ホシノの彼氏君概念   作:サワベ

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処女作が完結してないのに新シリーズ始める愚策。
思いついちまったんだからしょうがない。
まあ一作目が終わるまでは全然投稿しないと思うんで、気長に待っていただけると幸いです。


いくつもなくなったあとに

透き通るような青空が、イヤに気持ち悪く感じた。

ただ一人だけの校舎が、イヤに静かに感じた。

ただ待つことしかできない僕を、ただ嫌悪した。

 

最悪の日だった。

君が帰ってきたのは、太陽が今にも沈みそうな時間。

ひどく美しいその夕刻の空を背景に、輝きを失くした目をした君が帰ってきた。

君が持っている「ソレ」を見たとき、僕の世界は色を失った。

「先輩」は帰ってこなかった。

あの日から、僕らの時計は止まったままだ。

 

 

 

 

 

「………うぁ」

目を覚ました。

悪夢を見ていたせいで、鼓動が恐ろしく早い。頭が痛い。

昼寝用に着ていたジャージは、汗でぐっしょりとしていて気持ち悪い。

 

「うーっと……メガネは……」

 

手探りでソファの近くにあるテーブルを探し当て、メガネを掴む。

動きやすいよう、スポーツ用サングラスのような見た目をしているそれをかける。

視界がクリアになる。メガネがなければ、一寸先も見えない。

ふと、視線を横に向ける。

そこには、ピンク髪の小柄な少女―――小鳥遊ホシノが眠っている。

彼女も気持ちよく眠れてはいないようで、苦悶の表情を浮かべている。

まだ離れるべきじゃないかも―――そう思い、シャワーを浴びに行こうと起き上がりかけた体をホシノの横にもう一度倒す。

するとその気配を感じ取ってしまったのか、ホシノが目を覚ました。

目を覚ました彼女は僕を見たあと、にへっと笑って言った。

 

「おはよ、臼井君。」

 

 

 

 

 

「シロコ先輩それ本当!?」

 

六人では少し狭い教室に、そんな声が響く。

声の主、黒見セリカは、頭に生えた猫耳をぴょこぴょこ動かしながら続ける。

 

「工業地帯まで自転車で走破して帰ってくるって……一体何キロあるの!?」

「ん、大体200km位。気持ちよかった。」

 

そう答えるのは、同じく猫耳の生えている砂狼シロコ。

いつの時期もマフラーを巻いている。

 

「そういうセリカは何してたの」

 

そう聞かれると、セリカはぎくりとした様子で

 

「わっ私!?私はその、図書館で勉強を――」

「あれ?セリカちゃんもいたの?私も図書館にいたんだけど…」

 

セリカにそう聞いたのは、赤縁メガネが特徴的な奥空アヤネ。

僕のとは違い、ごく一般的な形状のメガネである。

 

「え、あぁそ、そうなんだぁ」

 

セリカの動揺具合から、ウソをついているのが分かる。

まぁ純粋すぎるぐらいのいい子だから、何かまずい隠し事はしてないだろう。

それに、人間誰しも隠したいことはあるものだ。

わざわざ触れるのも野暮だろう。

 

「あ、アヤネちゃんも図書館で勉強?」

「あぁいえ、この間倉庫で見つかったものの調べ物をしてました。倉庫からDOHCというものが見つかって……」

 

そう言うと、DOHCとやらの解説を簡潔に行った。アヤネはこういうところがマメで、よく助けられている。

 

「先輩たちはどうだったの?」

 

今度はこちらに話が振られた。

 

「僕はいつも通りだったよ。代わり映えしない日々だね。」

「うへぇ、おじさんもいつも通りさぁ。」

「どうせ寝てただけなんじゃないの」

 

僕とホシノの答えに、セリカが突っ込んだ。

自然と皆から笑みがこぼれる。

ホシノは、皆といるときは一人称が「おじさん」になる。

歳は僕と同い年なはずだが……さっきも言った通り、わざわざ触れるのは野暮である。

 

「ノノミはどうだった?」

 

机の向かい側に座っていた、薄緑の髪の女の子に聞く。

 

「私ですか〜?私はショッピングです☆」

 

明るく、麗らかな性格の彼女は、なんかかわいいジェスチャー付きで答える。

 

「食材だったり、生活雑貨だったり、あとダンベルを四十個ほど買いました~☆」

「買い過ぎじゃない……?」

「……ダンベル?」

 

この会話から分かる通り、彼女はかなりの力持ちである。でなきゃ、ダンベルを四十個も持ち歩けない。

何はともあれ、以上六名が、この『アビドス高等学校』の全校生徒であり、『アビドス廃校対策委員会』のメンバーである。

 

ここだけ切り取れば、ただ学校生活を謳歌する高校生の話だ。

しかし、一般的な……いや、『外』の世界でいう普通の学校生活とは大きく一線を画すものがある。

それは、この六名が『全員銃を携帯している』ことにある。

この世界では、銃を持たない人間は全裸で外を歩く人間より少ない、と言われるほど、銃の携帯が当たり前なのである。

そしてそれは、このアビドスも例外ではない。

 

ホシノがショットガンと盾。

シロコとセリカがアサルトライフル。

ノノミがミニガンと呼ばれる機関銃。

アヤネがピストル。

僕も例外でなく、アサルトライフルを携帯している。

 

じゃあ人殺しが日常なのか、と問われれば、それは違う。

この『キヴォトス』と呼ばれる学園都市に住む生徒は、天使の輪のような見た目をした『ヘイロー』と呼ばれるものが頭の上に浮かんでいる。

これが人体に影響をもたらしているのか、ヘイローのお陰で、銃弾を食らったとしても死ぬことはない。

だが逆に言えば、これが壊れると死に至る。滅多に壊れることがないとはいえ、死という概念は確かに存在する。

 

そして、僕にはヘイローがない。

つまり、僕は銃弾一発で死んでしまう体なのである。

だが、そんなことを世間が気にしてくれるかというと、そうではないのが現実だ。

 

「今日こそ校舎をぶんどってやるぜー!!」

「突撃だ、行け行けー!」

 

あの日常会話から数時間後、アビドスは『カタカタヘルメット団』という武装集団に襲撃されていた。

 

『左側面に敵5名!排除を!』

「了解、手早くやるよ」

 

アヤネからの指示に返答し、左に回ってきたヘルメット団に射撃する。

がしゅっ、がしゅっと、サプレッサー越しの銃声が5回響く。

その5発の弾丸は5名のヘルメットを容易く貫き、戦闘不能にさせる。

 

「排除確認。このまま側面から押し上げて包囲にかかる」

『了解、モニタリングを続けます!』

「ノノミは正面に弾幕展開、正面に釘付けにしてくれ。」

「了解です!ノノミ〜、行きまぁ〜す!!」

 

そう言うと、ミニガンを持って遮蔽から飛び出し、横射開始。

ばあああああっ、という、絹を裂くような銃声が響く中、側面から攻撃開始。

何も言わずとも援護に来たホシノとともに、前進する。

 

『セリカちゃんは側面の二人に援護射撃、シロコ先輩はノノミ先輩にくっ付いて制圧射撃を!』

「ん、了解」

「言われなくても!」

 

援護を受けつつ、側面を一掃して、ヘルメット団の背後につく。

ホシノが盾を構え遮蔽を作り、そこから射撃開始。

まず後ろ2名に一発ずつ。大口径弾のため、すぐダウンした。

次に振り返ったやつに一発。バイザーを砕いた。

その次、遮蔽に隠れかけた3名に横射。沈黙させる。

 

「やばいぞ後ろだ!」

「お前らは前!後ろは私達がやる!」

 

どうやら奴らは思ったより冷静なようだ。優秀な指揮官がいる。

だが、こちとらこの二人で幾度となく修羅場を乗り越えた。

武装集団ごときにやられるほどヤワではない。

 

「ホシノ」

「おっけー、やろっか」

 

そういうと、こちらに盾を寄越す。

その後、二手に分かれて、こちらに対応しに来たヘルメット団を叩きにかかる。ざっと見た感じ、10人ほどか。

 

「突っ込んでくる!」

「撃て!近づかれたら終わりだぞ!足を止めろ!」

「やるしかねぇ!撃て!」

 

奴らはありったけの弾薬をこちらに打ち込んだが、盾を構えてその弾幕をいなし、接近。

まず一人目。盾を脇腹に叩き込み、体制を崩した所を右足で蹴り上げる。

そのまま胸ぐらを掴んで盾代わりにする。

 

「う、撃つなっ!」

 

その言葉に動揺したのか、奴らは引き金を引くのが遅れた。その隙をついてホルスターからハンドガンを抜き、一人ずつ撃ち込む。

奴らが体制を崩している間に、盾にしていた敵にトドメを刺す。

その時に視界の端で動いた敵の手元に一発。奴の手から銃が落ちる。

 

「クソっ!」

「一手遅かったね、おしい」

 

そう言いながらヘルメットを掴んで、全体重をかけて地面に頭から叩きつける。

ごしゃっ、と、ヘルメットが砕ける音が聞こえた。

 

「ば、化け物だ……」

 

後ろからの声に振り返ると、完全に戦意を喪失した敵が、腰を抜かして後ずさっている。

そいつにハンドガンの最後の一発をくれてやり、周りを見渡す。ホシノが別動隊を、正面3人が本隊を片付けたようだった。

もう大丈夫だろう。そう思い、盾と自分の愛銃を拾い上げる。

 

『ヘルメット団の撃破を確認。もう大丈夫そうです!』

「了解、作戦終了。みんなお疲れ様。」

 

そう通信機で呼びかけながら、ホシノに近づいていく。

 

「お疲れ。盾サンキュな。」

「うへ。おつかれ。怪我はない?」

「平気」

「ほんとに?痛いところは?」

「ないよ」

 

そういうと、ホシノは笑みを浮かべて言った。

 

「良かった。……あとから何かあったら、ちゃんと私に言ってね。……取り返し、つかなくなる前にさ」

 

その時、胸をぎゅっと締め上げられるように、つらくなる。

だってホシノ、君の笑顔が、今にも壊れそうな笑顔だったから。

 

「……戻ろう」

「……うん」

 

 

 

 

 

「……つまり、もう物資が限界、ってことか」

「はい……弾薬も医療物資も、もう尽きかけています…」

 

対策委員会の部室内に、重い空気が流れる。

度重なる襲撃による物資の枯渇。いくら力があっても、弾がなければ戦えない。

かといって、現在のアビドスには、自力で物資を大量に買い込むほどの経済力もない。

 

「……借金も返さなきゃいけないのに……」

「でも物資がないと、ヘルメット団に校舎を奪われる」

 

そう。この学校、多額の借金を抱えている。

その額、9億円。四捨五入で10億に上る。

その状況で物資を買い込むことは容易ではない。

八方塞がり。いわゆる、『詰み』の状態である。

 

「どこか支援してくれる所、ないんでしょうか……」

「そこでなんですが」

 

唐突に、アヤネが口を開く。

その言葉は、とても興味を引くものであった。

 

「最近、このキヴォトスで『連邦捜査部シャーレ』という組織が出来たそうです。曰く、生徒達の問題を解決する組織だそうです」

「つまり、そこに助けを求めるってこと?」

「はい。もう要請の手紙は出してあります。受理されるといいんですけど……」

 

望み薄。それはこの場にいる誰もが思っていることだった。

 

「……まぁ、今は藁でも縋らないと、ね。でしょ、臼井君」

 

そう言ったホシノの言葉に、小さく頷いた。




名前 臼井蓮(うすい れん)

身長161cm 体重57kg

所属 アビドス高等学校 3年生

STRIKER FRONT

適正 市街地B 屋外A 屋内B

使用武器

コルトAR-15 458. SOCOM CUSTOM

※458. SOCOM弾は11.62mm弾薬。AR-15シリーズの部品を組み替えることで使用可能。

 

生徒紹介

アビドス自治区で拾われた男子生徒。

ヘイローが無いにも関わらず、アビドス、ひいてはキヴォトス内でもトップクラスの戦闘能力を誇る。

死と隣り合わせでありながら前へ出るので、後輩や同級生には危険視されつつも厚い信頼を得ている。

強さの理由は「ホシノにしごかれたらそりゃ強くなるでしょ」らしい。

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