スパロボ世界の胡散臭い教祖様   作:スカウトマニア

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版権にするかOGにするかで悩みましたが、とりあえずOGで。


胡散臭さ控えめ

 私がイングラムさんに絡みつく悪意と因果の鎖をどうにかしようと、あらんかぎりの念を絞り出し、意識を失っている間、私は再びあの御方の姿を垣間見ることが出来ました。

 あの清浄とも寂しいとも見える白い世界の中に浮かび上がる黄金の人型。厳かで、神々しく、また人とはかけ離れた存在であると感じさせる雰囲気。その世界の中で私は肉体を持たず、意識だけとなっているようでした。

 

「我が主よ、使命を授けられし御方よ。私は貴方様の御心に沿う事が叶っておりますでしょうか?」

 

 私のかの方を失望させてはいないか、落胆させてはいないか、それが心配でした。私なりに地球と人類の未来を良くしようと一心不乱に活動して来ましたが、果たして大いなる試練を乗り越えられるものかどうか、確信はまだ持てずにおりました。

 

“剛力剛念の知的生命体、その種子の萌芽を誘うのだ。この世界は因果の交差路。過去と未来の織り成す模様は極めて特異なるもの。弛むことなかれ。怠ることなかれ”

 

 おそらく激励してくださっているのだと思います。私は深く感謝の念を込めて祈りました。そうして私は意識を取り戻したのです。

 私が居たのは同志の経営する病院でした。あのまま軍病院に収容されている可能性も考えたのですが、私が倒れたのは教団の施設の中でしたから、当然だったかもしれません。

 再びイングラムさんが私を訪ねて来られたのは、私が意識を取り戻してから四日後のことでした。

 

「顔色は元に戻ったようだな。面会はずいぶんと渋られた」

 

 私の個室に入ってきたイングラムさんは、少しばかり疲れたご様子でした。彼との面会で私が倒れた為に、信徒の方々がイングラムさんを原因と見做して、今日に至るまで私との接近を拒み続けてきたのは想像に難くありません。

 

「倒れてしまったのは私の力が足りていなかったからこそ。イングラムさんには余計な疑惑をかけてしまいました」

 

「いや、俺の為に無理をさせてしまったのは事実だ。改めて感謝する。まさか俺の因果の鎖がこのような形で解かれることになるとはな」

 

「一目見た時からイングラムさんを縛る無数の鎖が見えたもので、なんとかしなければとそれしか考えておりませんでした。考え無しに力を振るうものではありませんが、イングラムさんの魂が自由を取り戻せたのなら、なによりです」

 

 イングラムさんは困ったように微笑を浮かべられました。自分を犠牲にするような私の言動をたしなめたくもあり、かといって救われた自分にそれを口にする資格があるかというと……そんなところでしょうか。

 

「イングラムさんに特別な事情がおありなのは察していますが、具体的なことは何もわかっておりません。プライバシーには踏み入っておりませんので、その点はご安心ください」

 

「ふ、そうか。それなら安心だ。俺の恩人であるのに変わりはないが、それでも安易に信頼するわけには行かない事情もある。アウレウスレクス教団はその他の新興宗教団体とは一線を画す。

 教祖クロマーの持つ特異なヒーリング能力、政財界への浸透速度もそうだが、アードラー・コッホとアギラ・セトメを変心させたのは、言葉はおかしいかもしれんがやりすぎなくらいだ。

 お前の背後にはいったい誰が、いや、何が存在している? 恩知らずな真似と罵ってくれて構わんが、それをはっきりとさせない限り俺は……」

 

「それ以上、おっしゃらずとも結構ですよ。イングラムさんの懸念はしごくもっともなことであります。私自身、使命を果たす為にがむしゃらに今日まで歩いて参りましたから、もっと手段を選ぶべきだったのではと思う場面もちらほらとございます」

 

 私は姿勢を正し、イングラムさんに使命を授かったあの日の出来事と、これまでの事を詳らかにしました。

 

「私が爆破テロ事件の被害者であることは、既に調べがついておいででしょう。公言しておりますし、実際、ほとんどその通りなのです。

 本来、私はあの事件の時に死する定めだったのでしょう。ただ私の生命の火が消える寸前に、私は黄金に輝く人型を見ました。

 それが死にゆく私の見た幻であるのか、実在する超常的存在のビジョンなのかは、私にも分かりません。もちろん、個人としては実在していると信じておりますよ?」

 

「そして、その黄金の人型から使命と力を授かったと? ならばその使命とは?」

 

「かの御方はこう告げられました。大いなる試練が訪れる。それを乗り越える剛力剛念の素質を持つ生命体の種子を探せ、と。人類存亡クラスの災いが遠からず訪れ、それを乗り越える為に行動せよと告げられたのだと都合よく解釈しております。

 そうして私はこれから訪れる未来のごく一部の光景を見て、人々の傷と病を癒す力、心に寄り添う強く豊かな共感能力などを授かったのです」

 

 イングラムさんの眉間にしわが寄っておりました。私の口にしたあの御方について、なにか心当たりがおありなのでしょうか。それともまるで知らないのでしょうか? とっても気になります。

 

「確かにお前に与えられた力は尋常ではない。それをこの短期間で使いこなしているお前も大概だが……」

 

「私個人としては地球人類にとって、よい未来を繋げたいと思って行動しておりますが、傍から見て信じがたいというのも理解しております。イングラムさんにも無理に同志になってくださいとは申しません。

 貴方にもまた人智を超えた因縁があり、それに相応しい重さの使命が課せられているのを、おぼろげながらに理解しているつもりです。うん、つまり、同類に対する親近感と言えばよいでしょうか。そんなところです」

 

 同類と言ってはいささか失礼でしたでしょうか? それとも的外れ? イングラムさんは少しだけ呆気に取られた顔をされました。

 それからイングラムさんからの要請により、私は特脳研の優秀なスタッフだったというケンゾウ・コバヤシの研究チームに任意の上で協力することとなりました。

 

 ケンゾウさんは人間の脳が発するαパルスの研究をしており、イングラムさんの参加している秘密の計画のスタッフなのだそうです。

 私が人類の未来の役に立つというのなら、協力を拒む理由はありません。私は可能な限りの協力を約束し、イングラムさんと連絡先を交換しました。

 

 私が快復し、退院した後もすることに大きな違いはありません。

 人類同士、過去の因縁を捨てろ、忘れろとまでは行かぬまでも、話し合いかせめて殴り合いで済ませましょうと説き、宇宙にまで版図を広げたこの時代はまさに宇宙大開拓時代と後になってちょっと迷走している、と反省しながら布教しました。

 

 おそらく、政府では高級将校やそれなりの数の政治家にも信仰を広げた教団と私を危惧しているのでしょうが、表立っての干渉はありません。

 その間に私は連邦軍やコロニー統合軍とのパイプを太くしておりました。連邦軍ではケネス・ギャレット少将、マウロ・ガット准将、ハンス・ヴィーパー中佐など、コロニー統合軍ではジーベル・ミステル少佐といった方々です。

 なんと言いますか、早めに接触しておいてよかったなと漠然と感じる方々でした。

 私の思想に共感してくださったお陰で、皆さん、地球人類の未来を守る為に全力を尽くすと誓ってくださいましたが、もし会わずにいたらむしろその逆に作用しそうな方々ばかりでしたので……

 

 さて、ますます危険人物としてマークされていると、信徒の方からこっそり教えられている私ですが、今日はアジアにある軍の施設に足を運んでおりました。

 ケネスさんを始めとした軍の方々と軍事企業の方々からお招きに与り、匿名のゲストとしてその場にいたのです。

 我ながら場違いと分かってはおりましたが、この場にはイングラムさんの姿もありました。私が招かれたのは、ダニエル社やケイテン社を始めとした軍事企業の方々の開発した機動兵器の実機試験の様子を見学する為でした。

 

 私は機動兵器どころか軍事については、素人もいいところですが、私と教団が会社間のかすがいとなった縁もあり、招かれたのです。少しだけ、私に対する見栄もあるようでしたが、微笑ましいと受け止めておきましょう。大人は汚いものなのです。

 基地の外に広がる平原では、月の企業マオ・インダストリー製の機動兵器“量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ”数機の巨大な影が落ちています。

 

 このゲシュペンストMk-Ⅱはパーソナルトルーパーと呼ばれる人型機動兵器で、現在の連邦軍の主力なのですが、政治工作によって配備数は三十数機ていどとの話です。

 そう、地球連邦政府は既に異星人と接触し、その圧倒的技術力を前に降伏準備を進めており、ゲシュペンストMk-Ⅱはそのあおりを受けて生産されずにいるのです。

 

 ああ、なんということでしょう。よりにもよって地球連邦政府の主流が全面的な降伏をよしとしていたとは。たしかに絶望してしまうほどの技術格差があるとしたなら、降伏も選択肢の一つではあるのかもしれません。

 しかし、それならば私の見た未来のビジョンは? そしてあの御方が私に使命を授けたのはなぜでしょう? そしてそれらを別にしても、地球の人間として何もせぬままに主権と尊厳を明け渡すことには大きな抵抗があります。

 それにこうして戦いの為の剣を研ぎ澄ませている方々が、今、私の周りにいるのです。地球連邦の全ての政治家と軍人が降伏を認めているわけではないのですから。

 

「ケイテン社のブルシリーズ一号機、名前はレッドブルでしたか。人型に整えた戦車ですな」

 

 エアコンの利いたモニタールームの中で、私の隣に腰かけたケネスさんが色々と解説してくださっています。他にも開発元の企業の方々もいらっしゃるのですが、ケネスさんが階級の高さを理由にこの場所を選ばれました。後でこじれないとよいのですが。

 レッドブルの開発元であるケイテン社は戦闘車両の最大手ですが人型機動兵器の開発については、未知の領分です。そこでダニエル社の協力を仰ぎつつ、陸戦主体の機動兵器としてブルシリーズの開発がスタートしました。

 

 戦闘車両開発のノウハウを活かした整備性と生産性の高い陸戦機を目指し、将来的には外部装甲やバックパックの換装によって、様々な状況に対応できる機体を目標としているそうです。

 今はとりあえず人型としての体裁を整え、核融合ジェネレーターの出力を頼みに従来の戦車には搭載できなかった大口径火砲で武装した砲戦機といった風情です。

 

 ゲシュペンストMk-Ⅱを機動歩兵と呼ぶならば、レッドブルは機動戦車でしょうか。レッドブルの背中には口径280ミリの120ミリ低反動キャノン砲が二門、手には40ミリ4連装ポップミサイルランチャーが握られています。

 運動性と機動力に勝るゲシュペンストMk-Ⅱに対し、その二点で劣る分を装甲の頑丈さでカバーしつつ中~遠距離での圧倒的な火力で対抗するレッドブルという構図です。

 

 モニター越しとはいえ初めて機動兵器同士の模擬戦を見る私は、その迫力にすっかり息を呑んでいましたが、別の区画では更に迫力に満ちた模擬戦が繰り広げられていました。

 新たな協力者となったモガミ重工で開発された50メートル近いマイティウォーカーという量産型特機です。

 

 将来的には頭部となる小型戦闘機に二種類ずつ存在する上半身パーツと下半身パーツの組み合わせで、四種の換装形態を持つ機体を到達点として見据えておられるとか。

 ただ、今は技術の蓄積の為もあって換装機能を持たず、シンプルな機体構造による整備性と生産性、機体の頑丈さを維持した試作機が用意されていました。

 

 計画されている四形態それぞれを開発の上、実際に生産してこの試験を行っているのです。機体名はそれぞれモガミ0号ファイター・ファースト、同ファイター・ガード、同ガンナー・ガード、同ガンナー・ファーストとなります。

 この四機のモガミ0号を順番に相手をしているのが、青いカラーリングと星型の頭部が印象的な特機、“超闘士”の異名を持つグルンガストです。パイロットはかつてイングラムさんの下でチームを組んでいたという、イルムガルトさんが勤めています。

 

 モガミ0号のパイロットを務める方々も優秀なのですが、特機の扱いに関してはイルムガルトさんに一日の長があるようで、模擬戦と言うよりは教導を受けている印象です。

 パーソナルトルーパーで対処できない敵・局面を打破する突出した戦力としてのグルンガストも、多数配備できる量産型特機のコンセプトを体現するモガミ0号も私にとっては等しく頼もしい機械仕掛けの守護者です。

 彼らを開発した人々の努力と彼らが、地球圏と人類を守護する大いなる一助となることを、私は切に祈りました。




時系列はOG世界のDC戦争前です。

モガミ1号がソウルセイバーのことを指し、そのでっちあげた試作機なのでモガミ0号です。
レッドブルも本作のなんちゃってオリジナル機体です。これからブル・トレロに繋がってゆく感じです。
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