ツクリのアトリエ 透き通る世界の錬金術士   作:アトリエはいいぞ

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便利屋、絵画を冒険する

「……何なのよこの威力は……」

 

「うわー、キヴォトスでも一発アウトな威力じゃーん。連邦法違反~」

 

「こ、これがあれば私でもアル様のお役に……」

 

「これ、いいの?通報したら捕まるんじゃ」

 

 キヴォトスにおいて、銃弾の密造は珍しい話ではない。頑丈なキヴォトスの住人にとっては普通の銃弾は痛いだけで、たとえ手榴弾が直撃しようが無傷という生徒もいるほどだ。

 

 故に火薬を増やしたり、弾頭を変えたりなど涙ぐましい努力によってより相手を傷つける銃弾というのが開発されている。ちなみに一定の威力を超えると連邦生徒会が定めた法に引っかかってヴァルキューレがこんにちはしてくるが。

 

 ちなみにの話になるが、当然ながら便利屋68も銃弾の密造はお友達と言わんばかりによくやっている。アウトローの道は一歩から、しょぼいけど悪いことなのである。なお、ホローポイントは痛いからという理由でアルが却下したそうな。

 

 試射として廃墟の適当な壁に撃った弾丸はいとも簡単に廃墟の壁を削り取った。弾痕というよりも横向きのクレーターのようである。一同ドン引きであるが、記憶に新しいところによるとビナーの時にツクリ、ヒナ、そしてホシノが同じ弾丸を使っていた。つまり

 

「実質合法!」

 

「その理屈はおかしいわ!?」

 

「アルちゃ~ん、お尋ね者の私たちが言えた義理じゃないよ~~。にしし」

 

「実際合法だよ。私の監督下で使う限りはね。あ、有効なのはアビドスとゲヘナとミレニアムだけだから。依頼終わったら弾は回収ね」

 

「それが妥当だね」

 

 いくら頑丈なキヴォトス人といえども神秘がたっぷり詰まったツクリ製の弾丸(威力実証済み)を受けたらさすがにシャレにならないので現状脱法と合法の合間を反復横跳び中である。ヴァルキューレには笑顔で却下されたので使用時は周りをよく見ないといけないが。

 

「それじゃ、早速行こうか素材集め。今時間大丈夫?」

 

「い、今から!?え、ええ大丈夫よ」

 

「依頼なんて来なかったもんね~」

 

 痛いところを突くムツキにどよーんと影を背負うアル。実際立派なツクリのアトリエテントのそばに転がっている段ボールをつなげた事務所で空腹にうめいていた以上何も言い返すことができなかったのだが。

 

「ん、それじゃいこうか。ここからオフレコだよ。大丈夫?」

 

「んっん!切り替えるわよ!仕事の時間ね!」

 

「はいっ!アル様!」

 

 普段しっちゃかめっちゃかでもそこは裏社会に片足つっこみつつも上手いこと渡り歩いている便利屋68、切り替えはきちんとできる。気を引き締めたアルに触発されてふざけていたムツキも真面目な顔になった。

 

 再びアトリエに入ったツクリは、便利屋をアトリエの奥の部屋に案内する。不思議な光を称えたフラスコをセットした器具も気になるが、それ以上に気になるのは大きな油絵。画廊とも言える場所に便利屋たちは思わず息をのむ。

 

「素敵な絵ね……」

 

「でも、ちょっと怖いのもあります……」

 

「この絵、なんなの?」

 

「それはね、不思議な絵画っていうの。ありていに言えばオーパーツの一つだよ。私でも描くのはまだ無理かなあ。集めるのには苦労したんだよって、そんなことはいいか」

 

 ざわめく森が書かれた絵、凍てつく氷の洞窟の絵、燃えさかる火山の絵、色鮮やかな海底の絵の横を通り、ツクリが足を止めたのは蒼穹の空と、天上の花畑が広がる絵画。

 

 その美しさ、素晴らしさにアルは思わず吸いこまれるような気持ちになる。まるで、中にもう一つ世界が広がってるような……と夢中になってハタと気づいた。周囲が変わっている、レトロな内装のアトリエじゃない、色とりどりの花々が咲き誇る、天空の花畑に。

 

 アルたちだけではなく、ムツキ、カヨコ、ハルカも一瞬で入れ替わったその情景に銃を構えるのを忘れて呆然と立ち尽くす。足元の草花の柔らかさと、複雑なフレグランス、目に入る色鮮やかな色彩すべてが現実だと訴えかけていた。

 

「ようこそ、天海の花園へ。これがあの絵画たちがオーパーツたる所以。絵の中に、一つの世界を内包する絵画。不思議な、とはよく名づけたものだよねぇ」

 

「な、なななな……」

 

「こ、これはちょっとムツキちゃんも予想外……」

 

「わぁ……雑草がたくさん」

 

「ハルカ、そうじゃない」

 

 驚きすぎて二の句が継げないのも無理はない。なんだそれは、状態である。ツクリの錬金術の反則ぶりはビナーと戦ったときにいやというほど実感したが、今回はそれを超えてきているのだ。絵の中の世界?ファンタジーが過ぎるとカヨコは冷や汗を隠せない。

 

「前置きなしにこれは心臓に悪いよ。ちゃんと帰れるの?」

 

「帰れるよ、私が帰れたんだしホシノちゃんもヒナちゃんもよく出入りしてる。この絵以外も。とりあえず素材の採取をするから周辺の警戒お願いね。普通に敵性生物いるから」

 

「わかった。アル、戻ってきて。ツクリさんを囲むように周辺警護」

 

「ハッ!そうね!ごめんなさいちょっと飛んでたわ!」

 

 今回アルは役に立たないかもとなかなかひどいことを考えるカヨコ、すでにアルが受け止めきれるキャパをオーバーしているのだ。むしろ銃を構える元気が残ってるだけえらいだろう。

 

「えーと、これとこれと、あれとそれと、これも」

 

「大体全部じゃん。見たことない物ばっかだけど区別ついてるの?」

 

「ついてるよ?これが三つ子トーン、セイタカトーンにシロヒメクサ、金の絹糸に鬼いがうにと大王うにね」

 

「うに?これがうになの?お寿司に乗ってるやつ?」

 

「あーたぶん思い浮かべてるのとは違うと思う」

 

 摘んだ素材が気になるらしくムツキがのぞき込んでくるのを素材を選別ついでに一つ一つ見せて説明するも、ムツキにとってはどれも雑草に見えるらしい。唯一反応がいいのがとげとげでお馴染みうにであるが、錬金術で使うそれは分類的に微妙なようだ。

 

「えっと、錬金術だとうにっていうのは木になるいがいがの木の実のことを言うんだけど、ムツキちゃんが思い浮かべてるうには海で取れるの」

 

「それはもはや栗じゃないかしら」

 

「錬金術においてくりは海で取れるんだよ……」

 

「一体全体どういうことなの!?」

 

 こっちがききたいよ、とうにとくりの違いについて説明すると当然の反応が返ってきた。他にも黄金樹の葉や、色とりどりの花を採取してカゴに詰めていくツクリとそれを護衛する便利屋たち、しばらくすると前方がガサガサとうごめいているのがみえた。

 

 何かいる、と一斉に銃を向けた便利屋と片手に錬金銃を構えたツクリ、果たして前方からやってきたのは……気の抜けるような顔を張り付けた青いぷにぷにとしたナマモノであった。

 

「なにかしら、この……気の抜けるような生き物」

 

「ぷにだね。強さはピンキリだけど弱いのだと子犬でも倒せるらしいよ。一応私は絵の中とかに生きている動物のことは魔物ってよんでるんだけど」

 

「とりあえず撃ってみます……ひゃわっ!?」

 

 ぷにと呼称されたナマモノは、ぷにぷに~と鳴いて体を3倍ほどまで膨らませると落書きのような口からシュゴオオオッ!とすさまじい勢いで吐息を吐き出した。先制攻撃を叩き込もうとしたハルカを筆頭に全員巻き込まれてしまう。

 

「……涼しいわね」

 

「見た目のわりにしょぼ~い」

 

「うん、まあその……よわいからね」

 

「ぷにっ!?」

 

 悲しいかな常人には効くであろう攻撃も銃弾をものともしないキヴォトスの住人にとっては涼しいだけである。ぷにブレスに絶対の自信を持っていたらしいぷには愕然とした表情に変わるが、とことこと前に出たハルカは容赦なく、ドパン!とほぼ接射で弾丸を叩き込んだ。

 

「あの、なにか落ちてます。これ」

 

「ん、ぷにぷに玉だねえ。もしかして気に入った?」

 

「え……その、はい……」

 

 光、というか絵の具のようになって溶けていくぷにが何かを残したのをハルカが拾う。ぷにぷにぷにぷにと、手の中の青い玉をこねくり回すハルカに思わず突っ込んでしまうツクリ。わかる、とてもわかるのだ。ものすごく癖になる感触をしているのだ

 

 便利屋全員が感触を堪能したのち出発、後でこれはぷにゼリーにでもして便利屋たちに食べさせてあげようといういらないおせっかいを考えているツクリ。食えるのかと言われれば別に生のままでも行けるのだが、それはさすがに憚られる。

 

「この絵の中の植物とか、動物が落としたものを持って帰って錬金術の素材にしているの?」

 

「そうだよ。たまたまこの絵画のうち一つが家にあってね、錬金術に興味を持ったきっかけだったりするの」

 

「へー、どういう絵なの?」

 

「凍てし時の宮殿っていうんだ。初めて描かれた不思議な絵画だよ。そこにはね、アトリエがあったの。それと山ほどの錬金術の蔵書。幸運にも私は錬金術の才能には恵まれてたみたいだし」

 

 そもそも不思議な絵画は、錬金術士がそれぞれのレシピで調合した不思議な絵の具を使って書き上げたものだ。書き上げた絵の中に世界を宿すには狂気じみた執念がいる。絵の中に残留思念を残してしまうこともあるほどの、意思の力が。

 

 ただ、この絵画たちはあまりに長い年月を過ごしたからか、ツクリの家にあったもの以外はボロボロになった状態で見つかっている。どうにかこうにか修復には成功したものの、残留思念は消えてしまったようだ。

 

 ときおり現れるぷにや、ウサギ、それと獣人を容赦なく撃ちぬいていく便利屋たち。普通なら躊躇うところであろうがそこはキヴォトスの住人、発砲の敷居がとても低い。これが自分たちと同じ人間相手なら無理だったがどこか緩い絵画の魔物たちなら問題ないようだ。

 

「そういえば、目的地とか、目的の素材とかあるのかしら?」

 

「ん、あるよ~。ドンケルハイトっていう珍しい植物なんだけど、この絵の中には群生してる場所があるんだ」

 

「やっぱりだけど、聞いたことないね。どういう植物なの?」

 

「うーん、ここのは太陽みたいな色をしてるね。とても生命力にあふれている花で、リフュールパッドとかボトルよりも強い薬が作れるの。具体的には腕や足が吹っ飛んでも簡単につなげるくらい」

 

「種類があるんだ」

 

「うん、オレンジだったり白だったりするんだ。効能もちょっとずつ違う」

 

 絵画の中の世界は摩訶不思議、なにせ絵の中のものを持ち帰れたり、魔物が生きていたりする。昔、錬金術が現役だった時代は外の世界でも錬金術の素材はとれたみたいだが、今やほとんど絶滅し絵の中でないと手に入らないものがほとんどだ。

 

「ただ、このトーンとかセイタカトーン、三つ子トーンなんかは外にもまだ生えてるみたいだから見つけて持ってきてくれたら買い取るかリフュールボトルと交換するよ~」

 

「あ、頭には入れておくわ……」

 

 3つの素材を手にしながら説明するツクリであるが、外面を取り繕いまくってるアルは世界のことを受け入れるのに必死で素材にまで頭が回らないようだ。

 

 そうしてしばらく進むこと少し、開けた場所にでると……そこには大きな木が一つ生えており、その木の根元に太陽のような花、ドンケルハイトが群生しているのが見て取れた。今までの花畑よりもより鮮やかな色彩に、便利屋たちの顔にも笑みが浮かぶ。

 

 さ、やるよ~とめちゃくちゃに鋭くみえる手鎌を構えてドンケルハイトの花の部分を刈り取っていくツクリを見たアルは、ある種のプロ意識を持つツクリをじっと、見つめるのだった。

 

 

 

 

 

「ねえ、ツクリさん……便利屋68に入社するつもりないかしら!?」

 

「おお、アルちゃんスカウト?」

 

「うーん、今回はご縁がなかったということで……」

 

「ですよね……」

 

 両手を取って情熱的にツクリを見るアルの便利屋へのスカウトに対し、ツクリはあまりにもバッサリと断る。だめでもともと状態だったアルとしてもすがすがしいほどの断わりぶりだ。

 

「正直楽しそうだなー、とは思うんだけどね。ヒナちゃん相手に逃げ隠れするのは面倒くさいなーって」

 

「そうね……彼女にはかなり手を焼いているわ」

 

 お互い様の話である。ヒナ相手に逃げおおせる便利屋もたいがいである。どころかヒナにとってはほっといてもまあ問題ない程度の認識ではあるものの、お尋ね者な以上見かけたら捕まえにかからないといけないわけで。

 

「それじゃ、報酬は現ナマ一括?というか口座凍結されてるっぽいね。数日待ってもらえる?現金で引き出すから」

 

「仕事という仕事をした気がしないわ……ずっと驚いてるだけだったような」

 

「そりゃ今日はとても平和な場所に行ったからね。ゲームで言うならチュートリアル。次以降はもっと過酷な場所行くよ?目指せドラゴン20連戦!」

 

 まだこれ以上があるのか、とアルはおののき、ムツキは目を輝かせ、ハルカはてんぱり、カヨコは溜息をつく。必要な素材は集まったが、これから先もがっつりと便利屋を利用する気満々のツクリ。どうやら彼女たちの関係はこれからも続いてくようだ。

 




 ツクリの錬金術の大本、不思議な絵画(不思議シリーズより)採取地調合(秘密シリーズより)キヴォトスはある程度神秘が残ってるのでちょっとしたものなら外でも取れたりする。でもやっぱり絵の中の方が効率がいいのです。

 なおこの後アルちゃんたちは竜眼を目当てにドラゴンと大立ち回りをしました。かわいそうに

 ではまた次回に。感想をくださると喜びます
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