【安価】お前らの考えた設定でVtuberやる   作:〆鯖(ハーメルン)

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遅くなった上短くてすんません……
展開があれであれしたのできちんとしたプロットがどっかいった
ノリで書くからそうなる(自戒)


無い袖は振れない

 

 大半の日用品は少し遠くの激安スーパーで買うことにしているけれど、ちょっとしたものなら仕事終わりにコンビニで買って帰ることもある。アルコール飲料のコーナーを物色して、大きめの缶を何本かカゴに入れてレジに持っていくと、入れ替わりでレジに入っていた深夜シフトの男の子が、そういえば、と口を開いた。

 

「先輩、酒の趣味変わりました?」

「えっ」

「前は缶ビールばっかりだったのに最近甘いやつが多いので、気になったんです」

「あ、ああ……最近、強い酒飲むと翌日胃が辛くて」

「オッサンみたいっすよ」

「みたいも何も、君くらいの年の子からすれば十分オジサンだよ」

「あー確かにそうっすね。先輩の顔ってそういう情報量少ないんで忘れてました」

「ええー……」

 

 老けて見えないのはともかく、顔の情報量が少ないって……。釈然としない気持ちになりつつ、おれはこっそり安堵した。良かった。ヒヤッとしたけど何とか上手く誤魔化すことができた。

 

 酔った勢いでやらかしたあの夜からおよそひと月半。Vtuber(?)としての活動は今のところ週2、3回のカラオケ飲み配信に落ち着いている。

 ただ、スレ民にはアル中扱いされているが、おれはそこまで酒に強くない。缶ビール1.5本でけっこう酔える。でもそれだと配信の間だらだら飲み続けるのはキツいし、何より泥酔して配信事故でも起こしたら目も当てられない。なのでアルコール度数の低い、ほぼジュースみたいな酒をよく買うようになった。

 でも、まさかそれを後輩くんに指摘されるとは……。おれがどんな酒を買うかなんて誰も気にしてないと思ってたからビビった。あんなあられもないキャッチフレーズが職場バレしたら即死だ。気をつけよう。

 

「ところで先輩はVtuberって知ってます?」

「んぐっ、げほっごほっ」

「え、大丈夫? 誤嚥性肺炎?」

「っちが、そこまで歳食ってない……」

 

 安心したところをいきなり刺してこないでくれ。心臓に悪い。ヘアピンカーブで戻ってきた爆弾に心拍数が跳ね上がり、鼓動がおかしくなってるのが分かる。つーか君そういうの見るタイプだったっけ。

 

「いやあ、前はあんまり興味なかったんすけど1回見てみたらすっかりハマっちゃって。最近はその子のライブ配信とかアーカイブばっか見てるんすよ」

「へ、へー……なんて名前の人?」

「神田ヤスリちゃんです! 音楽系Vtuberの中でも本格派らしくて、めっちゃギター上手いんすよ! 恥ずかしがって滅多に歌ってくれないけど歌も上手だし!」

「それはすごいな。……あれ? 君、ギターとか好きだったのか」

「いや、全然。ヤスリちゃんの配信見て自分も始めようかと思ってるところっす」

 

 Vtuberの影響すごいな! 全然音楽興味なかったのにVtuberでギター始めようと思うことってあるのか。熱量がヤバい。

 

「……後輩くんはその子のどこが一番好きなんだ? いやほら、ギターが上手いから好きって訳じゃないんだろ?」

「え! え、え、声? いやでも別の声だったとしても好きだし、喋り方……性格……? 一番好きなところなんて軽率に決められないんですよ分かってください!!!」

「ごめんね!? じゃあ配信を見るようになったきっかけは!? 参考までに!」

「えっ何コレ彼女が家に来たときの両親? イラストが可愛かったので……表情もナチュラルに動くし、知らない人と会話してる実感があって楽しかったからです」

「へー……」

 

 イラスト。イラストかぁ。スマホで検索をかけてみると、美人な貞子って感じの少女が出てきた。ジャージにジーンズの出で立ちで、長い前髪で目は隠れ気味だけど、確かに笑ったりおどおどしたり色々な表情が分かる。やっぱ人とコミュニケーションをとる上で表情って大事だよなぁ。

 

「ありがとう、参考になった」

「何のですか???」

「神田ヤスリちゃん……だっけ? 見てみるよ。来週感想言うわ」

「あっありがとうございます!!!! ぜひ!!!」

 

 ひらひらと手を振って自動ドアに向かうと、後輩くんは90°のお辞儀をした。うわーバイト中でも見たことない、キレイな角度だ……。改めて、Vtuberってすごい。ちらっと見た神田嬢の登録者は2500人。おれは150人。彼女に比べたら全然へっぽこな数字だけど、おれの配信も後輩くんみたいに熱心に見ていてくれる人が居るとしたら嬉しい話だ。

 

 

 

 

 

「という訳で今日は缶チューハイ。ちょうどよい、ここちよい、のCMでおなじみのアレです。色々味があったので今回はライチとグレープフルーツ味を選んでみたけど、うん、甘くて飲みやすいな。水餃子スープとめっちゃ合う」

 

:どういう訳だよ

:つまみレポお願い

:開始30秒で酒を紹介する酒カスの鑑

:水餃子作ったの?

 

「いや、餃子は業務スーパーで買ってきた冷凍のやつ。それをナンプラーと鶏がらスープで作ったなんちゃってエスニック風スープに浸して水餃子にしてみたのよ。ひき肉の油とスープが餃子の皮の中で混じりあってすごい美味しい。一緒にぶち込んだセロリと春雨の食感が飽きない。こってりした口がお酒でリセットされて無限にいけちゃう」

 

:あ^〜

:今日も美味しそう

:冷蔵庫の残りでうまそうな物作るの上手

:ぜひともワイの嫁になってからNTRれてほしい

:は? てめえ……

 

「どこかに嫁にいく予定は金輪際ないし性癖は人それぞれなのでプロレスやめようね」

 

:そうだぞ! イッチはわたしの母になってくれるかもしれなかった人だ!

:は? おにいさんキャラだって安価で決まっただろうが

:疲れたからどろどろに甘やかしてほしい

 

「……よしよし♡ 今日も息してて偉いね。見にきてくれて嬉しいよ。本当にありがとう」

 

:お、

:お……

:オギャアアア!

:ばぶうううう!

 

 ウチの視聴者の性癖は相変わらずダナー。まあ半分以上があの掲示板を見てたスレ民だから仕方ないか。総排出腔と比較したらNTRやあかちゃん返りくらい可愛いもんだ。不本意ながら例のキャッチフレーズにも慣れてきて、最近はこうしてやり返すこともできるようになった。我ながら成長したな……でも代わりに成人男子として大切な何かを着々と失ってる気がする……。

 

:ところでイッチの立ち絵マダー?

:はやくえろえろに受肉したイッチが見たいです(土下座)

:18禁エログロ同人誌つくりたくてキャラデザ全裸待機なう

 

「え、無理」

 

:何だと!?

:神はっ……いないのか……?

 

 そんでそういう問題もあったね。配信は続けてるけど、実は未だにガワがない。ついでに名前もない。あるのは両性具有ノーパンチャイナマーメイドえちえちメスおにいさんとかいうガン酷いキャッチフレーズだけだ。これ、Vtuberを名乗って大丈夫か? 景品表示法違反で訴えられたらワンチャン負けるぞ。

 

「いや、あのね、別にえぐい性癖のキメラみたいなガワで配信するのが嫌だからって言ってるわけじゃなくて。それももちろんあるんだけどーーー金がないんだよ」

 

:ああー

:なるほど

:それは確かに、生活削ってやれとは言えないしな

 

 そう。Vtuber用のイラストは意外と高いのだ。このままだとただの顔出しなし飲み配信者になってしまうので、さすがにそれはどうかと思って調べてみたのだが、安いやつでも○万円。高いやつだと諭吉さんが2ケタ必要になる。無い袖は振れない。

 

「配信で稼げてるならともかく収益化すらしてないからねえ。そこに大金を突っ込む度胸はない」

 

:デスヨネー

:くっそう、収益化さえ通ってれば投げ銭でえちえち立ち絵にしてやれるのに

:お金のためにノーパンチャイナのメスおにいさん(公式)

 

「もはや身売りだろコレ」

 

 容姿が違うとはいえ自分の18禁エログロ同人誌が出るとか想像を絶するんだが。こんなとき、どんな顔すればいいか分からないの。でも、昼間の雑談でもガワの重要性は痛いほど感じたからなぁ。「知らない人と会話してる実感があって〜〜」と話していた後輩くんの照れ顔が蘇る。せっかくみんながおれと"顔を合わせて"話したいと思ってくれているのに、それを無下にするのは忍びない。

 

「……配信が終わったらスレ民に相談してみるか」

 

 彼らの性癖は色々ヤバいけど、Vtuber関連なら頼りになる。相談すれば良いアイデアを出してくれるだろう。きっと。多分。メイビー。

 

 

 

 




メインストーリーに絡まない飲み配信って起伏なくてあんまり面白くないと思うので性癖トークと食レポは絶対に入れたいと思ってるんですけど食レポむずいですね
文章で飯テロできる人尊敬します
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