ツクリのアトリエ 透き通る世界の錬金術士   作:アトリエはいいぞ

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頑張れ錬金術士 

「とにかく便利屋が止めてくれてるうちにホシノ先輩を助けないと!」

 

”こっちだ!あの建物!”

 

「逃がすかぁっ!」

 

「うそ!追いついてきた!?」

 

 クール&スパイシー(ツクリの目からみて)な便利屋68に後詰めを担当してもらい、シロコに振り回されながら走っていると後ろから装甲車と戦車とパワードスーツを3つまとめて合体させたメカに乗ったカイザーの理事が追いかけてきていた。

 

 まさかの理事が実力行使にキヴォトスの縮図を思い出すツクリであったが、先生がホシノを監禁している建物を見つけたことでもういいか、とシロコに俵担ぎにされたまま、杖を両手で握りしめた。

 

「貴様らは、ずっと目障りだった!何を仕掛けようとも毎日笑顔でかわしおって!貴様らのせいで、私の計画がああああ!」

 

「うん、しらない!ラヴィネージュ!」

 

 ばっさりと言い切ったツクリは杖を一振り、すると先端の結晶が光り輝き、氷属性の爆弾、レヘルンとは比べ物にならない威力の絶対零度の爆圧が理事に襲い掛かった。

 

 ひどく熱いはずの砂漠が一気に氷点下まで下がり、区画一帯すべてが氷漬けになる。ラヴィネージュ、ツクリが現在作れる氷の爆弾の中で最強の威力を誇るものだ。杖の先端、コアクリスタルと名付けた結晶体に封じられ効果だけ抽出された4つの切り札のうちの一つ。

 

「さ、さささ寒いっ!?」

 

「ちょっと!?ホシノ先輩まで氷漬けになってないでしょうね!?」

 

「ホシノちゃんがいる建物とは別の方向に撃ったから、だい、じょう、ぶ……」

 

”うん、氷漬けだね。ぜんぶ”

 

「ほ、ほほほ、ホシノちゃあああんっ!?」

 

 ラヴィネージュの威力は、真反対にあったはずのホシノが監禁されている建物も見事に氷漬けにしていた。愉快な氷像と化したカイザーの理事のことを頭からすっぽ抜かしたツクリはすぐさまポーチの中から取り出した赤い結晶を歯車にはめたような道具、炎のブリッツコアから火炎を放射して建物の氷を溶かした。

 

 自主的に正座をしてセリカの説教を受ける年上という構図から目をそらした先生はとにかくと扉に向き直る。物理キーを正座をしているツクリから勝手に持ってきたリボルバーで壊し、シロコはドアを思いっきり蹴り開ける。

 

”ホシノ!無事かい!?”

 

「ホシノ先輩!」

 

「……え、あ……シロコちゃん、先生……どうして、ここに」

 

 ドアの向こうには、少々憔悴している様子ではあるもののホシノが座り込んだ状態でいた。どうやら何かで拘束されていたらしいが、ツクリが使ったラヴィネージュのせいで建物のシステムがダウンしたらしく拘束は解き放たれていた。

 

「ん、先輩を助けに来た」

 

「え、だって……私は、もう……」

 

 アビドスの生徒じゃない、とホシノが言いかけたところで先生はひとつの書類を取り出す。それはホシノがおいていったアビドス高等学校の退学願、ホシノのサインはあるが、退学を許可する先生のサイン欄は――――空白。

 

”ホシノ、君はまだ……アビドスの、私の、生徒だ”

 

「あっ……」

 

 ビリッ!とホシノの目の前で退学願の書類を真っ二つに引き裂いた。ホシノは聡い、ここまでされなくても内心は対策委員会と先生が自分を迎えに来てくれたのをわかってる。決定的な退学してない証拠を突き付けられて、ホシノはようやく立ち上がってドアの外に向かう。

 

「う、うへー、おじさん迎えにきちゃうなんてみんな無茶しちゃってさー。なにかあったらどうしてたのさー」

 

「あ、強がってる!もう!素直にお帰りって言わせてよ!」

 

「セリカちゃんに先を越されちゃいました~。ホシノ先輩、お帰りなさい」

 

 気恥ずかしくて、嬉しくて、素直になることを拒んでいたホシノの癖が出てしまった。一歩、踏み出すとなぜか砂漠が凍り付いていた。こんなことができるのはホシノの知る限りただ一人。

 

「お、無事だったねホシノちゃん。元気?」

 

「つ、ツクちゃん……!」

 

 先生が一歩体をどけると、そこにはいつの間にか取り出したホワイトボードに『私は砂漠を凍らせました』と書いて掲げて正座しているしまらないツクリの姿があった。限界を迎えたホシノは無言で走ってツクリに縋りつくように抱き着く。

 

「ごめんね、ごめんね……私、ツクちゃんに助けてって言えなかった……みんなのこと、学校のこと、なくなるのが怖くて、私が行けば助かるって信じてた……」

 

「うん」

 

「結局騙されて、みんなを危険にさらしてさ……情けないよ……」

 

「なはは~。ホシノちゃん、たぶん自分が思ってるよりみんなのことが大好きだし、みんなからも大好きって思われてるよ。自覚したでしょ。というわけで、おしおき」

 

「はへ?」

 

 おしおき、の一言で出てきたのは爆弾であった。こいつここでも爆弾か!と先生と対策委員会が起爆を阻止しようと動き出すが、時すでに遅く、ぽんっ。と軽い音をたてて破裂した爆弾。全員が目をつぶったが、何もないことに気づいて目を開けた。

 

「帰る間前衛よろしく~。ホシノちゃんのかわいい後輩を守るため慣れない前衛やってたんだからさ~」

 

「うん、もちろんだよ。ツクちゃんはさっさと後ろで先生におぶさってるといいさ~」

 

 破裂した爆弾を目くらましにしてツクリが持っていたのは、ホシノの愛銃と折り畳み式の盾だった。錬金術士はどんな素材も見逃さないんだよ、と嘯くツクリ。いつの間に回収したのかと対策委員会も首をかしげる。

 

「クックック……いやはや素晴らしい。かくして囚われの星は勇者たちにより救い出され、めでたしめでたし大団円、というわけですか」

 

”……黒服”

 

「おっと、先生。前にもお話した通り、私はあなたと敵対する気はありません。こうしてよい場面に水を差すのは私としても心苦しいのですが、一つ警告しておくべきことを忘れてしまいまして」

 

「なにさ。もうアンタの言うことなんて聞きたくもないんだけど」

 

 いつの間にか現れた黒服。慇懃な口調を崩さず、軽く拍手をしている彼を眼光鋭くツクリから受け取ったショットガンを黒服に向けていた。

 

「ええ、ええ。そのままでお願いします。警告とは、気づかれたということです。何に……?それは、この砂漠に巣くう予言者。カイザーPMCの理事が探し求めたもの。宝?とんでもない!作られた神が産み落としもの。神名十文字(デカグラマトン)――――違いを痛感する静観の理解者(ビナー)!」

 

”砂漠が揺れている……?黒服、君は何を……?”

 

「言ったでしょう先生。アビドスのそれに私は何も関与していない。故に、本当にこれは警告なのですよ。すべてを置いてすぐに逃げなさい。今のあなたでは、何もできない」

 

「な、なんですかあれ……?」

 

「おお、万魔殿の戦車の何倍あるんだろう」

 

 ツクリのつぶやきとともに、砂漠が持ち上がる。現れたのは……機械仕掛けの大蛇。ビルを横倒しにしたような大きさ、睥睨するは自らに比べればちっぽけな神秘を持ったヒトガタ。神の預言者が、現れたのだ。

 

”――――――――”

 

「やめなさい。そのカードは使うべきではない。削られるといったでしょう。逃げるが勝ちという通り、今は撤退することを進めますよ」

 

”あんなものがアビドスにあれば、ホシノたちは安心できない”

 

「……そうですか」

 

 心底残念そうにつぶやいて、黒服は姿を消した。先生が取り出したカードを見たツクリは、それに一瞬で飛びついて取り上げた。素材の、物の本質を見極める錬金術士の鑑定眼がすさまじい効果の代わりとして、それに見合った代償があることを見抜いたのだ。

 

”ツクリ、返すんだ”

 

「だめです。これは絶対にダメ。何を削るつもりですか。もう戻らないんですよきっとそれは!ようは!あれぶっ壊せばいいんでしょう!?」

 

「ん、よく言ってくれた。先生、ツクリ先輩のおかげで私たちの弾薬は満タン。体力も有り余ってる。いつでも戦える」

 

「帰り際に何かすごいものが見えたと思ったら、これはカイザーPMCの隠し玉かしら」

 

「ちょ、ちょちょちょっと!?なんなの?なんなのアレは!?」

 

”ヒナ、それに便利屋68のみんなも……!よし、これなら!”

 

 すとっと軽い音をたててツクリの隣に降り立ったのは無傷のゲヘナ風紀委員長、ヒナ。そしてPMCたちを蹴散らしてきたらしい便利屋68。続々と集まる戦力に先生はシッテムの箱を立ち上げ、戦闘指揮を開始する。

 

「ヒナちゃん、ホシノちゃん。さーすがに前衛苦手―とか言ってる場合じゃなさそうだからさ。ハイこれ。後輩たちを守るのは先輩の務めだよね~?」

 

「そうね。年下を守るのは年上の務めだわ。ホシノ、しっかり働こう。こうして3人で前に立つのは、外じゃ初めてかしら」

 

「うへ~。アトリエの中じゃよくやってたけどね~。帰る前に一仕事だ~!」

 

 ツクリがヒナとホシノに渡したのは錬金術で作った装飾品、グナーデリング。つけることで飛躍的な身体能力、防御力の向上が起こる、ツクリが外に漏らしていない門外不出の品。さらにツクリはもう一つ、錬金術の道具を強化する指輪、ハーナルリングを指に着けて、ビナーと呼ばれた巨大機械に相対した。

 

 くるよ!という先生の号令で生徒たちは一斉に弾幕を吐き出す。ビナーは吠えて、側面からミサイルを発射しながら大きな顔で先生めがけて突進を繰り出した。ミサイルを打ち落としたり躱したりする合間に前に出たのはホシノ。

 

「せぇのっ!」

 

 工事現場の騒音のような音をたてながらホシノが盾でそれを真正面から受け止める。冗談のような質量差でも成り立った。後ろに押し込まれつつも、受け止めることに成功する。動きが止まった瞬間にヒナの愛銃、デストロイヤーが火を噴いた。ビナーの側面が次々とえぐり取られるように消し飛んでいく。

 

「ツクリ特性の弾丸、効くでしょう?」

 

「プニプニ弾!ノルデンブラント!いっけ~~!」

 

「ぎぶあっぷ~~!」

 

 さすがのホシノといえども、質量差がとんでもない状態で支え続けるのは不可能。泣き言のようなことを言いつつ、器用に盾を操って横にそらすように突撃をいなした。いなした瞬間に、ショットガンを全弾叩き込むのを忘れずに。先生はシロコが抱え上げて後方に退避。

 

 シッテムの箱が全員の神秘につながり、連携がとりやすくなっている。俯瞰した先生の指揮のおかげで常にビナーに対して先手がとれる状態だ。ツクリが新しく取り出した青い砲弾のような爆弾はミサイルのような複雑な動きを見せてビナーの全身に着弾。そこに中空に出現した氷の剣が追い打ちのように突き刺さっていく。

 

”あの口……何か来る!みんな気を付けて!”

 

「あわわ、あれまずいよ!ツクちゃんなんとかして~~!」

 

「私に頼めば何とかなるっていうのは固定観念だよ!?」

 

「実際何とかするのがツクリでしょ」

 

 ビナーが吠え、エネルギーが視覚的にわかるほどに口腔部に集まっていく中、まるで冗談を言い合うような口調のツクリ、ヒナ、そしてホシノ。他のみんなが必死になって打開策を打ち出そうとしているのに対し、どうにかなるのが前提のようだ。もう、とツクリは道具を二つ取り出す。向こう側が透けて見えるような美しい布が2枚。

 

「神秘の羽衣と精霊織の帳!」

 

”みんな、3人の後ろに!”

 

 先生の指示が飛んだ瞬間に、ビナーの口腔部から極太のビームが発射された。だがそれは、ツクリが使った2枚の布の防御壁に大幅に威力を殺されたうえでホシノの盾に受け止められた。くらいなさい!とアルが狙いすましたかのように発射口を狙撃し、エネルギーが暴発。それを好機と見た生徒たちはビナーに雨あられと弾丸を浴びせていく。

 

「よしいけ!ラヴィネージュ!」

 

「ん、まだここ詰め込める」

 

”こんなことして暴発しないのかな”

 

「そこはツクリ先輩を信頼する」

 

 大きな隙を晒しているビナーの目の前でツクリは大きく杖を振ってラヴィネージュを開放した。さらにその後ろではツクリのグレネードランチャーの中に、シロコと先生が爆弾をこれでもかと詰め込んでいる。

 

 まだ入る、どんどん入る、どうして入る?と言わんばかりにツクリがポーチをさかさまにしてドバドバ落とした爆弾が単発式のはずのグレネードランチャーに飲み込まれていく。数十発の弾丸を飲み込んだグレネードランチャーをシロコがツクリにパス。

 

「はいさー!みんなさがって~!いくよ!全部ごちゃまぜ大爆弾!」

 

「みんな伏せて!」

 

「先生!」

 

 ホシノが飛びつくように先生を伏せさせて、盾を掲げる。ヒナの警告が間に合い、そこにいる生徒全員が凍り付いた砂漠に伏せる中、ツクリはグレネードランチャーを発射。今まで詰め込まれた爆弾がひとまとめになって発射され、ビナーのすべてを飲み込む大爆発が起こる。火炎、氷結、風に雷、あとよくわからないものも含めて同時に炸裂した。

 

「ホシノちゃん。おかえりなさい」

 

「うん、ただいま」

 

 ビナーのいた場所には、クレーターだけが広がっていた。すすけた顔で笑うツクリをみたホシノも、にへらと笑い返すのだった。

 

 




 ビナー君、南無。黒服くんはあれ?ここでビナー来るはずないやんと慌てて忠告にきました。なお錬金術士の無法によりあれ~?となってる模様。あとアビドス編開始前からヒナとホシノは面識ありです。アトリエでばったりしてました。

 感想、評価ありがとうございました。今回もくださると励みになります。よろしくお願いいたします。
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