前々から考えていた案を試行錯誤し、今までと少し毛色の違う作品に挑戦しようかと思います。この作品については、注意事項の欄をご覧下さい。
では、どうぞ。
「先生、ちょっといいかな?」
「ウタハ?1人で来るなんて、珍しいね」
某日、私が書類と格闘している時に。シャーレの執務室を訪ねてきたのは、ウタハだった。ウタハがこうしてシャーレに顔を出す事は、当番以外だと皆無に近かった様に思う。
何か用事でもあるのだろうか?
「何か用事でもあった?」
「そういえばと思ってね。エンジニア部について1つ……ね」
……あんまり、良い予感がしない。
ウタハが所属するエンジニア部は、様々なモノを作る部活らしく、ミレニアムで重宝されている物を作る事も度々あると聞いている。
が、それ以上に問題な点が1つ。
依頼主が望んでない改造を施したり、浪漫を追い求め過ぎて、行き過ぎたモノを作る事も少なくない。
それがちょっとした物であれば、何もここまで言う必要は無い。
……そう、ちょっとした物、ならば。
エンジニア部の生徒の腕前は本物であるが故、出来上がるものもクオリティが高い。なので、おかしなモノが出来上がると、必然的にソレも高クオリティになる訳で。
中には、最早手に負えないレベルの物が作られる事だってある。車並みの速度が出せる自転車だとか、空飛ぶ靴とか。
セミナーのユウカがよく、エンジニア部に対して頭を抱えているのも、ここ最近で私も痛感している。
……全く悪気が無いのが、尚の事。
「……発明品の試行をして欲しい、とかじゃないよね?」
「今日の要件と発明は関係ないさ。紹介してなかった生徒がいた事を思い出してね」
蓋を開けてみれば、エンジニア部の子を紹介し忘れていた事だった模様。初めてエンジニア部を訪れた時、ウタハ含めて3人の生徒を紹介されたけど、まだいたとは。
紹介し忘れた生徒は何人いるのかと聞いた所、1人らしい。何でも、基本的に外に出る事が殆どないのだとか。ウタハ達以上に開発家気質な性格らしく、ミレニアムでも顔を知らない人もいるとも。
ただ、真面目な性格ではあるという。依頼主の意向にそぐわない改良を加える事もなければ、そのクオリティもウタハ達に並んでいるという。
「時間は……空けられそうかな?」
「もうすぐで一段落つくから、それまで待ってもらってもいいかな」
「分かった。なら、私も仕事を手伝おう」
「ありがとうね」
そうと決まれば、いち早く書類を片付けないといけない。
頑張れ、私。
────────
「真面目とは言ってたけど、どんな子なの?」
「うーん……私達と似てるけど、色々違うって感じかな」
書類をある程度終わらせて、ミレニアムの廊下でそんな事を尋ねてみる。抽象的な問い掛けに対して返ってきたのは、これまた抽象的な答え。
似てるけど、違う。想像出来るようで、難しい。
ウタハ曰く、“開発者としての姿勢は似たものを感じるけれど、真面目という性格は自分らとは違う”と。
ウタハ達が真面目じゃないとはあまり思わないけど、その生徒はどうも生真面目な気質があるらしい。
成程、何となく掴めてきた……かな?
「後、男子だね」
「へぇ〜…………え?」
さり気なく投下される、巨大な爆弾。久々に、脳に直接的な衝撃が走ったかもしれない。
それもそのはず、明確に男と言える生徒にはまだ会えていない。それどころか、ヘイロー持ちの男子生徒がいないという始末。
そんな状況下での、男子生徒。しかも、ヘイロー持ちと来た。それは、驚かない方が無理だろう。
「嘘!?男子がいるの!?」
「ああ。私も最初は、目を疑ったさ」
後は、会えば分かるだろう。
ウタハはそう言って、会話を切り上げる。
今日のエンジニア部までの道のりは、妙に長く感じた。
────────
「さぁ、先生。この扉の先に、紹介したい生徒がいるよ」
そう言われて見てみれば、人二人分の高さはありそうな扉。単純な手動開閉式ではなく、手で開けられる雰囲気は無い。代わりに、呼び出しのインターホンらしき物が設置されている。恐らく、これで部屋の主を呼ぶのだろうか。
と、思えば。壁を弄るウタハ。何をしているのかと考えているうちに、壁だと思っていたカバーを開け、ボタンを操作し始める。
そうして、ウタハがソレから手を離す。すると、少しゆっくりと扉が開く。……知っている人だけはこういう風に入れる仕組みなのだろうか。流石はミレニアム、セキュリティに関してはどこも抜かりない。
「…………凄い」
一言、そう零す。
パンクな見た目の部屋。まるで、武器店の様な雰囲気を醸し出している。
壁には、あまり見慣れない銃が飾られていたり、見慣れない武器……刀や手榴弾らしき物も飾られている。これまでキヴォトスでは見た事のない形状のモノが多い気がする。
奥へ、奥へ。ウタハの歩く後を着いてゆき、辿り着いたのは部屋の中でも特段広い工作スペース。エンジニア部の広さまではいかないにしろ、様々なパーツが転がっていても広いと感じるくらいには、広かった。
そして、その一番奥。そこには、机に向かって何かを書いている人がいた。
「ノゾム、ちょっといいかな?」
「…………」
「ノゾム?」
「ん?……おぉ、ウタハじゃないか!どうした?」
ノゾム、と呼ばれた彼は、快活そうに返事をする。このやり取りだけでも、2人の仲の良さは十全に伝わる。
事情を説明しているのか、ウタハはノゾムに話をしている。
うんうんと相槌を返しながら、時々リアクションを挟む彼の会話法は、実に話しやすいだろうなと、どことなく思う。
そんな事を考えているうちに、2人が私の元へやって来た。
「先生だったか?初めましてだな。俺の名前は、
「うん、こちらこそ宜しくね」
グッと、握手を交わす。こうして男性と交流するのも、何故だか新鮮に感じる。柴関ラーメンの大将と話す事は時折あるけれど、また違った感覚だ。
「ここは……ノゾムの部屋?」
「部屋……とは少し違うな。あくまで開発の為の場所さ」
あっけらかんとそう言うノゾム。私の表情を見て何かを察したのか、言葉を続ける。
曰く、ここはノゾムの工房なのだとか。依頼者が来たら応対して、希望の物を作って提供する。依頼がない時はこうして、自分で色んなものを作るのだという。
手裏剣の様な見た目の物があるが、これは何なのだろうか……?他にも、キヴォトスでは使われていないモノがそれなりに陳列されている。
例を挙げるなら、手に付ける何らかの小さな装置や見慣れない形状の銃。生徒達の武器も独特な物があったりするが、ここの物はそれよりも変わった見た目である。
「んあ?それが気になるのか?」
「うん、見慣れない形の物が多いからね」
「いいぜ、今日は客も依頼もないからな!」
…………自分で言ってて、悲しくは無いのだろうか?
────────
「そういえばさ」
「お?何だ何だ?」
ノゾムと色々な話をして数十分。どれもまぁ変わっている物ばかりだった。
手裏剣の様な物は、“アークスター”という名前のグレネードらしく、シールドの破壊に特化したグレネードなのだとか。他にも、着弾点に横一直線の炎を出す“テルミット”とか、奇妙な形をしたSMGの“プラウラーSMG”とか。
どれも新しい観点からの発明だったので、私は素直に感心した。
そんな事を一旦置いて、私は、ずっと気になっていた事を聞く事にした。
「ノゾムはどうして、殆ど外に出ないの?」
「あぁ〜、それか。別に大した理由じゃないぞ?」
そう前置きをして、ノゾムはその理由を打ち明けた。
「こうして何かを作るのが好きなんだよ。それを優先した結果、だな」
ウタハの言っていた事が、何となく理解出来た気がする。
クリエイター気質な所は似通っている、と。確かにそうだなと、私も思う。変な改造を加えない辺りも、ウタハが言っていた事と一致する。
自分のやりたい事に真っ直ぐな子なんだと、そう思った。
「……あ〜、一応言っておくが、単位が足りねぇなんて事は無いから安心しな」
「?授業は出てるの?」
「いんや、特待生制度的なヤツさ。学力的に優秀だと学園から判断された生徒に認められる、言わば授業不参加でも良いっていう権利さ」
そんな制度があるなんて。というより、ノゾムは頭が良いらしい。
……いや、エンジニア部に所属しているんだから、頭が良くてもおかしくはないか。
「今後関わるかどうかは分からんが、そん時は宜しくな」
その言葉を放つノゾムは、少し雰囲気が違う様に感じた。
頂ノゾム 男
・ミレニアム所属の3年生。
・エンジニア部として活動しており、活動自体はウタハ達とは別でしている(時折エンジニア部の部室で活動する模様)。
・武器や銃、グレネード等、開発者している物は多岐に渡る。
・愛銃は、自身が作った銃全てが、彼にとっての愛銃(との事)。
・様々な銃を扱える。