怠惰に生きたいだけのヴィランが全てを蹂躙する物語   作:名無し

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第37話 AFO vs AFO

 死柄木弔(AFO)はAFOの背中から無造作に腕を引き抜いた。

 軽く手を振って纏わりついていた血を床に振り落とす。

 

「ゴフッ!」

 

 AFOが咳きこみ、血の塊を吐き出した。

 心臓は塵に還り、胸の周囲から亀裂が広がっていく。

 

 口の両端から血を垂らしながらも鋭く睨み付けてくるAFOを、死柄木弔は正面から侮蔑を籠めた目で見返した。

 

 亀裂が腹から腰へと走り、砕けていくその端から塵に変わっていく。

 力を失いゆっくりと倒れていくAFOの肩が不意に盛り上がった。

 

 スーツの肩の生地が内側から弾け飛び、先端が鋭く尖った赤黒い触手が無数に飛び出し、それらが死柄木弔ではなくAFO自身の体に向く。

 

 ズ、ズドドドッ! 

 

 数十本の鋲突がAFOの首を貫き、四方八方からの刺突で頸骨は砕かれ、千切れた頭部が宙を舞った。

 

 その直後、AFOの胸の大穴から亀裂は全身に広がり、砕けていく肉体が床に倒れる前にボソリと全てが塵となって崩れ落ちた。

 

「やって……くれたな!?」

 

 片手を床につき、全裸になったAFOが下から死柄木弔を憎々しげに見上げた。

 宙を飛んだ首の断面から勢いよく肉が盛り上がり、増殖し、胴体、下半身と床に落ちるまでに再生が終わっている。

 死柄木弔は再生するそんなAFOの身体に追撃も入れず、悠然と修復されていく様子を眺めていた。

 

「へぇ、驚いたな。ちゃんと対処できるじゃないか。偉い偉い」

 

 煽りが籠められたその言葉にAFOの顔が歪む。

 超再生の個性の前では心臓を潰した程度では致命傷にもならない。

 だがそれは通常の負傷であればの話だ。

 

 その上で死柄木弔はAFOが個性:崩壊にどう対応するのか観察していた。個性:超再生の再生力を崩壊が上回るのかという単純な興味もあった。

 

 この程度で死ぬならそれで良し。ただの小手調べだ。

 

 そして猶予を与えるためでもある。  

 

「で、気は変わったか? 俺は心が広いからな、部下になると殊勝に申し出てくるなら許してやらんこともないが?」

 

 弔は煽りではなく、本当に気が変わったなら部下として受け入れるつもりだった。一応自分自身でもあるのだ、情けくらいは掛ける。

 

 マスターピースとして完成したこの身体は言わば地上の全生命体の頂点でもある。オールマイトを含めたヒーローはもちろん、眼の前の古い自分も全てが格下なのだ。

 

 絶対的な強者として、弱者がキャンキャン吠えることに対して寛大さを見せつけることも必要だ。

 

「この……出来損ないが。貴様などもういらん。廃棄処分だ」

 

 歯ぎしりしながら立ち上がったAFOが死柄木弔に指を突きつけてきた。

 

 弱い自分(AFO)に向けた優しさは伝わらなかったようだ。

 

「残念だ。では古い俺は全て壊すとしよう」

 

 言葉と同時に床を蹴った。

 視界の隅でドクターが研究室の奥に向かって駆け出していくのを捉える。

 

 退避か、流石に判断が早いなと思いつつ蹴りで砕けた床を背後に残し、音速の拳をAFOの頭部に向かって放つ。

 

 個性:超再生保有者同士の戦いとなれば頭部の破壊でしか決着はつかない。

 

 パ、パァン!! 

 

 残像すら残さない拳と蹴りの二連撃がAFOの頭部にヒットする。

 マスターピースとして完成した肉体だ。素のスピードとパワーはオールマイトにほぼ匹敵する。

 

 だが、殴った自分の手と足が逆に砕けた。

 砕かれて思い出した。個性:衝撃反転。物理的な打撃は全て跳ね返すことができる。

 

「──ちッ、面倒だな」

 

 バックステップで下がる間に手と足の治癒が完了する。

 

 音速の拳と蹴りで生じたソニックブームの余波で、地下研究室は既に半壊状態だ。

 周囲の水槽は砕けて吹き飛び、天井からは割れたコンクリート片が降り注いでくる。

 

「……まるでオールマイトの劣化版だ。この程度でイキり散らすとはやはり出来損ないか」

 

 AFOが腕を死柄木弔に向けた。

 即、歪に変形する。

 

「空気を押し出す+筋骨バネ化+瞬発力×4+膂力増強×3」

 

 AFOの口の両端が吊り上がる。

 

「いきなりそれかよ!」

 

 死柄木弔は顔の前で両腕をクロスさせた。腕の肉が爆発的に増殖する。

 

 

 ドォオオオオオオオオ!! 

 

 地下からの衝撃波により蛇腔総合病院の地上部分の建物が全て吹き飛んだ。

 瓦礫と破片が蛇腔市のオフィス街に降り注いでいく。

 

「ハァハァ! クソがッ!!」

 

 個性:エアウォークで空中に浮かんだ状態で死柄木弔が悪態をつく。

 両腕の肘から先、下半身が消失している。増殖した腕で辛うじて頭部と上半身は守りきれたといった状態だ。

 切断面の肉が盛り上がり、骨と腱が形成されて失われた手と下半身がみるみる再生していく。

 

「ほぉ……生き残ってるじゃないか。偉い偉い。さすがドクターが完成させたマスターピースの肉体だけはある」

 

 青空の下、むき出しになった地下室からAFOが空を見上げながら驚いて見せている。

 死柄木弔の額に青筋が二本、三本と立て続けに走る。

 

 AFOの露骨な煽り返しに殺意が膨れ上がる。 

 

「その余裕! 後悔させてやる!!」

 

 再生の終わった手をすぐさまAFOに向ける。

 膨れ上がる弔の腕をAFOが薄笑いを浮かべて眺めているのが見えた。

 

 弔が元々持っていた個性:崩壊を除いて、保有する個性はAFO本体と同じだ。

 

「空気を押し出す+筋骨バネ化+瞬発力×4+膂力増強×3」

 

 空中高くから蛇腔総合病院の残骸に向けて衝撃波(エアキャノン)を放つ。

 辛うじて残っていた病院の地下階が空中からの衝撃波(エアキャノン)を受けて完全に消失し、敷地内全てが吹き上がった粉塵に包まれる。

 

 

 ──トンッ! 

 

 気づけば全裸のAFOが弔と同じ高さの空中に浮かんでいた。

 鍛え上げられ、ビルドアップされた筋肉が太陽の光の下、見事な陰影(カット)を作り出している。

 

「無駄な攻撃だ。そんな溜めに時間のかかる攻撃が今の僕に当たるわけないだろう?」

 

 AFOは両手を広げて肩を竦めて見せる。

 生命維持装置と、個性:摂生で制限を受けていた運動能力は、取り戻したこの肉体には最早無縁のものだ。

 

「強がりをッ!」

 

 弔の身体から黒い稲妻が放たれた。

 一拍遅れてAFOの身体からも黒い稲妻と鋲突が放たる。

 

 結果は先に放ったはずの弔の黒い稲妻が完璧に迎撃され、それどころか押し返されて黒い稲妻を纏った鋲突が弔に迫る。

 

「チイッ!」

 

 躱しきれなかった鋲突が弔の肩を抉り、纏った黒い稲妻が弔の右肩から先を切り飛ばした。

 

 片腕を捥がれた程度、すぐに治るので問題はない。

 マスターピースのこの身体は個性:超再生との相性が極めて良いのだ。

 

 仮に肉体を削り合う消耗戦になれば無限の力を宿している地力の差で死柄木弔が必ず勝つ。

 

 

 

 ──だが。

 

黒球(ダークボール)!」

 

 手のひらから発生した球状の黒体が無数にAFOに向かって殺到する。

 それを薄笑いを浮かべたAFOが瞬発力の個性をもって空中を余裕をもって躱し続けている。

 

 まるで当たらないのだ。

 攻撃用の個性を単体で放っても当たらない。

 

 複数個性を組み合わせ、もっと高速度高威力で放とうとすると、どうしても溜めの時間が発生してしまう。

 現状を見れば、そんな攻撃はAFOに余裕で躱されるだろう。

 

「────チィッ!!」

 

 個性を使った応酬を何度か繰り返すうちに被弾するのが死柄木弔だけに偏ってきた。

 押し負けているのだ。

 

 ふっと、戦闘の間が空いた。

 

 薄く笑みを浮かべたままのAFOが空中で器用に肩を竦めた。

 心底死柄木弔を見下す表情を浮かべている。

 

「……まあ認めるよ、弔の中の僕よ。肉体のポテンシャルははるかに君が上だ。さすがマスターピース、ドクターの最高傑作。もちろんそうなるようにドクターと僕が考えたわけだがね」

 

 周囲の建物は二人の攻撃に巻き込まれて広範囲に渡って半壊していた。

 いずれ蛇腔市が復興されるとしても相当厳しい状況になるだろう。

 

「──だが、所詮複製された劣化人格でおまけに混ざりものときた。ガワが良くても中身がダメだと最高傑作がこうも無惨になるものなのか」

 

「黙れッ!」

 

 発条(バネ)化、増殖、膂力増強、空気押し出し、鋲突、ダークボール、光塵! 

 

「オオォオオオオオオオオオオッ!!」

 

 マスターピースとしての素の肉体の力で右腕を増殖して更に後押しする。

 胴体の何十倍にも歪に膨れ上がった腕を構え、額に青筋を浮かべた死柄木弔が組み合わせた個性の制御を投げ捨て、威力全振りの超広範囲攻撃を繰り出した。

 

 AFOが小賢しく躱すのではれば、それを上回る攻撃を叩きつけるだけだ。

 

 

 ドッ!! 

 ドォオオオオオッ!! 

 

 半壊していたビルも道路も瓦礫とアスファルトと粉塵が衝撃波で巻きあがり、範囲攻撃の副作用で視界の全てが粉塵で埋まる。

 

「どうだ! これなら躱しきれまいッ!!」

 

 組み合わせた個性のそれぞれに限界まで力を注ぎ込んだのだ。

 蛇腔市のほぼ全域を巻き込むほどの攻撃範囲だ。粉塵が天高く、少なく見積もっても数kmは噴き上がっている。

 無限のエネルギーを持つマスターピースだからこそ放てる、超広範囲高威力攻撃。

 

 これほどの力、オリジナルAFOの肉体では何度も放てない。

 弔だからこそできる全力攻撃。

 

 舞い上がる粉塵の規模に自身がオリジナルより優れているという確信を得る。 

 

 

 ──カァッ!! 

 

 視界を埋め尽くすほどの粉塵を貫いて光が迸った。

 

「ウォッ!!」

 

 光を認識した瞬間、弔はわずかだが首を捻ることができた。

 だがそれでも遅すぎた。顔の半分と側頭部が光の奔流で持っていかれた。

 

「惜しい、外れたか」

 

 粉塵の向こうから響くAFOの声に余裕は感じられなかった。焼け焦げたように呼吸が乱れ、疲労が滲んでいる。

 視界を覆っている粉塵に開いた巨大なトンネルの向こうでAFOの右腕が肩から先がまるごと消し飛んでいた。

 傷口からは白い骨の破片と、まだ燻る光の残滓が舞い散っている。

 

 自分から腕を犠牲にしたのか。

 

 弔は頬から側頭部にかけて抉れた自分の傷に手をやりながら直感した。今のAFOの一撃は出力に全振りした一発。

 溜めた膂力と個性を一点に凝縮し、己の腕もろとも撃ち放つ捨て身の攻撃だ。

 

 うねりながら空を舞う光の奔流が全てを貫く一本の槍と化して弔の頭を掠っていった。頬を抉ったその一撃は空気中にまだ焦げた匂いを漂わせている。

 

「……俺を煽る割に余裕が無さそうだな?」

 

 抉れて失った頬の肉が盛り上がる。

 光を認識した瞬間に首を捻ってなければ頭部が消し飛んで死んでいた。

 マスターピースの身体とて、一瞬で頭部を砕かれ焼き尽くされればさすがに死ぬ。

 

 AFOの失われた右腕が弔の頬と同じように断面から肉が盛り上がり再生が始まっている。

 だがよく見れば、AFOは右腕以外にも片足と胴体の一部が欠損していた。

 

 弔の範囲攻撃のダメージを受けているのだ。

 だからか、再生速度は先程までより明らかに遅くなっている。

 

 ダメージを受けた体で膨大な出力を注ぎ込んだ全力攻撃の反動で、超再生の個性が弱まっているのだ。要するに疲労だ。

 

「地力の差が現れ始めたってわけだな」

 

 弔の口角が吊り上がる。

 

 AFOの今の姿を見て確信した。

 全力で放つ攻撃はAFO自身の肉体にも相応の代償を強いる。無限に撃てる万能砲ではない。

 

 よく考えればそれも当然だ。

 

 AFOが超再生の個性を手に入れたのは最近のことだ。この規模での戦闘は初めてなのだ。

 肉体が損壊するほどの全力攻撃の経験はない。

 

 当然死柄木弔(AFO)自身にもないが、マスターピースのこの身体は負傷やケガをものともしない。

 

 ならば。

 

「俺は腕を犠牲にせずとも同じ攻撃ができるぞ」

 

 マスターピースの肉体に宿るエネルギーは無限だ。

 腕を犠牲にせず、何回でも放てる。

 

 AFOの顔から余裕が消えている。

 

「──なるほど。脳筋プレイでごり押しされると分が悪そうだ」

 

 零れた言葉に侮蔑の色はなく、単なる事実の確認行為を終えたような感じだった。

 

 だが、追い詰められているようでどこか勝機を窺っている。

 そんな感触が消えない。

 

 確実にまだ何か隠している。

 

 考えている間に、AFOの再生しかけの右腕がだらりと下がったまま左手だけが不自然に持ち上がった。

 

 自分の顔へ。

 

 

 今までの戦闘の中では見なかった予備動作だ。

 弔の中で警鐘がけたたましく鳴った。

 

 考えるより前に動いた。

 エアウォークで宙に浮いたまま、瞬発力の個性で一気に加速する。 

 

 だが、届かない。間に合わない。

 

「足りない!? ──なら、こうだ!」

 

 弔の肩から新しく手が5本、6本と増殖する。

 その全てが後方に向けられ、手のひらに開いた穴から空気が押し出されて加速する!

 

 咄嗟にやったその瞬間、弔の中で何かが噛み合った。

 

「そうかッ!」

 

 今まで固定砲台のように個性で攻撃していただけだったことに弔は気づいたのだ。

 

 黒球も、黒い稲妻も、鋲突も。

 単体でも組み合わせでも結局個性を放つ、ただそれだけだったのだ。

 個性:摂生による運動能力の低下を受け入れて以降はずっとそういう戦いを繰り返してきた。

 以前の肉体での戦い方が焼き付いていた。

 

 だが、腕を増殖させて超広範囲攻撃を押し上げたあの一撃──マスターピースの肉体で個性そのものをブーストする使い方、そして今増殖させた腕で加速している、これこそがこの身体の真価だったのだ。

 肉体を個性に合わせて作り変える。溜めもタイムラグもない、肉体の枷を取り払い、力任せに、そして自由に個性を扱う。

 

 理解の笑みが弔の顔全体に広がっていく。

 

 瞬きする間にAFOが目の前に迫ってきた。

 手のひらが顔に触れる前に肩から新たな手を生やす。

 

 手のひらを反すようにくるりと捻る。

 

「個性:歪曲(ディストーション)

 

 近距離限定で敵をねじ切る便利な攻撃個性だ。AFOの腕を捻じ切るのに成功する。

 横を通り過ぎながら足を肥大化させ、足の甲に無数に生やした槍骨で蹴り上げる。

 

「ハッハハハハッ! 脳筋だって!? 上等!!」

 

 むしろそれこそがこの身体の真価なのだ。

 

 血をばらまきながら吹き飛ぶAFOに更に追い縋る。

 

 エアキャノンを利用して更に加速しながら膝蹴りをAFOの腹に叩き込む。膝に生やした槍骨が背中まで突き抜ける。

 

 自在に肉体変化させフィジカルと個性とを混ぜ合わせる戦い方だ。

 

「勝った!」

 

 AFOは明らかに弔の動きに付いてこれてない。

 

 張り手でAFOの右腕をへし折り、返す蹴りが胴体に深々とめり込んだ。AFOの身体が瓦礫の山に叩きつけられ、埃が巻き上がる。

 

 反撃が飛んでこない、畳みかけるなら今だ。

 

 追撃の掌打を続けざまに叩き込み、殴るたびにAFOの肉が抉れ、血飛沫が舞う。

 AFOの超再生が追いつく端から、また次の一撃が上書きしていく。

 

「なんて──」

 

 両手でAFOの頭部を掴み、話しかける。

 

「消耗戦になると思ったか?」

 

 既に五指が触れている。勝負は決まった。

 

「切り札があるんだろう? 残念だったな、出させねーよ」

 

 ビキィ!!

 

 AFOの顔面の皮膚にヒビが入る。

 耳が崩れ、剥がれた皮膚も砕けていく。

 

「──自分がこうも単純だと突き付けられると、おかしな気分になるものだな」

 

 顔面に入っていたヒビが元に戻り始めた。

 崩れ落ちていた頭皮が逆再生するように元に戻っていく。

 

「こうなるように誘導したのだと、まだ気づけないのか」

 

 瓦礫の下から伸びたボロボロの右腕が、再生しながら弔の頭を鷲掴みにした。

 

「──ッ!?」

 

 あり得ない事態に驚愕しながらも、個性:崩壊に全力を注ぐ。

 個性:崩壊は超再生の治癒力を上回っているはずだ。

 

 いつの間にかAFOの半壊した左手が、自分自身の顔を覆っていた。

 

「個性:巻き戻し」

 

 AFOの額の角が眩い光を放つ。

 

 光に包まれた弔は個性:崩壊が押し戻されていく感覚に戸惑い慌てた。

 

「バカな!? なんだこの個性は!!」

 

()は初見だったね。切り札というのはここぞという時にしか切らないのが勝利するコツだ。憶えておきたまえ」

 

「な……ぐぁあああッ!」

 

 弔のマスターピースとしての肉体が急速に巻き戻っていく。

 増やしていた腕も、膨張していた足もすべて消えていく。

 

 マスターピースへの長い改造期間に味わった苦痛が一瞬に詰め込まれて再現される。

 あり得ないほどの苦痛が弔の脳を灼く。

 

「グハッ!!」

 

 同時に宿っていた個性の数々が根こそぎ引き剥がされていく感覚に襲われた。

 崩壊も、超再生も、その他すべてが、掴まれた頭から吸い上げられるようにAFOの手へと流れていく。

 

 苦痛は一瞬で消え去った。

 元の弔の肉体に戻ったのだ。

 

 そこから巻き戻るスピードが一気に加速した。

 

 ひょろっとした顔色の悪い青年から、少年に。

 更には幼児にまで。

 

 

 

 バサッ!! 

 

 唐突にAFOの目の前を何かが高速で通り過ぎて行った。

 置き土産とばかりに何枚かの羽が周囲を舞う。

 

「何ッ!?」

 

 AFOが思わず羽に気を取られている隙に、幼児にまで巻き戻っていた弔の姿がかき消えていた。

 

 慌てて瓦礫の山と化している周囲を見渡した。

 

 

 その時、大気が震え重低音のような響きが地鳴りのように伝わってきた。

 音の出処を見極めようとAFOが背後を振り返った瞬間、崩れ果てた蛇腔総合病院の残骸を吹き飛ばし、音すら置き去りにする速度で弾丸のように突進してくる巨大な影。

 

 影が振りかぶった。

 あまりの出来事にAFOの思考が止まる。

 

「ユナイテッド・ステイツ・オブ・スマァアアアアアアッシュ!!」

 

 全力全開の拳がAFOの顔面に炸裂した。

 

 衝撃波だけで周囲の瓦礫が全て空中に浮き上がり、爆心地のごとく逆方向に一瞬触れた後、外側に向かって吹き飛んでいく。

 

 爆心地で全てのエネルギーを顔面で受け取ったAFOの巨体が周辺のビルをなぎ倒しながら瓦礫と共に粉塵の向こうに消えていく。

 

 

 舞い上がる土煙の中で拳を突き出したままのオールマイトが険しい顔のまま叫ぶ。

 

「私が────来た!!」

 

 

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