原神世界に聖剣が混入しました   作:Haganed

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梅雨入りが遅いので初投稿です
蒸し暑くなって嫌になりますわな
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辛い人と甘い人

 途中魔物の妨害がありながらも、一行はおよそ7時間ほどかけてドラゴンスパインへの道のりを突き進み、冒険者協会の拠点に到着する。突然の来訪者である彼らに注目が集まり、1人の冒険者がやって来た。

 

 

「すいません、現在ドラゴンスパインは出入りが禁止されて……あら、アルベド先生。いらしてたんですか? それに偵察騎士の方も」

 

「急用でね。封鎖している理由は新種の魔物の件でかい?」

 

「はい。ただでさえ被害者が出ている上に、全容が把握しきれていないので下手に調査の人員も出せないため止むを得ず。こちらの2人は一体?」

 

「そこの2人は今回の調査に同行してもらっている冒険者だ」

 

「はぁ」

 

 

 2人の会話が続く中、聖司はアンバーに近づき、口元を隠して囁き声で会話する。

 

 

「話がやけに早く進むのだな。門前払いされるかと思ったが」

 

「アルベドはよくドラゴンスパインに出入りしてるんだ。拠点もあるんだって」

 

「なるほど、通りで。これならすぐにでも動けそうだな」

 

「現在の被害状況の確認も兼ねてこうして来たんだ。良ければ今回はボクらに任せてくれないか?」

 

「……分かりました。アルベド先生がいらしてるのでしたら、安全面でも大丈夫でしょうし。ですが気を付けてください、今回の件はどこかおかしい点も多いので、危険を感じたらすぐに戻ってくるように」

 

「わかってる。皆、行くよ」

 

 

 アルベドの手引きにより第一関門はクリアされ、一行は拠点を通り抜けドラゴンスパインの入口にまで足を運んだ。拠点付近から感じていた肌寒さが近付くにつれ、その感覚が強く感じられていく。その寒さを感じ取って、聖司は持ち込んでいた保温性の高い上着とマフラーを着用する。

 

 

「わぁ、準備万端」

 

「こういう時、神の目を持ってる貴殿らが羨ましく思う」

 

「マフラー買ってたんだな」

 

「あぁいや、これはノエルから貰ってな」

 

「ノエルから?」

 

「……ドラゴンスパインに行く事を伝えていないのにも関わらず、普段通りみたくマフラーを渡されたのだ」

 

「「あぁ……」」

 

 

 “怖かった”と呟くその姿に、なにやら該当する記憶でもあるのか、聖司に向けてベネットとアンバーの同情するような視線が向けられた。傍から見ればとても微笑ましいのだが、聖司の内心は先の通り若干の恐怖が刻み込まれた結果となる。

 

 上着を着用し終え、ドラゴンスパインの入り口にまで向かうと既にディルックが待機しているのが見えた。彼の方も一行を視界に捉え、若干呆れ気味な様子で聖司に向けて言う。

 

 

「ほぼ全員か」

 

「そうなった」

 

「まぁ、良い。ここに居る全員に言っておくが、今回は彼の言うメギドを見つけて倒すことを目的としている。だがその際、彼には監督役に徹してもらう」

 

「あの────」

 

「1つ、聞いてもいいか?」

 

 

 ベネットとアンバーが同時に手を挙げ、互いを見やる。

 

 

「あー、先にどうぞ?」

 

「いや、アンバーが先に言おうとしてたんだし、そっちから」

 

「いやいや、私はそんな大した事じゃないから。ほら!」

 

「あーそう? じゃあお言葉に甘えて」

 

「決まったようだな。それで、何を聞きたいんだ?」

 

「んじゃあ……メギドを倒せるって、本気で思ってるのか?」

 

「というと?」

 

「俺は、メギドの力を実際に味わった。生きてるのが奇跡だって言われるぐらいの怪我まで負ってさ」

 

 

 ベネットはこのメンバーの中で唯一、メギドとの直接戦闘があり1VS1の対決をした事がある。パワータイプの相手であったとはいえ、神の目を持つ人間が赤子の手をひねるかのように一方的にやられ続けていた経験があった。

 

 だからこそ正しく恐れる。故に聖司にメギドを任せ、ベネット自身は彼が対処しきれない事を担当する。それは1つの正しい在り方であった。

 

 

「言っちゃ悪いけどさ、アンタはメギドの脅威をちゃんと知ってないように見えるんだ」

 

「ふむ……」

 

「ちょ、ちょっとベネット! アンタなに言って!?」

 

「確かに、僕はメギドの脅威を正しく認識していないのは事実だ」

 

「ディルックさん!?」

 

 

 アンバーが驚愕し、ベネットに向けていた視線がディルックへと切り替わる。当の本人はというと、眉1つ動いていない状態のままベネットに向かって自身の考えを伝えた。

 

 

「僕はそこの彼とメギドとの戦いを遠巻きに見ていてメギド本来の恐ろしさを知らない、それは事実だ。だからこそ彼を監督役にして、神の目を持つ人間がメギドと渡り合えるか確かめる。戦闘によってメギドが撤退したと判断が下れば、神の目を持つ人間は新たな脅威に対抗できるとして扱い、そうでなければ彼に任せ続ける事を選ぶ。そのつもりで此処に来ている」

 

「死ぬかもしれないんだぞ?」

 

「死なないように立ち回るだけだ。彼が出ばってきたその時は、彼以外には無理だと諦めるしかないだろうがね」

 

「────そっか、ありがとう」

 

「礼を言われるような事はしていないんだが」

 

 

 一触即発に近い空気がベネットのその一言で霧散していき、彼らはようやくスタート地点に立つ。と、その前にドラゴンスパインに向かうとなれば、境界線である川を渡らなければいけないのだが。

 

 

「よしっ」

 

「待て、なぜライドブックと聖剣を出した?」

 

「……俺は、風の翼を使えん」

 

「はっ?」

 

 

 ディルックが止めに入り、聖司の事実に対し3人が肯定する様子を見て彼は頭を抱えた。聖司はストームイーグルを読み込ませた習得一閃で出す竜巻で無理やり行こうとしていたが、流石に今ここで正体がバレるような情報は避けなければならないので、アルベドが花型の足場を1つ作り、助走をつけて壊れた橋を渡りきったのであった。

 

 

「本当に便利だな、神の目というのは」

 

「……まさかだが、持っていないのか?」

 

「無い」

 

「なぜ神の目を持っていないのにあの距離を飛び越えられたんだ?」

 

「俺も知りたいんだが」

 

 

 そんなやり取りを交わした聖司とディルックであった。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 ドラゴンスパインに足を踏み入れた一行であったが、そこで最初に見たものに聖司、ベネット、アンバーの3人は驚いた。何せ、設置された拠点の近くに氷漬けのファデュイが居たからである。

 

 

「ファデュイ!? 何でこんな、いやその前に何でドラゴンスパインに居るの!?」

 

「理由は分からない。だがドラゴンスパインで何かを探しているような様子だったのは間違いない」

 

 

 近くの篝火台に火をつけたディルックは、続いて氷漬けにされているファデュイの面々に向かって火の元素力を近付けた。しかし氷は溶ける様子を見せることなく、凍らされた彼らも動く気配が無い。

 

 

「君たちが来る前、先に来てこのファデュイを見つけ、話を聞くために溶かそうとしたが失敗した。おそらくはメギドの仕業だろう」

 

「ふむ……セイジ、ライドブックを聖剣に読み込ませて溶解反応を起こせるか?」

 

「やってはみよう」

 

 

 アルベドの提案の通りに、聖司はソードライバーを取り出し腰に巻き付けると無名の聖剣を引き抜き、出現させたブレイブドラゴンワンダーライドブックをシンガンリーダーに読み込また。

 

 

ブレイブドラゴン!ふむふむ……

 

 

 そして刀身を氷漬けのファデュイに当てて、トリガーを引く。

 

 

習得一閃!

 

 

 刀身から炎が生まれると、元素力では溶けなかった氷が見る見るうちに溶けだし始め、やがて氷漬けになっていた炎銃ファデュイ1人が静止した時間から解放された。

 

 

「ッハ!? お、俺は一体……」

 

「お目覚めのようだな」

 

「なっ、グハッ!?」

 

 

 意識を取り戻したファデュイにディルックが足払いを仕掛け転倒させると、大剣を顕現させその鋒を相手の首に向ける。しかしそれを良しとしない聖司が、聖剣の剣先をディルックに向けた。

 

 

「何をしている、その武器を仕舞え」

 

「君こそ何をしている。相手はファデュイ、殺しはしないがこうしないと情報なんて吐きやしない奴等ばかりだ」

 

「手荒な真似をするな、と言っておく。情報を聞き出す為に脅せば、返ってくるのは報復だぞ」

 

「君はファデュイの何を知っている? 人の悪性を煮詰めたような相手に、慈悲や情けをかけるつもりか?」

 

「慈悲や情けが無ければ、人は人を恨んだまま生きる。生きながら己を苦しめる事になってしまう。それでは駄目だ」

 

「────甘い。アンタの考えは甘すぎて反吐が出そうだ」

 

「甘くて結構。俺は俺の信念で此奴を守らせてもらう」

 

 

 一触即発の空気。止めようとして間に入ろうとしていたベネットとアンバーの2人であったが、そこに炎銃使いファデュイの笑い声が割って入った。

 

 

「くくッ」

 

「何がおかしい」

 

「いや、気が付いて早々目にしたのが仲間割れ1歩手前の様子だったもんでね。笑う以外にどうしろと?」

 

「その口を」

 

「そこまでだ、ラグヴィンド。ここからは俺がやる」

 

 

 時間にしてほんの僅か、5秒程度の経過があったあとディルックは聖司を睨みつけながら大剣を消す。それを確認した聖司も無名の聖剣をソードライバーに納めると、ディルックはその場から離れ始めた。

 

 

「……少し先で待っている。話が済んだらさっさと来てくれ」

 

「ちょっ、ディルックさん!」

 

「ベネット、彼奴の所に行ってくれ。2人だけでは心許ない」

 

「セイジは?」

 

「話を聞いたらすぐに向かう」

 

「わかった、じゃあ先で待ってるぜ」

 

「あぁ、頼んだ」

 

「僕は残ろう。正直、君は見ていて危うい」

 

 

 ディルックにはアンバーとベネットがつき、聖司はアルベドと共に炎銃ファデュイに話を聞く事になった。若干除け者にされていたファデュイの彼に、聖司はソードライバーを外し自身の背後に置くと、炎銃ファデュイの傍まで歩み寄り、近くで正座した。

 

 

「何のつもりだ?」

 

「先ずは、先の無礼を詫びさせてくれ。彼奴のやり方は少々乱暴過ぎた」

 

 

 “すまない”と一言だけ言って、聖司は深く頭を下げる。その行為にアルベドは目を閉じて大きく息を吐き、突然謝罪されたファデュイは若干驚いた様子を見せたが、すぐに聖司を煽り始めた。

 

 

「お前、馬鹿だな? わざわざファデュイを前に武器を置いて、自殺しに来たのか?」

 

「まさか。俺は人として当たり前の事をしているだけだ」

 

「あ?」

 

「無礼、非礼をしてしまったのならば謝る、詫びをする。それは人として至極当たり前の事だ。道理は通さねばならんだろう」

 

「へぇ〜、じゃあここでアンタに靴でも舐めろって言ったら、やってくれんのか?」

 

「それでお前さんの気が済むのならな」

 

「く……くくっ、ははははっ! なんだそりゃ、お前マジの馬鹿だったとは!」

 

「君という奴は……」

 

 

 アルベドは呆れ気味にそう呟くが、そんなこと聖司にはお構い無しらしく、彼は続けてこうも言った。

 

 

「ならば、今ここで靴でも舐めるとしようか」

 

「ははははっ!────はっ?」

 

 

 炎銃ファデュイは笑っていたが、聖司が彼の靴に手をかけた瞬間、その笑い声は止まる。なぜかスムーズに持ち上げられた足と、その先にいる聖司に視線が集中してしまった。

 

 

「実は、よく聞く靴舐めを実践したことが無くてな。この経験を小説に生かすために、少し実験台になってほしいのだが」

 

「はっ? ………はっ?」

 

「あぁ案ずるな、世の中には年端もいかない少女の足を舐める教師も居ると聞く。男が男の靴を舐める事など、誤差の範囲だろう」

 

「いや、ちょっ、まっ!」

 

「では────行くぞ!」

 

「やめないか」

 

「い゙っ!?」

 

 

 アルベドが聖司の後頭部をおもいっきり殴りつけ、彼の凶行を止める。拘束とも言えない拘束から即座に逃れた炎銃ファデュイは、聖司をこの世のものとは思えない物を見る目で見ていた。

 

 

「なっ、何やろうとしてんだテメェ!?」

 

「アルベド、何故とめた?」

 

「いきなりマニアックなシーンを見せられるボクの気持ちにもなってみてくれ」

 

「ふぅむ。靴舐めがどんなものか知りたかったのだが、それもそうか」

 

「おいコイツ馬鹿だろ! 絶対馬鹿だろ!」

 

「失敬だな。物語のリアリティを深めるのなら、俺は基本何でもやるだけだ」

 

「こんな人間、僕は初めてみるよ……」

 

「俺だって初めてだわ!」

 

 

 いつの間にやら剣呑とした空気が、コメディチックな雰囲気を醸し出していたようで。警戒心が別の方向に向かっていったファデュイとツッコミを入れたアルベドは、どこか疲れた様子を露わにする。

 

 しかしそんな事などお構い無しに、聖司は後ずさったファデュイに歩み寄り、また正座して彼と向き合う。また何か妙な事をされるのではと思った炎銃ファデュイは、僅かに怯えながらも訊ねた。

 

 

「こ、今度はなんだよ!?」

 

「そう身構えるな。今度はお前さんに聞きたいことがあってな」

 

「な、なんだよ?」

 

「お前さんを氷漬けにした何者かについて知りたい。知っていることがあれば、教えてくれると助かる」

 

「誰が足舐め変態野郎に教えるかよ普通!?……いや待て、お前らアレが何なのか知ってんのか!?」

 

「さてな。俺たちが知っているのは、このモンドで最近新種の魔物が出る話ぐらいなものだ。その調査のために俺たちはここに来ている」

 

 

 聖司は後ろに立つアルベドを示しながら、炎銃ファデュイにそう言った。しばらく彼は考えを巡らせていたが、やがて何か不服そうに口を開く。

 

 

「アレについてはよく知らない。突然現れたかと思ったら、急に天候が吹雪になって、そこから先はよく覚えていない」

 

「ふむ、成程。氷属性の新種の魔物らしいな」

 

「俺が知ってるのはここまでだ。後は好きに調べれば良い」

 

「そうか、情報提供感謝する。アルベド、行くとしようか」

 

「ようやくか。ここまで疲れた記憶しか無いんだけど」

 

「では帰ったら甘いものでも馳走しよう。あぁ、限度は決めさせてくれ。出費は今なるべく抑えたくてな」

 

 

 聖司は立ち上がり、ソードライバーを回収しながらアルベドと共にディルックたちと合流しようと歩いていたが、彼らの背後でカチャという音が2人の耳に入った。振り向けば、炎銃ファデュイが得物を向けて佇んでいる。

 

 

「そういや最後に聞きたいことがあったんだわ」

 

「なんだ?」

 

「お前ら、アレの仲間じゃねぇだろうな?」

 

「そう来たか」

 

「はぁ……説得はやってくれ、ここまでした責任は取るものだろう?」

 

「そのつもりだとも」

 

 

 聖司はそう答え、炎銃ファデュイと向き合った。銃口を向けられているというのに武器すら抜かない聖司に、彼の中で妙な緊張感が走るが、待っていたのは暴力などではなく言葉による対話であった。

 

 

「お前さんがそう思うのも無理は無い。可能性として、俺たちがその新種の魔物の仲間なのではと思うのは普通のことだ。だが俺たちはその魔物の調査と討伐を目的として、つい先程ここに来たばかりだ」

 

「それを信じられる理由は無いだろ?」

 

「あぁ、無いな。だから、今ここで約束してほしいことがある」

 

「約束?」

 

「おそらく元凶であるその新種の魔物を倒せば、氷漬けにされたお前の仲間は元に戻る可能性がある。俺たちは必ず、その魔物を倒して仲間を戻そう。その代わり、俺たちがドラゴンスパインから出ていくまでの間は敵対しないでほしい」

 

「そんなもの、信じられるわけないだろ……!」

 

「そう、お前さんはそう言うだろう。だが、ここは信じてほしい。何れにせよ、その新種の魔物を倒さねば、被害は止まる事は無い。そうなればお前も、俺たちも危ういままだ。もしそこの氷漬けの仲間が解放されなかった場合、俺が責任として自害でもなんでもしよう」

 

 

 “だから、頼む”と最後に言ってのける聖司の声色からは、目の前に居るファデュイ()に対する誠意と真摯さがあった。十数秒もの時間が何分にも感じられるかのような空気であったが、炎銃ファデュイは武器を下げて近くにある薪に火を付けると、その近くに座り込んだ。

 

 それから何も言わないのを確認すると、聖司とアルベドの2人はディルックたちと合流するために歩き出したのであった。

 

 

 




【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・リアリティのためなら何でもやる小説家、これでは最早あのキャラクターとほぼ同じ。ディルックの旦那と方針が合わないせいで、剣呑な雰囲気が出ている。

『ベネット』
・メギドと戦って死にかけながらも生還した冒険者。メギドの危険性はオリ主を除外すれば1番知っている。

『アンバー』
・オリ主とディルックの剣呑な雰囲気にのまれて、若干どうすれば良いのか分からなくなってきている。

『アルベド』
・ボクは何を見せられているんだ……?

『ディルック』
・この時点ではまだオリ主と反りが合わない。物凄く甘い考え方であるので、苛立ちが募り始めている。

『ファデュイ先遣隊 遊撃兵(炎銃)』
・よく出てくるNPCにして敵モブ。氷漬けから解放されたかと思いきや、靴舐めがマジで始まろうとしていた。何を言ってるかわからねぇが(ry
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