ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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13話 最後の戦い

―レイジside―

俺はいま、暴走状態のイッセーと戦っている

 

ビュッ!

 

空を切る音がした。速いな。俺の目でも追うのがやっとか。随分と弱くなったか?俺…。

 

「ぬうううううっ!」

 

シャルバの悲鳴が聞こえる。振り向けば。小型ドラゴンと化したイッセーがシャルバに絡みつき、肩に食らいついていた。

 

「おのれっ!」

 

俺はイッセーと戦っていたが、どうにもいまのイッセーの瞳には俺は映っていないようだ。さっきからシャルバしか狙っていない。

 

ぶちんっ!と気味悪い音を立てて、イッセーはシャルバに肩の肉を食いちぎって床に着地する。

 

「げごぎゅがぁぁ、ぎゅはごはぁっ!ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

イッセーはすでに人の言葉を発していない。

 

そろそろ止めないとヤバそうだな……。

 

「ふざけるなっ!」

 

地に降り立ち、激高するシャルバが残った左腕で光の一撃を放つ。その一撃は極大ともいえるほどの規模だった。

 

赤龍帝の翼が光輝く。まるで白龍皇の翼のようだ。

 

『Divid Divid Divid Divid Divid Divid !!』

 

その音声が鳴り響き、光の波動が半分に、さらに半分!縮小は留まることを知らず。ペンライトの光ほどの弱弱しさと化した。

 

「ヴァーリの力か!おのれ!どこまでもおまえは私の前に立ちふさがるというなだなッ!ヴァーリィィィィィィッ!」

 

吠えるシャルバが次に放ったのは光ではなく、魔力の波動だった。大きいな。絶大なオーラの波がイッセーを襲うがイッセーはそれを気にせずシャルバに突撃する。

 

バジイィィィィィィィィッ!

 

それをイッセーは翼の羽ばたきだけで軌道をずらして弾いた。

 

ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

外れた魔力は結界にあたり大きな爆発となった。

 

「そ、そんなバカな…」

 

シャルバは、予想外の事にかなり狼狽していた。

 

 そして、すでにシャルバの顔は恐怖に包まれていた。その瞳には怯えの色が強い。

 

『……終わりだな。ドラゴンに恐怖を抱いたら、もうそれは負けだ』

 

そうだな。力の根源ともいえるドラゴン。そのドラゴンに恐れ―つまり恐怖すると言うことは――それ即ち“死”を意味している。

 

ドゥゥゥゥゥ――。

 

すると何かを集中させる鳴動……寒気がするほど圧縮している感覚に、俺はイッセーの方を見た。

 

横に広がった両翼が赤く輝き、不気味な赤い光が辺り一面に広がっていく……。

 

「くっ!私はこんなところで死ぬわけには!!」

 

シャルバが残っている足で転移用の魔方陣を描こうとするが――その足が動きを停める。

 

「……と、停めたのか!?私の足を!!」

 

鎧の目が赤くきらめいていた。……ギャスパーくんと同じ能力を発動したのか!?

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!!!!!』

 

『Longinus Smasher(ロンギヌス スマッシャー)!!!!!!!!』

 

チャージされた発射口から、圧縮された膨大な量の赤いオーラが照射されていく。

 

「バ、バカな……ッ!真なる魔王の血筋である私が、ヴァーリに一泡も噴かせていないのだぞ!?ベルゼブブはルシファーよりも偉大なのだ!!おのれ、ドラゴンごときが!!赤い龍め!!白い龍めぇぇぇっ!!」

 

ズバァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!!!

 

放射された赤い閃光にシャルバは包まれ消え去る。

 

いまの一撃で神殿が崩壊する。ヤバイ!!早く結界を強化しなくては!

 

「ふん!」

 

俺は結界の中に入り、両手を合わせたそのあと、開いて結界を押すように両手を結界に添えた。

 

「結界印・強化!!!」

 

ゴガガガガガガガガガガシャァン………

 

上から大量の岩が降ってきた。……危なかったな。もう少し遅ければこの結界ごとペシャンコだった……。

 

「みんな、無事か?」

 

「はい」

 

『無事です!!』

 

「よし、ならいい。」

 

全員無事なようだ。……さて、あとはあのイッセーをどうしようかね。

 

「おおおおおおおおおおおおおん……」

 

覇龍と化したイッセー。瓦礫の上に立ち、天に向かって悲哀に包まれた咆哮上げている。

 

――我を失っても、アーシアを失った悲しみだけは消えない……か。

 

俺たちには『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を止める術はない。ツバキなら知っているだろうが、いまはまだ戻ってきてないな…。

 

「困っているようだね」

 

――第三者の声?

 

そのとき、空間の裂け目が生まれ、人が潜れるだけの裂け目から現れたのは――白龍皇ヴァーリ。それと、古代中国の鎧を着た男――孫悟空の美侯。そしてもう一人は背広を着た見知らぬ男だった。

 

その男が手にしている剣は神々しいオーラを放っていた。たしか、現在の聖王剣コールブランドの所持者。

 

……つぅーことは、アルトリアの実の子孫―つまりペンドラゴン…か。

 

「ヴァーリ」

 

リアスはヴァーリの登場に驚いていた。――だが、すぐに攻撃の姿勢を作り出す。周りもも戦闘のかまえを取っていた。でも、彼らからは敵意が感じられず、俺やアルトリア達は警戒自体していない。

 

「やるつもりはないよ。見に来ただけだから――赤龍帝の『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』をね。と言っても、あの姿を見るに中途半端に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』と化したようだね『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の現象がこの強固な作りのバトルフィールドで起こったのは幸いだったみたい。人間界でこれになっていたら、都市部とその周辺が丸ごと消える騒ぎになっていたかもしれないよ」

 

「……この状態、元に戻るの?」

 

リアスはヴァーリに訊く。

 

「完全な『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』ではないから戻る場合もあれば、このまま元に戻れず命を削り続けて死に至る場合もある。どちらにしてもこの状態が長く続くのは兵藤一誠の生命を危険にさらす事になるね」

 

と、木場のもとに美侯が歩み寄る。――その腕には見知った少女が抱きかかえられていた。

 

「ほらよ、おまえらの眷属だろ、この癒しの姉ちゃん」

 

美侯から木場に渡された少女は――アーシアだ

 

「アーシア!」

 

「アーシアちゃん!」

 

リアスと朱乃、皆がアーシアのもとに集まる。

 

「でも、どうして……」

 

木場が疑問を口にすると、コールブランドの持ち主が答える。

 

「私たちがちょうど、この辺りの次元の狭間を探索していましてね。そうしたら、この少女が次元の狭間に飛んできたのですよ。ヴァーリが見覚えがあるといいまして、ここまで連れてきたのです。なぜか淡い結界に包まれていましたが、おかげで私たちが駆けつける間、この少女は次元の狭間の『無』あてられずに済んだのです」

 

俺は、コールブランドの言葉に疑問をもった。“この少女が飛んできた”?“淡い結界”?……なぜだ。何故ツバキの名前がない。……そして何故“嘘をついている”

 

なにか裏がありそうだな…

 

「良かった……本当によかったわ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁんっ!」

 

ゼノヴィアがアーシアの無事を確認し、安堵のためか、その場に座り込んで泣きじゃくってしまった。木場がゼノヴィアのもとへアーシアをおろす。ゼノヴィアはアーシアを大事そうに抱きかかえ、笑顔でうれし涙を流していた。

 

他のメンバーも涙を流し、隣にいたアリアも泣きじゃくっていた。

 

そんな中、俺はヴァーリの所にいく。

 

「おい、ヴァーリ。何故お前らは嘘をついてるんだ?ツバキに会ってるだろ?……いや、いまはツバサか」

 

俺は小声でヴァーリに問う。

 

「うん、確かにあったよ?でも、何故か会ったと思えば突然あの子を渡されて『俺は用事があるからお願いね~』って言ってどこかにいっちゃったよ?」

 

「……そうか。ありがとう、教えてくれて」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

話終わった俺は、またアリアの隣に立つ。

 

「――あとはイッセーだけれど」

 

リアスがイッセーの方を見る。

 

「行こうとしているなら、それは止めとけ、リアス」

 

俺はリアスを止める

 

「しかし!」

 

「しかしでもだ。いまのイッセーは危険すぎる。流石にいまのお前らの実力では到底敵わない。正直俺も勝てるかどうか怪しいぐらいだ。それほど『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は危険なんだ」

 

俺の言葉に押し黙るリアス。その表情はとても悔しそうだ。いまなにも出来ない自分にそうとう苛立っているように見える。

 

「さてと、イッセーがあのままじゃ確実に死ぬな…何か策はあるか?ヴァーリ」

 

「そうだね、何か彼の深層心理を大きく揺さぶる現象が起これば……」

 

俺の問いにヴァーリが考えを巡らせる。

 

「おっぱいでも見せれば良いんじゃね?」

 

横で美猴が頭をかきながら言った。

 

「それは確かにな……。変態の塊とも言える兵藤一誠なら今のあいつでも、視界に入れば何とかなるかもしれない」

 

俺は美猴の言葉に賛成した。唯一の頼み綱だったツバサが不在のいま、残された道はこれだけだ。……ハッキリ言って馬鹿げているがな。

 

「確かにあの状態ではね?ドラゴンを鎮めるのはいつだって歌声だったよ。でも、そのようなものはないし、赤龍帝と白龍皇の歌なんてものはそもそも存在しないよ」

 

「あるわよぉぉぉぉ!!」

 

ヴァーリの言葉を遮って、遠くから飛んできたのは天使に転生したイリナだった。

 

『――おーい、聞こえているか?レイジ』

 

イリナが飛んできたと思えば、今度はアザゼルがインカムに連絡を入れてきた。

 

「どうした?今、イリナが飛んできたところなんだが?」

 

『いいタイミングだ。レイジ、紫藤イリナの持っている機械で映像を再生させろ。それをイッセーに見せろ』

 

「それがイッセーを戻す手段なのか……。了解した」

 

俺は立体映像機器のセットを手伝い、宙に投影させた。

 

『おっぱいドラゴン!はっじっまっるよー!』

 

映像に映っているのは、禁手(バランス・ブレイカー)の鎧姿のイッセー。周囲に子供たちが集まってくる。

 

『おっぱい!!』

 

映像の子供たちはイッセーの周囲で大きな声で言った。

 

ダンスを始めるイッセーと子供たち。軽快な音楽も流れ出す。

 

宙に浮く文字――「おっぱいドラゴンの歌」……タイトルだな。

 

そして、作詞・作曲、ダンスの振り付けにアザゼル、サーゼクス、セラフォルーの名が載っている。

 

全員が呆気にとられている。

 

「……うぅ、おっぱい……」

 

『ッ!?』

 

キタコレ!!と叫んだ方がいいだろうか…?頭を抱え、はっきりとした口調で「おっぱい」と発したイッセー。

 

―――――なぜ反応するのだ…

 

「反応したわ!」

 

リアスが歓喜の涙を流す。

 

「……イッセー先輩…卑猥です………」

 

白音は呆れた目をイッセーに向けながら猫耳をしおらせていた。

 

「紫藤さん、もう一度流してちょうだい!」

 

「はい!ポチッとな!」

 

リアスの言葉にイリナは応じて、再度機械のボタンを押した。

 

流れる軽快な音楽と歌。

 

「うぅ、おっぱい……もみもみ、ちゅーちゅー……」

 

イッセーが頭を抱えて苦しみだす。

 

「……ず、ずむずむ……いやーん……ポチッと」

 

歌詞の一部を言葉に出しながら、指で何かを求め出していた。その指には、先ほどまであった鋭い爪はない。

 

……そんなバカな…!

 

『………………ドライグも大変そうだな』

 

アンノンは同情的な声でそんな事を言った。きっと、顔も同じ様に同情した目で見ているのだろうな

 

「いまよ、リアス!あなたの乳首が求められているわ!」

 

「ええっ!?」

 

朱乃の言葉に目が飛び出さんばかりに驚いているリアス。

 

「イッセーくんはあなたの乳首を押して禁手(バランス・ブレイカー)至ったのなら、逆のこともできるはず。さっきまでは危険な雰囲気が漂っていて近寄れなかったけれど、歌で正気を取り戻しつつある今のイッセーくんなら、話は別だわ!!」

 

「で、でも、私の乳首でイッセーの『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は解除できるのかしら……?」

 

「できるわ!私では無理……。と言うよりもイッセーを愛してる貴女が行かなくてどうするのよ!私だってもしもツバサちゃんが同じ様になったら喜んで行くわよ!!」

 

リアスに対して叫ぶ朱乃。……うん、朱乃さん?確かに貴女の覚悟はスゴいが、流石にいまのイッセーと同じ状態になるなんてことはツバサに関してあり得んだろ…。てか、流石に『祖龍“ミラ・ルーツ”』が覇龍(ジャガーノート・ドライブ)なんてすれば、確実に世界は滅ぶぞ?……たとえ、俺たち地球連邦軍の全勢力集めて全力全開で戦ったとしてもな…。

 

リアスは眷属―いまだ気絶しているアーシアと朱乃以外―に視線を向けると、全員複雑な表情をしているが力強くうなずいた。

 

それもそうだろう。イッセーの暴走の止め方が、自分達の主の胸を触るだけなのだから。……俺でも全員と同じ複雑な表情になるさ。

 

「わかったわ」

 

意を決したリアスはイッセーの方へ歩みを進める。

 

イッセーとの距離を詰め、眼前に立ったリアスは制服のボタンを外し、ブラを外していく。

 

俺たちのいるところからは角度的に見えていないので、手の動きと持っている物で判断している。もし見えていたら、俺の傍に立っているアリアに恐ろしい程の総攻撃を受けて一週間は視力のない生活を送ることになっていたと思う……直感的に。

 

「お、俺の……お、おっぱい……」

 

イッセーは自ら求める者を発見し、震える指でリアスの胸へ――。

 

次の瞬間、イッセーの鎧は解除され、イッセーは『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』から解放された。

 

………………いや、なんでだよ!?

 

「……リアス・グレモリーの胸は兵藤一誠の制御スイッチか何かなのか?」

 

兵藤一誠らしいっちゃ、イッセーらしい……のか?おっぱいで覚醒し、おっぱいで元に戻る……ヴァーリの考えていることはあながち間違っていないな。

 

――ハハハ、ほんと立派な奴だ。これからは、乳龍帝と呼ぼう……兵藤一誠――いや、イッセー。


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