スパロボ世界の胡散臭い教祖様   作:スカウトマニア

5 / 6
主人公の心の声が分からない、OG本編開始前の動向が謎なら、プレイヤーからすれば主人公は怪しいことこの上ないと思うのです。

追記
主人公については容姿、性別不明としておくつもりでしたので、文中の描写を修正しました。


世界の変化

 地球連邦政府の裏の支配者、大統領をも凌駕する権力の持ち主カール・シュトレーゼマンはごく限られた者にしか教えていないセーフティハウスで、最近の思うままにならない情勢に苛立ちを募らせていた。

 最高級品しかないリビングでソファに深く腰を沈めて、葉巻をくゆらせている。テーブルの上に置かれたウィスキーのグラスは、しばらくの間、放置されたままだった。

 

「まったく不愉快極まりない。面白くないことばかりが続いてくれる」

 

 複数の軍事企業のこれまででは有り得ない連携。

 同じように地球連邦軍とコロニー統合軍高官同士の交流と連携の活発化。

 複数の議員達の主流からの離脱と異星人に対する徹底抗戦の機運の高まり。

 これらに伴うシュトレーゼマン派閥の影響力の低下と、異星人との交渉に及ぼす悪影響がなによりもシュトレーゼマンの危惧するところだった。

 

「クロマー・クカモネ。そろそろ目障りだな」

 

 それもこれも、クロマーと言う教祖の率いるアウレウスレクス教団の活動によるところが大きい。

 全てと言うわけではないが、不治の病や治らないとされた怪我を治し、何人もの人々を救ってきた現代の救世主、実在した聖者と呼び声の高いカルト集団の教祖、しかし異星人の存在が現実のものとなった以上、本当になにかしらの異能者である可能性が高い、というのがシュトレーゼマンの評価だ。

 

 教団はクロマーの治癒能力によって多くの議員や富裕層を信者として取り込んでおり、今となっては地球とコロニーのどこにも信者が居て、政府と軍の上層部にも隠れ信者が多くいるという。

 おそらくシュトレーゼマンの派閥の中にも、教祖の為にと息を潜めて所属している信者が居るとシュトレーゼマンは確信していた。

 今となっては民間、政府、軍部を問わず存在するアウレウスレクス教団の強烈なシンパ達は“光の派閥”などと呼ばれ、教団とは別に秘かに勢力を強大化させているという。

 

 コロニー独立運動を妨害する為に裏からテロリストを操り、EOTI機関を立ち上げながら得られたEOTを自らの保身と利権確保の為に独占し、そうして数十年の長きに渡り、地球圏で甘露を啜ってきた怪物がこの男だ。

 異星人の保有する技術との格差と勢力圏のあまりの違いに諦めたが、シュトレーゼマンはその立場と権力に相応しい能力の持ち主ではある。

 クロマーからすると政府を裏で操っていた人物が無能なのも、それはそれでなんだが複雑と言うだろう。

 

 もしクロマーの能力が本物であるなら、異星人への献上物としての価値はあるかもしれない。

 あるいはその治癒能力を独占して、自分の延命と長寿に利用できないかとシュトレーゼマンの中で黒い欲望が首をもたげた時、リビングの扉が開いて見知った顔が姿を見せた。

 

 アルバート・グレイだ。シュトレーゼマンの腹心であり、メディアへの露出は彼の方が良い。政府高官の一人だがシュトレーゼマンの傀儡であり、表に出ない彼の代弁者として今の地位を手に入れた小物ともいえる。

 少なくとも扱いやすさと小心者故に裏切る可能性が皆無なことから、シュトレーゼマンのこの隠れ家を教えている。今回はソレが仇となった。

 

「アルバート、貴様、何のよう!?」

 

 アルバートの背後から新たな人影が姿を見せた。ソレはシュトレーゼマンが使い道を模索していた教祖クロマーその人に他ならなかった。

 アルバートは恭しく道を譲り、クロマーに向けてずっと頭を垂れている。信奉する教祖の道案内を務められた感激と誇りとが、彼の胸の内を満たしていた。

 シュトレーゼマンは知らなかった。つい先日、クロマーがアルバートに接触し、お話した結果、アルバートが教祖の足の甲に額づいて目覚めたのを。

 

「クロマー・クカモネ!! 貴様、既にアルバートを毒牙にかけたか」

 

 シュトレーゼマンの右手が老齢とは信じがたい速度で懐に入り、そこから護身用の小型拳銃を取り出す。ピタリと額に向けられた銃口を前に、クロマーはアルカイックスマイルを浮かべたまま、恐怖の欠片も抱かずに口を開く。

 

「突然の訪問、どうかお許しください。カール・シュトレーゼマン議長閣下。ぜひとも地球圏と人類の未来について、閣下と胸襟を開いて語らいたくグレイさんに無理を申し上げたのです」

 

「世迷言を!」

 

 シュトレーゼマンの指が引き金を引き、直後に響く乾いた音。雷鳴にも似た音の余韻が残る中、クロマーの額にピタリと吸い付いたように銃弾は動きを止めていた。

 シュトレーゼマンが信じがたい光景に絶句し、アルバートが信奉する教祖の起こした小さな奇跡に感涙を隠さぬ中、クロマーは暴力に訴える人間の凶暴性に小さく悲しみながら、口を開いた。

 

「さあ、閣下。心行くまでお話いたしましょう」

 

 

 

 地球連邦政府は急激ともいえる統治方針の転換を迎えました。

 これまでの地球連邦結成までの軋轢や独立に対する妨害、弾圧行為、またコロニー独立運動に対する行いに対してもまた、これまで闇に葬られてきた事実を詳らかにして責任の追及と被害者遺族への補償と公的な謝罪などなど。

 連邦政府の屋台骨を揺るがす一連の膿みだしは連日、メディアと市井の人々の口を賑やかなものとし、とてつもない混乱を齎していました。

 

 その混乱の一方で静かに、しかし急激な速度で軍事力の増強が図られていました。

 生産を停止されていた量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの再生産。

 レッドブルの正式採用機ブル・イエロ、初の本格的な量産型特機モガミ0号ことソウルブレード──社長さんのお子さんの意見で地球を守るための魂の刃と名付けられたそうです──の正式採用。

 

 そして業界最大手のイスルギ重工開発の最新鋭戦闘機F-32シュヴェールトのロールアウトに加え、EOTI機関との技術協力によって開発された新たな人型機動兵器アーマードモジュール・リオンのお披露目。

 政府はシュトレーゼマン氏の心変わりと彼らの派閥が、徹底抗戦派に鞍替えしたことにより、異星人への民意無き全面降伏の選択を捨てました。これによってビアン博士とシラカワ博士のEOTI機関は全面的な協力に舵を切ったのです。

 

 本来、リオンシリーズやシュヴェールトはEOTI機関が軍事クーデターを加えた際の切り札となる兵器だったそうですが、政府の方針転換により地球人同士の衝突という事態が避けられ、堂々と地球圏を守る翼として産声を上げたのです。

 モニターの向こうで欠陥を改良され、正式採用されたマオ社製の可変型PT・ビルトラプターとリオンが空中で熾烈なドッグファイトを演じ、地上ではブル・イエロと既存の戦車隊、イスルギ重工の地上用AMランドリオンが撃ち合っています。

 マオ社のシュッツバルトは結局、採用を見送られたようでした。

 

 また別のモニターではソウルブレードファイター・ファーストを相手に、量産型ゲシュペンストMk-Ⅱの小隊が質量の差にもめげず、三方向から果敢に攻め立てていました。

 エース向けに少数生産されたマオ社のPTビルトシュバインは性能に相応しいパイロットが操り、リオンや量産型ゲシュペンストMk-Ⅱに対し、コーチングするように戦っています。

 

 私の活動が少しは実を結んだ結果、この光景が出来たのならよかったのですが、どうなのでしょうね。

 しかし、心配になることもあります。コロニーと地球とを問わずに連邦軍がバグス、アーチンと呼ぶ異星人の機動兵器が頻繁に姿を見せ、連邦軍と衝突するケースが増えているのです。

 

 全面降伏から方向を転じた地球連邦政府に対する示威行為、あるいは懲罰行為なのでしょう。バグスはメテオ3を落としたと思しい異星人に属し、ウーチンはそれとはまた別の異星人の勢力だと言います。

 現在の地球は少なくとも二つ以上の異星人に目を付けられ、その主権と尊厳を脅かされているのです。これではどちらかに降伏したとして、残るもう片方が敵となるだけです。

 

 私は暗澹たる気持ちに包まれましたが、光とは闇が深まれば深まるほどその中で輝きを増すもの。心の中のマハトマに弱気になったことをお詫びして、目的の場所を目指して脚を動かします。

 私は今、宇宙に浮かぶ可変型戦闘要塞ナーガデッセイ号の中に居ます。ナースデッセイ号ではありません。ナーガデッセイ号です。

 こう、とぐろを巻いたというか渦を巻いたようなハンガーモードで全長400m、ぐっと体を伸ばした龍型のバトルモードでは1,200mになる戦闘要塞です。

 

 ウォン重工業やアシュアリー・クロイツェル社といった新しい同志に加え、イスルギ重工からの出資によって開発・建造されました。

 最近、光の派閥と呼ばれる方々によって結成された半民半官の組織「科学特別調査隊」、通称「科特隊」あるいは「ScienceSpecialSearchCops」からSSSC──スリーエスシーとも呼ばれる組織の宇宙本部を兼ねています。

 

 独自の戦力として超特機級とも超アルバトロス級とも称されるナーガデッセイ号そのものに加え、小型高性能テスラ・ドライブとプラズマジェネレーターを搭載した戦闘機プラズマビートルと小型のデルタビートル、遠隔操縦式の多目的無人可変ドローダー“ガッツファルコン”を複数所持しています。

 息子さんの不自由な体を治療した縁でお手伝いくださっているドナ・ギャラガー博士が、ナーガデッセイ号の生物的な変形機構の開発に知恵を貸してくださいました。

 

 しかし、今、ナーガデッセイ号は大きな危機を迎えていました。私が狙われたのか、地球の新たな守護者たるこの機械龍が狙われたのか、バグスとウーチンが図ったかのように大群で襲い掛かって来たのです。

 共にナーガデッセイ号を訪れた方と共にシェルターに避難した私ですが、時折ナーガデッセイ号を揺らす振動が戦闘の激しさをなにより雄弁に物語っています。

 

 私は同じくシェルターに避難した人々に語り掛け、落ち着かせながらまだ他に自分にしか出来ない事があると、胸の内から聞こえてくる声に耳を傾けていました。

 それは私自身の心の声であり、同時に私の内に宿るマハトマの声であったと思います。マハトマよ、どうか、今一度(ひとたび)、私の行いをご照覧あれ。

 

 私は秘かにシェルターを抜け出して、人気のない通路の一角に辿り着いてから、いつの間にか手に握っていたペンライトか発炎筒のような細長い物体を掲げて、精いっぱいの勇気を奮わせて、自分を鼓舞する為に叫びました。

 私はほんのわずかな時間だけ、マハトマの威光と奇跡を体現する白銀に輝く光の巨人となる為の叫び!

 

「ジュワッチ!」




GUTSファルコンは良い具合にもじった名前が思い浮かびませんでした。
ビルトラプターとかグルンガストで可変機構のノウハウはあったので、それを戦闘機に投入した試験機みたいな扱いかな?

追記
お前も海兵と同じようなミスを繰り返してしまいました。自分にガッカリとウンザリしたので次回で終わりにします。
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