この作品、現段階でストーリーが詳細まで固まってない事と、多忙故のモチベーションによって、投稿頻度は遅いかと思われます。
気長にお待ち頂けると、幸いです。
では、どうぞ。
「この様な銃、作れるか?」
「作れなくはないな。が……」
某日、俺の工房を訪れた客が1人。
一見すると普通のロボットの大人だ。が、俺には分かる。
キナ臭いヤツだ、コイツは。その辺りの勘は、妙に敏感な俺だからこそ、感覚で理解出来る。俺が並べてるモノを品定めする様な奴は、余程の職人か変なヤツかの二択に殆ど絞られる。
その後者の中でも、目を見ればどういう方向性の変なヤツなのかは分かる。
コイツは、裏に通じてるヤツだ。
「アンタには提供出来ねぇな」
「……何だと?客に向かってその態度はどうなんだ?」
「悪いが、俺はコイツらを握る奴は選ぶんでな」
「…………ちっ!」
粗雑な舌打ちをし、客はそそくさと去っていく。
どうやら、当たりだったみたいだな。製作を却下されてあそこまで冠になるヤツと来れば、俺の想定通りの奴くらいだ。
そんな事を思いながら、客が使ったであろう扉の設定を弄る。
何故、セキュリティの厳しいミレニアムの一室に、あんな裏社会の輩が来れるのか。
それは、今俺が弄っている扉が関係している。
この扉、簡潔に言うと、
ゲヘナの扉を開けたら、トリニティの教会に転移していた。そんな事が出来るのが、この扉。
タネを明かすと、“虚数”が関与してくる。
“虚数”とは、色々なモノが存在するこの現実世界とは真逆の、何も無いとされる〈虚数空間”を指す。この空間を構成しているのが、“虚数”という概念。
もっと簡潔にまとめるなら、“全てが穴になった
。
何も無い所に点を2つ振り、それを結ぶ。そうして、1つの
……というより、これを理解するのは相当難しい。しっかり理解しようとするなら、ミレニアムの奴らでも火ぃ吹くだろうな。俺だって、理解するのに相当な時間を掛けた訳だしな。
そんな事は、どうだっていい。
「……アンタ、何者だ?」
「おや、気配は殺したはずでしたが……」
「だとしたら、足らねぇな。アンタのその淀んだ雰囲気、滲み出てるぜ」
「……クックック」
出入り口は今弄ってるから、こっから入ってきた訳でもねぇ。それに加え、こんなヤツにミレニアム側の入口を開ける方法なんて教えてねぇ。
どうして入ってこれた?そんな俺の疑問を、イケすかねぇ笑いを浮かべながら受け流すのは、紳士服を着た何か。……いんや、異形なんて言葉がピッタリか。
不気味だ。並の精神力じゃあ、怖気付くだろうな。ましてや、子どもばっかりなこの世界じゃあ、尚の事。
「……何が目的だ?」
「そう警戒しないで頂きたいものですが……いえ、この状況では無理もありませんか」
……冗談でも言ってるつもりか?だとしたら、下手くそ過ぎるな。あのリオとタメ張れるくらいには。
その辺の子ども連れて来て同じセリフを吐いてみろ、とは言わないでおく事にした。事を荒げたい訳でも無いからな。
目的は何なのか。そう聞いたとはいえ、ここに来る目的なんて、大体2つくらいだろう。
俺の武器に用があるのか、俺に用があるのか。
せいぜい、そんな二択だ。
「貴方についての情報を耳にしましてね。気になって来てみた次第ですよ」
「……不法侵入した点について、何か弁明しておく事はあるか?」
「あぁ、失敬しました。あまりにも正面から突破するのに難いセキュリティだったので、ちょっとした裏技を使わせて頂きました」
「…………はぁ」
ちぃーと、セキュリティを見直すべきか。
それはさて置くとして。
「何の用だ?慎重派そうなアンタが態々ここに来るんだ、話でもしに来たか?」
「……貴方の観察眼、中々どうして的を射ていますね」
驚いた(様な)表情を浮かべる変人。……いや、そこまで難しい話じゃないだろうに。
さっきも思った通り、コイツの用事は“俺か銃か”だろう。それ以外だとしたら、いよいよコイツの評価を改める必要がある。言動や奥に潜めている諸々から見て、コイツは慎重派のはず。
そんな奴がこうやって現地にやってくる時。それは、“自分が赴く必要がある時”位だろう。それくらい大事な用となれば、例の二択くらいに思う。
……久々だな、ここまで神経を尖らせて対峙するヤツは。
「端的に申しますと、貴方と取引がしたいのです」
「……中身は?」
「クックック……そう焦らないで下さい。急かされなくとも、これからお話しますよ」
会話のペースを、あっちに握られそうになる。この手の奴に主導権を握らせるのは、本来賢くない立ち回りではあるんだが。
だが、今はいい。
向こうが俺に“できるヤツ”という認識を抱いている。その先入観があるからこそ、完全に主導権を握らせずに、こちらが決断を下す為の情報を炙り出せる訳だ。しかも、思いの外自然な形で。
あっちがそれを認識しているかどうかで、また話は変わるのも事実ではあるが。
「貴方の作るモノ。それを、こちらに売って頂ければと思いまして」
「いいや、それは出来ねぇな」
「…………ふむ、随分と早い返答ですね。して、その理由は?」
俺は、ソイツの提案を速攻で蹴った。
それには勿論、理由がある。俺の中ではれっきとした、理由が。
「アンタには、浪漫がねぇ」
「……浪漫、ですか」
この理由に限る。因んで言えば、さっきのヤツもおよそ同じ理由ではある。
こういう根っからの悪には、輝かしい浪漫がねぇ。浪漫というものは、“こうあったら良い”とか“何故これが無いのか”とかいう純粋な猜疑と、それを前向きに考えていくだけの心が要る。片方でも欠ければ、それは浪漫なんてものではない。
ましてや、悪の道に足を突っ込んでる奴らはな。そういう奴は大抵、“善悪の枷”が外れてやがる。
たまにネガティブに物事を突く奴もいたりするが、それも浪漫とは言わねぇ。人はそれを、“卑屈”と言うからな。んなバッドな意味の言葉と同じにされちゃあ困るって訳だ。
「アンタみてぇな奴が持ってるのは浪漫じゃねぇ。強いて言うなら、“愉悦”だろうよ」
「言い得て妙ですね。まさか、ここまでの洞察力だとは」
……正直、コイツは今まで関わった奴らの中でも、特上級の厄ネタだろうと思う。人体実験や解剖をやってるなんて言われても、大体の奴は信じるだろう。
人では出せないであろう、恐怖と気配。
コイツは、そんな奴らと同じ匂いがする。今までよりも、ずっと正確に勘が働いている様に思う。
「俺の開発物を手に入れたいなら、俺を突き動かすだけの浪漫を引っさげる事だ」
俺の口から出た言葉は、どうも冷たい気がした。
「……成程、成程」
そんな言葉に対して返ってきた言葉は、随分と意図が読めないモノだった。
“成程”?何に対してだ?
……チッ、考えても分からねぇ。
「収穫はありましたので、今回は大人しく帰る事にしましょう」
「収穫?何言ってんだ?」
「クックック……ではまた」
俺の問いをどこか与り知らぬ場所に放り投げる様に、ソイツは俺の言葉に反応を示さないまま、姿を消した。
ひとしきり、部屋を見る。……盗られたモノは無さそうだな。
……アイツ、変なとこで律儀なのか?だとしたら、なんとまぁ変なギャップだと言ってやりたいものだ。
この後にやろうと思っていた、新しい開発。
今日は、止めるとしよう。どうも、乗り気じゃないからな。