ちっぽけな私のヒーローアカデミア/シンカ設計図   作:マグネシウム

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Let's 戦闘訓練/

 

朝、目を覚ました私は自分の部屋をボーっと眺めていた。

 大量のサーバーが所狭しと並んだ景色はデータセンターの一区画を丸々持ってきたかのようになっている。

 引っ越し屋さんには怪訝な目をされたっけ。

 ま、下宿先に大量に置くものじゃないし。

 

 それでも、私にはこの設備が必要だった。この大量のサーバーが私の力の源なのだから。

 

「おはよう。渚」

 

「おはよう。ウ(・)ィ(・)ッ(・)チ(・)。」

 

 サーバーからぬるっと出てきた相棒のホログラムに朝の挨拶を返した。

 

「学校の準備はできたか?」

 

「もちろん。昨日の内に終わらせといたよ。」

 

「ならいい。朝食は向こうに準備しておいた。」

 

「ありがとう。助かるよ~」

 

 サイドテーブルに置かれた簡素な朝食を見て、私はまだ顔を洗っていないことに気づいた。

 洗面台に向かうと、先回りしていたウィッチは引いていた。かなり嫌そうな顔をしているので尋ねると。

 

「猫を被るのをやめろ。せめて私たちだけの時は。」

 

「こーいうのは普段からやることに意味があるんだよーだ。」

 

 私が演技を兼ねて頬を膨らませると、

 

「同じ中学校の生徒がいたぞ。遅かれ早かれバレるのではないか?」

 

 と言ってきた。まあ、そうだけど……

 

「別にいいじゃん。私はこういうキャラで行くって決めたんだから。」

 

「まあ、中学の頃のお前は酷いものだったからな。」

 

「だから失敗した。でも、同じ過ちを繰り返すつもりはないよ。そのためのイメチェンなんだからさ。」

 

「ならいい。好きにしろ。今はお前が我が王なのだからな。」

 

 

 顔を洗った私は朝食を摂り、着替えてバックを手に取った。

 姿見で身だしなみを確認。よし、問題なし。

 

「行ってきます。」

 

 私以外誰もいない家を出た。

 

 

 ◇

 

 

「んじゃ次の英文のうち間違っているのは?」

 

 雄英に勤める教員の1人、プロヒーロー“プレゼントマイク”。今は彼が担当する英語の授業の真っ最中。

 

「おらエディバディヘンズアップヘイセイ盛り上がれー!!」

 

 偏差値が高い+ヒーロー科の影響で進みこそ速いけど、それを差し引けば普通の授業だった。

 この辺りは中学とあまり変わりないかな。

 

 昼は大食堂で一流の料理を安価で頂けるとの触れ込みに釣られて行ってみると確かに一流だった。

 あの人数に同じクオリティで作ってるんだから、凄まじいものがある。

 

 そして昼も過ぎ、午後の授業が始まる。科目名はヒーロー基礎学。ようやく、ヒーロー科らしくなってきた。

 

「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」

 

 この科目の担当教諭は『オールマイト』。この国のプロヒーローの頂点。『平和の象徴』とまで呼び称される人物……

 直接会うのはこれが初めてになる。

 

「私の担当はヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う科目だ。単位数も最も多いぞ!」

 

 ま、ここら辺はまだ予想の範ちゅ……

 

「早速だが今日はコレ!戦闘訓練!」

 

 いきなり戦闘か、トばすなあ雄英……

 

「そしてそいつに伴って……こちら!入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』にあつらえて作った戦闘服(コスチューム) !!」

 

 皆のテンションが急上昇した。

 

 コスチュームはそのヒーローを象徴する服装だ。

 個性のサポートや、デメリットのケアを兼ねる重要な要素になる。

 

 雄英にはコスチュームの被覆控除制度があって身体情報やその他必要書類を提出してタダで最新鋭のコスチュームを受け取れるんだけど。私の場合、要望は程々に書いて後は専門家に任せた。

 こういうのは専門家に任せてあとで相談しながら微調整するのが一番いいからね。

 

「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!!」

 

「「「はい!!」」」

 

 更衣室に移動する間何人かのクラスメイトと話すことができた。

 それに伴って私の脳内辞書も更新された。眼鏡君は飯田君。もさもさ君は緑谷君。という風に名前を更新できた。

 他にもお茶子や三奈、梅雨ちゃんといった女子陣も追加した。一気に知り合いが増えて私の顔はホクホクしていた。

 

 さて、そそくさと着替えて更衣室を出る。

 

「恰好から入るのも大事なことだぜ少年少女!!自覚するのだ、今日から自分はヒーローなんだと!!!」

 

 声の先にはオールマイトが待ち構えていた。

 

「いいじゃないか皆、かっこいいぜ!!」

 

 どうやら皆も到着したらしい。

 

「さあ始めようか、有精卵ども!戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 さて、と。

 周りを見ると皆特徴的なコスチュームに身を包んでいる。

 

「渚ー!」

 

「あ、三奈。更衣室でも見たけど露出度高めだね~」

 

「いやいや、露出は控えめなのに渚の方がヤバいよ!絶対!」

 

 え?そうかなぁ……

 私は電子戦装備を嵩張らないように付けてほしいって要望を出しただけなんだけど……でも確かに、思ったより体のラインが出ている、のかな?

 

 三奈と談笑していると、飯田君が挙手した。特徴的なフルフェイスヘルメットだったけど、動きで察せた。

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

 

「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!」

 

 オールマイトはそのまま、凶悪な敵出現率の統計から『真に賢しい敵』屋内(やみ)に潜む。として訓練の意図を説いた。

 

「君らにはこれから『敵チーム』『ヒーローチーム』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

「基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知るための実践さ!……ただし、今度はブッ壊せばオーケーのロボじゃないのがミソだ。」

 

 一旦話が止まると、オールマイトに質問の嵐が襲い掛かった。

 その密度にオールマイトはパンクしていた。

 

「いいかい⁉状況設定は『敵』がアジトに核兵器を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている!『ヒーロー』は制限時間内に『敵』を捕まえるか核兵器を確保すること。『敵』は制限時間まで核兵器を守るか『ヒーロー』を捕まえること。

 

コンビ及び対戦相手はクジだ!」

 

 クジが適当なのではないかと考えた飯田君の疑念を緑谷君が払拭した。

 そのままの勢いでクジを皆引いて行く。

 

 私はIコンビ……いや私がいるからトリオだねこれ。

 

「私は至道渚、個性は領域掌握。よろしくね~」

 

「じゃあ次は俺が。俺は尾白猿夫。個性は見ての通り尻尾で、格闘術もかじってる。よろしく。」

 

「最後は私かな。葉隠透です!個性は透明化。よろしくね!二人とも!そしてなぎちゃん!個性名を聞いただけではどんな個性なのかピンと来ません!」

 

“なぎちゃん”か……

 

「まあ、そうだよねえ……時間がないから軽ーく説明すると、一定範囲内の空間を掌握する力なんだよね。」

 

 久しぶりだなあ……その呼ばれ方。

 

「何それ!凄いね!」

 

「うん……でしょでしょ!あ、もう皆揃ったみたい。」

 

「あ、じゃあ俺たちも移動しようか」

 

「さんせーい!」

 

 私と尾白君は先に行ってしまった透の後を追いかけることにした。

 

「最初の対戦相手は……こいつらだ!!」

 

 ボックスから取り出した結果は、

 

「Aコンビが『ヒーロー』!Dコンビが『敵』だ!!敵チームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観戦するぞ!」

 

 ヒーローチームのAコンビは緑谷君とお茶子。

 敵チームのDコンビは爆豪君(ヤンキー君)と飯田君。

 

 なんだこの組み合わせ、不穏過ぎない?

 

 この後オールマイトが注意事項を2、3個話しているのを少し聞いてから、私たちはモニタールームに向かった。

 

 

 ◇

 

 

 訓練は開始早々に大きく動く。

 

「いきなり奇襲!」

 

 Aコンビに爆豪君が単騎突撃をかましていた。

 昨日のテストを見る限り、緑谷君と爆豪君には相当な確執がある。

 

 ここでぶつかって大丈夫なのか不安だったけど……

 

「やっぱダメだったかあ……」

 

「ダメって、どういうこと?なぎちゃん。」

 

 私は爆豪君が動きを読まれて緑谷君に投げ飛ばされたのを見つつ続けた。

 

「爆豪君の単騎突撃は愚策。昨日のテストの結果からして、斥候としての適正があるのはどちらかと言えば飯田君。つまり今の爆豪君は協調する気が皆無の暴走状態なんだよ。まあ、こうならないことを祈ってたんだけどね……」

 

「そっか……ありがとう、なぎちゃん!」

 

「どういたしまして。」

 

 って、爆豪君それは……!

 瞬間、大きく揺れた。あまりの轟音に私も一瞬呆けた。

 

 爆豪君が緑谷君に向けて明らかな非対人の威力をぶっ放したのは分かる。でも……

 

「こんの爆発太郎が……!」

 

 流石にやりすぎでオールマイトからも中止を勧告されていた。

 更に苛立ち近距離戦に入った爆豪君になすすべなく爆破され殴打される緑谷君。

 

 言動、態度に似合わぬ繊細さで個性を運用する爆豪君に緑谷君はなすすべがないように見える。

 

 でも、目が死んでない。

 モニターの向こうに見える緑谷君の目は強い意志を秘めていた。

 

 そして十数秒後、戦いは決着した。

 勝者 ヒーローチーム。






マグネシウムです。
シンカ設計図。第2話読了ありがとうございました。

初回の後書きがあまりにも見てて寂しかったので今回から後書きに何か書いていくことにします。


渚のコスチュームですが、安里アサト先生の「エイティシックス」に登場する「ツィカーダ」のような演算を外部に委託できる装備を想定しています。
流石にあそこまでフェチズムを全面に押し出したデザインではありませんが、体のフォルムがくっきり出るという意味では変わらないかもです。

そして、渚の身体情報や、コスチュームに関しては今後の回で描写していきます。

それでは最後に、よろしければ評価・感想よろしくお願いします。
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