ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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2話 ミーティング?

「すみません、遅れました。」

 

俺は旧校舎にあるオカルト研究部の部室にきた。

 

部室にはリアスの眷属であるイッセーたち九人、顧問のアザゼルが集まっていた。

 

「おー、ちょうどいまからだぞ」

 

アザゼルが席に着いたまま手を挙げて言った。

 

「じゃあ、ミーティングを始めるぞ」

 

すると、アザゼルは険しい顔つきになって言った。

 

「ゲームのミーティング前に各勢力の情勢について話したいことがある。――ちょいと神器(セイクリッドギア)に関して厄介なことになりそうでな」

 

「どういうことですか?」

 

木場が訊くとアザゼルは続けた。

 

「英雄派の連中が禁手(バランス・ブレイカー)の研究をして、実際に結果を出しているのはおまえらも認識しているはずだ。身をもってその力を食らったわけだからな」

 

確かに外法と言われる禁術、禁技の類に手を伸ばしているのはわかっている。

 

「あいつら、英雄派に属していない一般に紛れている神器所有者や、悪魔に転生している神器所有者に禁手(バランス・ブレイカー)に至る方法を伝え始めているって話だ」

 

へぇ〜、ずいぶんと面倒なことになってるね〜。

 

「それがどういう結果を生むか。――不遇な人生を送っていた者が一転して、世界の均衡を崩すと言われる力を得れば、そいつの価値観が変わる。知っての通り、神セイクリッ器ド・ギアを持った奴は必ずしも良い人生を送れたわけじゃない。人とは違う異能ゆえに迫害され、差別された者も少なくない。悪魔に転生した所有者も理不尽な取り引きで眷属になったケースもある」

 

アザゼルの言葉にリアスが続く。

 

「……すべての悪魔が良心的なわけではないものね……。上級悪魔にも心ない者が少なからずいるわ。人間界の影響で多様な考えの悪魔が増えてきたけれど、本来は合理的な思想を持つのが悪魔だもの」

 

「確かにリアスさんの言う通りですね。なんせ、うちの部隊にも、元眷属悪魔さんが結構いますし、その殆どが人間やその他同士の混血などといった人達ですしね。だいたいの人達が理不尽な扱いではぐれになった人達ですしね」

 

俺はリアスさんの言葉に続いて話した。

 

そして、アザゼルが続ける。

 

「そう、ツバサの言う通り、理不尽な思いで暮らしている神器(セイクリッドギア)所有者もいるってことだ。それらが力の使い方、圧倒的な能力――禁手(バランス・ブレイカー)を得たらどうなるか?」

 

皆がシンと静りかえったなか、アザゼルは表情に影を落としながら言う。

 

「――使う、だろうな。その力を。人間ならば、他者への復讐、世俗の逆襲に使うかもしれないし、神器(セイクリッドギア)持ちの転生悪魔なら己を虐げてきた主への報復を考えるだろう」

 

……俺は思った。もし、もしもだけれど……知人や家族、そして仲間がそうなったとき、俺は…俺は何をしてあげられるのだろうか?

 

脳裏に過ぎるのは『始末』の二文字しか浮かばない。いや、浮かべないのだ。これ以上復讐に飲み込まれる前になんとか開放をしてあげたい一心だから。

――――ほんと、何てことを考えているんだろうね…俺は。

 

「……怖い、ですね」

 

イッセーがそう漏らすと、アザゼルもうなずいた。

 

「あぁ、いろいろな意味で怖いことだ。人間がやれることの限界、超常の存在への挑戦、禁バランス手・ブレイカーの研究をしてきた英雄派の連中にとって、これから起こるかもしれない事象はある意味で一つの成果だろう。人間界、冥界のどこかで不満を抱えていた神器(セイクリッドギア)所有者が暴動を起こすは時間の問題だ」

 

アザゼルは怖い顔で言う。

 

「つまりだ……、してやられたってわけだ。テロリストであるあいつらの結末がどうなるかはまだわからないが、現時点で大きな一発をもらったのは確かだ。今後に影響は出る。悔しいが、見事だよ。人間の恐ろしさを改めて思い知った」

 

アザゼルは表情に影を落とした。

 

空気が重くなった室内。アザゼルはそれを察してか、咳払いした。

 

「――と、悪かったな。今日、ここに来たのはサイラオーグ戦へのアドバイザーとしてだったな」

 

すると、イッセーが挙手してアザゼルに質問した。

 

「サイラオーグさんにも先生みたいにアドバイザーが付いてるんですか?」

 

「あぁ、いちおうあっちにもいるぞ。皇帝エンペラーさまが付いたそうだ」

 

「――っ!……ディハウザー・ベリアル」

 

アザゼルの一声に一番反応したのはリアスさんだった

 

――ディハウザー・ベリアル。元七十二柱のベリアル家出身の最上級悪魔。たしか、レーティングゲームでは不動のトップの座についている人物だったね。

異名は『皇帝(エンペラ-)』だったかな?

 

「さて、おまえたち、サイラオーグ眷属のデータは覚えたな?」

 

アザゼルの言葉にイッセーたち皆がうなずいた。

 

アザゼルは立体映像を部室の宙に展開する。バアル眷属の面々がパラメータ付きで表示されていった。アザゼルがそれを見ながら言う。

 

「あのグラシャラボラス戦では、能力を全部見せていない者もいたようだ。まぁ、あの試合は途中でグラシャラボラスのガキ大将がサイラオーグ相手にタイマンを申し込んだしな。実質、サイラオーグが勝負を決めたようなものだ。それに――」

 

アザゼルは手を組みながら言う。

 

「サイラオーグはおまえたちと同じ、悪魔では珍しい修行をするタイプだ。グラシャラボラス戦のときとは明らかにレベルアップしているだろう」

 

そう、バアル眷属もイッセーたちと同じで努力を重ねるタイプ。

 

「あいつら、『禍団(カオス・ブリゲード)』相手に戦っているって話だからな。危険な実戦も積んでいる。『できるだけ若手を戦にかり出さない』って宣言したサーゼクスたち四大魔王の意向も虚しいか。ま、おまえたちみたいに無茶な戦闘に連続で出くわす若手もいるしな」

 

アザゼルが苦笑いしながらそう言った。

 

すると、険しい表情のロスヴァイセさんがつぶやく。

 

「……この相手の『兵士(ポーン)』、記録映像のゲームには出てませんよね?」

 

イッセーたちが視線を一点に向けた。そこに映っているのはサイバーな仮面を被った者だ。名前も『兵士(ポーン)』とされている。

 

……えぇ〜と?サイラオーグのところは『女王(クイーン)』1、『戦車(ルーク)』2、『騎士(ナイト)』2、『僧侶(ビショップ)』2とリアスたちの陣営と似ている。そしてこの『兵士(ポーン)』――。

 

この時、俺はこの『兵士(ポーン)』の何かに引っかかっていた。

 

――それが何かがわかんないけどね〜

 

「記者会見でも記者がこの人のことであろう質問をサイラオーグ・バアルに向けていましたね」

 

祐奈が言う。

 

「……そいつは滅多なことではサイラオーグも使わない『兵士(ポーン)』だそうだ。情報もほとんど無くてな。仮面を被っているために、どこの誰だかわかりもしない。今回初めて開示された者だ。ってことは今度のゲームで使うってことだろう。サイラオーグもこいつをできるだけ他者に引き合わせないようにさせているようだからな。ただひとつだけ噂で流れているのは、消費した『兵士(ポーン)』の駒が六つだか、七つと聞く。ゆえに奴の『兵士(ポーン)』はこいつ一人なんだそうだ」

 

『六つ!?七つ!?』

 

異口同音で驚愕の声音を出すイッセーたち。

 

アザゼルが続ける。

 

「データがそろっていない以上、この『兵士(ポーン)』には細心の注意を払って臨むべきだ。ただでさえ、今回はどんな選手でも参加できるんだからな。……サイラオーグの隠し球、虎の子ってところか」

 

……なるほどね。確信したよ。あの『兵士(ポーン)』はおそらくイッセーと同じ神器(セイクリッドギア)……否、神滅具(ロンギヌ)所有者だ。

 

――と言いたいところだけれど、感はなんだか違う気がする。なんだか、あの『兵士(ポーン)』は、神滅具(ロンギヌス)所持者の悪魔じゃなくて、神滅具(ロンギヌス)そのものの気がするんだよなぁ〜。ありえないんだけどね。…………でも、かりにそうだとしても自立型の神滅具(ロンギヌス)って存在してたっけ?むぅ〜…謎が深まるばかりだぞぉ

 

サイラオーグ眷属の情報を聴いたあと、イッセーたちはリアスを先頭にゲーム戦術などを話し合っていた。

 

少しすると話の議題が一つ終わったようで、イッセーが挙手してアザゼルに疑問をぶつけた。

 

「先生、俺たちが正式にレーティングゲームに参加したとして、王者と将来的に当たる可能性は……?先生の目測でいいですから」

 

「おまえたちはサイラオーグと合わせて、若手でも異例の布陣だ。というのも正式に参戦もしていないのにこれだけの力を持ったメンツが集まっているんだからな。しかも実戦経験――特に世界レベルで強敵との戦闘経験がある。その上、全員生き残ってるんだからな。そんなこと、滅多に起こらないし、久方ぶりの大型新人チームと見られている。本物のゲームに参加してもかなり上を目指せるだろうよ。トップテン入りは時間の問題だろうな」

 

堕天使総督から直に太鼓判をもらったイッセーたち。気恥ずかしそうにしているイッセーたちにアザゼルは続ける。

 

「だが、その分、冥界からの注目も大きい。今度のゲーム、冥界中がおまえたちを見ているぞ。悪神ロキ、テロリストを止めているおまえたちはさだでさえ有名人だ。さらに記者会見であれだけの盛り上がりも見せたんだからな、冥界の住人は新しい息吹に悪魔の未来を見ている」

 

……悪魔の未来か。壮大だけど……そう遠くないかもしれない…かな。

 

「もちろん、ゲームの現トップランカーもおまえたちやサイラオーグたちに注目し、将来の敵になるであろう者の研究を始めるだろう。いい傾向だ。ほとんど動かなかったゲームのランクトップ陣、遠くない未来におまえたちやサイラオーグがさしこんでくれるかと思うといまからワクワクしちまうよ」

 

アザゼルは愉快に笑んだあと、言った。

 

「――変えてやれ、レーティングゲームを。ランキングテン以内も『皇帝(エンペラー)』も、おまえたち若手がぶっ倒して新しい流れを作るんだよ」

 

――イッセーたちが変える…か。

 

ふふふ、なかなか面白そうじゃないか。その運命はどう転ぶのかな?

 

「あははは!それはとっても面白そうだね〜。オレも早く作りたいなぁ〜。眷属をさぁ〜」

 

オレの言葉に『ゲッ』と嫌そうに声を出したイッセー。ひどいなぁ〜、イッセー。そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないかぁ〜。

 

そして、アザゼルは面白そうなものを見つけた子供のような顔でこっちを見てきた。

 

「なんだ?そんなことできるのか?」

 

「うん。いまね、悪魔の『悪魔の駒(イーヴィルピース)』と天使のカードを真似て作ってるの。人間や妖怪でも使える駒をね。」

 

「ほう…なるほどな」

 

「でね、悪魔が"チェスの駒"、天使がダイヤやA(エース)といった"カード"、そして人間や妖怪は日本版チェスと言ってもいい"将棋の駒"にしようかな〜なんて思ってるところなの。まぁ、まだ決めていなくて、いまみんなで考えている所なんだけどね〜。あくまでも、いまの所それがいいかなぁ〜って程度だしね」

 

俺がそういうと、アザゼルは納得した顔をしていた。

 

すると、アザゼルは何かを思いついたのか、俺の方に向けて言う。

 

「ツバサ、今回の特訓はおまえに任せたいと思う。鍛えてやってくれ」

 

アザゼルの問に俺は小さく笑い答えた。

 

「もとからそのつもりだよ。いままで以上にハードで殺す勢いで鍛えてあげる♪少なくても、ライザー戦の前に修行した時よりも断然辛くなるからね♡」ニコッ

 

笑顔でそう宣言すると、リアスさんたち眷属全員の顔色が一転した。なにか分かっていないゼノヴィアやロスヴァイセさんは頭にハテナマークをつけていた。

 

俺はそんなみんなの様子を見て笑っていた。

 

 


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