オリ主が植物状態にされたので初投稿です
神様に拉致されてんなコイツ
ボーイズラブのタグ入れた方が良いのか分からないので、取り敢えず今回は注意勧告をば。いやウェンティ神様だしな……
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風の音が聞こえた。聖司は、はて自分は外に出ているのかと何も見えない暗闇の中でそう思ったが、すぐに否定する。確か自分はエッセイ本の原稿を書いていて、室内にいた筈だと考えて瞼を開いた。
彼の視界に入ってきたのはアカツキワイナリーの一室ではなく、まるで雲の上にでも居るかのような透明と形容される世界。非現実的なその世界で、聖司はただ漂っていた。
「ここは、一体……?」
「おや、もう起きたんだ」
その世界で先程まで聞いていたウェンティの声がする。どこから声がしているのか、周りを確認するために首を動こうとするが、体の自由が効かないらしく上手く動かせない。
どうしたものかと悩んでいると、少ししてウェンティが聖司の正面に姿を現した。しかし聖司の目の前に映るウェンティは、まるで水の中にでも居るかのように漂っており、空を泳ぐような方法で彼に近付いて抱き寄せる。
抱きしめられた聖司は、ここが何処なのかをウェンティに聞こうとして、口を開いた。だが、あくまで口が開いただけで声を発することが出来なかった為、それを理解するまでの数瞬の間に、ウェンティは自らの口で聖司の口を塞いだ。
突然の出来事に動揺した聖司であったが次の瞬間、酷い頭痛が彼を襲う。まるで思考が纏まらないその痛みに苦しみを覚えるが、ウェンティによって声を出せないため、ただただ呻き声が出るだけに留まっていた。
そして頭痛の痛みに伴うかのように、様々なビジョンが思い起こされていく。憶えは無い、けれどまるで憶えているかのようなそんな記憶が聖司にドンドン流れ込んでいき、遂にはあの天空のライアーの音色を聞いた時に見えたビジョンの1つが鮮明になった。
ウェンティが天空のライアーを弾き、隣に居る誰かを見て微笑んでいるその姿であった。ウェンティの視線の先は誰を見つめているのかと痛む頭で僅かに考えていると、ようやくウェンティは聖司から口を離す。長いようで短い時間の中、ずっと接吻していた2人の口からは透明な銀糸が1本紡がれていた。
「どう? 思い出したかい?」
目の前にいるはずの青少年のような姿の神は、ただ1人に向けて蠱惑的な笑みを浮かべてそのように問いかけた。聖司はその質問の意図が分からず困惑し、ウェンティの言葉を繰り返す。
「思い……出す?」
「そっか、まだなんだね。なら、もう少しだけ」
「何を、んぐっ」
そうしてまたウェンティは聖司の口を閉ざした。同時に起こる頭痛と、聖司の視界に映る見たことも無いビジョン。それら全てに、まるで既視感でもあるかのような錯覚を感じて────途端に“塗りつぶされていく”という思考をして、そこから抜け出そうともがこうとした。
しかし悲しいかな、まるでピクリとも動くことは無く聖司の意思に反して多くのビジョンが鮮明になりつつあった。そして最初にノイズだらけだった音が、声として認識されていく。
━━いい音色だな、バルバトス。アイツにも届いてるだろうさ
━━そうだったら、良いな
━━きっと届いているさ。お前さんの音色には、大切な人を思う願いが込められているからな
言葉と声がまるで湧き水みたく溢れるように思い起こされ、そして景色までも想起された。大きな木の枝の上に座り、だだっ広い青の草原があり、微風が木の葉の演奏を奏で、穏やかな時間が流れているそんなビジョン。
痛みで冴えた頭でようやく、聖司は今見ているものの正体を理解した。これは、肉体側にあった記憶なのだと。それらが今流れ込んでいて、情報の処理が追いついていないのだと。
そして2度目の口付けが終わり、2人を繋いでいた銀糸が途切れる。聖司は痛みによって息も絶え絶えになっており、ウェンティは表情を変えず彼を見てまた問いかけた。
「どうかな? これでボクのことを思い出した?」
「
と、ここで聖司は自身の口調が元に戻っていることに気付いた。肉体の口調に引っ張られていて、元の話し方になる事は無いはずと思考を巡らせ、今の自分の状態がどういったものであるのかを悟る。
「まさか、今俺は、魂だけになってるのか?」
「あぁ、もう気付いちゃうんだ。本当に鋭いね、セイジ」
「ウェンティさん! 何でこんな時に俺を魂だけにしたんです!? 今はモンド城に居る本物の枢機卿を救わなければ!」
「━━━━ウェンティ
元の口調で、聖司はウェンティに向かってそう言った直後、背筋が凍えるような悪寒を感じ取り言葉を止めた。止めざるを得なかった。彼の視界に映っていた蠱惑的なその表情は、一変して無表情へと早変わりし、二言目は聖司に言い聞かせるように紡ぐ。
「まだ混乱してるのかな? それとも記憶がまだ不完全なのかな? まぁ、それなら思い出してくれるまで、何度でも思い出させてあげるから。だから、心配しないで?」
「ま、待ってくれウェンティ! せめて話をんぐむっ!?」
3度目の接吻。今魂の状態になっている聖司に、また身に覚えのない肉体側の記憶が鮮明になりつつあった。しかし身に覚えのない記憶が流れ込む度に、聖司の頭痛のような痛みは激しくなり流れ込む肉体側の記憶によって魂が磨り減るような錯覚を感じてしまっている。
このままでは不味いと判断し、痛みに苛まれる中でどうにかしようと思考していると、今度は先程よりかは短い時間でウェンティが離れた。
「おっと、いけないいけない。流石にこれ以上は摩耗が始まっちゃうから止めておかないと」
「ま、もう……?」
「そう、摩耗。これ以上は折角の奇跡が台無しになっちゃうからね。これで一旦おしまい」
接吻を終えたウェンティは聖司の胸元に顔を置き、まるで安息を得た猫のように朗らかな表情で顔を押し付ける。普通であれば、聖司も疑問に思って質問したりこの仕草に仕方ないと割り切ってそのままにしておいただろう。
だが、今は普通では無い。肉体側の記憶を無理やりという形で思い出された挙句、こうして魂だけの状態になって閉じ込められているのだ。今はこんな事をしている暇は無いと分かっている筈なのに。
「なぜ……」
「ん?」
「なぜ、このような真似をしたんですか? あなたは、何で俺を、閉じ込めたんですか?」
痛みに悶え、気力も殆ど無い中で聖司はそう訊いた。その質問に対するウェンティは、ただ当たり前の事のように答える。
「閉じ込めたんじゃないよ。君を救っているんだ」
「俺を……救う?」
「そう、君がモンドの敵にならないように、こうしてボクが守っているんだ。これ以上君が傷つかないように、これ以上戦わなくても良いように」
そうしてまたウェンティは聖司の胸元に顔を埋めたまま、何もせず堪能し始めた。けれどウェンティの言葉を聞き終えた聖司は、その言葉に対して憤りを覚え、その言葉を紡いでいく。
「────違う」
ウェンティが聖司の言葉に疑問を抱き、彼の顔を覗き込んだ。
「これが、救い? そんなの、絶対に認めない……認められない!」
「セイジ? いきなりどうしちゃったのさ?」
そう問いかけてくるウェンティを無視して、聖司は動かない体を必死に動かそうと試みる。無意味なことは理解していたが、それでも諦めることなく何度も動けと思い続けた。
「これは、俺にとって救いなんかじゃない! こんなものが、俺の救いだなんて絶対に認められるか!」
「んもぅ、セイジは強情だなぁ━━━━まだ足りなかったのかな?」
ウェンティは両腕で自身の体を持ち上げ、その視界の真正面に聖司の顔を映す。そして何も言わず、もう一度接吻をしようとして、聖司の言葉に動きを止めた。
「これは! あなたの救いでしか無い! 俺の救いなんかじゃ、決してない!」
「セイジ、さっきからうるさいよ」
「ぅぐっ!?」
ウェンティは接吻、ではなく聖司の首に両手をかけてそのまま握りしめる。魂だけの状態で首絞めが有効なのかは兎も角、しかし聖司は確かに今首を絞められて苦しみもがいている。
魂であるはずなのに、死を感じとっていた。だがその感覚を押し殺して、聖司は絞まる首で声がまともに出せない中、思いを紡ぐことを止めなかった。
「こうして、俺を閉じ込めて俺に苦しみを与える事が救済だというのなら……がぁッ、俺は! こんなもので、救われたくない!」
「もう喋らない方が良いよ、セイジ。ボクはこれ以上君を傷付けたくないんだ」
「ぐぅっ!?────お、俺にとって……俺にとっての救いは! 誰かの笑顔を見ることだ……ぁ゙ぐっ!」
呼吸という概念すら無い魂の状態で、聖司はその苦しみを耐えているあまり肩で息をしている。首に掛けられた両手は益々力を増していき、ウェンティの表情も無表情を貫き通していた。
それでも、諦めない。諦めたくないと聖司は思い続けて、目の前のウェンティに向かって言い続けた。
「あなたが! 俺の、邪魔を、ぁ゙ぁ゙……しようとっ、するなら、俺は! あなたと戦う事を、選ぶ!」
「戦う? 戦うだって? 今の君は無力なのに、一体どうやって戦うっていうのさ? だから、もうこれ以上は大人しくしてて。さもないと」
「ぐぅぅっ!」
聖司が何かを話す度に、ウェンティは首を絞める力を強め続ける。それでもなお、彼は屈することを選ばない。その瞳に闘志の炎を燃やして、目の前にいる風の神と戦う覚悟と決意を持った。
その意志に応えるように、聖司の瞳が青く染まる。
「ッ!? まさか、これは!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!」
「うわぁっ!?」
咆哮と共に聖司の体から青い力が溢れ出し、その力によってウェンティは吹き飛ばされる。同時に聖司の体が自由に動けるようになり、彼は立ち上がってウェンティ、否バルバトスを真っ直ぐ捉えた。
青いこの力も、なぜ自由になれたのかも頭の隅に置いて、聖司はゆっくりと歩を進めながら、思いを言葉にしていく。
「これは俺の望んだ事じゃない! 誰がこうしてくれと頼んだ!? 誰がここまでして俺を守ってくれと言った!? 俺を見てすらいないのに、救済だのなんだの言ってるのは、単なる自己満足以外の何物でもないだろ!」
「ッ!」
聖司の言葉に図星を突かれたのか、バルバトスはそこで動きを止めた。構わず聖司はゆっくりと歩み寄りながら、まだ思いを発し続けていく。
「アンタは俺に、誰を見ている!? 誰の面影を見ている!? アンタが救いたかったのは俺じゃなくて、俺を通してみている誰かだろう!」
「違う……」
「魂を見ているのなら、神様ならもう気付いてる筈だろ! 俺は、アンタの思っている人間じゃないことに!」
「ちがう……」
「もう亡くなっている誰かだけに面影を重ねて、全てを犠牲にして自分の傷を癒そうとしているアンタに、救うだなんて言葉を使う権利は、どこにも無い!」
「ちがうちがうちがうちがうちがう!」
ごうっ、と強い風がバルバトスから溢れ聖司を襲う。まるで台風の中を立っているかのような速度の風は、ゆっくりと聖司とバルバトスの距離を空けていくが、堪える姿勢を取って聖司はその暴風の中心へと向かって歩み続けた。
バルバトスは、轟々と吹き荒れる風の中で叫び続けた。ずっと、違うと叫び続けていた。声は聖司に届きはしないが、信じられない事を否定するかのような叫びを永遠と吐き続けている。
「違──! き──は、──み──────の──って────イジ──! ──────────あ────────い! ぜ──────に!」
「信じたくないものを否定して、結局アンタは! 俺ごとその誰かを見捨てるんだな! 記憶の中の誰かに縋って、永久に閉じこもるつもりか!?」
「──────────ない! ────て、────は! き──は!」
「そんなに信じられないなら、俺が言ってやる! 俺は、本来この世界の住人じゃ、ない! 訳も分からずこの世界に居た、別世界の人間だ!」
その言葉を言った直後、風の勢いがほんの少しだけ弱まった。その一瞬を狙って聖司は加速し、暴風の中心に到達しバルバトスに触れる。そうした事が影響してか、暴風は収まり轟くような音も消え失せた。
聖司は座り込んだバルバトスの顔を両手で挟むように掴み、無理やり視線を合わせながら、語りかける。
「アンタはもう分かってるだろうが、俺は自分でも分からないままこの世界で目覚めた。誰のかさえ分からない体で、仮面ライダーの力を伴ってこの世界で生きる事を余儀なくされたんだ」
「君は…………」
「そんな無い無い尽くしの中で、仮面ライダーとして戦っていく中で、俺はかけがえのない仲間を手に入れることが出来た。俺の書いた本を読んで笑顔になってくれる人が出来た。俺は、その人たちの為に報いたいんだ! 目覚めて何も無かったあの日の俺を受け入れてくれた、モンドの人たちを救うこと! それが、仮面ライダーとして選ばれた、今の俺の使命だ!」
少しの静寂が支配し、バルバトスが何も言わない事を察して聖司は言葉を続けた。
「たとえそれでモンド全ての敵になったとしても、俺は絶対に後悔しない! その行動で救われる人が居るのなら、俺は迷わずそうする事を選ぶ! 感謝なんてされなくても良い、罵られたっていい! そこに生きる良き人々の、愛と平和が成就するなら、命も尊厳も惜しくない!」
「……あぁ、やっぱり君は、変わらないや」
バルバトスは瞼を閉じて、聖司の両手に自身の手を重ねて外そうとする。その動きに合わせて聖司は両手を離し、ただ静かに彼を見ていた。バルバトスは聖司に背を向け、暫くの間その状態の時間が続いていく。
暫くしてようやく、バルバトスは落ち着きを取り戻し聖司と改めて対面する。涙の跡と赤く腫れた目が見えたが、それについて聖司は指摘することなく、バルバトスの問いかけに耳を傾けた。
「君は、本当にその道を行くのかい? それはとても、辛い道だ。傷付いて傷付いて、本当にこの道が合っているのかと悩みも多い。それでもその道を選ぶつもりなのかい?」
「辛かったかどうかは、この道を進んで振り返った時に決める。傷付くことも、悩むことも承知の上だ。とっくのとうに、覚悟なんてものは済ませてる」
「そっか……そっかぁ」
バルバトスは顔を俯かせたが、やがて何かに吹っ切れたような表情を浮かべて、聖司に向かって手を伸ばす。すると、触れた途端に聖司の身から光が発せられ、彼は何が起こっているのか聞こうとしてバルバトスへと視線を向けた。
「心配しないで。君の魂を肉体に戻すだけだから」
「……あれだけ俺を閉じ込めようとしていたのにか?」
「それは、ごめんね。でも君が止まらないのは、もう十分知ったからさ。それに────いや、やっぱり何でもない」
聖司は疑問符を浮かべながら、手を振るバルバトスを最後にその姿を消した。残されたバルバトスは彼を見送ったあと、大の字になって寝そべりこの場所の白い空を見上げて呟く。
「デカラビアンも、こんな感情があったのかな……」
今のバルバトスの脳裏にあったのは、かつてモンドを苦しめた暴君デカラビアンの、今は聞けない思い。風の牢獄に人々を閉じ込めた、あの魔神の姿だった。
【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・遂に自分自身のことをカミングアウトした人。この世界とは別の世界の住人だということを伝えた。閉じこめられた理由については未だによく分かっていない。
『バルバトス』
・風の神。モンドの守護神。ただ1人の人間が敵になることを恐れて魂を閉じ込めた。本当は作り上げた檻の中でオリ主と共に過ごそうと画策したが、思いの丈を伝えたオリ主によってその願いを放棄した。