―ツバサside―
あれから少したち、俺達は無事にディオドラ……いやHE NN TA I☆から開放された。
ほんとに長い道のりだった…。やっぱり女の子(椿)の状態では上手いこと力の調節が出来ないようだ。
……どうにかして、女の子の状態でも戦える様にしなくちゃなぁ~……。守られてばかりでは、今回の様にみんなに迷惑かけちゃうし…
そんな事を考えていると、なにか気配を感じた…。
……この気配………アーシアからだ!
俺はアーシアに一瞬で駆け寄る。
「アーシア!!危ない!!」
「え?ツバサs――」
一瞬で俺とアーシアは光に包まれたのだった…
―side out―
―木場祐斗side―
僕たちは一瞬なにが起きたのか理解できなかった。
いや、いまだによくわかっていない。
ディオドラ・アスタロトから、アーシアさんとツバキさんを救出して助けた。だから、この場から退避するはずだった。
その瞬間、アーシアさんと、それにツバサくんが庇うようにまばゆい光の中に消えていった。
…………そう、突然に事態が一変したんだ…。
詳しくいえば、ツバサさんが突然アーシアに走って近づき、アーシアを抱き締めたかと思うと…、ツバサとアーシアが光に包まれて消えたのだった。
突然の出来事に放心状態になる僕達。……いったいなにが…
「――神滅具(ロンギヌス)を創りしもの、神滅具の攻撃で散る、か。霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ。それにしても、あの女は案外簡単に消えたな。もう少し楽しませてくれれば酒の盃にはなったものを…実に呆気ない終わりかただな」
聞き覚えのない声だ。
声のしたほうへ視線を送ると、見知らぬ男性が宙に浮いていた。軽鎧を身に着け、マントも羽織っている。
……この体の芯から冷え込むようなオーラの質は……。
「誰…?」
部長が聴く
「………やはり貴様か…シャルバ・ベルゼブブ!!」
すると、隣にいたレイジさんが怨敵を見るような鋭い眼光で男の名前を読んでいた。
「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。ディオドラ・アスタロトめ…この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりにも愚行が過ぎたせいで大分計画が狂ってしまった。……まぁ、そもそも捨て駒同然で最後は殺すつもりだったからよしとするか」
――旧ベルゼブブだって!!
「……その言葉…、はなからディオドラを処分するつもりだったな?俺達と一緒に」
レイジさんがそんな事をいった。そ…そんな!
「ふふ、ご名答…流石は地球連邦軍の副総司令官だ。」
だが、シャルバは嘆息した。
「それにしても哀れな奴だな、ディオドラ・アスタロト。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、人間に圧倒される悪魔なぞ悪魔でわないな。まぁ、すでにゴミの処理は終わっているがな。……さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼす」
「直接現魔王に決闘を申し込まずにその血族から殺すだなんて卑劣だわ!」
「それでいい。まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味がない」
「この外道!なにより、アーシアとツバサを殺したのはあなたね!絶対に許さないわッ!」
部長が激高し、最大までに紅いオーラを全身から迸らせた!
朱乃さんも顔を怒りに歪め、雷光を身にまとう。僕も許すつもりはない。僕の大事な友人たちを殺した罪……。このテロリストには死んでもらおう!
「アーシア? アーシア?」
――っ。
イッセーくんがふらふらと歩きながらアーシアさんを呼んでいた。
「アーシア?どこに行ったんだよ?ほら、帰るぞ?家に帰るんだ。か、隠れていたら、帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」
イッセーくんはアーシアさんを探すように辺りを見渡しながら、おぼつかない足取りで……。
「アーシア?帰ろう。もう、誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう。体育祭で一緒に二人三脚するんだから……」
――見ていられなかった。
白音さんとギャスパーくんが嗚咽を漏らし、朱乃さんとレイナーレさんも顔を背けて涙を頬に伝わせる。アーシアさんの姉であるアリアさんはレイジさんに抱かれてそのレイジさん胸の中で嗚咽を漏らしていた。
「…………許さない。許さないッ!斬るっ!斬り殺してやるっ!」
叫びながらゼノヴィアがデュランダルとアスカロンでシャルバに斬りかかる!
「無駄だ」
ギャンッ!
シャルバは聖剣の二刀を光り輝く防御障壁で弾き飛ばし、ゼノヴィアの腹部へ魔力の弾を撃ち込んできた。
ドオオンッ!!
地に落ちるゼノヴィア。聖剣も放り投げられ、床に突き刺さった。
「…………アーシアを返せ……。……私の……友達なんだ……っ!!……やさしい友達なんだ……。誰よりもやさしかったんだ……ッ!どうして……ッ!」
ゼノヴィアが泣き叫ぶ。
シャルバはイッセーくんに向かって言った。
「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。まったくもって、グレモリーの姫君は趣味が悪い。そこの赤い汚物。あの娘は次元の彼方(カナタ)に消えていった。すでにその身も消失してるだろう――死んだ、ということだ」
その言葉に僕たちは衝撃がはしる。やっぱり…アーシアさん、ツバサさんは………
僕はイッセーくんの方を見た。すると、イッセーくんはシャルバを見つめていた。
そのまま、じっと見つめ続ける。その姿は異様に見えた。無表情のまま、シャルバの顔だけを見続けている…。
『リアス・グレモリー、いますぐここにいる全員を連れてこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去した方がいい』
ドライグの声が聞こえてくる。
退去?どういうことだ?部長も僕同様に怪訝な表情をしていた。
ドライグの声は次にシャルバへと向けられる。
『そこの悪魔よ。シャルバといったか?』
イッセーくんが歩き出す。
『――おまえは』
死人のようなおぼつかない足取りで、イッセーくんはシャルバのほうへ向かっていく。
そしてシャルバの真下まで来たとき、無感情な一言をイッセーくんの口からドライグが言った。
『選択を間違えた』
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!
神殿が大きく揺れ、イッセーくんが血のように赤いオーラを発していく!!
イッセーくんの口から、呪詛のごとき、呪文が発せられる。
それはイッセーくんのものだけじゃない。老若男女、複数入り交じった不気味なものだった。
『我、目覚めるは――』
〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉
『覇の理を神より奪いし二天龍なり――』
〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉
『無限を嗤い、夢幻を憂う――』
〈世界が求めるのは〉〈世界が否定するのは〉
『我、赤き龍の覇王と成りて――』
〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉
《何度でもおまえたちは滅びを選択するのだなっ!》
イッセーくんの鎧が変質していく――。鋭角なフォルムを増していき、巨大な翼まで生えていった。両手両足から爪のようなものが伸び、兜からは角がいくつも形作られていく。
その姿は、赤きドラゴンそのものだった。
そして、全身の宝玉から絶叫に近い老若男女の声が発せられた。
「「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう――」」」」」」」
『Juggernaut Drive(ジャガーノート ドライブ)!!!!!!!!!!!!』
イッセーくんの周囲がはじけ飛ぶ!!イッセーくんの鎧から発せられるオーラで。
「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!アーシアァァッァァァァァァァッァァァァァァァッッ!!!!」
獣のような声を発し、四つん這いになったイッセーくんは翼を羽ばたかせる。
な…なんだあれは………いったいイッセーくんになにが…!
―side out―
―レイジside―
俺達の目の前で突然変異したイッセー。
……いや、あれはまさか!?
「……覇龍…か…」
まさか、よりにもよってこんな時に覇龍になるなんて!
くそ、一先ず皆を安全な場所に移さないとな!!
「全員よく聞け!! いまのイッセーの状態は危険だ!急いでここから離れるぞ!巻き込まれて死にたくなければ、俺についてこい!!」
俺が言うが渋るグレモリー眷属。
「急げ!! 時間が無いんだ!取り合えずこの結界の中まで入ってこい!! さっさとしろ!!!!!!」
俺の言葉に反応して俺の作った結界の中にへと入ってくるグレモリー眷属。でも、俺は結界は張れるがツバサ程じゃない。いつまで保つかわからないな。
……よし、なら少しでも多くの時間稼ぎをするか。あいつなら、そう簡単に死にはしない。いまのあいつなら…な。どうせ、ヒョッコリとアーシアと一緒に戻ってくるだろうな。
「よし、行くか。アルトリアさん。ここはまかせますよ?」
「えぇ、もちろん。貴方は大丈夫ですか?」
「はい。今回は龍の力を久々に使いますからね」
「……そうですか。なら、頑張りなさい。我が主ならヒョッコリと帰ってくるでしょうね」
「だな」
「そうだろうな」
「ははは!そうですね。」
まったく……。あいつ皆から同じ事を思われているんだな。
ほんと、頼もしい仲間をもったもんだ。
「さて、行くとするか」
俺はイッセーの方まで歩いていく。その道中で右手に籠手をだした。
「いくぞ!アンノン!!」
『……おう』
「『禁手化(バランス・ブレイク)!黒狐龍の鎧!!』」
俺は全身に黒き全鎧(フルアーマー)を装着する。
ほんとに久しぶりだな。この力は…
『あやつは、今代の赤龍帝か……。随分と下手な暴走だな』
下手な暴走?なんだそれ?
『うむ、基本的にドラゴンの神器には“覇龍”があるのはしってるな? 』
あぁ、覇龍はドラゴン系神器の究極の力。本来は使ってはならない、いわば逆鱗みたいなものだっけ?
『さよう。本来ならもっと酷いものだが、いまのあやつは本来の半分も出しておらん。本来なら死んでしまうが…まだ、助かる余地はあるぞ?』
マジか。なら助けないとな!
「よっしゃ!いっちょやるか!! イッセー、待ってろよ!!お前を今から助け出してやるからな!!」
俺はイッセーに向かって走り出した。
ツバサ…早く帰ってこい。お前が無事に帰ってくるのを待ってるからな!
―side out―
―ツバサside―
いつつ…。ありゃ?ここは何処だ?…………この景色に感覚は………。あっ、そうだ。次元の間だ。
……って、そんな事よりもアーシアは!!……あ、手元にいた。よかったぁ~、なんとか無事な様だな~。
……む?はて?なぜアーシアが無事なのだ?ここは次元の狭間の筈なのに……
『それは私の加護をこの子に付けたからよ。そうでもしないとここでは危ないもの。それに、この子にはツバサが何度もお世話になっているからね。更に、この子は今まで不幸がありすぎたわ。だから、此れからの為にも私はこの子の為に加護を与えたわ』
おぉ~…ルーツの加護ですか。祖龍の加護…。なんとも心強い加護だね~。
『そんな事よりもさっさと戻るわよ。あまりここに待機しても意味無いし、みんなに心配かけちゃうからね』
うん、そうだね。さっさと帰らなくちゃ♪
……ん?彼処にいるのは…もしや白龍皇ですか?
『あら、ほんとね。』
「おぉ~い!ヴァーリ~!やっほー!!」
俺が叫ぶと此方に気づいたヴァーリ。
「えぇ!?なんで貴方がここにいるの?それにその子は…」
なにか言いかけたヴァーリを手で制する。よし、この子にアーシアを任して俺は、あの人達を召喚しないとね。
「あぁ、話は後だよ。今はこの子をお願いね~。どうせイッセーの所に行くんでしょ?だから、少しこの子をお願い。俺はまだ少しやることがあるから」
「え?ちょ…」
「よろしくね~」
そして、俺はその場を離れた。
―side out―
―ヴァーリside―
まったく。なぜあの子は突然こんな事を…。まぁ、私は用事があっていくから良いけどね。
「さて、行こうか」
さっさと行ってライバルを元に戻さなくちゃね
―side out―