達也Side
「あっまだ、名乗っていませんでしたね、ごめんなさい」
「私は、第一高校生徒会長の七草真由美です。」
[よろしくね」
(七草真由美・・・“七〟)
(数字付きか)
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数字付き(ナンバーズ)
とは、苗字に数字が含まれている家系を指す隠語である。
十師族および師補十八家の苗字に一から十までの数字が入っているように百家の中でも本流とされている家系の苗字には、廿楽家(20)、五十里家(50)、千代田家(1000)の様に数字が入っている。
数値の大小が実力に直結する訳ではないが苗字に数字が入っている場合、魔法師の血筋が濃く、魔法師の力量を推測する一つの目安となる。
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七草家はその中でも最有力と見なされている家の1つ
(エリート中のエリート自分と正反対の人間だな)
「――――自分は司波達也です」
「え!?あなたが、あの司波くん!?」
(どうせ新入生総代主席入学の司波深雪の兄なのにまともに魔法が使えない<あの>だろう)
「入試七教科平均96点!!特に受験者平均が60点台だった魔法理論と魔法工学で満点を取ったあの司波達也くん!!」
達也END
炎夜Side
(なんかうるさいな、もう時間か?)
『うっう~ん、うん?どなた?』
「起きたか炎夜、こちらは生徒会長の七草真由美先輩だ」
「始めまして、生徒会長の七草真由美です、え~と?」
(数字付きか・・・)
『あ、ああどうも始めまして七草会長、俺は赤羽炎夜です』
「あなたが赤羽くん!!達也くんに魔法工学で1点差で下回った点数だけど、他の教科は達也くんと同じ平均96点取った赤羽くん!!」
すごいテンション高いなこの人
『は、はい多分その赤羽だと思いますけど』
「前代未聞の高得点に先生方は大騒ぎよ」
『七草会長、それはペーパーテストの成績ですよ』
「そうです、ここは魔法科高校です。どんなに点数がよくても実技がからきしで、このとうり」
魔法科高校の評価として優先されるのは、ペーパーテストの点数ではなく、実技の成績だからだ。苦い愛想笑いを浮かべながら、達也は自分のエンブレムが無い左胸指差した。
その意味を生徒会長が知らないはずが無い。
しかし七草会長は、達也の言葉に対して、笑顔で首を縦に、ではなく、横に振った。
「ううん、そんなすごい点、少なくとも私には真似できないわよ?すごいわ!」
(ああ、この生徒会長、達也の苦手なタイプの人だな)
「そろそろ時間ですので、失礼します」
達也は、まだ何か話したそうにしている会長のそう告げて、返事を待たずに横を通り過ぎて行った。
『達也!!すいません七草会長、これで失礼します』
『達也、待ってくれよ!!!』
炎夜は会長にお辞儀をし、会長の横を通って急いで達也の後を追った
炎夜END
第一高校会場
達也Side
生徒会長と話しこんでいた所為で、達也と炎夜が会場に入ったときには、すでに席の半分以上が埋まっていた。
(席が決まってるわけでもないからどこか、空いているところにでも・・・!)
(前半分が一科生〈ブルーム〉後半分が二科生〈ウィード〉ここまで綺麗に分かれると感心するな)
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一科生、二科生
全国的な指導教員の不足事情により、教員から魔法実技の個別指導を受ける権利があるのは一科生のみで、二科生は受ける権利がない。
一科生、二科生の違いは、制服の八枚花弁のエンブレムが刺繍の有無と、教員の有無だけで、オンラインの授業に参加や、施設の使用、資料の閲覧などは可能である。
2095年度まで二科生から一科生の転属は認められていなかったが、2096年度から認められることになった。
ブルーム、ウィード
一科生と、二科生の格差を表す隠語。
一科生の制服には八枚花弁のエンブレムが刺繍されている為、花冠としブルーム。
二科生の制服にはこれが無いため、花の咲かない雑草を揶揄してウィードと呼ぶ。
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(最も差別意識があるのは、差物を受けている者である・・・か)
それも一種の生きる知恵であるのは確かだ。
あえて逆らうつもりもなかったので、達也と炎夜は後ろ三分の一辺りの中央に近い空き席を適当に見つくろって隣同士に座った。
達也END
炎夜Side
炎夜と達也特に何もすることが無くなった為、クッションの効いてない椅子に深く座り直して目を閉じた。そのまま意識を睡魔に委ねようとした、のだが、
「あのぅ~」
その直後、声を掛けられた。
目を開けて確認してみると、やはり、自分(炎夜)に掛けられたようだ。
「隣に座っても大丈夫でしょうか?」
『あ・・・』
自分の隣の席を見てみると席が空いていたので。
『ああ、どうぞ座ってください』
・・・と許可を出す。
「あの・・・」
(まだ、何かあるのかな?)
と考えていると――――
「私、柴田美月って言います。よろしくお願いします」
と、首を傾げた炎夜に、予想外の自己紹介。気弱そうな口調と外見。人を見た目だけで判断するには危険かもしれないが、アピールが得意なタイプとも思えない。
『赤羽炎夜です。こちらこそよろしくお願いします。でこっちが』
と達也に話を振ると
「司波達也です。こちらこそよろしく」
達也が名乗ったら美月の後ろに居る、活発そうな女子が
「あたし、千葉エリカ!よろしくね、炎夜くん達也くん」
自己紹介をしてきた。
と、全員の自己紹介が終わった頃ちょうど――――
【ただいまより、国立魔法大学付属第一高校、入学式を始めます】
――――入学式が始まるアナウンスが流れてきた。
炎夜END
達也Side
入学式が始まって終わりに迫ると。
【続きまして、新入生、答辞、新入生代表司波深雪】
深雪の答辞が始まった。
――――――
――――
―――
――
―
深雪の答辞は、予想したとおり見事なものだった。
この程度のことで妹が躓くなどと、達也は微塵も考えていなかった。
「皆等しく」とか「一丸となって」とか「魔法以外にも」とか「総合的に」とか、結構際どいフレーズが多々盛り込まれていたが、それらをを上手く建前でくるみ、棘を一切感じさせなかった。
(深雪!なんて際どいフレーズを、ここは魔法科高校だぞ!?)
と、思って隣の炎夜を見てみると、苦笑いして深雪の答辞を見ていた。どうやら同じ事を考えてたらしい。達也が他の生徒を見てみると・・・
「司波深雪さんかぁ・・・」とか「ステキ・・・」とか「可憐だわ・・・」とか「まさしく大和撫子だな・・・」とか、のほほぉ~とした感じで皆深雪を見ていた。
『・・・』
「杞憂だったか・・・」
「『はぁ~』」
――――――
―――――
――――
―――
――
―
「炎夜くん・達也くん、何組だった?」
エリカがわくわく感を隠せない顔で問い掛ける。
「E組だ」
『俺も、E組だよ』
達也と炎夜の答えに
「やった!同じクラスね」
飛び跳ねて喜ぶエリカ。少々オーバージェスチャーな気がするが、
「私も同じクラスです」
『全員同じクラスだね、よろしくね』
と、炎夜が微笑んで女性陣たちに言うと
「「///」」
美月はほんのり顔が赤くなり、エリカは顔が真っ赤になっていた。
『顔、大丈夫か?』
「うっうん、大丈夫だよ//」
『そうかよかった』
「あの、これからどうしますか?私たちもホームルームへ行ってみますか?」
美月が達也の顔を見てそう訊ねてきた。
達也は美月の誘いに、頭を横に振った。
「すまない。妹と待ち合わせなんだ」
「妹?」
「あっもしかして」
「妹さんってもしかして・・・新入生総代の司波深雪さんですか?」
達也は一つ頷くことで確認の意味合いが強いその問いに答えた。
『よくわかったね』
「えっ、そうなの?じゃあ、双子?」
エリカがそう尋ねてきたのも、もっともだろう。達也にとっても、お馴染みの質問だ。
「よく効かれるけど双子じゃない。俺が4月生まれで妹が3月生まれなんだ」
「ふ~ん・・・やっぱりそういうのって、複雑なもんなの?」
優等生な妹と同じ学年、複雑でないはずはなかったが、エリカも悪気があって訊いてきているのではない。達也は笑ってその質問を流した。
「それにしてもよく分かったね。司波なんてそんなに珍しい苗字でもないのに」
『達也と深雪全然似ていないのに・・・』
「いえ・・・あの、オーラが・・・似てます」
「『っ!!』」
(この娘やはり―――)
『・・・本当に目が良いんだね』
「っ!?」
「?美月眼鏡掛けてるよ?」
『そういう意味じゃないよ』
「その眼鏡、度が入ってないだろう?」
(霊子放射光過敏症だろうな)
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霊子放射光過敏症(りょうしほうしゃこうかびんしょう)
とは、意識して霊子放射光を見えないようにすることができない知覚制御不完全症である。。『見え過ぎ病』とも俗称される。
霊子放射光過敏症は、霊子放射光、つまり霊子の活動によって生じる非物理的な光に対し、過剰な反応を示す。
その反応は、情動に影響を及ぼし、精神の均衡を崩すなどのやすい傾向にある。
プシオン
とは、超心理現象の次元に属する非物質粒子で、その存在は確認されているがその正体ついては解明されていない。
一般的な魔法師は、活性化したプシオンを「感じる」ことが出来るにとどまる。
研究者の間ではプシオン情報体に『精神』が存在し大脳が通信しているという仮設が支持されている
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(これ以上視られるのは危険だ―――――俺の〝秘密〟を―――――)
「――――様――」「お兄様―――」
「ハァハァ、お待たせいたしました」
達也END
炎夜Side
「――――様――」「お兄様―――」
「ハァハァ、お待たせいたしました」
会場の出口に近い隅っこで話をしていた炎夜たちの背後から、待ち人の声が聞こえた。
人垣に囲まれていた深雪が抜け出してきたのだ。
振り返りながら『早かったね、深雪』と応えた。
予定されていた待ち人は、背後に予定外の同行者を伴っていた。
(七草生徒会長!)
(なぜ深雪と一緒に?)
『深―――』「炎夜兄様」
「その方たちは――――?」
深雪は自分たちが一人じゃない事情の説明より先に、炎夜と達也が二人ではない理由の説明を求めてきた。いささか唐突の感はあったが、隠す必要は全くない。
『こちらが柴田美月さん。そしてこちらが千葉エリカさん。同じクラスなんだ』
「そうですか・・・・早速、クラスメイトとデートですか?」
かわいらしく小首を傾げ、含むところなんてまるでありえませんよ、という表情で深雪が問いを重ねる。唇には淑女の微笑み。ただし、目が笑っていない。
((やれやれ))と俺と達也は思った。
(あの総代当時の後だ色々の人々に囲まれて相当ストレスが溜まっているようだな・・・)
『そんなわけないだろう深雪、それに、そういう言い方は二人に失礼だろう?』
「あ」
「はじめまして、柴田さん、千葉さん、司波深雪です。私も新入生ですので、お兄様方同様、よろしくお願いしますね」
「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いします」
「よろしく。あたしのことはエリカでいいわ。貴方のことも深雪って呼ばせてもらっていい?」
「ええ、どうぞ。苗字では、お兄様と区別がつきにくいですものね」
深雪と美月の挨拶は、初対面として妥当なもの。だがエリカは最初から随分とフレンドリーだった。
しかしエリカの親しげな物言いに、戸惑いを覚えたのは炎夜と達也の方だった。
深雪は馴れ馴れしさと紙一重の砕けた態度に、気にした様子も見せずに頷いた。
「あはっ、深雪って見掛けによらず、実は気さくな人?」
「あなたは見た目通りの、開放的な性格なのね。よろしく、エリカ」
二人は何やら通じ合うものがあったようだ。すっかり打ち解けた笑みを交わす深雪とエリカ。
置いてきぼりの感を自覚せずにはいられない炎夜と達也だったが、このまま突っ立っているわけにも行かない。深雪についてきた生徒会長の一行が一緒だから邪魔者扱いされることはないが、だからこそ何時までもこうしていては、通行の邪魔だった。
『深雪生徒会の方々との用があるんじゃ?」
「大丈夫ですよ、今日はご挨拶だけですから」
達也の質問と提案に対する応えは、異なる相手から返された。
「先にご予定があるんですもの、また日を改めます」
「会長!!それではこちらの予定が・・・」
「予めお約束していたものではありませんから。別に予定があるなら、そちらを優先すべきでしょう?」
なおも食い下がる気配を見せる男子生徒を目で制して、七草会長は深雪に、そして炎夜と達也に意味ありげな微笑を向けた。
「それでは深雪さん、今日はこれで。炎夜くんと達也くんもいずれまた、ゆっくりと」
再度解釈して立ち去る七草会長。その背後に続く男子生徒が振り返り、舌打ちの聞こえてきそうな表情で炎夜と達也を睨んだ。
「『はぁ~』」
「すいません、私の所為でお兄様たちの心証を・・・」
『深雪が謝ることじゃないから』
「でも!」
「いいんだよ、さぁ帰ろう」
―――――――
――――――
―――――
――――
―――
――
―
司波家
平均を大きく上回る広さのこの家は、ほとんど炎夜と達也と深雪の三人暮らしのようなものだ。
自分の部屋の戻り、まず制服を脱ぐ。手早く着替えを済ませる。ちなみに、俺赤羽炎夜は司波家に分け合って居候中である。
リビングで寛いでいると、程なくして、部屋着に着替えた深雪が下りて来た。
素材は大きく進歩したが、服のデザインは百年前からほとんど変化していない。
今世紀初頭風の丈の短いスカートから綺麗な脚線を除かせながら、深雪が近づいて来る。
深雪のファッションはどういう訳か、家に中で露出が増える傾向にある。いい加減慣れてもよさそうだが、ここのところ随分と女性らしさを増して、炎夜としては目のやり場に困ってしまうこともしばしばだった。
『深雪その服よく似合ってるよ//』
「ありがとうございます//、炎夜兄様、何かお飲み物をご用意しましょうか?」
『う~ん、コーヒーを頼むね』
「かしこまりました」
『そういえば達也は?』
「お兄様なら今、研究を部屋でやっていましたけど」
『そうか、ありがとう』
キッチンへ向かう華奢な背中で、緩く一本に編んだ髪が揺れる。水仕事をするのに、髪が邪魔にならないように、なのだが、普段は長い髪に隠れている白いうなじが、襟ぐりの広いセーターからチラチラと見え隠れして何とも言えぬ色香を醸し出していた。
『っ//』
ガリガリと豆を挽く音と、ブクブクとお湯が沸騰する音が炎夜の耳に小さく届く。
最も簡単なペーパードリップではあるが、旧式のコーヒーメイカーさえ使わないのは、何かの拘り有ってのことだろうが。
一度聞いてみたとき、そうしたいからです、という答えが返ってきたから、やはり趣味ということだろうか。それにしては、趣味なのか、と聞いたときには拗ねた顔で睨まれた憶えもあるが。
何にせよ、深雪の入れるコーヒーが、炎夜の好みに一番合っていた。
「炎夜兄様、どうぞ」
サイドテーブルにカップを置き、反対側に回って隣に腰を下ろす。
テーブルのコーヒーはブラック、手に持つカップの中身はミルク入りだ。
『うまい、深雪ありがとう』
賞賛に多言は不要だった。
その一言で、深雪がにっこりと微笑む。
そのままコーヒーを嗜む二人。
どちらも、無理に会話を作り出そうとはしない。
無言の状態が続いて間が悪い思いをする、という経験は、この二人の間では絶えて久しい。
話す内容ならたくさんある。今日は入学式だったのだ。新しい友達もできたし、何やら気がかりな上級生も登場した。深雪は予想どおり生徒会に誘われている。思い出すことも、相談することも、一晩では足りないくらいにある。
だがこの二人は二人っきりの部屋で、二人で隣り合って、ただ静かにカップを傾けた。
「―――――すぐにお夕食のしたくをしますね」
空になったカップを持って、深雪が立ち上がった。深雪が伸ばした手にコーヒーカップを預けて炎夜も立ち上がる。
こうして二人、いつもどうりの、夜が更けていった。
ありがとうございました