嘘つき狼vs真紅の龍が始まるので初投稿です
そろそろ魔神任務序章編が終わりそうなので、お付き合いいただければ幸いです
40話以上かかるとは私も思ってなかったですけど
「嘘を暴くゥ……? やれるものならやッテミロ! 人間風情ガ!」
聖司に化けていたウルフメギドはその姿を再度現し、メギド本来の姿になると鋭利な爪を見せびらかしながら迫りくる。聖司は左腕に火炎剣烈火を乗せて引き気味に構えて待ちの姿勢を取った。やがてウルフメギドが爪の間合いまで接近し聖司を害そうとした────が、ウルフメギドは衝撃と共に姿勢を崩され地に倒れる。
聖司が取った手は至ってシンプル、左腕のタイセイブレーサーに内蔵されている如意棒を伸ばして突いただけ。剣での攻撃だと見せかけるために構えたその体勢から、聖司は接近し立ち上がったウルフメギド目掛けて火炎剣烈火の斬撃を与えた。
「ギ、ギャアッ!? クソッ、オ前ハ俺ガグギャアッ?!」
「させるわけなかろう、お前のお喋りなど!」
嘘を吐こうとしたウルフメギドだったが、その前に聖司は如意棒を伸ばしその体を突き飛ばすことで阻止。一飛び31.5mの跳躍力を駆使して接近し、距離を詰めたところで突きを見舞うとウルフメギドは意図も容易く吹き飛ばされ、ヒルチャールが建設した建物の中に入っていった。
「あれが、セイジ殿本来の強さなのか……?」
ジンが不意に呟く。圧倒的と言わざるを得ない力の差を、この目でひしひしと理解し恐ろしくもありながら、どこか安心感を彼女は感じていたのだ。そんな呟きも聖司の耳には届いていて、仮面の下で少し微笑んだところで建物から3つの影が飛び出る。
見れば視界には3体に増えたウルフメギドがおり、聖司は分身したそれらによって囲まれてしまった。
「セイジ殿!」
「「「コイツナラドウダァ!?」」」
3体のウルフメギドは一斉に聖司に向かって突撃し、その爪を振るう。当たるかと思われた直前、聖司は左腕を地面に向けてタイセイブレーサーから如意棒を伸ばして上昇し、ウルフメギドの攻撃を避けると如意棒を戻しクリムゾンウィングでの飛行に切り替え回転しながら落下突撃を行うと、全てのウルフメギドに斬撃を与えた。
「グギャバッ!?」
一刀のもとに斬り伏せられた3体のウルフメギドは、1体を残して煙のように消える。これらの事象についての説明が聖司の口から説明された。
「お前の嘘は自分に向けて使うものと、相手に向けて使うものに分かれているのだろう。本来、数が増えたメギドという嘘は俺に向けて使われる筈だった。だが阻止されたことでお前は自分に向けてその嘘をついたようだが、その嘘が真実でないとお前が認めている時点で、効果を十全に発揮できなかったようだな」
「オ、オ前ハグボフォッ!」
「お喋りはさせぬと言った筈だが?」
聖司は如意棒を伸ばしてウルフメギドの嘘を中断させると、火炎剣烈火をソードライバーに納刀しレッカトリガーを押す。
【必冊読破!】
「ッ、ウヴヴヴヴヴヴヴ!!」
「まだ隠し持っていたか、だが!」
【ストームイーグル!】
ウルフメギドは隠し持っていた煙玉によって煙幕を展開したが、すぐに聖司はストームイーグルの力を使って煙を吹き飛ばした。しかし煙の量が思っていたよりも多く、5秒ほどの時間を掛けてようやく煙が晴れたところにジンの呻き声が聖司の耳に入る。
後ろに居るはずのジンに向かって振り向けば、聖司の目にはジンが
「どこまでも人をおちょくりたい様だな、メギドよ」
「セイジ殿! 今の内に早く!」
羽交い締めにしているジンがそのように叫ぶ。その一声に呼応するように拘束されている方のジンが叫んだ。
「やめてくれセイジ殿! 私を助けてくれ!」
そこで羽交い締めにしている方のジンが拘束を簡単に抜けられないように力を強め、拘束されている方のジンを引き寄せて耳元で囁く。捕らえられている方の彼女は首に力が掛けられているため喋ることがままならず、苦しみにながらその囁きを聞いた。
「無駄だ、さっきお前に嘘を吹き込んだ」
「なっ…………!? がぁ゙っ」
「お前はどう足掻こうと命乞いしか吐けない暗示をかけたのさ。何を言おうと、お前の言葉は命が惜しくて堪らない奴の言葉しか出せなくなってんだよ」
それを聞いた拘束されている方、即ち本物のジンはどうすればいいのかと考えようとするも、締め付けによって息が出来ず呼吸も儘ならないため思考することが出来なくなりつつある。頭に酸素が回りきらないが故に、解決策を考える労力も抗う力も徐々に奪われているのが現状。
どうすれば、と頭の中でその言葉だけが反復し意識が朦朧とする中、本物のジンの視線が聖司へと向かった。縋ったのか、偶然かは本人にも分からないが、そちらへ視線を向ければ聖司はソードライバーから火炎剣烈火を抜刀し、八相の構えを取る姿を視認する。
【烈火抜刀!】
「ジン!」
本物と偽物が、たった一声だけ出した聖司と、彼の持つ火炎剣烈火に注目した。火炎剣烈火は本来の刀身の何倍もの大きさの剣の形をした炎を顕現させており、それを使って何をするのか……という質問は野暮であろう。
聖司はグリップを握る両手の力を込め直し、ただ一言だけ強く言った。
「俺を、信じろ!」
傍から見れば何の根拠も無い一言。それだけ聞いて、無条件に信じる事など出来はしない。けれども本物のジンだけはその言葉を、聖司を信じることに決めた。確証は無い、だが彼自身には何か考えがあることを朦朧とする意識の中で力を振り絞り、声を出す。
「
「なっ、お前ェッ!?」
「────任せろ」
【ドラゴン!
イーグル!
西遊ジャー!三冊斬り!】
【ファ・ファ・ファ・ファイヤー!】
燃え盛る巨大な剣の炎が本物と偽物、両方を巻き込んで振り抜かれた!
「ハアア゙ア゙ア゙ッ!」
「やめろお゙お゙お゙お゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!」
偽物のジンの叫びは時既に遅く、剣の炎が両者を巻き込む。その一撃で拘束は解かれ、地面に倒れそうなところを聖司が支えた。本物のジンは咳き込みながらも、体に沁み渡る暖かさとともに呼吸を繰り返し落ち着きを取り戻していくと、突然背後から雄叫びが挙がる。
「ギャア゙ア゙ア゙! 熱イアツイアツイ゙イ゙!!」
見れば、偽物のジン化けの皮は剥がれウルフメギド本来の姿になっており、本物には無い炎を纏ってのたうち回っている。ジンは剣の炎によって斬られたのは同じだが、何故こうも結果が違うのか不思議に思っていると、傍に居る聖司からまた説明が入った。
「この火炎剣烈火は、“心正しき者を癒し、邪悪なるものを焼き尽くす”聖なる炎を発生させる剣。この性質を利用して斬っただけに過ぎん。とはいえ、拘束を行っている側が偽物である事は、この眼で既に見抜いていたがな」
聖司は聖剣を持つ手の親指で仮面を指さしてそのように告げる。西遊ジャーニーによって得られたサイユウマスクは、火眼金睛によって超視覚と超聴覚の能力を操ることが可能になっており、これによって先程2人の間で交わされていた会話も丸聞こえであったのだ。
そして何より、聖司には確信があった。拘束されていた方が本物であるという考えが。
「それに、ジン殿はたとえ悪を捕まえようとも、必要以上に痛めつけるような真似はせん。馬鹿の一つ覚えでジン殿に化けてボロを出したお前の落ち度だ」
ゆっくりとジンを地面に着かせ、聖司は燃え盛るウルフメギドに視線を向けると、とある異変に気付いた。
「まさか……いや、成程。そういう事か」
【ピーターファンタジスタ!
ふむふむ……】
【習得一閃!】
おもむろに聖司はピーターファンタジスタをシンガンリーダーに読み込ませると、火炎剣烈火から水の斬撃を繰り出しメギドを燃やしている炎を消火すると、ウルフメギドの正体が露わになる。
人狼の姿さえも偽物であったメギドの本来の姿は、顔に目や口の箇所に凹みがあるだけの“のっぺらぼう”であったのだ。この真実を見て、聖司はあの時の広場でなぜメギドが喋ることが出来たのか察する。
「やはりか。あの人狼の姿も偽物で、本体はそれであった。だからあの時、ディルックが口を塞いでも嘘をつく事が出来たという訳か」
「ハア゙ア゙ッ!ハア゙ア゙ア゙ッ!
テンメェ……!テメェサエェ、テメェサエ居ナケレバァ!」
「姫騎士は返してもらった。お前の嘘も暴いた」
「ひめっ!?!!??」
「あとは────お前の結末を決めるだけだ!」
聖司は火炎剣烈火をソードライバーに納刀し、レッカトリガーを押して必殺技発動の準備を整えていく。
【必冊読破!】
聖司は、否仮面ライダーセイバーはそこで1度タイセイブレーザーから如意棒を射出しウルフメギドもとい、嘘つきボーイメギドを今いる場所から遠くへと移動させた。
そしてメギドを遠くまで運んだところで、もう1度レッカトリガーを押して必殺技を発動する!
【ドラゴン!
イーグル!
西遊ジャー!三冊撃!】
【ファ・ファ・ファ・ファイヤー!】
仮面ライダーセイバーは助走をつけ、クリムゾンウィングで飛行すると同時に如意棒を自分側から縮めていく。そして炎の嵐をストームレガードに纏わせ、姿勢をキックの状態に持っていくと、如意棒の長さが元に戻ると同時に40t近くの威力をメギドに与え、体内のアルターライドブックごと貫いた!
「ハアア゙ア゙ア゙ッ!」
「ギィア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!???」
地面に着地したセイバーは、巻き起こる爆発をバックにこの物語に終止符を打ち終える。アルターライドブックの消失とメギドの消失を確認すると、聖司は飛んでジンの居る場所まで到達し、彼女に声を掛けた。
「ジン!」
「ッ! セ、セイジ殿!」
「すぐに城へ運ぶ、少し我慢してくれ」
「なっ、あっ!? ちょっ、ちょっと待ってくれ! まだ心の準備がひゃうっ?!」
怪我をしているジンを聖司はお姫様抱っこで持ち上げ、クリムゾンウィングを羽ばたかせ空を優雅に飛ぶ。初めての体験にジンは驚くが、すぐにその広大で美麗な景色をその目で見届けた。
可能な限りジンの怪我が広がらないように速度を落としてモンド城に到着すると、そこでジンと聖司の帰りを待っていた蛍やパイモン、ディルックたちと出会す。
「ジン!」
その中に居たリサがジンを呼び、いち早く彼女のもとへ駆け付ける。仮面ライダーに変身している聖司はなるべく腰のソードライバーを隠しながら、ジンをディルックに託すと直ぐに踵を返してモンド城から離れていこうとした。
「待って!」
そのタイミングで、リサが聖司を呼び止める。絶対に正面を見せないように顔を少しだけ背中側に動かし、その歩みを止めた。
リサの胸中は、言いたい事だらけでたくさんだった。けれど出そうになった言葉を呑み込んで、ただ一言だけ伝えた。
「ありがとう、ジンを助けてくれて」
「……礼には及ばん。これが使命だからな」
そのように言って、聖司はクリムゾンウィングを広げて有無を言わさず強風を起こして飛び立つ。怪我人であるジンに心の中で謝罪をして、聖司は大空へと羽ばたいてその場から姿を消した。
強風によって視界を遮られた者たちは、その風が収まってから見てみれば、石橋の上に仮面ライダーセイバーの姿は無かった。それでも、蛍とパイモン、ディルックとジン、リサやガイアは誰も言葉に出さず心の中で彼に礼を伝える。ありがとう、と。
翌日。モンド城で巻き起こった偽カルヴィン卿事件が終わり、混乱から回復した住民たちは普段と変わらない生活を送っていた。
怪我をしたジンは妹であるバーバラに泣きつかれ、暫く療養という形となったが、ワーカーホリックの性分が騒ぐのか抜け出そうと試みて、怖い笑顔をした妹に強制的に戻されたりした。
被害に遭った本物の枢機卿は、この作戦の功労者全員に感謝の意を表して褒賞を送ることを決定した。とはいえまだ風魔龍問題もあるため、すぐに用意出来ないことを伝えつつ、可能な限り要望を叶えると宣誓する。
地下牢に投獄されていたロサリアは、ジンと聖司が向かった後ですぐに救出され、養生という形で教会から離れていつも通りの生活に戻った。
ファデュイはというと、モンド側は「新種の魔物に全員騙されて風魔龍退治に向かい内政にも干渉したが、あくまで騙されて行動していた為ある程度酌量の余地はあるものの、今後このような事が起きないように共に協力して国交の回復に努めたい」という会話があったとか。
そして国を巻き込んだ炙り出し兼救出作戦の功労者である聖司はというと────殆ど人の来ない場所にあるベンチを使って居眠りをしていた。
暖かな陽射しが全身を包み、すやすやと寝息を立てて眠っていた聖司であったが、そんな彼の顔にかかる光を遮るようにとある人物が顔を覗かせる。少し暗くなったことで違和感を感じた聖司は寝ぼけ眼を開き、そこにいたバルバトスの姿を捉えた。
「……あぁ、ウェンティ殿か。何用か?」
「ううん、ぐっすり眠ってるなぁって。もうちょっと見てたかったけど」
聖司は体を起こしてベンチに座り直し、ウェンティは彼の隣に座った。爽やかな風が城内を通って涼しさを感じたあと、ウェンティが口を開いた。
「ありがとう。それと、ごめん」
「ん?」
「モンドを救ってくれた事と、僕をそう読んでくれたことと、その……君を閉じ込めたことへの」
「あぁ、それか」
頭が働いていないのか、何に謝っているのか気が付かなかった聖司はウェンティの言葉で漸く理解した。とはいえ彼にとってはもう過ぎたことであり、特別気にしていない事であるためウェンティに向かって微笑みながら心の内を伝える。
「気にするな、既に済んだ事だ。一時の迷いと思って風に流したとも」
「……ふふっ、何それ?」
「む、水に流した方が良かったか?」
「うーん、ここ風の国だし、風に流してもらった方が良いね。水だとシードル湖じゃなくて海の方に行ってから流してもらわないと」
「おお、それは確かに」
聖司はポン、と軽い音を立てながら手のひらを打つ。その様子がウェンティの琴線に触れたのか、声を出して微笑んだ。
そんな微笑ましい空気であったが、聖司は“あとは……”と言ったあと風龍廃墟のある方向に視線を向けて真剣な表情でそちらを見つめる。
「トワリンを救って、それで漸く一段落だな」
「────そうだね、必ず救わないと」
「ああ、近い内にディルックたちと共に風龍廃墟に向かうつもりだ。とはいえ、まずは体を休めなければならんがな」
「うんうん、その方が良いよ。あ、折角だから1曲聴いていかない? お金は要らないからさ」
「良いのか?」
「いーのいーの、こういう時はラッキーって思っておいた方が良いんだから」
「ふむ。ではお言葉に甘えるとしよう」
「んっふふん。それじゃあ張り切って歌おうかなっ」
そう言ってウェンティは何の変哲もないライアーを抱え、弦に綺麗な手を添えて音楽を奏で始める。たった1人の傍聴者を添えて、風の自由なサマを表現したかのような音色が風に乗って空へと飛んでいったのであった。
【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・クリムゾンドラゴンに変身し、ウルフメギドもとい嘘つきボーイメギドを倒しジンを救出する。ワンダーコンボによる負担が大きかったのか眠っていたが、ウェンティの来訪とともに起きて彼が奏でる音楽に聴き入っていた。
『蛍(原作主人公)』
・混乱状態にあったモンドを駆け回り、オリ主が書いたエッセイ本を回収し回る。2人が帰ってきた時は安心していた。
『パイモン』
・蛍について回ってエッセイ本集めに協力する。褒賞に大量の食事を要求しようと考えていたり。
『ディルック』
・オリ主が出たあと、主体となってエッセイ本集めなどに参加する。怪我をしているジンには驚くも、彼女に正体をバラしたオリ主にまた頭を抱える羽目になった。
『ジン』
・オリ主の事情を知ることになる。実は運ばれている最中ずっと心臓がバクバクしていた。恋愛小説が好きらしい。
『リサ』
・エッセイ本集めに協力する。何となく、あの名前も知らない相手がオリ主であると思っている。
『ガイア』
・エッセイ本集めに協力する。ジンを運んですぐに帰ったあの時の相手を、何となくオリ主だと思っている。
『ウェンティ』
・メギドの居場所を風の流れを使って教えた。オリ主を監禁したことを反省している。でも後悔はしていない模様。次なる手を打とうと画策中。
【本作オリジナルメギド】
『ウルフメギド』
・本作にて登場するオリジナルメギド。嘘つきウルフアルターライドブックを使用することで、アビスの魔術師が変身した姿。仮面ライダーセイバー本編第7章にて、仮面ライダーカリバーがアヴァロンへ行く際に使用され、そのあとジャオウドラゴンの生成に使用される。
・スペック
身長 223cm
体重 102.6kg
特色/力 嘘を操る
・容姿
獲物を舌なめずりしているような人狼
狼の部分はガワであり、その下に顔と認識できる凹みがあるだけの人型が隠れている
『嘘つきボーイメギド』
・ウルフメギドの本体。両目と口の辺りに凹みがあり、これにより顔だと認識できるタイプの“のっぺらぼう”。ウルフメギドに騙された者を、更に騙して嘘を信じ込ませる厄介な相手。その代わり直接戦闘能力は低い。
・スペック
身長 165.4cm
体重 72.2kg
特色/力 嘘を操る
・容姿
両目と口の辺りに凹みがあるだけの“のっぺらぼう”