スパロボ世界の胡散臭い教祖様   作:スカウトマニア

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OG世界のユーゼスがどこまで細かくウルトラマンの事を覚えているのか、自信がなかったので、細かい所は忘れている設定にしております。


魂が覚えている

 私の魂の内に宿ったあの御方、黄金に輝く光の巨人、マハトマの力と意志の欠片。それがこの精神世界において私の最良最高の剣となり、盾となり、そして肉体となったのです。

 しなやかで滑らかな白銀の肉体を彩る力強い生命を象徴する赤色のライン、そして胸板の中央に輝く翡翠を思わせるクリスタル状のパーツ。とてつもない重圧を放つグランゾンを前にして、私はなけなしの勇気を奮って戦いを挑みました。

 

「ジェアッ!」

 

 慣れない戦いに自分を鼓舞する為の気合の声を発し、私は虚空を蹴りました。対するグランゾンに動揺の色はありません。右手を掲げると埋め込まれた球形のパーツが輝き、何もない空間から一息に大剣を引き抜いたのです。

 

「グランワームソード。この世界での死は精神の死。例え肉体が生きていようとも、心の無い生ける屍となることをお忘れなく」

 

 分かっていることとはいえ、冷徹なシラカワ博士の声で改めて告げられるとつい尻込みしそうになってしまいますが、そうは行きません。私の使命を果たす為、そして目の前の呪縛された魂を救う為に、私に敗北は許されないのです。

 私自身に戦いの心得はありませんが、マハトマの欠片が私に力の使い方を教えてくれます。白銀の巨人となった私は右手に力を集約し、中が空洞でのこぎり状の刃を持った光の輪を作り出します。

 

 さしずめ、斬り裂き光輪マハトマスラッシュ、でしょうか。

 暗黒の空間を斬り裂くように投擲した斬り裂き光輪を、シラカワ博士はグランワームソードで呆気なく弾きました。重厚な印象を受ける機体ですが、その動きの滑らかさは人体の如く、そしてまたシラカワ博士のパイロットとしての技量を伺わせるものでした。

 私の方が巨体である事、武器を持つ分、接近戦での間合いはあちらが有利、そして肝心の私とシラカワ博士の技量差。安易に懐に飛び込めばただではすみませんね。

 

「ヘアッ!!」

 

 私は拳銃を腰で抜き撃ちするように両手を重ね、矢印に似た形のスラッシャー光線を連射します。現実世界でもPTや戦車を一撃破壊する威力があると思いますが、グランゾン相手には牽制にしかならないでしょう。

 しかし、現実は私の想像を超えました。グランゾンは微動だにせず、スラッシャー光線はかの機体の周囲に生じたバリア? いえ空間の歪みに阻まれてあらぬ方向へと逸れてしまいます。

 

「極めて強力かつ精緻な重力操作。まさか今の地球にこれほどの機能を備えた機体が存在したとは」

 

「ふ、グランゾンの力はこの程度ではありませんよ。精神世界とはいえ開発者であり操者である私ならば、グランゾンの力を余すことなく再現できるのです」

 

 グランゾンの背中のユニットから駆動音が零れだした時、蒼い魔神とでも評すべき機体は信じがたい加速を見せ、更にその前方にぽっかりと黒い穴が開くと躊躇なくそこへ飛び込んでゆきました。

 マハトマの知識と超感覚がその正体を私に教えてくれます。重力による空間歪曲を利用したワームホール、瞬間移動! マハトマですら安易には行えない行為をこうも容易く。

 

 グランゾンが私の正面にワープアウトしたのは、あえてのことでしょう。それでも数百メートルの距離を瞬時に詰められたのは脅威です。

 振り下ろされたグランワームソードを、咄嗟に斬り裂き光輪を両手に作り出し、受け止められたのはマハトマの恩恵に違いありません。

 

「っ!」

 

「武術の心得はないと伺っていましたが、曲がりなりにも戦えているのは貴方に力を与えた存在の加護ですか」

 

 分厚く、幅広な大剣であるグランワームソードですが、グランゾンとシラカワ博士の手に掛かれば、まるで肉体の延長線上であるかのように軽やかに、重く、鋭く、速く、凄まじい迫力と共に斬り込まれてきます。

 やはり接近戦では分が悪い。私は先ほど投擲した斬り裂き光輪を呼び寄せ、グランゾンの背後から襲わせました。グランゾンはまるで動じた様子もなく、グランワームソードを背中に担ぐように構えて、あっさりと受け止めます。

 その一瞬の隙に私は大きく後退し、更に両手の斬り裂き光輪を投擲! これをシラカワ博士はグランワームソードで半月の軌跡を描き、背後から襲ってきたものと合わせて三つ全てを斬り砕いてしまいました。

 

「距離を取ったところで意味はありませんよ。グランゾンの力、思い知りなさい。ワームスマッシャー、発射!」

 

 グランゾンの前方にワームホールが開き、またそこに突入するのかと思いきや、グランゾンの胸部から発射された高出力エネルギーが次々と撃ち込まれます。そして私の周囲に次々とワームホールが開くではありませんか。

 これは全方位からの回避困難なエネルギー攻撃ですか。一瞬でも足を止めれば即座にエネルギー弾を撃ち込まれてしまうでしょう。私は眼前に開いたワームホールから放たれたエネルギー弾の回避は選ばず、胸板で受け止めます。

 

「デュア!!」

 

「ほう。バリアを用いずに耐えますか」

 

 ふう、一撃だけなら耐えられますが、連続で直撃を受けてはひとたまりもありません。私は両手両足をピンと伸ばし、一本の矢かあるいは宇宙を飛ぶ流星のようなポーズをとって、可能な限りの速さで暗黒の精神世界を飛びます。

 私の後を追い、あるいは進路を予測して次々とワームホールが開き、エネルギー弾が雨あられと降り注いでくるのを、私は右に左に、上に下にと慣性の法則に捕らわれない自由な動きで避けます。

 まだです。まだまだ。あの方は、黄金に輝く光の巨人たるマハトマはもっと速く飛べるのです。私はその欠片に過ぎないとはいえ、限りなく近づく程度のことは出来るはず。

 そう大宇宙を自在に飛ぶ一筋の光、黄金の流星に、私も!

 

 ここは私とシラカワ博士の精神がぶつかり合い、生じた世界。ならば思う事こそ、精神の強さこそが最も強い力となり、ルールにさえなる。

 私は願う通りに光の速さに達し、ワームホールの包囲網を掻い潜りながら斬り裂き光輪とスマッシャー光線を組み合わせ、グランゾンへと反撃を試みました。

 

 光の速さで飛びながら光輪と光線技で攻撃する私と、足を止めてワームホールを介して全方位砲撃を加えるグランゾンとの間で、豪雨の如く破壊の光の応酬が繰り返されます。

 お互いの一撃一撃が連邦軍の主力兵器さえ容易く破壊する威力です。もしこの場が現実世界であったならば、とっくに地形が変化して凄惨な破壊が齎されていたでしょう。

 

(グランゾンとシラカワ博士にはあの背後の何者かのバックアップがあり、私は初めての戦いとあって消耗は否めません。心はまだまだ折れてはいませんが、勝つ為の行動に出る必要があるようですね)

 

 シラカワ博士にはまだまだ余力があります。私に勝機があるとするなら、グランゾンに勝つ必要がないことでしょう。私はマハトマの知識に頼りながら、ある一つの賭けに打って出ることとしました。

 遠からずシラカワ博士に私の回避機動の癖を読み切られ、命中弾を当てられるはず。そうなる前にまずは一撃を入れて、グランゾンを一時的にでも行動不能にしなければ!

 

 小さく弧を描き、グランゾンへの最短経路を最高速度で! 光の速さで動く私を追いきれなくても動きの予測は容易く、私の進路上には既に無数のワームホールが開いていました。

 連邦軍の1,200mを誇るアルバトロス級でも、瞬時に轟沈する火力の網が私を捉える準備を終えています。ですが、それでは私を捕まえられません!

 

「ジュワッ!」

 

 私は掛け声とともにグランゾンのすぐ目の前へと移動していました。本来なら著しく生命力を消耗するテレポーテーションにより、瞬時にグランゾンとの距離を詰めたのです。

 ワームスマッシャーの発射体勢に入っていたグランゾンの左上から、全力を込めたドロップキック──マハトマキックをお見舞いです!

 やはり攻撃を行っている時には歪曲フィールドは展開されていない! またグランワームソードを右手に握っていることもあって、グランゾンの反撃は間に合いませんでした。

 

 マハトマキックを受けて大きく吹き飛ぶグランゾンめがけ、私は離されまいと距離を詰めてそのままマハトマチョップ、パンチ、パンチ、キックと立て続けに浴びせかけて行きます。

 さしものグランゾンも体勢を立て直すまでの間に、一方的な連打を受けたことで目に見えてダメージが入りました。このまま追い込んで一時的にでも動きを止め……

 

「お見事です、クロマー教祖」

 

 グランゾンの胸部にある球形パーツを抉り出そうとした手を伸ばした瞬間、シラカワ博士の声が響き渡り、途方もない重力が私を襲いました。グランゾンに殴り掛かろうとした姿勢のまま私はどこまでも足元へと落下を始めてしまいます。

 重力操作! しかも、これは、いったいどれほどの!? 叩きつけられる地面など無い世界である為に、私はグランゾンの機能の及ぶ限り落ちて行くのでしょう。

 

「現実世界の機体と遜色のないこのグランゾンをここまで傷つけるとは、貴方を見くびっていたと認める他ありません。しかし、この私と我が神サーヴァ=ヴォルクルス様の敵ではありません。

 さあ、この無限の重力の井戸に飲み込まれ、その魂を我が神に捧げるのです。ブラックホールクラスター発射!」

 

 すべてのワームホールが閉じられ、その代わりにグランゾンが行ったのは宇宙で生じる現象の一つとして有名なブラックホールの生成でした。一度捕まれば光さえ脱出できないと、昔からよく言われるあのブラックホールです。

 グランゾンがブラックホールの生成に機能を割いたおかげで、私を襲った重力異常は解除されましたが、これは回避は間に合わない!!

 

 私は成す術なくグランゾンの発射したブラックホールに飲み込まれ、シラカワ博士の意思によって再現される重力の井戸の底へと落ちて行きました。

 巨大化したブラックホールの中に飲み込まれた私を、あらゆる方向からとてつもない重力が襲い掛かり、崩壊させようとしてきます。

 かつてない苦痛と痛みの中に私を苛む声が混じっていました。シラカワ博士を縛るあの巨大な幻影です。マハトマとは似て非なる大いなる力の主。しかしその内にあるのは恐ろしいまでに純粋な破壊衝動。

 

「消失セヨ。滅びヨ。全てノ生アるもの、形あルモノは我によッテ破壊さレる定め。貴様のその魂ト忌まワシイ光の欠片ヲ喰らイ、三千大千世界の全テニ破滅を」

 

「ふふ、貴方にはできませんよ。ヴォルクルスさん」

 

 再現されたブラックホールの齎す無限の重力地獄の中で、私は光を見失ってはいませんでした。私の中に宿るマハトマの光の欠片、私自身の心が持つ光、そして私がこれまで紡いできた人々の縁が持つ輝き。

 そしてなによりあれほど強大なヴォルクルスさんの呪縛に縛られながら、未だ抗っているシラカワ博士の心の光が見えるのですから!

 

 私はシラカワ博士の光を目指し、あらんかぎりの力を振り絞って飛びます。マハトマも同じようにするでしょう。私よりもずっとうまく出来るでしょう。

 例えブラックホールに落ちたとして、簡単に脱出してのけるに違いありません。私程度では死力を振り絞る必要がありますが、脱出は出来そう……うん、出来ました!

 

「シラカワ博士!!」

 

 ブラックホールクラスターからの脱出は、さしものシラカワ博士も予想外だったのかわずかにグランゾンの動きが止まります。

 私はマハトマの知識に従い、両手を十字の形に構えて残されたエネルギーの全てをそこへと集中させます。そしてグランゾンの背後にヴォルクルスさんのビジョンが浮かび上がり、私へと敵意の籠った視線を向けてきます。おそらく呪詛の類でしょう。一般の方でしたら、それだけで何百、何千人もの方が即死してしまうに違いありません。

 

「オノレ!!」

 

 ヴォルクルスさんの怒りの叫びにグランゾンが操り人形のようにグランワームソードを振り上げました。

 このまま私を一刀両断して斬り捨てるかのように見えた動きでしたが、グランゾンはそのまま勢いよく背後を振り返り、グランワームソードをヴォルクルスさんの額へと投げつけたのです。

 鍔元まで深々と額を貫かれたヴォルクルスさんは信じがたい表情でグランゾンとシラカワ博士を見下ろしましたが、私からすれば意外でもなんでもありません。あの方の心の最後の自由が反抗しただけの話ですから。

 

「ヴォルクルス、私の、自由を束縛する貴方を、決して許しはしませんよ」

 

「お見事です、シラカワ博士。後はお任せください」

 

 私はグランゾンの傍らを通り過ぎ、ヴォルクルスさんの正面で止まり、ため込んだエネルギーを一気に解放します。必殺技、マハトマシウム光線です。

 

「ジュワ!」

 

 十字に組んだ腕から黄金の光線が発射され、グランワームソードの突き刺さったヴォルクルスさんの額に命中して、見る間に巨大なビジョンが崩壊してゆきます。

 

「オオオオオオオオオオオオ!?!?!?!?」

 

 ブラックホールから脱出した後、残っていた力の全てを光線に注いだ甲斐もあり、私はシラカワ博士の魂からヴォルクルスさんの気配が消え去るのを感じ、私は消失する精神世界の中で微笑を浮かべました。

 そして私とシラカワ博士は現実の来客室へと帰還したのでした。壁に掛けた大きなノッポの古時計を見ると、実際には一、二分程度しか時間は経過していないようでした。

 

 私もシラカワ博士も精魂尽き果てたといった様子です。私はのろのろとした動きで自分の分のティーカップを取って、角砂糖をドボドボと入れてから飲みます。

 シラカワ博士は私の投入した角砂糖の量に苦笑を浮かべていらっしゃいましたが、晴れ晴れしているように見えます。

 

「シラカワ博士、差し出がましい真似を致しました。特に貴方の心の内に断りもなしに踏み入ったことにつきましては、重ねて謝罪を」

 

「ふ、それは結構ですよ。私にも予想の着かないことはあるものですが、まさかヴォルクルスの呪縛から解放されるとは。ただの新興宗教祖というには、ますます無理が出てきましたね。クロマー教祖」

 

「私に後ろめたいことはございません。時々、おや、とか、はて、とか間違えたかなあ、と思う事はありますが」

 

 私の素直な気持ちをお伝えすると、シラカワ博士は呆れた顔になりました。まあ、そうですよね。

 

 

 クロマー・クカモネとシュウ・シラカワの会合により、EOTI機関とも協力関係が構築されてからしばらく、とある政府高官の邸宅では主が大型スクリーンの前に腰かけて、不機嫌そうな顔で踏ん反り返っていた。

 大型スクリーンに映し出されているのは、アウレウスレクス教団が出資しているサークルバレープロダクションの制作した、人類の味方をしてくれる宇宙人と人間達、そして侵略的宇宙人や怪獣との戦いを描いた『マハトマン』が放映されている。

 

「違う。これは違うものだ。だが、どうして私は、なにと違うのかも分からないのに、こんな、こんなものから目を離せないのだ!?」

 

 政府高官──アルテウル・シュタインベックという男は、忌々しい表情を浮かべながら視線は片時もマハトマンの戦いから外れていない。

 教団の宗教色を極力廃止し、エンタメとして完成したマハトマンは地球でもコロニーでも徐々に知られ始めている。

 アルテウルがマハトマンの存在を知ったのは、偶然、たまたまだったが、第一回の放送開始から今日に至るまで一度も欠かさずに視聴し、記録媒体は保存用と観賞用を必ず購入している。なお布教用はない。

 

「なぜ、なぜなのだ」

 

 アルテウル自身も理解しきれていない魂に刻まれた業に彼は深く懊悩し、今日も放送が終わるまでスクリーンの前から一歩も動かないのであった。

 なおマハトマンの他にも秘密結社に改造された改造人間『仮面ファイター』やPTを思わせるロボットの活躍する『機動兵器ガンダー』が放映されているが、アルテウルはマハトマンほど熱を上げていなかった。熱を上げていた人間は他にいるが。




いつまで続くかは分かりません。
ジュワッチした途端、感想が爆増して困惑しています。
ユーゼスの人気っぷりが伺えますね。
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