ツクリのアトリエ 透き通る世界の錬金術士   作:アトリエはいいぞ

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便利屋に頼んでみよう!

「あれー、おっかしいなー。繋がらない……」

 

「んぇーどったのツクちゃん?」

 

「ほら、便利屋68っていたじゃない?依頼しよっかなーと思ってさ。そろそろ素材がなくなってきたんだよね~」

 

「うへ~、おじさんには手伝ってって言わないんだ~。お金払って外の人に頼んじゃうの?」

 

 今日も今日とて錬金錬金、と釜をかき混ぜるツクリ。ビナー相手に盛大に使った爆弾の補充をしたり、後回しになっていたゲヘナの補充用の品を作ったりしていると気が付けばコンテナの中にある素材が少なくなってきているのを確認していた。

 

 ふむ、これは人手がほしいと考えたツクリがピコンと思いついたのは、アビドスの件で知り合った便利屋68の面々だった。しまっていた名刺をシックな戸棚のファイルから取り出したツクリは早速そこにあった電話番号に連絡をいれる、が……つながらない。

 

 後ろでソファーに寝転んでいたホシノがなぜ自分に頼まないのかと不満をあらわにするが、この前めんどくさいって言ってたじゃないとツクリはバッサリ。

 

「んー?それにホシノちゃんこの後先生を手伝いにシャーレに行くんでしょ?そのあとやる元気があるならぜひともお願いしたいなー」

 

「む~。ツクちゃんはいけずだこの~うりうり~」

 

「あはは、ごめんね。実は先生用に命に係わるケガも含めてその場にあればすぐ治せる携行型の救急箱を作りたくてさ。ちょっとそれには素材の品質が足りないからすぐに取りに行きたくて」

 

「むむ、そういうことならダメって言いづらい……ツクちゃぁん……」

 

「はいはい、一緒に後で海底宝物庫にいこうね~」

 

「やた~」

 

 ツクリの背中にもたれかかるように甘えるホシノを受け流しながら必要なものをリストアップしていくツクリ。先生は脆い、銃弾が当たって痛いで済むキヴォトスの人間とは違い、本気で銃弾が致命傷になってしまうのだから。

 

 それならば、即死しない限りどうにかできる道具を作っておくべきである。先生にはすでに護身用としてあらゆる攻撃を弱める精霊織の帳という道具を渡してあるが、保険は掛けておくべきだ。

 

 先生曰く、シッテムの箱を起動していれば自動的に銃弾から身を守ってくれるらしいのだが、その油断が命取りになることも重々承知の上。錬金術士の戦いは準備から、創路ツクリは手を抜かないのである。

 

「とりあえず私はゲヘナの方に探しに行ってみるよ。ホシノちゃんはシャーレにいってきな?」

 

「わかったよぅ。うう、このソファーは離れがたいよ……」

 

「ソファーごと放り出してあげよっか」

 

 気安い冗談を言い合ってからホシノは盾と愛銃を背負いなおしてシャーレの方に。ツクリはアトリエを縮めてしまい、空飛ぶ箒に乗ってゲヘナの方面に飛んで行った。

 

 

 

「うぅ……おなかすいたわ……」

 

「3日も何も食べてないもんね……」

 

「かくなるうえは私が死んで食費を浮かせれば……」

 

「ハルカ、それ何の解決にもなってない」

 

 便利屋68は進退窮まっていた。ツクリからはカッコイイできる女に見えていた社長のアルは、実際のところアウトローに憧れる女子生徒の一人にすぎない。腕が立つか立たないかで言えばゲヘナでも上位に相当するが、いかんせんそれ以外がひどかった。

 

 まずこだわり、依頼は成功報酬のみを受け取り、見栄えを気にして高いビルにオフィスを構える。それ自体は何も悪くはないのだが、仕事の成功率が微妙に低く、大体が赤字になっているのだ。

 

 そして、先のアビドスの件では依頼主を裏切っているので報酬はゼロ、ただ働きもいいところである。そして家賃も払えずゲヘナの外れ、ほぼスラムな場所にて段ボールハウスで生活を余儀なくされていた。

 

「今日も依頼は来ないのね……」

 

「アルちゃ~ん、アルバイトしようよ~」

 

「だ、だめよ!そんなのアウトローじゃないわ!」

 

「アウトローどうこう言ってる場合……?」

 

「あ、いたいた~!見つけたよ便利屋68!あれ?大丈夫?」

 

「あ、あなたは創路ツクリ!な、ななな何の用かしら!?」

 

 おーいと空飛ぶ箒を空中で降りて便利屋の目の前に降り立ったツクリにビビり散らかしたアルが毛を逆立てた猫のような顔で問いただす。ツクリはすんすん、と鼻をうごかして

 

「お風呂はいろっか☆」

 

 とのたまった瞬間、湯沸かし器のように便利屋の面々の顔が真っ赤に染まる。彼女らの名誉のために補足するが、普段はきれいにしている。銭湯などで。現在それすらもできないほど財政がひっ迫しているのだ。貧すれば鈍する、においにも鈍感になってただけである。

 

 ツクリがアトリエを大きくして、入って入ってーと中に消える。不可思議なものに若干気後れしながらも便利屋が中に入ると、そこにはアルの理想のような光景が広がっていた。

 

 落ち着いていてレトロ調なシックな内装、大人びた家具、ひじ掛け背もたれは革張りで座る部分は柔らかそうな布のソファー、年季の入った机。ランタンで柔らかく照らされ、大きな釜も、実験器具も、奥の部屋に飾られた油絵の絵画も、まさにアウトローのボスが葉巻をくゆらせているのが思い浮かぶ部屋だった。

 

「はいこっちこっち~。多分全員で入れるから。お風呂入ってる間に洗濯して乾かしちゃうからさ、服はここで脱いで渡してね」

 

「えっと、話が見えないのだけど……」

 

「ま、お言葉に甘えとこうよアルちゃん。せっかくお風呂がただで入れるんだし」

 

「え、えっとこんなこと私が受けていいのでしょうか……」

 

「ごめん、感謝する」

 

 まあまあ気にせずに、とツクリは浴室へ服をはぎ取った便利屋の面々を押し込み、その間に錬金術で作った洗剤を使いしゅばばっと洗濯を済ませ、乾燥させてしまった。アルのワイシャツに至ってはアイロンのおまけつきである。

 

 お風呂の中の便利屋の面々はシャワー付きかつ自分たちが足を延ばして入浴できる浴槽といい匂いのする乳白色の熱めのお湯を堪能し、ピカピカになって出てきた。乙女として最後の砦である下着は何とかきれいなものをローテーションしていたものの、服はどうしても手が回らなかったのでジワリと涙が浮かんだ、気のせいだと思いたい。

 

 お腹減ってるでしょーとツクリが出したのは色とりどりの料理の数々。ほかほかと湯気が上がり、まるで食べてほしいとこちらに語り掛けてくるような官能的な香りに誘惑された便利屋の面々は、無言で席に着いた。

 

 召し上がれ~とツクリが声をかけると、空腹で限界状態だった便利屋の面々は、いただきますもそこそこにサンドイッチや、ステーキ、ハンバーグなどにかじりついた。

 

 空腹は最高のスパイスというが、一つのカップ麺を4人で分けるような生活がデフォルトになりかけていた便利屋の面々にとってはお腹いっぱいになれる機会など柴関ラーメン以来である。しかもその店は自分たちが爆破した以上とても行きにくかった。

 

 そしてこの料理が美味しいのだ。アルたちは知らないがシャーレの先生のお墨付き、なんだったら彼女らが恐怖する風紀委員長、空崎ヒナもお気に入りである。錬金術で材料を加工し、調理の手はツクリ自身で行う。速さとおいしさを両立して愛情と手間暇もかけたまさしく手料理であった。

 

 出された料理を出されるままに食していると、ハッと正気に戻ったアルが叫んだ。

 

「いや!どういうことなの!?」

 

「アルちゃんうるさ~い」

 

「あ、まだ食べるならお代わりあるよ?えっとね、便利屋のみんなに依頼をしたくて」

 

「そうだったんだ。アル、どうする?ここまでしてもらったから受けるべきじゃない?」

 

「あ、これは勝手にやったから気にしないで。困ってたならお互い様でしょ」

 

 これでやっと本題である。困ってたらとりあえず助けてしまえ、創路ツクリのいつもの癖ではあるが、何もわからずもてなされた便利屋の恐怖も推して知るべし。恐怖しているのは二人くらいだが。

 

「え、え、依頼?あなたが、私たちに?風紀委員長とかでいいのではなくて?」

 

「あはは、ほらヒナちゃんは忙しいからさ。便利屋さんたちはアビドスの時から思ってたけど荒事になれてそうだし」

 

「そ、そうよ!私たちは泣く子も黙る便利屋68!アウトロー中のアウトローですもの!依頼というからには報酬はいただくわよ?そうね……時給換算で1000クレジット!どうかしら?……あ、あら?高いかしら?それなら800、いえ!700でも!」

 

 何かあきれ果てたような顔に変わったツクリ、どうやらアルに抱いてた幻想は木っ端微塵になったようだ。高いのではなく、安すぎる。値段交渉で時給で言うのもそうだが、まず最低賃金以下というのはどういうことなのだろうかと頭を抱えるツクリ

 

「えーと、時給換算にするなら最低10万クレジットかな……?あ、守秘義務あるけど大丈夫?」

 

「じゅ、じゅうまんクレジット……」

 

「ごめん、アルが壊れたから私が変わる。それ本当?どういう依頼なの?」

 

「うん、いいよ。依頼内容はひとつ、私の錬金術の素材集めについてくること。護衛と素材採取、両方をこなしてもらうことになるね」

 

 時給換算で10万クレジット。ツクリからすれば大したことない値段だが便利屋からすれば破格である。1時間で40万クレジット!1日仕事だとすればもっとである。すぐに別の事務所だって借りられるだろう。

 

 それほどの魅力的な値段の依頼、インパクトがすごすぎてアルとついでにハルカは口をパクパクとさせるだけの状態になって固まってしまう。ムツキはそれが面白いようでご飯を食べつつもくすくす笑っていた。

 

 うまい話には裏があると鋭い目つきでカヨコが問いかけるがツクリから帰ってきたのは錬金術の素材集めであった。便利屋たちにはいまいち伝わらないがツクリにとってはこれが死活問題になりうるのだ。

 

「素材集め……私はよく知らないけど、あなたって相当儲けてるんじゃないの?問屋とかで買えば……」

 

「あー、そういう考えになるのか。えっとね、私の錬金術の素材は、キヴォトスでは手に入らないの。特別な手段を使って、取りに行くことになる。移動自体に危険性はないよ、なにせ私も行くからね」

 

「そうなの。どうする、社長。話してみた感じ、彼女は誠実だよ」

 

「えっ!?あっ!そうね……おほんっ!わかったわ!創路ツクリさん!あなたの依頼、便利屋68が請け負います!報酬は成功報酬としてさっきの条件でお願いしたいわ!」

 

「はい、じゃ。契約書はこちらになりま~す!」

 

「あ、アル様……この条件ヤバイです……」

 

 全員で契約書を覗き込んだ便利屋たちは何度めかもわからない驚愕に襲われる。ハルカが言う通り、やばいのだ。まず報酬、時給10万クレジット+成功報酬で1000万クレジット。さらには3食おやつ付きかつ寝床も支給。弾薬費はツクリ持ち、医療費もである。ツクリ側からの条件はただ一つ、見たもの、聞いたもの、採取したものを含めてすべて外部へ漏らすことの禁止。

 

「さ、全員使ってる銃の弾薬を教えて。ささっと作っちゃうから」

 

「え、ええ……」

 

 震える手でサインをし、親指で拇印を押したアル。カヨコだけは依然として怪しいと眼光を緩めないがそれは当然のこととして受け止めているツクリ。聞いた弾薬をイメージしたツクリはコンテナから素材を取り、両手で抱えてよたよたと錬金釜のそばに置いてあるたるに上った。

 

「えーと、ゴルトアイゼン、原初の灰、それと魔爪、熱硝石、アダマント……うん、これでよし!ぐるこ~んぐるこ~ん!」

 

 掛け声とともに錬金釜に素材を入れ、大きく釜の中をかき回す。アルたちも気になって釜の中を覗き込む。すると入れた素材の輪郭が溶け、混ざり合い――――ひと纏めになる。大きくツクリがかき混ぜ棒を回すと、ぽんっと見たこともない弾薬が飛び出てきた。

 

 黄金の薬莢、なんでも貫きそうな弾頭、嗅いだことのない火薬の匂い、弾の素材自体も見たことないがとんでもない硬度に見える。そして、アルたちにも理解できるほど神秘が濃かった。ツクリはそれを4人の銃の口径別に作ってしまう。

 

 さらにそばにあった一回り小さな釜に放り入れると自らが立っていたたるを持ち上げふたを開け、別の台に立ち虹色に光る宝石をどばーーーっとその釜の中にぶち込んで蓋をする。すると釜は蒸気をあげて中でポップコーンがはじけるような音を響かせた後、盛大に蓋を跳ねさせて数百発に増えた弾丸を吐き出した。

 

 それを3回繰り返したツクリは弾薬を宝箱のような木箱に入れて便利屋に差し出す。契約書に嘘はなかったらしく、現物支給で弾丸を差し出されてしまったアルは、震える声で……

 

「た、試し撃ちしてもいいかしら……?」

 

「はーいどうぞー!試射室はさすがにないので外でお願いしまーす!」

 

 こう言うのが精いっぱいだったという。




 アルちゃん社長すき。カヨコすき、ムツキすき、ハルカ、すきだけどやべーやつ(個人の感想です)主人公、あたまぐるこん。

 そのうち主人公が実装された世界線の掲示板とか書いてみたいですね。一人だけファンタジーしてる女だし。

 ではまた次回に。感想をくださると喜びます
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