【安価】お前らの考えた設定でVtuberやる 作:〆鯖(ハーメルン)
「カラオケ大会お疲れ様でしたー!」
:乙
:おっつ〜
:めっちゃ楽しかったわ
カラオケ大会は無事に終わった。途中、両性具有以下省略がバレて散々イジられたけど、まあ盛り上がったし結果オーライということで、うん。大会の成功に比べればおれの尊厳ぐらいどうってことない。ないったらない。
今日はそのカラオケ大会を視聴者の皆と振り返る、という趣旨の配信だ。珍しくゴールデンタイムの配信ということと、カラオケ大会の裏側を聞きたい他V推しの人たちも見ているので、珍しく同接回っている。
「っあー……仕事終わりの酒うまー」
:カシュって音したぞ今
:酒カスコンビニバイトおじさん
:今日の酒とつまみ紹介して
「今日のはね、ハイボールです。ウイスキー〜がふふふふふ〜ん*1のやつ。つまみは奮発してスーパーの刺身盛り合わせ」
:サン〇リーの回し者か?
:奮発してスーパーの刺身なのか……そうか……
:二本箸作戦
:ねーおじさんアレやって CMのアレ
「ねぇ、角ハイボールがお好きでしょ……?」
:吐息!!!!
:ふーんエッチじゃん
:これは次のCM女優の風格ですね間違いない
:もしかしてよォ〜、"来る"んじゃねえか? サ〇トリー案件とかよォ
「あ〜いいね、やりたい。ちなみにおれは歴代CMだとカンノさんのが好きです」
亡き父親から継いだ店を切り盛りする健気な娘と、それを陰ながら応援する常連客……というストーリーが心に染みるのだ。ちょうど飲酒が気になり始める年頃に流れてたのもあって、アルコールに対する憧れと共に強く印象に残っている。
:わかる〜
:そこは初代だろ
:おっと嗅覚捜査官の方を忘れるなよ
:おじさんは配信で色んな酒飲んでるけど、好みの味とかないの?
「好みの味かあ。言われてみればそんなにないかも。どちらかといえば甘いのが好きだけど辛いのもそれはそれでイケるし、つまみ次第かな?」
おれがよく飲むのは、酒が好きなのに加えて、もとからつまみっぽい味の料理が好きなのもある。ピリ辛まぐろユッケとか、無限オクラとか最高だよね。考えてたら食べたくなってきた。刺身、ちょっと明日に残しておこ。
「あ、強いていうなら度数はあんまり強くないほうが……」
:酒カスのくせに酒ざこのおじさん
:カラオケ大会のリモート打ち上げでエロねえに潰されたおじさん
:アキラたゃに酒ざこなのバラされたおじさん
:ざぁこ♡ざぁこ♡強くもないのに飲んじゃうの愚かで可愛い〜♡
「しょうがないだろ、無理すると翌日しんどいんだよ。それにコインランドリーさんがタッチの差で先に潰れてたからセーフ」
:五十歩百歩じゃん
:低次元の戦い
なお1番強いのは畦道野々花さんで、次々に日本酒を空けていく様子に慄いたのだけど、彼女は公称19歳とのことなので秘密にしておく。同じく公称19歳のアキラくんはリアルでも未成年らしく、ノンアルコール飲料で参戦していた。えらい。
「さて、いい感じに場も温まってきたところでカラオケ大会の感想マシュマロ食べていこうかな」
:待ってた
:イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)
:全然関係ないけどスモア*2って美味しいよね
「本当に何も関係ないな……。1個目いきまーす」
世界に一つだけの花束:
お前男だったのか!?!?!?
猫耳しか勝たん:
お前男だったのかよおお!!!
男の娘!男の娘!:
お前男だったのか!!!!(歓喜)
:言われてるぞバ美肉マーメイドおじさん
:そういう大事なことは最初に言っとかないとさあ
:また変態一本釣りしてる……
「悪かったな両性具有を名乗る一般通過成人男子で(ヤケクソ)」
代打自体急に決まったことだし、隠し通せると思ったのに……。今だけ先輩方の勤勉さが憎らしい。大型コラボだけあって登録者数は増えてるのがまた、複雑というかなんというか。おじさんがむしろいいってどういう性癖……いや、深く考えるのはやめよう。次行こ次。
くじカラ民:
誰が1番すこだった?
関係性萌:
参加者それぞれの印象は?
「え〜、誰が1番って言われると難しいですけど、やっぱりデュエットしてくれたアキラくんかな。頑張り屋なのが伝わってくるっていうか。カオスが極まる*3もめっちゃ上手だったし。裏でもおじさんを色々と気遣ってくれて、すごい良い子ですよね」
:オ 特 早*4
:高速詠唱するほどか
くうねるはねる@〆切3日前:お友達ができて良かったですね!
「エッ、アッ、はい……。これが授業参観中の小学生の気持ち……」
:草
:はねるママ! なぜはねるママがここに……逃げたのか? 自力で現実逃避を?
くうねるはねる@〆切3日前:ギクッ
:自力ではないだろ
「お仕事頑張ってください。応援してるんで……。コインランドリーさんはさすが主催者というか、気遣いの細やかな人だったなあ。ぜひ見習いたいです。それと雑学面白かった。ラニーニャさんは頼れるお姉さんって感じで、裏で色々フォローしてくれたよ! まあ、その、本番はちょっとビックリしたけど。野々花さんは歌が凄いよね。こぶし効いててすごい良かった。アキラくんと裏でわちゃわちゃしてて可愛かった。あの2人ほっこりする」
:わかる
:分かりみがマリアナ海溝
:後輩コンビいいよね……いい……
Vtuber始めてから出会った人たちが個性豊かだったので、皆常識人でほっとした。本来出るはずだった加賀美さんも良い人そうだったし、機会があったら話してみたい。
「あと多かったのは声マネ系の感想かな」
幼なじみは生えるもの:
声マネ上手ですね!
アニソン好き:
ウタカタララバイを声マネで歌えるのは正直すごい
悲鳴ソムリエ:
高音の旋律、少し掠れながらも声量を保とうとしているところに根性と苦しさを感じてとても良いです。ぜひもっと高い曲にも挑戦してみて欲しいです。
:好評じゃん
:練習して良かったね
:だから最後さあ
「いやーほんと、あれを本番一発は無理だった。ラッキーだったわ」
実はカラオケ大会の前に練習と称してアニソンをいくつか声マネで歌う枠を何回かやったんだが、そのうちの一つがウタカタララバイだった。超高難度の曲だから、配信が盛り上がるかなと思って入れただけで、狙ったわけじゃないけど結果的にはヤマをあてた形になる。
「あとマクロスか……」
マクロスクォーター:
らめぇ!発進しちゃううう!
:マクロス・クォーターを汚すな
:ジェフリーがさあ! オズマがさあ!
:バジュラの体内に囚われるランカちゃんいいよね
「実はバジュラが1番好き。なんかこう……最初の話が通じない印象から終盤の健気さでめっちゃ好きになって、アイモで落ちた。あんなの純愛じゃん」
:分かりみが深い
:言葉が通じないだけで、彼らは愛も感情も文化だって持ち合わせてるんだよね……
そこからマクロスFで盛り上がること数十分。うーん盛り上がりすぎた。羽を伸ばして皆と雑談するのも久しぶりだからしょうがないか。くじカラから興味を持って見に来てくれた人も居て、それがカラオケ大会の成功を示しているようで1番嬉しかった。コラボの盛り上がりの余韻を共有しながら、皆と一緒に飲むお酒は格別の味でした。
大きめの仕事(?)がひと段落ついたところで、今度はプライベートの用事。そう、父さんからの飲みの誘いだ。
父:用事は無事済みそうだ
父:夜7時、新宿駅で待ち合わせできるか
名前未定:新宿駅のどこだよ
田舎者親子に新宿ダンジョンでの待ち合わせはキツイ。むしろ居酒屋の前で合流したほうが早いまである。なのに結局なぜか渋谷のハチ公前で待ち合わせ*5して、新宿の居酒屋に移動することになった。いや、別にいいけど。父さんと2人だし服装も、まあ、適当でいいか。
「って思ってたのになんでちょっと高そうな個室の店なんですかね〜〜」
「まあまあ。代金は私が持つから。父さんこういうオシャレな居酒屋に一回行ってみたくてな。それに個室じゃないとできない話もあるだろうと思って……」
「待って怖い、なんの話をするつもりだ」
腹を割って話そう*6ってか? 父さんに今さら隠し事なんて……うん、割とあるけども。特にVtuberとかVtuberとか、あとVtuberとか。あんなんが親に知られたら死ぬしかない。
「……で、わざわざ個室で酒飲みながらする話って何……?」
「めちゃくちゃ警戒するじゃないか。別にお前に腹違いの弟妹がいるとかそういうのはないから安心しなさい」
「その冗談は笑えない。というか怖すぎて酒の味分かんないともったいないから先に話してほしいんだけど」
「まあまあまあまあ。アルコールの力を借りるべき時もある。そうだろ?」
「こわ……」
そんなこんなしているうちに、最初に頼んだ生ビールがふたつ運ばれてきた。一緒に注文したツマミもだ。
「……まあ、とりあえず、乾杯」
「乾杯!」
分厚い飲み口のジョッキを大きめに傾けると、泡と炭酸が勢いよく喉を通り抜ける。缶ビールも好きだけど居酒屋で飲むビールは格別なんだよな。うーん美味しい。冷たい炭酸でシュワシュワした口に、唐揚げを放り込むと、正反対の熱さとこってり感が染み渡る。濃い醤油唐揚げにあっさり風味の塩唐揚げ。これはたまらない。
「うっま。マジでうまいわ、この唐揚げ」
「相変わらず美味そうに食べるなあ。味分からないんじゃなかったのか?」
「いつどんな時でもビールと唐揚げの組み合わせはうまいって」
「それは本当にそう。どれ、父さんもひと口」
「ん」
唐揚げの濃い味に慣れたら、次は根菜サラダ。口がさっぱりリセットされて大変よい。父さんも焼きおにぎりに舌鼓をうっているし、よく考えたらそんなに緊張すること無かったのかも。おれが東京でVtuberしてるなんて宮城の両親にはバレるはずないし、万が一ボロ出しても父さんは古式ゆかしきアニヲタだからきっと大丈夫だ。多分Vtuberとか単語も知らないはずだ。そうと決まれば久々の生ビールを堪能しなければ。
「ところで父さん最近ブイチューバーというのにハマってるんだが」
「んぐ、ごほっ、げほぁっ」
「大丈夫か?」
大丈夫じゃない。ビールが変なところに入った。でも話を聞くのが先だ。いいから続けろと目で促すと、父さんは不自然なほどこちらを見ないまま続きを話し始める。
「お、おう。この間、美波さんにあった時に布教されたのがきっかけで見るようになって」
「ああ……」
なるほど、どうりで。美波は母さんの年の離れた妹で、おれにとっては歳の近い叔母にあたる。2
「でも父さんストーリー重視のオタクなのによくVtuberハマったな」
「ああ、最初のほうに美波さんに紹介された子はあまりピンとこなかったんだ。この子とか……あとこの子も」
「大御所のラインナップだな」
キツネ耳。和メイド服。年齢層は上目。相変わらず相手の好みにコミットした布教が上手いな。調べてみると皆大手Vtuber事務所に所属していて、そういう意味でも手堅い。残念ながら今回は不発に終わったらしいけど。
「それで『悪いけど中の人が丸出しなのはちょっと』って伝えたんだけどなかなか諦めてもらえず」
「うん」
諦め悪いなアイツ。無理な布教は友だちなくすぞ。ところでこの話の着地点ってどこ? 父さんの遠い目に嫌な予感がつのる。
「『こうなりゃ奥の手じゃー!』って言って紹介してきた子がね、こう、属性の二郎系ラーメンみたいな子なんだけど、すごく美味しそうにお酒飲みながらパパッとおつまみ作って美味しそうに食べる子で」
「へ、へえ……」
「しかもそのツマミのラインナップがどこかで見たやつばっかりで」
「ふ、ふーん……」
ヤバいヤバいヤバい。一気に酔いが覚めた。血の気が引いて、目が泳ぎまくってるのが自分でも分かる。向かいの父さんも同じく目が泳ぎまくってる、そのくせ頑なにこっちを見ない。
「それでその話とおれの間になんの関係が?」
「いや父さんも迷ったんだけれどね、こういうのはハッキリさせといたほうが良いかと思ってな」
「ところでなんも関係ないんだけどVtuber界隈だと中の人に言及するのはご法度らしいよなんも関係ないけど」
「うん、分かってる分かってる。それでな」
分かってるなら止まれや!!!! 頼むから!!! わざわざ言うことないだろ!!!
無言の懇願も虚しく、父さんはスマホの画面の見慣れた立ち絵をおれの眼前に突きつけた。
「この詩蓮って子、もしかしてお前じゃないか?」
「チガイマスウ……」
終わった。死んだ。親に両性具有ノーパンチャイナマーメイドえちえちメスおにいさんVtuberがバレた。嘘でしょこんなことある???
「ところで、お前のほうは最近どう……過ごしてるんだ? その、お金に困ってたりとか」
「アッいや金に困ってしたことではなく、いや、あの、とにかく違くて」
「そうか、好きでやってることなんだな……」
「違くて!!!!」
Vtuber活動自体は好きでやってるんだけど、両性具有以下略については深い深い事情があるんだ。本当なんだ。なんだこれ拷問か?
「母さんには言わないから安心しなさい。親という生き物は、子供が自分のしたいことをやってるときが1番嬉しいんだ。愚痴があれば聞くし、何か困ったことがあったら相談しなさい。父さんいい弁護士雇っちゃう」
「それしたら地元で正体モロバレじゃん……! ありがたいけども……!」
「あと、連日深酒するのはやめたほうが」
良い父親なのはさておき、もうちょっと心の準備をさせてくれ。酒量については明日から鋭意努力します。今日は飲まなきゃやってられないって。
身バレ回なんてなんぼやってもいいですからね