッセーの技に呆れていた。……うん、俺もそう思う。あとで、優子姉さんにお説教くらいそうだね。

 

俺は女生徒が逃げる際に放棄していった武器を、村雨と村正を使い粉々に破壊し切り裂いた。

 

「やはり、女では赤龍帝に勝てない上に、結城翼の実力は未知数だな……なかなか厳しいね。さすがだよ、おっぱいドラゴンと“黒き疾風の破壊者”」

 

優男はにっこり微笑んだあと、他の英雄派メンバーに言う。

 

「皆も気をつけてほしい。彼ら二人は赤龍帝と地球連邦軍。赤龍帝のほうは歴代でも最も才能がなく、力も足りないが――。その強大な力に溺れず、使いこなそうとする危険な赤龍帝だよ。対して、結城翼のほうは仲間を守り、気にしながらも引くことがなく、強大な力を未だに隠し持っているほどだ――。二人は強大な力を持ちながら、その力に過信しない者ほど、恐ろしいものはないね。あまり手を抜かないように」

 

……手を抜かないようにって、いままで抜いていたのか…。

 

「……敵にそんなことを言われるなんてな」

 

イッセーが若干照れているように見えた。

 

「そうかな?キミはキミが思っている以上に現赤龍帝の存在は危険視されているに値するものだと認識しているけどね。同様にキミの仲間の眷属と――ヴァーリも」

 

「ふぅ~ん。……じゃ~俺は?」

 

俺が聞くと、優男は苦笑しながら答えた。

 

「……キミとキミのご兄姉たちとその仲間の地球連邦軍は常にランクアップしているよ。その力を周囲の状況に合わせて調整しながらふるう……そんな芸当は普通しないものだよ。……まぁ、君の所の長男はその力故に、結構いろんな物を破壊しているらしいけれどね」

 

さすがに見抜かれていたようだ、まぁ、当たり前か。俺は警戒を高めるようにしようかな。……てか、優男さんの言う通り、光輝兄さんは一度暴れると手加減しないから普通以上の被害が出て、それを片付けるのが俺達のもう一つの仕事でもあるんだよね~。特殊部隊の活動はたまに戦う光輝兄さんの後片付けのせいで最低でも三日は仕事が出来なくなるのよね~。――はぁ~。

 

俺が内心で深いため息をしていると、優男が動きだした。

 

「さて、僕もやろうかな」

 

優男が帯刀している剣を解き放ちながら一歩前に出てきた。

 

「初めまして、グレモリー眷属と地球連邦軍のおふた方。僕は英雄シグルドの末裔、ジーク。仲間は『ジークフリート』と呼ぶけど、ま、そちらも好きなように呼んでくれてかまわないよ」

 

白髪の青年――ジークフリート…また厄介な奴が出てきたね~。……そういえば、ジークさんとクーフーリンさんは元気にしているかな?俺が“椿”になってあのエロ悪魔に捕まってた時に助けに来てくれていたみたいだけれども、あの時けっきょく会わなかったんだよね~。……また今度、アルトリアさんを含めた十人の騎士の皆さんとゆっくりお茶をしたいなぁ~。

 

「……どこかで見覚えがあると思っていたが、やはり、そうなのか?」

 

ゼノヴィアの言葉にイリナがうなずく。

 

なんだかボーッとしてたうちに話が進んでいたようだ。

 

「えぇ、だと思うわ。あの腰に帯刀している複数の魔剣から考えて絶対にそう」

 

イリナの言葉を聞き、優子姉さんがジークフリートに問うた。

 

「……ジークフリート、あなたは教会の戦士『魔帝(カオスエッジ)ジーク』なの?」

 

それを聞いたジークフリートは、目を細めて答えた。

 

「そうですよ。光栄です……結城家の人に知ってもらえていて」

 

イッセーが「誰?」的な表情をしていたので、説明してあげた。

 

「イッセー、説明するからよく聞いてね?……。

ジークフリートは悪魔祓い――つまりゼノヴィアとイリナ、アリアさんの元同胞だよ。カトリック、プロテスタント、正教会を含め、トップクラスの戦士だったそうだね。俺が聖女として活躍していた頃だったかな、正教会に出入りしていたときにたまたま耳にしてね…。まさか、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属している事は、少し調べればすぐ出てきたから、この人が最初から誰かは知っていたけどね。」

 

俺の説明に驚きと納得の表情をしたイッセー。

 

「ジークさん!あなた、教会を――天界を裏切ったの!?」

 

イリナが叫ぶ。ジークフリートは口の端を釣り上げた。

 

「裏切ったってことになるかな。現在、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属しているからね」

 

「……なんてことを!教会を裏切って悪の組織に身を置くなんて万死に値しちゃうわ!」

 

「……少し耳が痛いな」

 

ゼノヴィアは頬をかいていた。もとは教会側の戦士だった彼女だが、破れかぶれで悪魔に転生しているからね~…。

 

クスクスと小さく笑うジークフリート。

 

「いいじゃないか。僕がいなくなったところで教会にはまだ最強の戦士が残っているよ。 あの人だけで僕とデュランダル使いのゼノヴィアの分も十分に補えるだろうし。案外、あの人は『御使い(ブレイブ・セイント)』のジョーカー候補なんじゃないかな?――と、紹介も終わったところで剣士同士やろうじゃないか。デュランダルのゼノヴィア、天使長ミカエルのA(エース)――紫藤イリナ、そして聖魔剣の木場祐斗」

 

元教会関係者だった三人に宣戦布告するジークフリートは、手に持つ剣――魔剣にオーラをまとわせる。

 

「また厄介な代物を握っているようだね……『魔帝剣グラム』」

 

俺の言葉に思い出した様子の祐斗とイッセーとゼノヴィア。

 

「――そういえば、伝説の武器などを創造できる能力をお持ちだそうですね」

 

「そうだよ~。俺の能力は伝説の武器をも創りだせるのデ~ス。……それにしても、よく調べたよね。俺はお話してなかったのにね~」

 

「それはもちろん。敵の情報を知ることは何よりも大きな武器となりますから」

 

「ふぅ~ん。まぁ、その事に関しては、わかるけどね」

 

ジークフリートの問いに答えた俺。

 

ガギィィィィィィンッ!!

 

その瞬間、聖魔剣を真正面から受けるジークフリートと聖魔剣を振る祐斗。

 

目の前で、剣同士の戦いが始まっているなか、俺はアンチモンスター達を見つめていた。

 

「……ねぇ、イッセー」

 

「な、なに?ツバサちゃん」

 

「みんなに伝えて……いまから巨大な技を出すから俺の後ろにある結界の中まで後退してって…」

 

「わ、わかった!」

 

そう返事をしたイッセーは急いで全員に話、結界の中まで後退してっいった。

 

俺は全員が後退し終わったのを見ると、軽く深呼吸をした。

 

「――すぅ~……はぁ~……。さぁ~てとぉ~。いっちょやりますかぁ~」

 

「『荒ぶる波動は全てを破壊する技となる――』」

 

俺は両手を地面に置いて、その技を出した。

 

「『爆発超魔法――“イオグランテ”』」

 

ピカッ―――チュドォォォォォオオオン!!!

 

巨大な爆発が地面から出てきて火柱を上げた。その魔法の余りの威力に一瞬にして一掃されるアンチモンスター。

 

「――ふぅ…こんなものかな?」

 

俺は手をはたきながら言った。

 

もう、アンチモンスターは出現してこない…よね?たぶん……。それにしても、アンチモンスターが出なくなったのは、あの少年の体力が限界なのか、それとも止められたか……まぁ、どちらにしろ、もう出てこないと俺の勘がそういってるし、安心してもいいのかな?

 

――パチパチパチ。

 

「さすがは結城家の人間だ。ここまで強いとは…恐れ入ったよ。少し楽に戦えると思っていたんだが、いまのを見るともう少し資料が必要だな」

 

俺の近くまで拍手をしながら歩いてくる曹操。

 

少し離れた場所にいるアザゼルに目をやると、曹操との戦闘で鎧も黒い翼もボロボロになっている。

 

――ただ、鎧の所々に焼け焦げた跡があるのは、きっと曹操の聖槍のせいに違いない……と思いたい。…………絶対、俺のさっきの爆発魔法のせいじゃない…よね?

 

そんな俺の心配事を他所に、曹操は肩に聖槍をトントンとしながら言う。

 

「だから、旧魔王派のように油断はしないつもりだ。いまのうちに摘むか、それとも――」

 

曹操の言葉を遮るようにアザゼルが近くに来て問う。

 

「ひとつ訊きたい。貴様ら英雄派が動く理由は何だ?」

 

その問いに曹操は目を細めながら答える

 

「堕天使の総督殿。意外に俺たちの活動理由はシンプルだ。『人間』としてどこまでやれるのか、知りたい。そこに挑戦したいんだ。悪魔、ドラゴン、堕天使、その他諸々、超常の存在を倒すのはいつだって人間だった。――いや、人間でなければならない」

 

「英雄になるつもりか?って、英雄の子孫だったな」

 

曹操は人差し指を青空に真っ直ぐ突き立てた。

 

「――よわっちい人間のささやかな挑戦だ。蒼天のもと、人間のままどこまでいけるか、やってみたくなっただけさ」

 

――人間か…俺たちもいちおう人間なんだけど……。

 

――あれ?……お兄ちゃんや俺って、人間の内に入れてもいいのかな?

 

心中でそう突っ込んでいるときだった…。

 

パァァァアアアッ。

 

イッセーたちと英雄派の間に魔方陣がひとつ、輝きながら出現する。

 

「――あれは」

 

アザゼルが魔方陣を見てつぶやいた。

 

その輝きの中から現れたのは――魔法使いの格好をした、かわいらしい外国の少女だ。全員が呆気にとられている。魔法使いの格好をした少女はイッセーたちのほうに体を向けると、深々と頭を下げた。

 

そして、俺とアザゼルのほうも向いて微笑みかけてきた。

 

「はじめまして。私はルフェイ・ペンドラゴンです。ヴァーリチームに属する魔法使いです。以後、お見知りおきを」

 

ヴァーリチームと聞いた瞬間、イッセーたちが身構える。仕方なく俺はイッセーたちの前までいき、全員を宥める。

 

そんな中、アザゼルが少女――ルフェイに訊く。

 

「……ペンドラゴン?おまえさん、アーサーの何かか?」

 

「はい。アーサーは私の兄です。いつもお世話になっています」

 

アザゼルがあごに手をやりながら言う。

 

「ルフェイか。伝説の魔女、モーガン・ル・フェイに倣った名前か?確かにモーガンも英雄アーサー・ペンドラゴンと血縁関係にあったと言われていたかな……」

 

すると、ルフェイが目を爛々と輝かせながら、イッセーに視線を送っている。

 

「あ、あの……」

 

イッセーに近づくと手を突き出す。

 

「私、『乳龍帝おっぱいドラゴン』のファンなのです!差し支えないようでしたら、あ、握手をしてください!」

 

イッセーは突然のことに間の抜けた表情となったが、断れることもなく「あ、ありがとう……」と苦笑しながらルフェイに握手をしてあげた。

 

「やったー!」

 

ルフェイはすごく喜んでぴょんぴょんと跳ねている…。

 

曹操の陣営も呆気に取られて当惑していた……が、頭をかきながら曹操が息を吐く。

 

「ヴァーリのところの者か。それで、ここに来た理由は?」

 

曹操の問いにルフェイは屈託のない笑顔で返した。

 

「はい!ヴァーリさまからの伝言をお伝え致します!『邪魔だけはするなと言ったはずだ』――だそうです♪――うちのチームに監視者を送った罰ですよ~」

 

ドウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!

 

ルフェイが可愛く発声した直後、大地を揺るがすほど震動がこの場を襲う。

 

ガゴンッ!

 

――俺が土遁で地を割る音と同じものが近くで起こる。そちらに目を向けると、地を割り、土を巻き上げながら『それ』は姿を現した。

 

『ゴオオオオオオオオオオォォォォォオオオッ!!』

 

それを見たアザゼルが叫ぶ。

 

「――ゴグマゴグか!」

 

その巨人――ゴーレムは、回りの町と比べても…差がはかれない程の大きさだ。ざっと十メートルはあるね。

 

……てか、あれって次元の狭間にあったヤツじゃ…

 

アザゼルの言葉にルフェイがうなずいた。

 

「はい。私たちのチームのパワーキャラで、ゴグマゴグのゴッくんです♪」

 

う、うん。大したネーミングだね…。ゴッくんって……どうすれば、この巨体のゴーレムにそのネーミングをつけられるのか、気になるところだよ。

 

いや…、でも俺も巨大ゴーレムを持っているから、それに、少女が人形に名前を付ける様な感覚で愛称を付けているのかな?

 

「先生、あの動く石巨人的なものは……」

 

イッセーの問いにアザゼルが説明する。

 

「ゴグマゴグ。次元の狭間に放置されたゴーレム的なものだ。稀に次元の狭間に停止状態で漂ってるんだよ。なんでも古の神が量産した破壊兵器だったらしいが……。全機が完全に機能停止だったはずだ」

 

「あんなのが次元の狭間にいるんですか!?機能停止って、あれ動いてますけど!」

 

「あぁ、俺も動いているのを見るのは初めてだ。問題点が多すぎたようでな、機能停止させられて次元の狭間に放置されたと聞いていたんだが……動いているぜ!胸が躍るな……ッ!」

 

はぁ…あ~あ、完全にアザゼルのスイッチが入ってしまったようだね。子供のように目を爛々と輝かせているのが何よりの証拠だよ…。優子姉さんだって呆れてるし…。

 

しかし、ハッと気づいたアザゼルがつぶやいた。

 

「そうか。ヴァーリが次元の狭間でうろついていたのはグレートレッドの確認だけじゃなかったんだな」

 

アザゼルの意見にルフェイが答える。

 

「はい。ヴァーリさまはこのゴッくんを探していたのです。オーフィスさまが以前、動きそうな巨人を次元の狭間の調査で感知したことがあるとおっしゃられまして、改めて探索したしだいです」

 

「な、なぁ。まだあいつのチームはこういうのいるの……?」

 

イッセーが不安げにルフェイに訊いた。

 

「えーと、いまのところ、ヴァーリさま、美猴さま、兄のアーサー、金華さん、フェンリルちゃん、ゴッくん、私の七名です」

 

イッセーはそれを聞いて額に脂汗をかいていた。

 

七名ッて…その内二人はゴーレムと神殺しの狼じゃん。最早、人ですらないし…。

 

ルフェイが答えた直後、ゴグマゴグが英雄派に向かって、巨大な拳を振り下ろした。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォオオオオオオンッ!!

 

特大の破砕音とともに、ゴグマゴグの一撃が渡月橋を破壊してしまった。

 

英雄派の構成員は全員その場から飛びのき、橋の向こう岸に退避した。

 

「ハハハハ!ヴァーリはお冠か!どうやら監視していたのがバレたようだ!」

 

曹操は高笑いしながら、聖槍をゴグマゴグに向けた。

 

「伸びろっ!」

 

聖槍の切っ先が伸び、ゴグマゴグの肩に突き刺さった。

 

ズズゥゥゥゥゥンッ!!

 

ゴグマゴグがその一撃で体勢を崩されて、その場に倒れた。その衝撃で振動が巻き起こり、周囲を大きく揺らす。

 

俺はたまたま視線が向こう岸を見たとき、ゆらりゆらりとおぼつかない歩みで英雄派に近づく者が目に映った……。

 

――ロスヴァイセさんだ。

 

「……ういー。ヒトが気分よく寝ているところにドッカン!バッタン!チュドーンって、うるさいんれすよ!」

 

……いまだに酔っている上に、ご機嫌が斜めのようだ。

 

酔っぱらいの登場に英雄派の面々も間の抜けた表情になるが、すぐに攻撃の態勢を取りだす。

 

「なんれすか?やるんれすか?いいれすよ。元オーディンのクソジジイの護衛ヴァルキリーの実力、見せてやろうじゃないれすかッ!!」

 

ロスヴァイセは大きく叫んだあと、自身の周囲に数えきれないほどの魔方陣を展開し始めた。

 

「全属性、全精霊、全神霊を用いた私の北欧式フルバースト魔法をくらえぇぇぇぇぇぇええええッ!!」

 

ズドドドドドオォォォォォォォォッ!!!

 

大量の魔方陣から凄まじい量の魔法が縦横無尽にぶっ放され、空中で幾重も軌道を変えながら英雄派の陣営の頭上に降り注ぐ。

 

――と、思った矢先、予想通りこちらにも飛んできた。

 

「スペルカード…『三重大結界』」

 

俺は懐から札を三枚出して、空に投げた。すると、そこから結界が出てきて、アザゼルやイッセー達を包み込んだ。

 

ドドドドドド――。

 

こっちに飛んできた流れ弾は、展開された結界によって防がれていた。

 

向こう岸の英雄派は、霧を両手にまとった青年がすべての魔法を弾いていた様子だった。

 

その霧使いは手元から霧を発生させて、英雄派の全員を薄い霧で覆い始めた。

 

曹操が霧の中から言う。

 

「少々、乱入が多すぎたか。――が、祭りの始まりとしては上々だ。アザゼル総督!」

 

曹操は俺たちに向けて楽しそうに宣言する。

 

「我々は今夜この京都という特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城でひとつ大きな実験をする!ぜひとも制止するために我らの祭りに参加してくれ!」

 

すると、霧が徐々に濃くなってきた。

 

それを見た俺はアザゼルの方を向いて、視線に気づいたアザゼルは頷いた。

 

「おまえら、空間がもとに戻るぞ!武装を解除しておけ!」

 

アザゼルの言葉に、みんな慌てて武装を解除した。

 

解除し終わった瞬間に、俺達は元の世界に戻ってきたのだった。

 

――――――――――――――――――――――

 

霧が晴れると、そこは観光客で溢れた渡月橋周辺にいた。俺たち以外、何事もなく普通に橋を往来しているようだった。

 

「おい、イッセー。どうした?すっげー険しい顔になってんぞ?」

 

近くでイッセーの顔を覗き込んでいる松田。

 

……そう、俺たちは渡月橋を渡りきったばかりだった。

 

――時間があまり進んでいなくて助かったね。

 

俺はイッセーたちを見ながらそう思った。

 

周囲を見回すと、散開した皆が人ごみに紛れている。……ルフェイの姿が見当たらないところをみると、帰還と同時に帰ったようだ。

 

ガンッ!!

 

近くの電柱を横殴りにするアザゼル。

 

「……ふざけたことを言いやがって……ッ!京都で実験だと……?舐めるなよ、若造が!」

 

あちゃー……、アザゼルがマジギレを起こしている。

 

まぁ…、その気持ちはスゴくわかるけどね~…

 

「……母上、母上は何もしていないのに……どうして……」

 

「大丈夫よ、九重ちゃん。必ず、私達があなたのお母さんを助けて上げるから…」

 

体を震わせている九重ちゃんを優しく抱きしめて頭を撫でている優子姉さん。

 

他のメンバーもそれぞれ思い思いにふけっていた。

 

「……さて、今回も長い夜になりそうだねぇ~。―――――『禍の団(カオス・ブリゲード)』……首を洗って待っていろ…覚悟をしていないと……死に目をみることになるぞ?――なぁ、曹操…」

 

……どうやら今回も、激しい戦いとなりそうだね。


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