原神世界に聖剣が混入しました   作:Haganed

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※投稿時間を間違えたので、再度投稿する形となりました。読んでいただいた方、お詫び申し上げます。



冷たい世界に生きるもの

 ファデュイ先遣隊の1人と話を終えて聖司とアルベドは合流し、彼から受け取ったメギドに関わるだろう僅かな情報を共有した。とはいえ情報元は現在モンドの敵であるファデュイ、信用できるか怪しいのは確かだが、それでも手に入れた情報は貴重である。

 

 その情報を手に一行はドラゴンスパインを渡り歩くが、ディルックの様子が少しおかしい。探索中に遭遇した魔物を全て1人で対処しており、他者の介入を拒むような戦い方をしているのだ。何とか加勢しようと試みていたが、その前にディルックは魔物の群れに突っ込んで殲滅作業を開始していたため、加勢するのが難しい状況を彼は作り出していた。

 

 当然、このような事を続けていては多少の傷も負う上に、他のメンバーからも苦言を言い渡されるのは自明の理であり、一時的に一行はアルベドの拠点で休息を取ることとなった。尚、拠点を繋いでいる橋が壊れていたので、聖司だけ壁走りの要領で渡り切って到達したのは言うまでもない。

 

 怪我の治療を行っているアルベドは、疲れながらも若干キレ気味にディルックの怪我をしている箇所へガーゼを押し付けてテープを貼った。

 

 

「僕へのあたりが強くないか?」

 

「独断専行しすぎだ。君を治療する側の身にもなってくれ」

 

「……すまない」

 

「謝るぐらいなら次は1人で戦うことを止めてくれれば良い。メギド戦以外で体力を消費してどうするつもりだったんだ?」

 

 

 そこでディルックの口が閉じる。ひとまずの治療が終わり、アルベドがその手を止めた。

 

 

「これで良し。助かったよ、ベネット」

 

「へへ、よくケガするから応急用品は多目に持ってきてんだ」

 

「素直に良かったって言っていいのかな? これ」

 

「まぁ、良いのではないか? 知らんが」

 

 

 手当てが終わったと同時に、ディルックは特に支障を見せることなく立ちあがる。

 

 

「僕はメギドの捜索に戻る」

 

「傷は良いのか?」

 

「掠り傷程度で休んでいられない」

 

 

 そう言ったディルックの視線は聖司ではなく、次の行き先を示していた。止まることなど最初から考えていない彼の様子と、今の自分との関係性を鑑みてこれ以上は何を言っても無意味だろうと判断した聖司は、少々呆れ気味になりながらも立ち上がり、ディルックの後をついていく。ベネットとアルベドは特に何も言わずついていくが、アンバーだけはディルックを止めない彼らに理解が及ばないまま苛立ち交じりについていくのだった。

 

 そうしてメギド捜索を再開し、崩れた橋の跡を登攀し終えて少し進んだ先で、アルベドが不意に呟く。

 

 

「おかしい」

 

「何が?」

 

 

 ベネットが彼の呟きに答える。アルベドの抱える疑問の正体は、すぐに紡がれた。

 

 

「遺跡重機と霜鎧の王が居ない」

 

「霜鎧の王……は本で見た記憶があるが、遺跡重機?」

 

「それって、遺跡守衛の系譜に聞こえるけど、ここに居るの?」

 

「普通なら居る。だが────いや、だとしても」

 

「ちょ、アルベド!?」

 

 

 アルベドは開けた場所に走って向かい、他4人は彼を追いかける。調査を始めたアルベドは考えを纏めるためか、小さく呟きながら周囲の観察を行っていた。そんな様子の彼に、ディルックが問う。

 

 

「何か分かったのか?」

 

「本来なら居るはずの霜鎧の王や遺跡重機が、なぜ居ないのか考えていた。セイジ」

 

「何だ」

 

「君が見たメギドという存在は、通常の魔物よりも強い。そうだな?」

 

「そうだ」

 

「ね、ねぇアルベド。何か分かったの?」

 

「あくまで現時点での情報だが……今回の相手は、少なくとも霜鎧の王を相手にして勝てる実力の持ち主である事と、ここを通ったことが確定した」

 

 

 観察していたアルベドが、近場の草むらから何かを発見し4人に見せる。彼が見せたものを見て、アルベドが何を言いたいのか、4人は理解した。

 

 

「角笛か」

 

 

 角笛。ヒルチャール暴徒やヒルチャール王者を倒すことで手に入る素材の1つ。今回アルベドが見つけたのは黒晶の角笛と呼ばれる希少性の高いものであり、同時にこれを落とした霜鎧の王はかなりの強さを有している証左でもあった。

 

 

「全員、ここからは気を引き締めた方が良い。相手はボクらの想定を凌駕している」

 

 

 アルベドがそう言った直後、聖司は何かに気付いたらしく自身の耳に向けて視線を動かし、首を頻りに動かした。その異変に気付いた4人が彼に注目し、アルベドが問いかける。

 

 

「どうした?」

 

「何かが聞こえた、気がする。多分、あちら側から」

 

 

 そう言って聖司が示した先は、ここから更に南西方向、璃月の明蘊町方面へと近付く方角であった。それと同時に5人の耳は一瞬だけ風が強まった音を捉え、聖司とアルベド、ディルックが先んじて動き、一瞬遅れてベネットとアンバーが彼らを追いかけた。

 

 何をもって走り出したのか、そう問いつめる前に彼らは視界にある光景を収める。いの一番に見たのは氷漬けにされたファデュイ先遣隊、前鋒軍の風拳使い。そして近付いた事で判明した聖司の聞こえたもの、それは金属音であった。下から見下ろせるファデュイの拠点近くで、誰かが人のような何かと戦っている。

 

 誰よりも早く、聖司は駆け出した。

 

 

「セイジ!」

 

 

 ソードライバーを自身の腰に巻き付け、聖剣を引き抜き左手に2冊のライドブックを取り出してシンガンリーダーに読み込ませ、力を引き出し行使する。

 

 

ストームイーグル!ふむふむ……

とある物語!ふむふむ……

 

習得二閃

 

 

 トリガーを引き、聖司は崖から跳んだあと聖剣を地面へと叩きつけるように振り下ろす。爆走うさぎとかめワンダーライドブックの能力により、ストームイーグルが齎す風の力が聖司の想定以上の速度と威力を発揮させたことで、白い着物装束を着た女型メギドへと強襲を仕掛ける形で戦いの中に割って入ることが出来た。

 

 

「なっ、なんでアンタが!?」

 

「その声、エウルア殿か!?」

 

「何者ダ、オ前?」

 

 

 メギドが腕を払うようにして飛ばすが、聖司は空中で後方に一回転して地面に着地し事無きを得る。そのまま全身をバネのようにして弾け飛ぶように接近し、聖剣を左から右へと一閃した。

 

 

「────チッ!」

 

 

 その攻撃は、現れた氷の盾に防がれガキンと鈍い音が響く。メギドはその氷の盾を聖司に飛ばし腹部へと衝突させ突き飛ばした。

 

 

「ぐうッ!」

 

「アンタ!」

 

「何故神ノ目ヲ持タヌ者ガ此レ程ノ(ちから)ヲ……ダガコレデ!」

 

「終わるのはお前だ、メギド」

 

 

 攻撃を仕掛けようとしたメギドが、声のした上空に視線を移す。ディルックが炎を纏った大剣を振り下ろし、メギドはそれを咄嗟に腕の交差によって防御したが、体勢を取れなかったことで防御を崩され後退り、ディルックが着地と同時に追撃を加えた。

 

 

「ッ!」

 

「今のを避けるか」

 

 

 しかしディルックの追撃は、メギドがふわりと浮かぶように距離を取って避けられる。そうして距離を取っている間に、アンバーがメギドに向かって矢を射るものの見ないまま矢は掴み取られ、メギドが着地した。

 

 メギドが着地したと同時に、ベネットとアルベドが左右から奇襲を仕掛ける。炎元素を纏った剣と岩元素を纏った剣が襲いかかるが、メギドは難なく剣を掴み取って軽く投げ飛ばした。

 

 

「うおおっ!?」

 

「っ、成程これが!」

 

 

 ベネットとアルベドはエウルアのもとまで投げ飛ばされたものの、すぐに体勢を整えてメギドへと集中する。

 

 

「伏せろ!」

 

「おわわわっ!?」

 

 

 ディルックがそう叫んだあと、大剣から火の鳥が顕現しメギドへと勢いよく向かった。彼の前方に居たベネットとエウルアは慌てながらも姿勢を下げ、アルベドはスムーズにしゃがんだ事でメギドのみに攻撃が当たったが、勢いに暫く押されていたものの、火の鳥は氷の力によって対消滅を起こされて消え失せた。

 

 ディルックが先頭に立ち、エウルアのもとにアンバーと攻撃をくらっていた聖司が駆け付ける。そして彼女の容態を確認した途端、聖司がアルベドを呼びつけた。

 

 

「アルベド、来てくれ!」

 

「2人とも行ってくれ、ここは僕に」

 

「俺は残るぜ、味方は多い方が良いだろ」

 

「ならここは2人に任せた」

 

 

 ディルックの返事を聞かずをアルベドはエウルアの元へと向かい、彼とベネットがメギドに相対する。仕方ないと割り切りながら、ディルックはメギドを警戒しながらベネットに言った。

 

 

「邪魔にはならないでくれ」

 

「ああ! アンタも気を付けろよ!」

 

「愚問、だっ!」

 

 

 そうして2人がメギドに攻め込む。何も発することなくメギドは氷の盾を2つ構え、臨戦態勢に入った。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 アルベドがエウルアのもとに駆けつけると、その容態に難色の表情を浮かべた。

 

 

「酷いな、体の一部が凍傷しかけてる」

 

「アルベド! この氷、暖めても全然溶けないよ!」

 

「となると一連の氷漬けの犯人はメギドの仕業で間違いないか。聖司、今の容態は?」

 

「少し腹に違和感はあるが、問題ない……!」

 

「なら彼女の氷を溶かしてくれ」

 

「アンタたち、一体なにを?」

 

 

 聖司は左手にブレイブドラゴンのライドブックを顕現させ、聖剣に読み込ませる。

 

 

ブレイブドラゴン!ふむふむ……

 

 

「じっとしていろ、すぐに済む」

 

「ちょっ、何を」

 

「良いからほら、じっとして!」

 

 

習得一閃!

 

 

 ブレイブドラゴンの力を読み込ませた聖剣の刀身を、エウルアの肌に触れさせる。すると聖剣から熱が放出され、見る見るうちに体に付着していた氷を溶かした。

 

 

「これは、一体どうなって……」

 

「話は後だ。アルベドとアンバー殿は2人の援護に回ってくれ、今はその方が良い」

 

「でもセイジ1人じゃ」

 

「わかった」

 

「ちょっと、アルベド!?」

 

「今の彼は監督役だが、そうでなくても負傷しているなら下がっておいた方が良い。それに脅威の排除を最優先すれば、安全を確保できる可能性が高くなる。今はメギドの退治を優先するべきだ」

 

「安心してくれ、アンバー殿。いざとなれば変身する」

 

「…………あーもう分かった! でもカバーに入れるように近くに待機して援護するから、良い!?」

 

「それで良い。行くよ」

 

「エウルア待ってて、ちょっと皆でアイツをとっちめに行くから!」

 

「ま、待ちなさい2人とも! ちょっと!」

 

 

 エウルアの呼び止めも虚しく、アルベドとアンバーもメギド退治に参加していく。彼女もメギドとの戦闘に参加しようと立ち上がろうとしたが、それを聖司に抑えられた。

 

 

「今は4人に任せてほしい、お互い負傷している身だ」

 

「離して! 私も戦えば!」

 

「やめろ!」

 

 

 聖司にしては珍しく、ドスを効かせた声色でエウルアを制止する。あの時出会った時よりも野太い声が、印象の違いを持たせたことで彼女は聖司を注視した。

 

 

「まだ氷を溶かしたばかりだ。ただでさえメギドとの戦闘と相まって体力を消耗している状態で、戦いに送り込める判断を下せられん」

 

「くっ…………!」

 

「今はすぐにでも安全な所に移動し、彼奴らの勝利を信じて待て。それが最善である事は、騎士団である貴殿がよく知っている筈だ」

 

 

 エウルアが閉口し、視線を下げる。その反応を見て、聖司は聖剣を収めて立ち上がり、この場からの避難を試みた。

 

 

「よし、まずはこの場から離脱して」

 

「セイジ、上!」

 

 

 聞きなれたベネットの声が届き、聖司は即座にエウルアを守るように抱えてその場から飛び退く。直後、衝撃が聖司に襲いかかり、崖ギリギリまで吹き飛ばされた。

 

 

「ガハッ!?」

 

「セイジ!」

 

「エウルア!」

 

 

 身体の痛みに歯を食いしばりながら、聖司はこの衝撃を与えた下手人の姿を見るために振り向く。そこに居たのは、全く姿を見ることが無かったヒルチャール王者・霜鎧の王の姿があった。

 

 

「まさか、メギドと結託していたとは……!」

 

「そこから早く逃げろ!」

 

 

 逃げろ、とディルックに言われたが現状はかなり不味い事になっている。目の前の崖から地面へはかなりの高低差があり、傾斜も垂直では無いが険しい。しかし背後には霜鎧の王が立ち塞がっており、横へ逃げようとすれば攻撃は当たるだろう。

 

 その上、今は聖司もエウルアも満足に動ける要素が無い。絶体絶命から逃れる可能性が高い危険な選択肢を前にして、エウルアが訴えた。

 

 

「私のことは良いから、アンタだけでも逃げなさい!」

 

「ハァ……ハァ……ふざ、けるな。置いてなど、いけるか」

 

「アンタは神の目を持ってないんでしょ!? さっきのは当たり所が良かっただけで、また攻撃をくらったら命は無いのよ!? 死にたいの!?」

 

 

 エウルアの訴えが続いていく中、霜鎧の王は着々と距離を詰めていく。しかし聖司の思考はとっくのとうに決まっており、痛む体にむち打ちながらエウルアを抱えて立ち上がる。彼の視線は、崖の下しか見えていなかった。

 

 

「アンタ、正気!? これじゃあ死にに行ってるようなものよ!」

 

「────誰かを助けられる確率が少しでも上がるのなら、俺は迷わずその選択肢を取る」

 

「なにを言って」

 

「安心しろ、貴殿だけは、必ず守ってみせる。命に変えても!」

 

 

 霜鎧の王が拳を作り、右腕を引き絞る動作が行われる。覚悟を決めた聖司は迷うことなくエウルアを抱き寄せ、姿勢を低くし一気に崖へと突き進んだ。

 

 霜鎧の王の攻撃はギリギリ攻撃の範囲から逃れられたが、その風圧の影響で地面の雪が吹き飛ばされ岩肌を滑り落ちる。幸運だったのは、聖司の着地点の岩壁には雪が入り込まなかったことだろう。姿勢を整えた彼は、岩壁を滑って下の地面に到達することが出来た。

 

 

「ギッ!」

 

「だ、大丈夫なの!?」

 

「平気だ。とにかくここから離脱して」

 

「ッ、上!」

 

「くそっ、簡単には逃さんか!」

 

 

 霜鎧の王も彼を追いかけ、岩肌を滑り落ちて追いかけてきた。すぐにこの場から離れるように逃げた聖司は、全速力を出して逃走する。人1人を抱えているにも関わらず、その素早さは目を見張るものがあった。

 

 しかし相手はヒルチャールの王、全速力で追いかければ簡単に追いつかれる。故に聖司は走りながら道を探し、霜鎧の王が入って来れないであろうルートを割り出しながら逃げ続けた。

 

 とはいえドラゴンスパインは聖司にとって未知の領域、具体的な地理情報も無いまま逃げ続けていては、すぐに追いつかれてしまう。そして極寒の地ゆえに、逃げ続けていれば凍死しかねない状況にあった。なのでドラゴンスパインの外周沿いを走るように心掛けていた所に、エウルアが道を示した。

 

 

「そこを右!」

 

「応!」

 

 

 全速力のまま聖司はエウルアの示した方へと向かい、人工物と岩肌の隙間にある活路を捉えた。迷うことなくエウルアを抱き寄せてその隙間を縫うように通り、霜鎧の王はそこを通ることが出来ないと判断して回り込む選択を取る。

 

 聖司とエウルアは開けた場所に出たが、まだ安心できない。霜鎧の王の追跡を振り切るために、全速力で駆け抜けた。

 

 走って、走って、走り続けて、聖司の息が荒くなり、呼吸が不安定になっていく。凍結の問題がある以上、火の無い所で隠れる訳にもいかないが、聖司が向かっている先は開けた場所が続いており隠れられる所が無い。

 

 迷った末、エウルアは一縷の望みをかけてある場所へと案内した。聖司も彼女の案内に従って突き進んでいくと、大きな何かの骨のようなものを目にする。

 

 

「そこから右の方に入って、そこなら寒さも凌げる!」

 

「よし、もうひと踏ん張りッ!」

 

 

 そうして聖司とエウルアは、ある場所へと辿り着く。龍眠の谷と呼ばれる地の、赤き何かが鎮座する洞窟の最奥へと。

 

 

 




【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・今回も無茶した人。誰かを助けるためなら命は惜しくないと豪語して有言実行する奴。走り続けて疲れが見え始めた。

『ベネット』
・不運体質による怪我が多いため、常に応急用品を持っている。2度目のメギド戦で、今回は複数vs1だが慎重に戦おうとしている。

『アンバー』
・なぜエウルアが居るのか問いただしたいが、そんな状況では無いことを理解している。

『アルベド』
・前話の事もあり、ディルックの独断専行に少々苛立っていた。少しキツめに応急処置をしたので少しスッキリしている。

『ディルック』
・独断専行が目立っていたので怒られた。でもメギドを相手に掠り傷程度で休んでいられないのも事実。

『エウルア』
・とある理由によりドラゴンスパインに訪れ、メギドと戦っていた。
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