ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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8話 作戦タイム!

皆との集合場所で合流した俺はイッセーたちとホテルの一室で待機していた。

 

集まってすぐに、サマエル戦での姿の事を聞かれたが、深層は話さず軽く説明した程度だ。

 

「……駐車場に死神が出現していました。相当な数です」

 

様子を見に行っていた祐斗が待機している部屋に戻ってきた。

 

「……ハーデスの野郎、本格的に動き出したってわけか!」

 

アザゼルが憎々しげに吐く。

 

曹操との戦闘のあと、怪我人だらけのグレモリー眷属、イリナ、アザゼル、結城家、ヴァーリ、金華、ルフェイ、オーフィスはこの疑似空間のホテル上階で陣地を取っている。

 

六十階まであるホテルの真ん中の三十階まで移動したあと、この階層を丸ごとルフェイと俺の強靭な結界で幾重にも覆って陣地を形成していた。

 

俺は『瞬間回復(改)』で快復して万全。レイジ兄さんたちも自己再生で負っていた傷も完治しており、イッセーやゼノヴィア、アザゼルの治癒も完了している。

 

金華は治療を終えてはいるが大事を取って別室で休んでいる。黒歌と白音とレイヴェルが面倒を見ているらしい。

 

…サマエルの呪いを受けたヴァーリはケガ自体は治っているが、呪いが解けずに別室で激痛に耐えているようだ。

 

回復役のアーシアは連続での治療で、体力の消耗が大きいために隣の部屋で仮眠を取っている状態だね。

 

…休憩中または看病しているメンバー以外の者が集結しているこの部屋で、ルフェイが嘆息した。

 

「本部から正式に通達が来たようです。砕いて説明しますと――『ヴァーリチームはクーデターを企て、オーフィスを騙して組織を自分のものにしようとした。オーフィスは英雄派が無事救助。残ったヴァーリチームは見つけしだい始末せよ』だそうです」

 

ルフェイの報告に皆が驚く。

 

「やられたな……。『本物』を回収して、しぼり取られたオーフィスは無かったことにされたか。………でっち上げもいいところだ」

 

光輝兄さんが嘆息しながらそう言った。

 

ルフェイはがっくりきたようにうなだれる。

 

「私たちはグレートレッドさんをはじめ、世界の謎とされるものを調べたり、伝説の強者を探し回ったり、時々オーフィスさまの願いを叶えたりしていただけなのですが……。英雄派の皆さんは力を持ちながら好き勝手に動く私たちが目障りだったようです。特にジークフリートさまは私たちのことが相当お嫌いだったそうです。何より、元英雄派でライバルだった兄のアーサーがこっちに来たのがお気に召さなかったようでして……」

 

「世界の謎ってなんだ?それに伝説の強者もわからん」

 

イッセーがルフェイに訊く。

 

「はい、次元の狭間を泳ぐグレートレッドさんの秘密に始まり、滅んだ文明――ムー大陸やアトランティスの技術、それに異世界のことについて調査していました。北欧神話勢力の世界樹(ユグドラシル)も見てきましたし。そして、伝説の強者とは逸話いつわだけを残して、生死不明となっている魔物や英雄の探索です。時折、組織の仕事(テロ)もこなしてました」

 

「……ほとんど冒険家みたいだな」

 

「はい、大冒険の毎日ですよ!その末に強者とも戦ってきましたから。ヴァーリさまはドラゴンという存在がどこから発生したのか、それを調べようともしているのです。あと二天龍が封じられる切っ掛けとなった大ゲンカの原因も調査してます。それと、新しい神滅具(ロンギヌス)が発見できないか、それも調査の対象でした!!」

 

楽しそうに語りだすルフェイ。

 

…俺はそんなルフェイを見て、ヴァーリーってかなりの暇人さんなんだなぁ〜なんて思っていた。

 

「ヴァーリさまの探求心は総督さまの影響だと思います」

 

ルフェイは最後にそう付け加える。それを聞いたアザゼルは、息を吐いて目元を細める。

 

アザゼルのその表情にルフェイは苦笑していた。

 

「それにしても総督さま、ここ最近は神滅具(ロンギヌス)祭りですね。――グリゴリにいらっしゃる『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』の方はお元気なのですか?」

 

話しを振られたアザゼルは顔を天井に向ける。

 

「……『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』、刃狗(スラッシュドック)か。あいつには別任務に当たらせている。そちらもそちらで十分に厄介な事件だ。あいつ、ヴァーリのことが嫌いでなぁ」

 

「はい、お話はうかがっております」

 

ルフェイがクスクスと笑う。

 

イッセーはアザゼルに疑問を投げかけた。

 

「そういや、先生。一番強い神滅具(ロンギヌス)を曹操が持っているなら、誰かが二番目に強い神滅具(ロンギヌス)を持っているんですよね?」

 

「ああ、『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』。それが二番目に強い神滅具(ロンギヌス)だ。上位神滅具(ロンギヌス)とは、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』『魔獣創造(アナイアレイションメーカー)』『絶霧(ディメイション・ロスト)』の四種のことをさす。『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』に関してもすでに所有者も割れているし、主に天界が制御しているが……。イリナ、それで奴は――『御使い(ブレイブ・セイント)』のジョーカーはどうしている?」

 

話を振られたイリナは首をひねりながら答えた。

 

「デュリオさまですか?各地を放浪しながら、美味しいもの巡りをしていると……」

 

その答えにアザゼルは絶句して、俺は眉間を指で押さえた。

 

たしかに、あの人は美味しい物に甘い物とか食べ歩きして自分で作って孤児院でそれを作ったりしてるみたいだけれど……こんな時ぐらい何時でも動けるようにしときなよぉ……ハァ〜

 

「な……っ。仮にもセラフ候補にも選出されるかもしれない転生天使きっての才児だろうがっ!切り札役(ジョーカー)だぞ!?ミカエルは、セラフの連中はどうしているんだ!?」

 

アザゼルの質問にイリナは困り果てていた。

 

「そのヒトもやっぱり強いんですか?」

 

イッセーがアザゼルに訊く…反応したのはルフェイだった。

 

「ヴァーリさまの戦いたい方リスト上位に載ってるほどの方です。教会最強のエクソシストだそうです」

 

元教会の聖剣使いだったゼノヴィアが反応した。

 

「デュリオ・ジェズアルド、教会でも有名な存在だった。直接の面識はなかったが、人間でありながら凶悪な魔物や上級悪魔を専門に駆り出されていたよ」

 

アザゼルが嘆息する。

 

「神滅具ロンギヌス所有者、か。神滅具ロンギヌスとは――『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』、『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』、『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』、『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』、『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』、『蒼き革新の箱庭(イノベート・クリア)』、『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』、『絶霧(ディメイション・ロスト)』、『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』、『紫炎祭主による磔台(インシネート・アンセム)』、『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』、『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』、『究極の羯磨(テロス・カルマ)』、この十三種のことだよ。イッセー、よく覚えていてね!」

 

イッセーたちが出会った神滅具(ロンギヌス)は――半分ほど。

 

……でも、『蒼き革新の箱庭(イノベート・クリア)』『究極の羯磨(テロス・カルマ)』以外は禍の団(カオス・ブリゲード)にいたり天使・堕天使陣営にいたり、その他勢力にいたりと、面倒な事になってるからなぁ〜。てか、『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』、『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』、『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』、『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』、『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』、『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』以外は敵陣営だからなぁ。白龍皇に関しては今の所は絶対に倒すべき敵ではないから大丈夫で、……問題は吸血鬼側にある"聖杯"なんだけど―――まぁ、まだしばらくは大丈夫そうだからいいかな。完全には敵の手には落ちてないみたいだし。

 

俺が考え事をしていると、アザゼルが突然何かをひらめいたように立ち上がった。

 

……こういう時って大概、くだらないことを言い出すんだよね〜…、アザゼルって。

 

「あ!いま俺は現世の神滅具(ロンギヌス)所有者の共通点を見つけたぞ。――どいつもこいつも考えていることがまるでわからん!おっぱい脳に戦闘狂、妙な野望を持った自分勝手な奴らばかりだ!!これは あとでメモしてやるぞ、くそったれ!」

 

……うん、予想通りの展開だったよ。……でも、その考えは共感できるかも。なんせ、他の神滅具(ロンギヌス)所持者も似たようなものだから。所持者がわからない二つを除いた"全員"に会ってきた俺がいうんだからね!

 

アザゼルは続ける。

 

「それともうひとつ、共通点を見つけた。――神滅具(ロンギヌス)の使い方が従来通りじゃない。ほとんどの連中が歴代所有者とは違う面を探して力を高めてやがる。……現代っ子は俺たちの範疇はんちゅうを超えているのか……?いや、しかし……」

 

……あ〜、確かにその通りかもしれないなぁ。亜種化、危険を除いた進化に、訳の分からない状態。いままで見てきた神滅具(ロンギヌス)にはその現象が起きていたしね。

 

思考の中へと入り、帰ってきそうもないアザゼルを放って話を進めようとしたとき、ハッ!と何かに気づいて思考タイムを終えたアザゼル。

 

その何か――オーフィスと龍巳がこの部屋に戻ってきた。

 

『この階層を見て回る』

 

少し前、悠長に出かけていったオーフィスに心配で付いていっていた龍巳が、ようやく戻ってきたようだ。

 

「――で、具合はどうだ、オーフィス」

 

「弱まった。いまの我、全盛期の二天龍より二回り強い」

 

「それは……弱くなったな」

 

「……いやいや、封じられる前のドライグたちよりも二回りも強いんでしょ?それで弱くなったって……」

 

アザゼルの発言に突っ込んだイッセーだが、俺が手で口を閉ざした。

 

「……いい?イッセー。確かに君からしたら相当強い二天龍よりも二回り強いってのは全然弱くなったり感じないかもしれない。でもね? 本来の『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス』ならその数千倍くらい強いんだよ? 何たって"無限"を司っている龍神なのだから。確かに、オーフィスの隣にいる俺達の家族の龍巳が置いてきた力がもうひとりのオーフィスとなったけれども、元々"無限"を司るドラゴンだから、大した影響はないんだよ。

……それに君さ、この世には二天龍よりも遥かに凶暴で厄介な"邪竜"と呼ばれるドラゴン達がいるんだよ? それこそ、中には全盛期の二天龍すら苦戦する化け物な龍だっているんだらか。

そんな龍がいる中で、たった二天龍の二回り強い程度の力じゃかなり弱いんだよ。

ましてや、君は"無限"がどれほどの物か理解してないよ。ここまで力が弱くなってるって事は、いまのオーフィスは本来の"無限"から"有限"になってるって意味なんだよ? ここまで言えばそれがどれ程の自体か……君にもわかるだろう?」

 

そう言うと、イッセーは黙ってしまった。

 

でも、と俺は話を続ける。

 

「だからと言っても、完全に弱くなっただけじゃない。あくまでも"無限"じゃなくなっただけで、身体能力云々が弱くなったわけじゃない。やはり龍神は龍神。その力は神様や二天龍以下のドラゴンなら大した驚異ではないしね。」

 

「そういうことだから、あまり心配しないであげて」

 

すると、いつの間にか俺の隣にいた龍巳がオーフィスの頭を撫でながらそう言う。

 

「なあ、オーフィス。訊きたいことがあるんだ。なんで、あのときアーシアやイリナを助けてくれたんだ?」

 

…オーフィスはロビーについた直後に曹操が放ってきた複数の火炎の魔法に、壁となってイリナとアーシアを守っていたのだ。

 

オーフィスは一言だけ答えた。

 

「紅茶、くれた。トランプ、した」

 

「紅茶とトランプって、家でのことか?」

 

イッセーの言葉にオーフィスはうなずく。

 

「そ、それだけで?」

 

イッセーの問いにオーフィスはこくりこくりとうなずく。

 

「ありがとうございます、オーフィスさん!」

 

アーシアとイリナがオーフィスにお礼を言う。

 

オーフィスからの状態を聞いてアザゼルがあごに手をやる。

 

「……しかし、二天龍よりも二回り強いぐらいか。妙だな。曹操は絞りかすといまのオーフィスを蔑んでいたが、正直、これだけの力が残っていれば十分ともいえる」

 

オーフィスが無表情で挙手する。

 

「曹操、たぶん、気づいてない。我、サマエルに力取られる間に我の力、蛇にして別空間に逃がした。それ、さっき回収した。だからいまは二天龍よりも二回り強い」

 

オーフィスのその告白に龍巳以外の全員が度肝を抜かる。アザゼルが叫んだ。

 

「おまえ、この階層を見て回ってくるって出ていったのは別空間に逃がした自分の力を回収するためか!?」

 

オーフィスはこくりとうなずく。それを見てアザゼルは"ククク"……と含み笑いをしていた。

 

「曹操め、あいつはサマエルでオーフィスの力の大半を奪ったと言っていたが、オーフィスは力を奪われている間に自分の力を別の空間に逃がしていた。それをさっき回収して力をある程度回復させた。それが全盛期のドライグの二回りときたもんだ。オーフィスを舐め過ぎたな、英雄派」

 

アザゼルを尻目にオーフィスは指先に黒い蛇を出現させる。

 

「力、こうやって蛇に変えた。これ、別空間に送った。それ、回収した。でも、ここからは出られない。ここ、我捕らえる何かがある」

 

オーフィスの指先にある黒い蛇を見て、俺は軽くため息を吐く。

 

アザゼルは途端に笑いを止め、息を吐いた。

 

「ま、死神がここに来たってことは、ある程度オーフィスの抵抗を想定してのことだろう。それにいまのオーフィスは無限じゃない。有限だ。あちらはサマエル以外でオーフィス封じの策があるだろうさ。俺たちが依然として慎重になるのは当然だな」

 

アザゼルがルフェイに訊く。

 

「ルフェイ、おまえさんは金華と同様、空間に関する魔法に秀でていたな?どうにかして外に助けを呼ぶ術すべはないものか?もしくは少人数だけでもここから抜けださせることのできる方法とかよ」

 

「あることはあります。――ですが、金華さんが倒れたいま、私だけでは限界があります。私と共にこの空間を抜け出る魔法がありますが……共にこの場から離れられるのはお二人が限界だと思われます。一度、ヴァーリさまとフェンリルちゃんの入替転移をしたので、あれからここの結界は強固になっているでしょうから。入替転移をもう一度おこなうのもおそらく無理でしょう。ゲオルクさまはこちらの術式をある程度把握したと思われますので。とっておきの転移魔法をしたとしても、チャンスはあと一度だけです」

 

…脱出はできるね〜。でも、ルフェイを入れても三人でしょ? 見た感じチャンスは一度きりだし、かなり考えて人を選ばないと、俺達もその選んだ人達も大変なことになって、最悪全滅ってのもありえるしなぁ。……どうしよっか?

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

すると、光輝兄さんが手を上げてきた。その光輝兄さんへみんなの視線がいく。

 

「いま俺達は、相手さんの結界で動けない。いくら魔法が得意なルフェイちゃんでも1人じゃ限度があるし、相手側は前以上に結界を強固にさせ転移系の魔法及び能力が使えない。かなり悪い状況だ。

……でもさ、それはあくまでも"転移"での話であって――――それ以外ならいけるんじゃないのか?」

 

光輝兄さんの言葉に、俺を含めた結城家メンバーが納得した。他の人達は頭にクエッションマークが出ているようだ。

 

「言いたい事はわかった。……でも本当にいけるのか?」

 

レイジ兄さんが光輝兄さんに質問した。

 

「最初は俺も無理かと考えたが、"俺たちの力なら"って考えるとな……どうしても失敗する未来が見えなくてな」

 

光輝兄さんが苦笑しながらそう言ったので俺も考えるが…………うん。どの方法も失敗する気がしない。

 

俺は周りを見ると、レイジ兄さんも優子姉さんも苦笑していた。どうやら同じ考えのようだ。

 

「……まぁ、ここにいるメンバー。特にそこの男子三人組なら可能ね。この三人にとってはこの程度の状況なら何度も遭遇してるし。何よりも――家には"結界"のスペシャリストがいるからね」

 

優子姉さんがそういいながらこっちを見てきた。その視線につられ光輝兄さんにレイジ兄さん、そんでもって黒歌を除いた専属メイドメンバーも見てきた。

 

「あ、あはは……いやまぁ、確かに"この程度の結界"なら解除可能だよ? これ以上の結界や拘束系に殺られそうになった事があるからね。"結城家"兼"博麗"の巫女を舐めないでもらいたいね。」

 

俺は胸を張りながら言ったのだった。

 

俺の答えを聞いて、全員がため息を吐いた。

えぇ!?何故に!?

 

そんな俺をよそにアザゼルは結論を述べだす。

 

「……とにかく、結界をどうにかして破壊して共に脱出するしかない。それと死神は想像以上に危険だ。あの鎌に斬られるとマズイ。死神の鎌はダメージと共に生命力を刈り取る。生命力を回復中のイッセーが攻撃を受け続ければ、寿命が尽きて死ぬことになる。オーフィスだっていまは有限だ。鎌に斬られ続ければ弱ってしまうだろう。オーフィスは死守しなければならない。こいつの力をこれ以上他に流出させたら、問題はもっと肥大化する。特に相手があのハーデスならな」

 

……いまのイッセーたちの実力なら、死神に劣っているとは限らない。確かにランクにもよるけれど、それでもある程度の死神ならなんとかいけるかなぁ。最上級クラスが来たらオワタだけどね。

 

「かといって外に助けを呼びに行くメンバーは出したほうがいい」

 

アザゼルの視線がイリナを捉える。

 

「――イリナ、おまえだけは先に行け。行ってサーゼクスと天界に英雄派の真意とハーデスのクーデターを伝えろ」

 

「で、でも!先に出るのはレイヴェルさんのほうがいいと思います!!」

 

食い下がろうとするイリナにアザゼルは間髪入れずに告げる。

 

「レイヴェルは脱出できたとしても自分を優先しなくてもいいとさっき言ってきた。――俺たちのほうが基本的に不利だ。あいつらは確実にオーフィスと龍巳、ヴァーリとイッセー、そしてそこにいる光輝兄たち結城家メンバーを確実に葬りに来る。奴らにとって、龍神姉妹と二天龍、そして地球連邦軍の幹部陣は消しておきたいものなんだよ。こっちのオーフィスをハーデスに悪用されたら、この世界に何が起こるかわからん!!」

 

アザゼルの言葉にイリナは何か言いたげだったが、言葉を飲み込んでうなずいて了承した。

 

…仲間想いの強い子だけど、でも、自身の立場と役目を理解したみたいだ。

 

アザゼルはゼノヴィアに視線を向けた。

 

「護衛としてゼノヴィアも連れていけ。エクス・デュランダルの機能をやられてしまったが、デュランダル自体はまだなんとか使えるだろう。結界の外で英雄派の構成員か、死神が待機している可能性があるからな」

 

「……護衛か」

 

目を細めるゼノヴィア。

 

「護衛も立派な任務だ。――それに、そろそろ天界であれの研究がひとつの結論を出す頃だ。それも打診してこい。ついでにデュランダルの修理もな。そのこともあるからおまえを先に脱出させる。ここの戦いだけで終わりそうにないからな、さっさと直してこい」

 

アザゼルにそう言われ、ゼノヴィアは静かにうなずく。

 

ルフェイが転移魔方陣の術式を構築するため、別室へ移動していく。共に脱出するゼノヴィアとイリナの基本情報を組み込むため、一緒に別室移動となる。

 

この部屋を出る前、ルフェイがイリナに鞘に収まった剣一本を手渡した。

 

「こ、これは!」

 

驚くイリナにルフェイは微笑む。

 

イリナに渡した"それ"は、フェンリル戦でアーサー・ペンドラゴンが所有していた最後のエクスカリバー、『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』だ。

 

「これを持っていってください。兄から預かっていたものです。お渡しするタイミングがつかめずにいたのですが、良い機会だと思いましたので。私たちにとって、それはすでに用が済んだものなのです」

 

「いいのか?」

 

ゼノヴィアの言葉にルフェイはうなずく。

 

「フェンリルちゃんは手に入れました。制御するためにフェンリルちゃんの力はだいぶ下がってしまいましたが、それでもあれ以上の魔物はいません。――デュランダルの修理にエクスカリバーをすべて使われてもよろしいのではないでしょうか?」

 

イリナは深々と頭を下げる。

 

「……あ、ありがとうございます!ルフェイさん!英雄の血を引く方って、怖い人ばかりだと思ってましたけど、良い人もいるんですね!!」

 

「ふふふ、恐縮です。兄と共に変人とは言われますけど」

 

ルフェイはそう苦笑いし、イリナ、ゼノヴィアと共に脱出魔方陣の術式を組むため、別室へ移動していく。

 

すべてのエクスカリバーを統合させたエクス・デュランダルかぁ…。うわ〜…えらい事になりそう。いろんな意味で…。

 

アザゼルがひざを叩く。

 

「さて…と。リアス、光輝、それにツバサ。脱出作戦を構築するぞ。オーフィスを連れて全員生き残るのが目的だ」

 

「ええ、当然よね」

 

「そうだな」

 

「うん。当たり前だね」

 

俺を含めた策士四人は不敵に笑む。

 

――さぁ、作戦タイムの始まりだよ。




今回は爆睡してて予定日より二日遅れましたがなんとか投稿出来ました!

いや〜、最近ずっと病院で寝てましたから本当に日常辛い、面倒臭い。でも楽しい! 自由って素晴らしいですね〜。うんうん。


さてさてさ〜て、もうすぐで、原作でイッセーくんが大変な自体に陥る話ですね。そこまでに行くため頑張って急ピッチで進めなくては! うん。この自由な間に頑張りたい!

さて、皆様。また次回でお会いしましょう!

それでは、ばいばーいヾ(*´∀`*)ノ

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