今回はできなかった……。
━━━━━夢を見た。
いつの頃だろう。
今は名前も、顔も覚えていない両親の夢だ。
何かを言っている 。
声が聞こえない 。思い出せない 。
今となっては、どうでもいい夢 ━━━━━
▼▽▼▽▼▽
ゆっくりとベッドから起き上がる 。
変な夢を見ていた気がするが …… 何も思い出せない 。
何も思い出せないのなら、どうでもいい夢なのだろう 。ゆっくりと腰を起こし、立ち上がり窓の外を見つめる 。鬱陶しいくらいに快晴だ。けど、こんなに陽射しがあっても外に出れば寒い。
ここは北に位置する国だから、そういう気温なのだとか。
そんなことを考え、身支度をする 。
寝間着を脱ぎ捨て、鎖帷子にローブ
いつもの戦闘服に 。
腰に短剣を差し……。
「しまった……」
投擲用の鉄串が無い 。
昨日の狩りで使い尽くしてしまったみたいだ。
新しく貰いに行くのも、漁るのも気が引ける 。
というか、昨日そうしようとしたらミーリャに怒られた。
「そんな汚いもの拾っちゃダメです!」
「でも、武器としては優秀。投げやすいし 」
「それならお店で買いましょう! お金を出し渋っては何にもなりませんから!」
と、そんなことを言われたのだ 。
まぁ、今日とて何かしらの討伐依頼を受け、身銭を稼ぐつもりではあったから、丁度いい 。
昨日のウサギ肉を乾燥させ携帯食料にしたのを幾つかポーチに入れ、宿を出る 。
外には既にミーリャが待っていた 。
「……意外と早いんだ」
「まぁ、朝は早い方ですし……」
「昨日濡らした物の洗濯でもしてたの?」
「してません!!」
昨日魔物に油断して襲われた彼女は
恐怖から漏らしてしまった 。
大声でそんなことを言ってしまったため
通行人の目を引く 。彼女は恥ずかしそうにわたしの手を取り、走り出した 。
「ほら、まずは貴女の投擲用のを……」
「要らない」
「えっ?」
「そんなのをしなくても、勝てるから」
事実、そんなものの為に時間とお金を使うのはロスだ。
驚いた彼女は足を止める 。
意図は伝わったらしい。
だからわたし達はそのままの足でギルドへ向かった 。
━━━━━おかしい。
ギルドが騒がしい。
そう思いながら、ドアを開ける 。
中は、散乱としていた 。
酒の入っていたコップがそこらに落ち
人も倒れている 。奥の方から、受付嬢を抱えたギルマスが出てきた。
「ギルドマスター、これは?」
「……襲撃だ、どこかは分からん。
だが、この襲撃に心当たりがあるといった奴らがいる 。
…… セラを 、俺の娘を …… 俺のギルドを崩壊させたことを後悔させてやる」
彼は此方を向いて、聞いてきた。
犯人に心当たりはないか、と 。
わたしやミーリャは出会ったばかり、ましては昨日なったばかりだ。首を横に降ると悲しそうに目を伏せた。
結成した私達に向けて、冒険者を辞めるよう促す彼は
ある程度の金額が入った布袋を机に置き、彼は去っていった。……わたし達はどうしよう。生きる術を失ったわけだ。
この街も冒険者稼業は盛んという訳では無い。なら、やることはひとつだ。
「ほかの街に向かう。
そこでまた、冒険者として活動しよう」
「わ、私もついていきます!」
わざわざ危険な道を通る理由は無いのに、彼女はそういう。
事情は知らないがそこまでなりたいのだろうか。
だからといって、1人にして知らぬところで死ぬのは気分が悪くなる。
「いいよ。でも、次の街に着くまで鍛えるから」
「ひゃい……」
弱そうな返事をした彼女を連れて……これからの旅の為の装備を揃えに、街に翻した……。
▼▽▼▽▼▽
数日後。
2人で食料品やそれを詰め込むバックパック。
テント等は邪魔なので寝袋を詰め込んだのを全部ミーリャに
「って、なんで私が荷物係なんですか!?」
「わたしは斥候だから 。それくらいして」
「人使いの荒い……」
わたしのポーチには最低限の水と食料。
基本的に彼女が荷物のほとんどを担当してくれている。
その代わり、わたしがちゃんと守る約束だ。
昼に移動、夕方に設営完全に日が落ちるまで彼女の特訓 。
これからはそう言った生活が続くだろう。地図はあるが……
徒歩だとどれくらいの時間がかかるのか分からない。
それでも、丁度いい特訓期間にはなるはずだ。
▼▽▼▽▼▽
街を出て数日が経過 。
たった数日だがこの過酷な環境だと、成長速度もそれなり。
今では野生動物相手には躊躇無く殺せるようになった。
捌くのはまだ無理そうだが……。
そしてメインにしたいと言っていた魔法は、独学だと覚えるのが難しいらしい 。次の街で参考書なりが無いかを確認したがっている 。そんな話を ……いや、言葉を二言三言、1時間に1回交わしては無言の時間。
「あれ、なんですか?」
彼女が目の前の光景を指す。
荷台がなにかの襲撃を受けている。
魔物か? いや……人間だ 。
盗賊に襲われてるらしい、助ける義理もない。
無視して行こう……と思った瞬間
「助けに行きましょう!」
ミーリャがそれを発言、わたしの返答を待たないまま
かけ走った 。…… あるもう、面倒くさい。
わたしの敵じゃないのに、殺す必要ないのに。
……はぁ、仕方ない 。
短剣を構えた 。
両脚に力を込めて、飛び出した。
地面を蹴る。空気を蹴る、いずれ先に飛び出たミーリャを追い越し、目の前の盗賊のひとりの首を跳ねた。
敵は呆然とした、わたしのことを視認したら、頭領らしき人物が大声を出す。
片足でずざざっ、とブレーキをかけまた地面を蹴る 。
今度は先程と違い、地面に足つくのは二歩、四歩……十歩!
「ハァ━━ッ!」
スピードに身を任せ、身体を廻す。
2人の喉元を掻っ切る 。
そのままミーリャの元へたどり着けば、弓を引いた彼女が放つ。初心所の矢は当たらない。けどそれでいい 。
向こうはそれに気を取られた時、わたしは短剣を投げつけ左胸を貫いた。予備の短剣を取り出し、頭領と睨み合いっ子。
「てめぇ …… なんだ?」
「ただの通りすがりの━━━斥候だよ」
交わした言葉はそれだけ、相手がカトラスを腰から引き抜き、剣戟がかち合う 。短剣とカトラス、相性は不利。肩の力を抜いて受け流す 。そのまま片足で跳んでは遠心力を加え回し蹴りを。
ただ、大の男と15になったばかりの少女だと体幹が違いすぎる、ダメージは与えられるが …… 。
「へっ、そんなものか?」
さて、どうしたものか 。
雑魚は倒したものの、ミーリャじゃ人殺しの手伝いは出来ないだろう。ふぅ …… 鉛のように重い息を吐いた。
━━━━━なんで律儀に殺りあっている?
わたしはまだ誰かと正面で衝突して戦えるほど強くない。
━━━━━ならば何故?
お人好しな彼女の為、いや……わたしがどこまで通用できるか。
━━━━━勝つためなら
〈何だってする …… ッ !!! 〉
何かが胸の奥で燃える 。
腕に力が入る 、余った片手を地面につき、逆手持ちした短剣を相手に向ける 。白い息を吐く 。寒くなってきたな 。
そんなことを考える余裕が生まれた 。
傍からみたら獣みたいな体勢だ 。
でも、それでいい 。
━━━━━わたしは、ケモノだ。
そう思った瞬間、踏み込んだ 。
今までと違い、地面がえぐれた 。
風を切る、さっきと違い、迅い 。
短剣を前に突き出した 。
同じ攻撃とみくびったアイツは、カトラスでガードを繰り出した 。…… お構い無しだ 。
スピードが威力だ 。
まともにやりあえないのなら……それ以外で勝てばいい。
力で勝てないなら、速度で勝てばいい。
相手が人間なら……全部ケモノになればいい!!!
カトラスの刃を、短剣が砕いた。
速度による威力上昇、わたしの短剣も一撃でボロボロになったが、充分 。砕け散る寸前の短剣を心臓に突き刺した 。
……わたしの勝ちだ。
▼▽▼▽▼▽
戦いが終わった 。
武器も身体もボロボロな状態 。
今日はここで野宿だな……。
そんなことを思いつつ、ミーリャが駆け寄り、手当をしてくれる 。こういう時はありがたい 。死体の山でそんなことを考えていると、荷台……? 馬車? から何人か人が出てきた 。
見た目は商人っぽいが …… 。護衛は、ああ、死んでたのか 。
死体の真ん中に2人の少女がいて、彼は驚いたような顔をする 。ただ、今はそんなことより ……
やすみたい …… 。