無事八坂さんを救い出した俺たちは、京都の疑似空間から元の世界に戻り、俺たちが宿泊しているホテルの屋上にいた。
「よくやったな、イッセー。おまえは休んでいろ。救護班!グレモリー眷属とイリナ、匙を看てやってくれ!ケガはともかく、魔力と体力の消耗が激しい!」
イッセーを誉めに来たアザゼルが救護班のスタッフを呼んだ。
イッセー達は疲労と安心感から、こっちに帰ってきてからぶっ倒れてしまった。かなり疲労困憊していたようだ。
回復役のアーシアでさえ、治療と戦闘の緊張感で疲弊きてしまい、イッセーに身を寄せて眠ってしまっていた。
他のメンバーも治療は受けているが、一応念のために運ばれていった。
「アザゼル。私達も手伝うわ。――各班は其々持ち場に着きなさい!特に、グレモリー眷属とイリナ、匙を重点的に回復させてあげて!ケガは大体は治っているけども、魔力と体力の消耗が激しいわ。急いで回復薬を持ってきてちょうだい!特に、イッセーとアーシアとロスヴァイセには“エルフの飲み薬”を持ってきて!」
『はい!優子さま!』
優子姉さんが自分の舞台である、地球連邦軍でゆういつの回復専門の救護班を呼んできていた。
「元ちゃん!」
「元士郎!」
担架で運ばれている匙にシトリー眷属が付き添っていた。中には心配そうに涙を浮かべている人達もいた。
匙は龍王変化の消耗が激しく、すべてが終わったあと、気を失ってしまった。イッセーや俺が内側から話しかけて暴走を止めるってこともなく、なんとか力を使っていたように感じる。匙もイッセーと同じく成長しているってことですか。――それにしても、匙も随分と仲間に愛されているようで♪
『あら、あなたもじゅうぶん愛されているじゃない。』
すると、ルーツが話しかけてきた。
「そんなのわかっているよ。みんなから愛されているんだなぁ~なんて、何時もの様子を見ればじゅうぶんわかるさ。もちろん、ルーツからの愛情もね~♪」
『――ッ!///…………もう、平気でそんな恥ずかしい事を言うんだから…』
「ん?ルーツ何か言った?」
『何でもないわよ。それよりも、ほら、あなたも手伝ってあげなさいよ。お兄さん達の頑張りをあなただけ見ているつもり?』
ルーツの言う通り、光樹兄さんとレイジ兄さん、それとメイド長カンナさんをはじめ、カンナさんやアイラさん、黒歌や堕天使シスターズのメイドメンバーも後処理の手伝いをしていた。
「そうだね…ルーツのいう通りだ。俺も手伝ってくるよ!」
『えぇ、頑張りなさい。私は応援しておくわ。』
「うん!」
俺が手伝いをしろうと思ったら、イッセーと初代・孫悟空の二人が目に入った。
「おまえさんは独力で『覇』の力とは違う、えらいものを得ようとしているようじゃな。――いいこった。『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は、ろくでもない。ただの力の暴走そのもの。それでは、死ぬ。おまえさん、大事な女がいるんじゃろ?おっぱいドラゴンと呼ばれるほどじゃからな」
「いや、ハハハハ。ええ、いちおう」
初代はアーシアを指さしながら、イッセーに言った。イッセーは笑いながら答えていた。
「なら、泣かすな。おまえさんは夢と女で強くなるタイプだぜぃ。それにな、赤龍帝と白龍皇はもともと力の塊じゃ。何でも『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』にこだわらんでもきくらでと強くなれる。――だがの、おまえさんはまだ危ういか」
「?」
イッセーの顔を覗き込みながらそう言った初代。イッセーはわかっていないようだ。
…………確かに、イッセーはまだ危ういだろうね。だって感情が激しすぎるから。『覇』とは『感情』と切っても切れぬ関係。故に、イッセーの様なタイプの人ほど『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』に溺れやすい。……あのときのようにね。
「それと、うちのバカが迷惑をかけたようじゃな。それは謝るぜぃ。」
……あぁ、美猴の事だね。
すると、初代がイッセーの頭を撫でる。
「……感情は『覇』を呼び込む。それだけは覚えておくとええ。最後の曹操への一撃、ええ攻撃じゃった。ああいう方向で精進せぃ。イメージと努力だけは怠るでない。――さて、天帝のおつかいが済んだらバかを捜しにいくかの。あやつめ、白龍皇とやんちゃしおって。共に仕置きじゃな。――それでは達者での。そこにおるツバサもな。玉龍(ウーロン)、九尾のもとに行くぞ」
『あいよ、クソジジイ。じゃあな、ドライグ、ルーツ!』
そう言いながら、最後に此方を見て初代と玉龍(ウーロン)は行ってしまった。
イッセーは震える手でグーパーをしていた。――どうやら、体の具合を確認しているようだ。それに、なんだか決意した目をしていた。……また、修行を一からするつもりかな?
「お疲れ様。イッセー。……どう?体の具合は」
俺はイッセーに話しかけた。イッセーは此方に気づいて振り向く。
「ツバサちゃん………ああ、随分と体が重いや。かなり疲労しているな。そうだ、俺、また修行を一から始めようと思ってるんだ。―――この神器(セイクリッドギア)に眠っていた力と『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を組み合わせた俺の新しい力をもっと扱う為にね」
……と、なんかかっこよく言ってきた。………………イッセーェ
「そうですか。――なら、もっと厳しくしても良いですよね♪」ニコッ
「え?」
俺が笑顔で言うと、イッセーは固まってしまった。
「どうしました?」
「え?あ、いや、……なんでもありません」
なぜか、イッセーは顔を青くしていた。
……どうしたんだろう?
――――――――――――――――――――――
昨日はみんなで休憩したあと、傷む体を動かしながら、見送る為に来ていた、八坂さんと九重とセラフォルーさんと京都駅の新線ホームにいた。
「赤龍帝、グレモリー眷属のみな」
九重が八坂さんと手を繋ぎながら、笑顔でイッセー達を呼ぶ。
「イッセーでいいよ」
そうイッセーが言うと、九重は顔を真っ赤にしてもじもじしながら訊く。
「……イッセーたち。また、京都に来てくれるか?」
「あぁ、また来るよ」
「そ、それと、ツバサ…」
「……ん?どうしたの?九重ちゃん」
「そ、その……ツバサもまた、京都に来てくれるか?」
九重ちゃんは先程よりも顔を赤くしていた。
「うん♪来るよ。必ずね」
ピピピピピピピ――。
発車の音がホームに鳴り響く。九重は叫んだ。
「必ずじゃぞ!九重はいつだっておまえ達を待つ!!」
「あぁ、次は皆で来る。今度は裏京都も案内してくれよ?」
「うむ!」
「じゃ~ね、九重ちゃん。また、会おうね~!」
「絶対にじゃぞ!」
それを確認すると八坂さんが言う。
「アザゼル殿、赤龍帝殿、地球連邦軍、そして悪魔、天使、堕天使の皆々、本当にすまなかった。礼を言う。これから魔王レヴィアタン殿、闘戦勝仏殿、光樹殿と会談するつもりじゃ。良い方向を共に歩んでいきたいと思うておる。二度と、あのような輩によってこの京都が恐怖に包まれぬよう。協力態勢を敷くつもりじゃ」
「あぁ、頼むぜ、御大将」
アザゼルもそう言い、八坂さんと握手を交わす。そこにセラフォルーさんも手を重ねる。
「うふふ、皆は先に帰っていてね☆私はこのあと八坂さんと猿のおじいちゃんとこーきくんと楽しい京都を堪能してくるわ☆」
セラフォルーさんがとても楽しそうに笑っていた。
「いや…、なんだよ楽しい京都って……なんか嫌な予感しかしないのだが…」
光樹兄さんがとても疲れたかのようにいった。
「あはは、じゃ~、頑張ってね?お兄ちゃん」
「おう、おまえは気にせずそのままみんなと帰れ。学生らしくな」
光樹兄さんは優しく頭を撫でてくる。
「うん。あとはよろしくね」
プゥーーー
「じゃ~ねぇ~!」
こうして俺達の長い長い、京都旅行が終わったのだった…。
今回はかなり短いです。……さて、次はどんな話にしようかの~(棒)