僕の名前はマヌル。
魔王を倒す為に勇者と一緒に旅をさせられている。
職業は『薬師』、攻撃力はなく防御も低く魔法も使えない。
僕は弱くて戦闘では貢献出来ない。
そんな僕の仕事は…
『勇者の介護』だ。
勇者が困らずに冒険出来る環境を整える事、それが僕に出来る事…
それが今の僕の価値…ここに、勇者の側に居なきゃいけない理由だ…
勇者の心が壊れていることに気付いたのはいつだっただろうか。
幼馴染であった彼女が成長していくにつれて、少しずつ歪みが目にみえるようになっていった。
勇者として何ヶ月も勉強しているのにマトモに文字が覚えられない、昨日学んだはずの魔物の事も忘れている、そしていつも僕の側から離れたがらない。
幼さから来ると思われていたそれは何年経っても変わらず。
村の人達も異常を感じ始めた頃には…彼女はもうとっくに手遅れだった。
勇者として選ばれた日それまでの名前を奪われた事、勇者としての期待や重圧、他の村人や子供達との軋轢は…僕のせいでもあっただろう。
何が原因だったのかは分からないし、その全てが原因だったのかもしれない。
とにかく、気が付いた時には彼女の心は幼い日のまま成長を止めてしまっていた。
戦闘技術に関しては身体が覚えるのかジョブのお陰か、順当に成長していたのは幸いだろうか。
勇者が退行している事実は処罰を恐れた村の人たちや教育係によって隠蔽され、旅立ちの日を迎えた。
勇者の旅立ちの日、多分僕は解放される事に少し喜びを覚えていたんだと思う。
彼女は僕にとって幼馴染であり恩人でもあったけれど、子供のままのように振る舞う彼女の側に何年もい続けるのは正直苦痛だったんだと思う。
だから、まさか王様の推薦枠を一つ蹴り飛ばして彼女が非戦闘員の僕を旅に引き摺り出そうとしてきた時には驚きよりも先に恐怖を覚えた。
所謂『ハズレジョブ』である薬師の僕が魔族の領地を越え魔王討伐まで生きて付き合えるとは思えない。
それは僕にとって死亡宣告に等しかった。
それでも、勇者はそんな事を全く気にする様子もなくニコニコと僕のパーティに入ってくれとねだってきた。
その後ろでなんとも形容し難い顔でこちらを見ている二人が多分パーティの仲間なんだろう。
ああ、うん。分かるよ。断るのを祈ってるんだろう?分かるけれども。
この勇者はきっと諦めない。泣いて、駄々を捏ねるように大声で叫ぶだろう。子供のように。
そしてそれはとても角が立つ。
この狭い村でただでさえ肩身の狭い忌子の僕がそんな騒ぎを起こせば…僕の育ての親にもきっと迷惑がかかる。
だから、僕はその『
笑顔が引き攣っていない事を祈りながら。