ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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15話 グレモリー眷属VSシトリー眷属

決戦日当日。とうとうこの日がやって来ました。現在私達はグレモリー家の城地下にゲーム場へ移動する専用の巨大な魔法陣が存在していて、リアスさん達グレモリー眷属の皆さんはその魔方陣の上に立って、もうすぐ始まる決戦の準備をしていました。

 

アーシアとゼノヴィア以外、駆王学園の夏の制服姿です。

 

アーシアは勿論シスター服。ゼノヴィアは出会った当初の頃に着ていた体のラインがクッキリとした戦闘服をきています。二人いわく、この服装だと気合いが入るそうです。

 

ソーナさん率いるシトリー眷属もリアスさん達と同じく駆王学園の制服です。

 

「リアス。今度は、己の力で勝ちなさい」

 

「次期当主として恥じぬ戦いをしなさい。眷属の皆さんもですよ?」

 

「がんばって、リアス姉さま!」

 

「まあ、今回教えられることは教えた。あとは気張れ」

 

「皆さん、油断大敵ですよ?確りと気を引き閉めて、最後まで本気で頑張ってくださいね」

 

「アーシア、足手まといだけは許さないからね?チームの要として頑張りなさい」

 

「白音、私の教えた仙術の戦い方を使いなさいね。あの技はもしもの時に使いなさい」

 

皆が魔法陣の中にいるリアスさん達に応援や激励を言っていた。この場にいないのは、サーゼクスさんとグレイフィアさんだけど、すでに要人専用の観戦会場へ移動されています。そこに私や先生やアリアさんと黒歌さんもこのあと、移動するのです。

 

緊張感が漂う最中、魔法陣は容赦なく輝きだした。

 

皆さんの健闘を祈ります!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレモリー眷属の激励が終わり、私達はサーゼクスさん達魔王様方がいるVIPルームにきました。そこには、レイジ兄さまと皐月姉さまもいました。

 

「やぁ、待ってたよみんな。どうぞ座って」

 

サーゼクスさんの言葉に皆は其々の席に座りました。

 

「ツバキ、貴女は私の隣にきなさい」

 

皐月姉さまに呼ばれ私は皐月姉さまの隣に座りました。

 

『皆さま、このたびはグレモリー家、シトリー家の「レーティングゲーム」の審判役(アービター)を担うこととなりました。ルシファー眷属『女王(クイーン)』のグレイフィアでございます』

 

アナウンスはライザー戦のときと同じくグレイフィアさんみたいです。

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。さっそくですが、今回のバトルフィールドはリアスさまとソーナさまの通われる学舎「駆王学園」の近隣に存在するデパートをゲームフィールドとして異空間にご用意致しました』

 

『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアスさまの本陣が二階の東側、ソーナさまの「本陣」は一階西側でございます。「兵士」の方は「プロモーション」をする際、相手の「本陣」まで赴いてください』

 

両陣地がデパートの端同士、かなり距離があるようですね。

 

「それにしても、これはリアスさん達に不利ですね」

 

今回のルールは『デパートを破壊し尽くさないこと』になったことで、リアスさん達グレモリー眷属は不利になるのです。メンバーの半数が『パワー中心』ですので、破壊力のある攻撃を封じられたことになります。

 

三十分が経ち、自陣に集合している両陣営。審判役のグレイフィアがアナウンスを流した。

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は三時間の短期決戦(ブリッツ)形式を採用しております。それでは、ゲームスタートです』

 

「へぇ~、短期決戦(ブリッツ)ねぇ。面白くなりそうね」

 

「確かにな。今回は楽しめそうだ」

 

「ワクワクします。リアスさん達には頑張ってもらいたいですね」

 

「頑張って、アーシア。お姉ちゃんが見守っているから」

 

「頑張れ、白音!」

 

「ソーナちゃんも頑張れ☆」

 

確実色んな応援をしていました。

 

「突然な質問だが、ツバキならこの勝負、もしも相手がリアスで、グレモリー眷属の中で先に狙うなら誰狙う?サーゼクスにも聞かれたんだけどよ」

 

アザゼル先生が突然聞いてきました。

 

「誰を…ですか?………そうですねぇ~。やはりイッセーでしょうね」

 

「ほ~う。理由は?」

 

「リアスさんの眷属の皆さんは、リアスさん含めてわかってないと思いますけど、精神的支柱はイッセーなんですよ。イッセーがいると全員のテンションが高いのです。それなので、無理をしても諦めずに行けると思います。だからこそ、イッセーを失ったら脆いと思うのです。ただ問題なのは、眷属の人達は『赤龍帝』としてのイッセーの敗北を見たことがありませんからね。仮に、今回の戦いでイッセーを失った時にどれ程持つかが勝負の行方になると思います。」

 

「なるほどな…。まぁ、少なくても今回の戦いでソーナは確実にイッセーを狙うだろう。そこでどれ程イッセーが持つかがカギだな」

 

「確かにそうですね」

 

私とアザゼル先生が話していると、突然扉の開く音が聞こえてきました。

 

「ふぉっふぉっふぉっ、賑やかじゃな」

 

すると、お爺ちゃんの様な声が聞こえてきました。

 

「この声は………あっ、オーディン様だ」

 

扉の前には北欧神話で有名な主神オーディン様とお連れの戦乙女ヴァルキリーさんがいました。あれ?前の人と違いますね。

 

「お久しぶりですね。オーディン様」

 

「お久しぶりですわ。オーディン様」

 

すると、レイジ兄さまと皐月姉さまが立って挨拶をしていました。

 

「久しいの、レイジ、皐月や。レイジよアリアとは結婚出来たのか?」

 

「はい。お陰さまで日々がとても充実していますよ」

 

「そうかそうか。ん?おぉ~、そこの可愛い娘っ子は誰じゃ?それに、いいおっぱいしとるの~。ちょいと揉ませておくれ!」

 

手をワキワキしながら此方を向くオーディン様。

 

「ひっ!」

 

私はおもわず皐月姉さまの後に隠れてしまいました。

 

ガシッ!!

 

すると、突然皐月姉さまがオーディン様の頭を掴みました。

 

「オーディン様…?私の可愛い妹にナニをしようとしたのでしょうか?いくら北欧の主神とはいえ流石に許しませんわよ?」

 

皐月姉さまは片手で頭を掴みながらオーディン様に笑顔で言っていました。そして、皐月姉さまの笑顔なのですが、とても怖いです。先程からオーディン様の頭からギリギリと音が出ています。

 

「い、痛い!痛いのじゃ!悪かったワシが悪かったからその手を離してくれんか!? 流石に死んじまうのじゃ!」

 

「わかりましたわ」

 

そう言った皐月姉さまが手を離しました。オーディン様は頭を抑えて項垂れていました。

 

「痛たた。相変わらずの力じゃの~。こんなの冗談に決まっておろう…。あらためて久しいの、ツバサよ。」

 

すると、今度は先程のエッチぃ顔ではなく優しげな顔になっていました。

 

「はい。オーディン様お久しぶりでございます。今は訳あってこの姿ですが気にしないでください。あと、絶対エッチぃのが目的であれば私に触れないでください。」

 

「しかたがないのぉ~。まぁ、ワシとて命は惜しいからな…。その後ろで構えているお主の兄にも言っておれ。ワシはなにもせんよ」

 

「本当だな?オーディン」

 

レイジ兄さまは少し殺気だっていました。

 

「本当じゃよ。それよりも、またその姿なんじゃな。今度は悪魔のせいか?」

 

「相変わらずの感ですね。正解ですよ」

 

「ふぉっふぉっふぉっ。だてに主神なんぞやっておらんわ。ほれ、始まっておるぞ。応援しなければな」

 

「あ。そうでしたね」

 

私達は座り試合を見ることにしました。

 

―side out―

 

 

 

 

 

 

―イッセーside―

 

定刻になり、グレイフィアさんのアナウンスが流れた……ゲーム開始だ!

 

制限時間が三時間の短期決戦(ブリッツ)。

 

部長が気合を入れた表情と声で言う。

 

「指示はさっきの作戦通りよ。イッセーと小猫、祐斗とゼノヴィアの二手に分かれるわ。イッセーと小猫は店内からの進行。祐斗とゼノヴィアは立体駐車場を経由して進行よ。ギャスパーは神器の使用禁止だから、複数のコウモリに変化して店内の監視と報告。進行具合によって、私と朱乃とアーシアがイッセー側のルートを通って進むわ」

 

部長の指示を聞き、全員耳に通信用のイヤホンマイクを取り付ける。

 

「さて、かわいい私の下僕悪魔たち!私たちが勝つわよッ!」

 

『はいッ!』

 

全員気合が入った返事をする。

 

「ゼノヴィア、行くよ」

 

「あぁ、祐斗」

 

先に動いたのは木場とゼノヴィア。フロアを飛びだし、立体駐車場に繋がる道へ向かった。

木場の話では、確か駐車場に車は存在していたという。しかし、ただの作り物だったみたいだ。

 

二人の次は、俺と白音ちゃんだ。

 

「小猫ちゃん、行こうか」

 

「はい、イッセー先輩」

 

部長、朱乃さん、アーシアの応援と期待の声がかかった。それに俺は応えるように三人に手を振って陣を出た。

 

俺と小猫ちゃんも作戦通りに中央通路を歩いている。

 

「イッセー先輩…、こっちにきてください」

 

すると。小猫ちゃんが手を引っ張りながら自動販売機の裏に隠れる。

 

「……動いています。真っ直ぐに向かって来ている者が二人」

 

「……あとどのぐらいで進む奴らと出会う?」

 

「……このままのペースなら、おそらく十分……いえ、五分以内です」

 

約五分か……まだ使えないな。ガス欠になったら、シャレにならないし。

 

「……訂正です!来ました!!」

 

「ッ!!」

 

俺は上を見上げた。

 

「――兵藤か!まずは一撃ッ!!」

 

匙だ!!ロープ……いや、神器のラインだ!ラインを使いターザンみたいに天井から降りてきて膝蹴りを仕掛けてくる!!

 

ドゴッ!!

 

小猫ちゃんは腕をクロスしてそのまま後にぶっ飛んだ。よく見れば匙の背中にもう一人乗っていた。まさか、小猫ちゃんは二人分の体重が乗った攻撃を受けたのか!?

 

俺はとっさに籠手を出現させて、匙に殴りかかる

 

『Boost!』

 

ドコッ!!

 

匙には器用にガードしてそのまま後に飛んでいった。匙が着地すると、後に乗っていた誰かも着地した。直後後ろからドカンッと音がした。後ろを向くと小猫ちゃんが何事もなかったかのようにトコトコと歩いてきた。

 

「よう、兵藤」

 

現れたのは匙。その隣には匙の背中に乗っていた少女――生徒会のメンバーで、確か一年生だったよな?

 

匙の右腕には……黒い蛇が何匹もとぐろを巻いている状態だった。以前と形態が全くちがう!

 

「まずは先手必勝!くらえ!」

 

匙は黒い蛇を伸ばしてきた。すると、隣にきていた小猫ちゃんが俺の前に立った。

 

「私の仙術の前では無意味です」

 

すると、小猫ちゃんの右手に白い光がまとりわりついていた。

 

「はっ!」

 

小猫ちゃんは右手を正拳突きの様に伸ばすと白い玉が飛んでいき…。

 

ドゴォン!!

 

匙の蛇に当り爆発した。煙がはれると匙の蛇は一匹が首とか無くなっていた。しかし、神器の方に戻るとすぐに蛇は再生して元に戻った。

 

「伊達じゃないですね。流石、猫又姉妹です」

 

匙の後輩が小猫ちゃんを称えた。

 

俺と小猫ちゃんは暫く戦っていた。俺も小猫ちゃんも何とか相手よりも優劣になっているかんじだ。

 

『リアス・グレモリーさまの僧侶(ビショップ)一名、リタイヤ』

 

なっ!ギャスパーがやられたのかよ!

 

「そらそら!隙が出来たぜ兵藤!!」

 

しまった!

 

ガッ!

 

「ぐぁ!」

 

ドゴォーン!

 

俺は後ろまで飛ばされ、近くの自動販売機にあたった。いってぇ!くそ、あれほどツバキちゃんに油断するなって言われたのに早速隙を作っちまったぜ…。

 

「どうした、兵藤!お前の力はこんなもんかよ!」

 

「へっ!んなわけあるか!!俺はこれまでさんざん地獄を耐え抜いたんだ!こんな程度で倒れるかよ!!」

 

俺はすぐさま立ち上がり匙の方に走ろうとすると……

 

 通路の向こう側から、爆発音が響き渡った。

 

『ソーナ・シトリー眷属の戦車一名、リタイア』

 

「んなっ!? な、何があった!?」

 

「え、由良先輩!?」

 

 まさかいきなり本陣で大爆発するとは思ってなかったのか、匙と後輩の兵士が驚いてその方向を振り返る。

 

俺は走りだし匙の顔面を思いっきり殴った。

 

「隙あり!!」

 

ドゴン!

 

「ぶふぇっ!」

 

匙は変な声を出しながら飛んでいった。そう言えばもうすぐ二分たつよな?

 

『相棒!いつでもいけるぞ!』

 

そう叫ぶドライグ。

 

「よし!いくぞドライグ!『禁手化(バランス・ブレイク)』」

 

全身から強烈なオーラがはなたれ、それが鎧と化して俺の体を包む。

 

 間違いなく今の匙は強敵だ。この時間で一気に叩き潰す!

 

「反撃タイムと行かせてもらうぜ、匙!!」

 

「来やがれ兵藤! 返り討ちにしてやらぁああああ!!」

 

 真正面から殴りかかるが、匙は伏せてそれをかわすと、ラインの一つを俺の体にくっつける。そのまま飛び上がると、さらにラインを天井へとくっつけた。

 

 そのまま匙がラインを縮めれば、その勢いで俺の体は引っ張られて、その勢いで天井の照明にたたきつけられる。

 

「なめんじゃねええええ!!」

 

 だが俺だって負けちゃいない。

 

 引っ張られながらも匙の体をつかむと、たたきつけられた勢いで天井にたたきつけ返した。

 

 そのまま重力に従って落下をはじめながらも、俺と匙はこぶしをたたきつけあう。

 

「部長の乳首に触れて覚醒したこの赤龍帝の鎧、発動した状態で負けてたまるか! 部長の乳首にかけて!!」

 

「ふっざけんな乳首って頭おかしいのか!! っていうか裸見るとか添い寝するとか風呂入るとか乳首ふれるとかうらやましいなオイ!! 俺にもちょっとぐらい分けろ!!」

 

「うるせえこの野郎! 別にエッチなことしてるわけじゃねえんだからそこまで言うことねえだろうが!!」

 

「死ねよお前マジで!! そんだけしてもらえば十分だろうがこの野郎!!」

 

 いつの間にか地面に墜落していたが、そんなのが気にならない勢いで殴り合う。

 

 禁手化して圧倒的なスペックさを発揮しているはずなのに、匙の奴は一歩も引かなかった。

 

「出来ちゃった結婚どころか手を触れることすらできない俺の身にもなれよ!!キスだってしたことないんだぞ!!」

 

「………あ、ごめん。俺もう部長とキスしてるわ。それもファーストキスを。」

 

「本当にマジで死ねっていうか殺してやるよぉおおおおお!!!!」

 

 匙の力が突然上がった…。あれ!?なんか押されてない!?

 

「お、落ち込んじゃダメです先輩!まだ、私のファーストキスは残ってますから!!」

 

 なんか外野が何か言ってるけど、俺も匙もそんなことを気にしている暇がない。

 

「裸どころか下着姿も、そもそも夏休みに生徒会全員で来たっていうのに水着だって拝んでないんだぞ!? お前はいいよなぁプールで美女二人がオイル塗る塗らないで喧嘩するぐらいでよぉ!!それに、つばさちゃんのポロリハプニングもあったみたいじゃないかぁぁ!!マジでうらやましんだよこのドエロ魔王がぁぁぁ!!!!!」

 

「お前はあの壮絶な戦いを見てないからそんなことが言えるんだ!! 俺だって一度殺されたりボコボコにされたりひどい目にあってんだ、役得ぐらいあってもいいだろうがぁあああ!!」

 

 殴られたら負けじと殴り返す。もうこの流れは意地だった。男としての意地と根性で殴り合う俺と匙。

 

 だけど、それでも今の俺の性能は基礎からして違いすぎる。少しずつだけど押し返し始めていた。

 

「そもそもハーレム王になる俺の夢には程遠いんだよ! こんなところで躓いていられるかこの野郎!!」

 

 それで、匙は倒れない。

 

「……ああそうかよ。だがなあ、俺だって夢のために頑張ってんだよ!!」

 

 ラインの一つが証明があったところにつながり、そして匙の拳が俺にぶつかる。

 

 それと同時に、鈍い痛みが全身を走った。

 

「ぐ、ぐああああああ!?」

 

『まずいぞ相棒! あの男、電流をラインでお前に流している!!』

 

 なんでそれで感電してないんだよ!?

 

『思った以上にあの神器の能力を使いこなしているようだ。多少は感電しているだろうがダメージと言えるほどではない』

 

「いっただろう? 俺だって特訓してるってよぉ!!」

 

 電流を流しながら、匙はさらに拳を叩き込む。

 

 タンニーンのおっさんが言っていた。こもった一撃は強力だって。それが今なら痛いほどよくわかる。さんざん言われながらやってきたからな。それに一度ツバキちゃんにも言われたさ………

 

『イッセーさん。思いの力って言うのはとても重く強く痛いんです。人は思いの一つでかなりかわるものです。過去に重病で医者に死刑宣告された人も、思いの力で奇跡がおきその病気が完治したこともありました。そして、それは戦場でも言えること…。その思いの力は時に自身の限界すらも越えることができます。だからこそ、思いって言うのは大切なんです。イッセーさんはそれを分かっていてください。思いは奇跡を起こすことを………』

 

 これが、思いのこもった一撃ってやつか。へっ!最初はわかんなかったけどよ。今ならわかる気がするぜ。

 

「誰だって、真面目に勉強して学べば程度はともかく普通は成果を出せる。そんな日本じゃ当たり前のことが冥界じゃできない。それを何とかしたい会長の想いを、俺も絶対にかなえたい!!」

 

 しびれて動きが乱れた瞬間を、さらに連続して拳が叩き込まれる。

 

「俺だってかなえたい。教師になりたい! 人に何かを教えたい!!」

 

『ソーナ・シトリー眷属の兵士一名、リタイア』

 

 いつの間にか小猫ちゃんが会長の兵士を倒していたけど、だけど手出しはしてこない。

 

「なんで俺たちの夢が笑われる必要がある!? 何かおかしいことを言ったかよ!?」

 

 違う。手を出さないんじゃなくて出せないんだ。畏怖すら感じる匙の気迫に、完全に飲まれている。

 

「だったら結果を出して黙らせる! そのためにもお前は叩き潰す!!」

 

 俺はその姿に、恐怖すら感じた。だけどな俺だって………

 

「俺だって負けるわけにはいかねぇんだよ!!」

 

 右腕で匙の腕をつかむと同時に、奥の手を発動させる

 

『Divid(ディバインド)!』

 

「おらっ!」

 

ズドン!

 

「ぐぅぁ」

 

匙の腹に直接パンチをいれた。

 

 これは白龍皇の籠手。あのときヴァーリから奪った白龍皇の力を発動する俺の奥の手だ。発動しても成功するかどうかが微妙な挙句、成功しようが何しようが生命力を削るから、アザゼル先生にも仕様は控えるように言われていた。

 だけど、それじゃあこいつには勝てない。ここまで根性入れてきた相手に、そんな気構えで勝てるものかよ!!

 

「俺だって気合い入れてここまで来てんだ!! 来いよ匙!! この程度で俺はやられないぜ!!」

 

 さあ、決着をつけようか、匙!!だがそれは隙だらけのうっかりミスだ。

 

 俺は…その瞬間は逃しはしない!!

 

「うぉおおおおお!」

 

「うりぁああああ!」

 

俺達は殴り、蹴り、殴り、蹴りを続け二人ともかなりボロボロだった。俺は鎧をつけているから大丈夫だが、匙は生身だから俺以上にボロボロだった。

 

「俺……は……負け…られ…ねぇ……んだ」

 

そう言うと匙は俺の足にしがみついてきた。

 

 こいつ…。本当に凄いな………。そして、あまりにも思いの強さがゾッとくる。

 

「俺は……」

 

ドサッ……

 

そう言った匙は力つきた。それでも服は掴んでいる。そして光が放たれ匙が消えた…

 

『ソーナ・シトリー眷属「兵士(ポーン)」一名リタイア』

 

「匙…、また勝負しようぜ」

 

「イッセー先輩、次に向かいますよ」

 

「お、おお」

 

そう言って俺達は次の場所へと進むのだった。

 

だが兵藤一誠は気づいていなかった………。腕に付いている匙のラインがいまだに消えていなかったことを………。


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