ツクリのアトリエ 透き通る世界の錬金術士   作:アトリエはいいぞ

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ミレニアムの創路

”ツクリ、ちょっといいかな?”

 

「あえ?」

 

”い、忙しそうだね……?”

 

 忙しそう、ではなく実際とても忙しいのである。大将やってる~?みたいなノリでシャーレの一角に設置されたツクリのアトリエの中に入ってきた先生が目撃したのは床が埋まるほど大量の錬金道具の山と、明らかに疲れているツクリの顔だった。

 

 仕方がないのだが、ツクリはもともと忙しいのに加え錬金術による調合は時間を食うので必然的に長時間窯をかき回し続けることになるのだが、ここにシャーレの手伝いが加わった挙句自分を軽視する先生の世話までし出したツクリがこうなるのも必然だった。

 

「んくっ、んくっ……ぷは、はい!元気いっぱい創路ツクリです!なんでしょうか!?」

 

”薬を飲んでまでやることじゃないんじゃないかな!?”

 

 先生を胡乱な目で見ていたツクリは床に転がっていた黄金のゴブレットを両手で持つと、そこを満たしていた神秘的な輝きの液体を一気に飲み干し、精気みなぎる顔で先生に挨拶をした。明らかに体に悪いように見えるがそこは錬金術、神秘ってスゲー!である。

 

「それでどうしたのでしょう?よいしょ」

 

”うん、実はミレニアムの部活から救援要請が来てね。ツクリはミレニアムの生徒だから知ってることがあるんじゃないかなと”

 

「なるほど、正直ミレニアムの内情にはあまり明るくないんですけど。売り上げだの利益だのも丸投げしてるくらいですし帰るのも月2日あるかないかですから」

 

”出席日数とか大丈夫なのかい?”

 

「なはは、授業の映像見てりゃ何も言われませんよ、ほらあそこにも」

 

”これは受けてるっていわないよ!?”

 

「まあまあ、それはそれとして一体全体どんな依頼ですか?」

 

 お茶をどうぞ、とコンテナに錬金道具を詰め込んだのちフルーティーを置きながらツクリはアトリエの片隅にあるテレビを指さす。確かにキヴォトスでは一般的なBlu-rayでの授業が流れていたが、ツクリが見ていたとはとても思えなかった。

 

  これだよ、とシッテムの箱の画面を見せる先生。見えにくかったのか失礼しますねと先生の膝の上に乗ったツクリがシッテムの箱を覗き込む。

 

『ゲーム開発部は今、存続の危機に陥っています。生徒会からの廃部命令により破滅が目前に迫っている今、助けを求められる相手はあなただけです。勇者よ、どうか私たちを助けてください』

 

「文面はふざけてますけどミレニアムは予算に厳しいので確かに部活のとり潰しは日常茶飯事です。なので内容は真実でしょうね」

 

”この部活については知らないかな?”

 

「知りませんねえ。私がかかわりある部活なんてセミナーとエンジニア部くらいですし。まあ私と同じように弱小部なんでしょう」

 

 ツクリの錬金部は人数だけ見れば弱小ではあるが稼いでくる利益はエンジニア部と並ぶかそれ以上である。なんだったら予算もそこまでいらないまさに金の卵。普通なら部員不足で廃部になろうが、お金はすべてを解決するので札束で殴られた上層部は努めて無視しているのである。

 

”とにかく行ってみないと始まらない、ということだね。ツクリ、ついてきてくれないかい?”

 

「うえー、まあ先生のお願いなら致し方ありませんねえ」

 

”嫌なのかい?”

 

 明らかに渋面に変わったツクリの様子を見て、先生はあれ?と首をかしげる。自分が通っている学校が嫌いなのだろうか、と思わず訪ねてしまって余計に渋い顔になったツクリ。理由はすぐにわかるだろう。

 

「まあ、その……行ってみればわかりますよ先生。なははは……」

 

遠い目で先生の膝から降りたツクリは、先生を伴ってアトリエを出ていくのだった。

 

 

 

 

 

「ツクリさんっ!すいません頼みたいことが……」

 

「ツクリ先輩!こっちも!」

 

「ツクリさん、こちらも……」

 

「こうなるからなんですよねぇ……」

 

”に、人気者だね……?”

 

 皮肉ですか、とジト目でみられた先生はあわてて口を閉じる。基本ツクリが頼まれごとを断らないのを知っているが、まさかミレニアムの校門についた途端に生徒たちに囲まれると程だとは思わなかったのだ。

 

「はいはい、依頼について掲示板以外じゃ受けませーん!そもそもあなたもあなたもあなたも!先月受けたでしょ!ローテーション、守って!」

 

 ふしゃー!と言わんばかりに両手を振り上げて威嚇をするツクリ、小さすぎて微笑ましいだけである。結局先生がまあまあととりなしてようやく人垣から解放されたツクリ。ポケットには依頼の紙束がこれでもかと詰まっていた。

 

「…………ご理解してくれたと思うんだけど、私はミレニアムにいると、とても、すごく、やばく、忙しくなるの」

 

”素の口調がでるほどなんだね……でも、ツクリは慕われてるんだね”

 

「断れれば楽なんだけどねえ。私はみんなのための錬金術士でありたいから。だから、依頼はできるだけ断らないの」

 

”キャパシティは考えなよ……?”

 

 ツクリの錬金術は科学で届かなくなった神秘の技術だ。依頼料もなかなかするが、それでも頼むものは後を絶たない。なぜなら、科学の徒であるミレニアムの生徒たちはいつだって未知を求めている。自分の技術と未知の神秘を掛け合わせるのは、やめられないらしい。

 

「かといって錬金術を勧めてもさぁ……『いやあ、それはちょっと』だよ!?やってみればいいじゃん難しくないから!ちょっと素材の声を聴いて願いを叶えるだけだって!」

 

”うん、私から聞いてもそれは十分に難しいよツクリ”

 

「確かに私も最初は全くわかんなかったけど調合繰り返してるうちに聞こえるようになったから!そうだ!先生もやろうよ錬金術!一緒に爆弾で――――あぶないっっ!!!」

 

”え?”

 

 元気に先生を錬金術に誘おうとしていたツクリが驚いたような表情になって叫んだ。先生が疑問の声をあげると同時にツクリは横っ飛びし、抜きざまに構えたリボルバーを目にもとまらぬ6連射、先生の頭上に迫っていた何かを粉々に吹っ飛ばす。

 

「先生、警戒して。攻撃か何かわからないけどピンポイントで狙ってきてる」

 

”う、うん。ありがとねツクリ”

 

 チャチャチャ、と素早くリロードを済ませたツクリは周囲を警戒して拳銃を手放さない。まさかミレニアムで先生を狙ってくるとは思わなかったと冷や汗を流す。爆弾ではなさそうだけど……と落ちてきた残骸を見る、何かのロゴが書かれているようだ。

 

”プライ、ステーション……?”

 

「……ゲーム機ですね」

 

「私のプライステーションがああああああ!」

 

「もう、お姉ちゃんが悪いんでしょ。いきなり窓の外にぶん投げるだなんて。ごめんなさい、お怪我はありませんか?」

 

「平静を装うな!さっきミドリ崩れ落ちたもん!」

 

「そ、それは!一応ゲーム部の大事な財産の一つだったし……」

 

”ゲーム部、君たちがかい?シャーレに救援要請を送ったのも君たち?”

 

 こちらに声をかけてきたのは桃色と緑色の少女たちだった。敵意はないと気づいたツクリは銃を腰に戻す。どうやら事故だったらしい、よく似ているし、お姉ちゃんという言葉から双子かな?とあたりをつける。ゲーム機を壊したことは申し訳なかったがあのままだと先生の後頭部に直撃していたので緊急避難ということにしておいてほしい。うん。

 

「男の人、ヘイローがない。ってことはシャーレの先生っ!?ほんとに来てくれたんだ!?」

 

「お、お姉ちゃん待って……よこ、よこ……」

 

「ふぇ?ヴェッ!?創路ツクリ先輩!?」

 

「まるで鬼にでもあったような反応だねぇ」

 

「いやだってその、気に入らないことがあると爆弾で全部更地にするって噂が……」

 

「おおむね事実だよたしかに」

 

”うん、ツクリ。君は多分そんなことしないよね。やるにしてもやむにやまれぬ事情があるときだけだ。自ら自分の評判を下げるのは感心しないな”

 

「そんなのだから先生は先生なんですよ」

 

”そうだけどどういうことかな!?”

 

 まるでコントのような状況である。気に入らないことがあれば相手ごと更地にするというのは確かに行きすぎな噂ではあるが、直近で似たようなことをしでかしているので否定しづらかったので肯定したツクリではあったが先生に否定されてしまい、顔を少し赤くして先生に仕返しをするしかなかった。

 

 どうやらこの二人がシャーレに救援要請を行ったゲーム開発部のようだ。しかし、とんと聞いたことない部活だなあとツクリは首をかしげる。大抵の開発系の部活に至ってはツクリに何かしらの依頼をしていたと思うのでそれが全くないということだからだ。

 

 いやむしろ、ゲームの開発と言われれば錬金術で何かすることがあるかと問われれば全くない。しいて言うなら資料として話を聞くくらいだろう。接点が全くないのも無理はなかった。

 

 早速と先生は双子らしい姉妹に案内されてゲーム部の部室に行く。ちなみにツクリも結局一緒である。まあそれは仕方ない。ミレニアムを単独行動すれば結局校門の時のように囲まれてしまうだろう。

 

「改めてようこそゲーム開発部に!私はゲーム開発部のシナリオライター、モモイ!」

 

「私はイラストやビジュアル周りを担当しているミドリです。それと、もう一人企画周りを担当している部長のユズを含めて、ゲーム開発部です」

 

「ああ、もしかしてそこのロッカーに隠れてる人?」

 

”え?あ!めっちゃ揺れた”

 

「えっ!?何でわかっちゃったんですか!?あ、あのユズちゃんはとても人見知りなのでできればその、そっとしておいてあげてほしいといいますか……」

 

「それは悪いことしちゃったねえ。ごめんね部外者が」

 

 ゲーム開発部の少々とっ散らかった部室に入った瞬間から部屋の片隅にある掃除用具入れをじーっと見ていた。何かがある、をこえて何かがいるのを感じ取っていたからだ。突っついてはいけないことだったみたいですぐに改めたが。

 

”それで、要請にあった助けてほしいっていうのはどういうことかな?”

 

「えっとね、私たちゲーム開発部は今までずっとレトロゲームって言われるジャンルを中心に平和にゲーム制作にいそしんでたんだけど、急に生徒会から襲撃をうけたの!」

 

”襲撃とは穏やかじゃないね。なにがあったんだい?”

 

「それに関しては私が説明しましょう。変な先入観を植え付けられても困りますし」

 

「お、ユウカちゃん。おっひさー」

 

”ユウカ?どうしてここに?”

 

「生徒会四天王のユウカ!何しに来たの!?」

 

「はぁ……変なあだ名付けないで。何でここに来たかは、ツクリ先輩が戻ってきたって聞いたからよ。それと先生も来たって聞いたし、ご挨拶にね。まさかゲーム開発部に呼び出されたとは思わなかったけど」

 

 ドアをガラッと開けて現れたのはミレニアムサイエンススクールの生徒会、セミナーに所属する会計の生徒、ユウカであった。先生ともサンクトゥムタワー奪還戦の時に面識があり、ここに来る直前に郵送でシャーレへの入部届が受理されていたりする。

 

「もー、ツクリ先輩がいなくなって大変なんですよこっちは。備品の修理、不足分の補填、予算がいくらあっても足りないったら。しばらくはこっちにいてくれるんですよね?」

 

「え、いや普通に明日にはいなくなるけど。具体的にはハイランダーあたりに」

 

「うわーん!助けてくださいよツクリ先輩!もう私とノアだけじゃどうにもならないんです!どこにもいかないで―!」

 

”まさかの泣き落とし!?ユウカ、大丈夫なのかい……?”

 

 ツクリはただ先生に頼まれてついてきているだけなのでゲーム部に送り届けたらそのままミレニアムを出てまた自由気ままにアトリエで錬金術に精を出すつもりであった。

 

 なにせ抱えるタスクがタスクである。仕事が山積みで調合した元気が出る薬ことエリキシル剤と生命の蜜がなければ普通に倒れていてもおかしくない。割と真面目にこれ以上詰め込める余裕がないのだ。

 

「と、とりあえず後で話は聞くからゲーム開発部の話に戻してもいい?」

 

「ううっ、ぐす。わかりました。先生もご存じの通り各学校の部活に関しては運営、廃部、その他もろもろは生徒会に委ねられています」

 

”うん、そうだね。私としても廃部の理由がきちんと筋道が通っているならさすがに助けてあげられないかな”

 

「納得いかない!筋道なんて通ってなくて理不尽なんだよ先生!」

 

「あー、よこからごめんね。ミレニアムは結果がすべて。部活の予算配分もそう。成果を出した部活が優遇されて、そうじゃない部活は冷遇される。そこに感情は挟まれない、そうだよねユウカ」

 

「はい。なので今回の廃部も私やノアの感情その他で決まったわけでもなく、数か月の猶予を与えました。ただ、彼女らが成果を出せなかった、それだけです」

 

 モモイが吠える、これは平行線だと悟ったツクリが場をとりなす。落ち着いたユウカが理由を話すと、ミドリは少し悲しそうに、モモイは盛大にふくれっ面になったのだった。




 パヴァーヌ編開幕です。ユウカちゃんヒールっぽく振舞ってましたけど言ってること別におかしくないはずなのに襲撃までされて可哀そうにってなりました(小並感

 ではまた次回に。感想をくださると喜びます
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