魔神任務序章の最後の山場なので初投稿です
ブレイブドラゴンとトワリンがすれ違いざまに、聖司の持つ火炎剣烈火とムカデのメギドの攻撃が衝突する。その一瞬で先手を取ったのは――――聖司の方であった。
「アァ熱ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙?!」
「GRAAAAAA!?」
聖なる炎に焼かれたメギドがその熱で苦しみ藻掻き、そして寄生先であるトワリンもメギドの暴れように対して雄叫びを挙げる。ブレイブドラゴンに騎乗した聖司が3人のもとへと向かいながらトワリンの様子をドラゴニックバイザーで確認すると、仮面越しに彼は先にやらねばならない事を理解し、3人に伝えた。
「皆、先にトワリンからメギドを引き離す! ディルックは合図とともにあれを!」
「「「わかった!」」」
メギドの苦しみを共有したためか興奮冷めやらぬトワリンはその勢いのまま反転し、聖司1人に目掛けて風元素のエネルギー弾を発射したあと彼に向って突進する。
聖司は額のドラゴニックカジテートからブレイブドラゴンと意思疎通を行い、マスクの口部分のドラゴニックジョウによって呼吸を合わせながら、放出された風元素の塊をバーンナイトグラスプによって強化された炎の斬撃を飛ばして相殺。突進はタイミングを合わせてブレイブドラゴンが上昇して避けたあと、彼は降りてトワリンの背に乗った。
どうにかして振り払おうとトワリンも暴れ狂うが、脚部装甲のバーンナイトグランダによって強化された足の指の力で掴むことで離れることはなく、寧ろ暴れ狂うトワリンの背を走り頭部の近くの結晶まで到達する。そこまで到達した聖司はマスクの耳当て部分にある感覚器官ドラゴニックビアドを駆使し、メギドの位置情報を探った。
そして背後から迫り来る、邪悪な気配を感じとる。
「甘いわっ!」
「ギバシャッ!?」
振り向くことなく背後から迫りくるメギドに向けて火炎剣烈火をタイミングよく突き刺し、その一突きを受けたメギドは後退しようとしたが聖司によって捕まえられ逃げることを出来なくさせられた。
「逃すわけがなかろう!」
【ドラゴニックブースター!
スパイシー!】
「ギヴァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙?!」
聖司はメギドを捕らえると、ドラゴニックブースターから炎を放ちメギドを燃やし続ける。燃え続ける体とその熱に耐えきれぬメギドが暴れ、その苦しみを共有しているトワリンが暴れていると、徐々にトワリンが落ち始めていた。
それに合わせて聖司はブレイブドラゴンに意思を伝え、それに応えるようにブレイブドラゴンが落ちていくトワリンを支えて3人の居る場所まで運んでいく。やがて3人が居る台座の真上まで到達すると、ブレイブドラゴンは離脱しトワリンの体が台座に落ちた。
「ディルック、今だ!」
「ああ!」
【ストームイーグル!】
そしてこのタイミングで、ディルックは彼から手渡されたストームイーグルの表紙を開けて力を解放させる。大鷲が顕現し、それは迷うことなくトワリンの体から出ているメギドの肉体を辿り、トワリンの中へと入っていく。
そのすぐあと、トワリンの暴れようが激しくなった。体内にいるメギドの抵抗が激しいためか、体を大きく動かし、人が地団太を踏むように台座に頭を叩きつける。その衝撃で3人の居る台座に
「2人とも、台座の端に向かって!」
突然のウェンティからの命令、しかし今はこの状況から脱出する為にと走って台座の端に向かうと、そこに風の種が出現する。迷うことなく最初についたディルックが3つ集めて簡易的な風域を作り上げると、3人とも風の翼を広げて飛び立ち隣の台座に向かって滑空していく。
少しの時間が経ったあと、ストームイーグルが何かを引っ張りながらトワリンの体から出てきた。抵抗が激しいのか咥えたそれを引っ張り上げるのに苦労しており、それを理解した聖司は火炎剣烈火を必冊ホルダーに納刀し、右手に3冊のライドブックを顕現させ、ドラゴニックブースターを開口させ、ライドブックを読み込ませる。
【ワン! リーディング!】
【ブレイブドラゴン!】
【ツー! リーディング!】
【とある物語!】
【スリー! リーディング!】
【西遊ジャーニー!】
「ダメ押しの一発だ、貰っておけ!」
【ドラゴニックスパイシー!】
ドラゴニックブースターの開口部から業火と呼ぶに相応しい量の炎が放出され、聖司が掴んでいるメギドの一部に襲い掛かった。
「
その熱量に耐えきることが出来ず、ようやくメギドの本体であろうものが姿を現した。と同時にトワリンが暴れた影響で台座が崩壊する。崩落するそれに伴って落下の浮遊感を味わい、聖司とメギドの体が空に投げ出された。
聖司はブレイブドラゴンを呼び出しそのまま騎乗して事なきを得たが、同じくメギドもすんでのところでトワリンの背中に乗る。崩落する台座の瓦礫を避けていき、聖司とブレイブドラゴンは別の台座に乗り移った3人のもとに移動した。
ドラゴンの背に騎乗してやって来た聖司に、ウェンティが訊ねる。
「トワリンは!?」
「メギドは体内から摘出した、しかしその後までは────いや待て、来るぞ!」
ドラゴニックビアドにより邪悪なる気配と周囲の状況を立体的に感じ取ったことで、まだ事が終わっていないことを悟り、聖司はホルダーから火炎剣烈火を抜刀して構える。
大きな翼を羽ばたかせトワリンは姿を現し、それと同じくしてメギドの本来の姿が全員の視界に映った。その姿は破損が激しい鶏のガワを被った百足の大群が人型を取っているもので、本来鶏の目であった部分や脚であっただろう箇所から大量の百足がうぞうぞと蠢き続けていた。
嫌悪感を露わにしている3人を他所に、ムカデのメギドはトワリンの首に付けられた紫の結晶の傍に居る。足と思われる部分から無数の百足が首輪のようにトワリンの首に巻きついており、それによって自らの位置を固定させていた。
「ヨクモ散々燃ヤシテクレタナ、人間……!」
「お前の罪からすれば、この程度の罰は受けてもらわねばなるまいて。大焦熱でも事たりんわ」
「訳ノ分カラン事ヲベラベラト……モウ良イ、ナラバ此方トテ考エガアル!」
そう言ってメギドは腕にあたる部位に集っている百足をトワリンの背中にある紫の結晶へと伸ばし、それに触れた。触れられたことでトワリンの体内にあるドゥリンの毒が活性化しトワリンが苦しみ始める。
「トワリン!」
「我ガ深淵ノ知識ヲ送リ込ミ、コノ龍ヲ新タナル魔竜トシテ顕現サセル!」
「これは、かなり不味い状況だぞ……!」
「フハハハハッ! 見届ケヨ、新タナル魔竜ノ誕生ヲ!」
メギドが高らかに叫びながら、その紫の結晶に自身の力を注ぎ、そして呑み込まれた。紫色のおぞましい瘴気がトワリンの姿を覆い隠すようにして出現し、やがてそれが晴れていくと変わり果てたトワリンの姿を4人は目撃する。
トワリンの面影を残しているが、その全身が全て百足の鎧で覆われており、額の辺りから大きな目玉を咥えた巨大な百足が飛び出ていた。
「トワリン……!」
見るも無惨な姿に変わり果てたトワリンの姿に嘆くウェンティの声は、その後に空間に響き渡るほどの声量で発せられたメギドの声によって掻き消される。
「ハハハハアッ! コレゾ深淵ノ真髄! 今ヨリ我ハ『
「風魔────」
「蝍龍────」
「惨い事を、あれでは……!」
目の前で変わり果てたトワリンの姿を見ている蛍やディルックよりはその邪悪さを己なりに理解していたが、聖司とウェンティはこの姿になったトワリンの本質を理解してしまう。既にトワリンの魂は、メギドと同化してしまっていることに。
「サア、第2ラウンドト行コウカ! 救エルモノナラ、救ッテミセロ!」
おぞましき風魔蝍龍が、4人に向かって襲いかかった。
豪ッ、という音と共に風魔蝍龍が4人に向かって突撃する。それぞれがそれぞれのやり方で突進を避け、雄々しく飛ぶ風魔蝍龍へと視線が移っていたが、その直後聖司が大声を挙げて3人に呼びかけた。
「避けろ!」
「「「ッ!?」」」
聖司の言葉で咄嗟にその場から大きく離れた途端、先程まで居た場所に大量の小さな百足が
すぐに元素力を使い、炎で燃やし、風で吹き飛ばして百足の脅威を消す。それを確認した聖司はホッとするが、ドラゴニックビアドで感じた邪悪な気配を感じ、ブレイブドラゴンを全速力で発進させた。そして彼が先程まで居た場所に百足を球状に纏めた物が通り過ぎ、攻撃した風魔蝍龍へと視線を移し、ブレイブドラゴンに指示を出して火球を連続で射出させる。
「無駄ナ足掻キヨ!」
風魔蝍龍は球状に纏めた百足を放ち、火球にぶつけて相殺させた。しかしそれだけでは終わらず、放った百足の中から高速で風の矢が放たれ、聖司とブレイブドラゴンに襲いかかる。
「ぐっ!」
ブレイブドラゴンと呼吸を合わせ、咄嗟ながらも全ての風の矢を避けていきその場から離脱するが、風魔蝍龍は聖司らを追いかけた。
「オ前ダケハ逃ガサンンン!」
風魔蝍龍は全身から無数の百足を伸ばし聖司へ目掛けて放つが、再度肩部のナイトディバイダから炎の障壁を展開し、襲い来る百足を燃やし尽くす。そこに風魔蝍龍は球状に纏めた百足を放つが、それも炎の障壁によって阻まれた。だが風魔蝍龍の狙いは
球状に纏めた百足が炎によって燃やされるが、内側に込めていた風元素の力が衝突し、炎の壁が削れた。舌打ちをしてすぐにブレイブドラゴンと共に離脱する。
「チョコマカト……ダガ、コレナラバ無視出来マイ!」
「ッ、いかん!」
聖司は風魔蝍龍よりも早く、3人の居る台座に向かうようブレイブドラゴンに指示を出し、全速力でそちらに飛ばす。そして聖司の感じた悪い予感の通り、風魔蝍龍は無数の球状に纏めた百足を3人に向けて何度も放った。
その百足の砲弾は聖司よりも先に到達しかけるが、ウェンティが風の障壁を生み出して相殺。少しの間なんとか防ぎきるものの、威力に耐えかねて苦悶の声が漏れ出た。そうして数秒と経たない内に風の障壁は破れ、ウェンティがたじろぐ。
百足の砲弾がウェンティに向かい、すぐさま蛍とディルックは彼の前に出て元素力を解放して防御態勢を取ったが、1発の威力が重いせいで3人とも吹き飛ばされた。幸いにもディルックの炎によって百足は燃えたが、百足の砲弾は目の前に迫っている。
ここまでと思われたその時、駆けつけた聖司が3人の盾となり炎の障壁を展開。百足を燃やし攻撃を防いだ。それでもまだ、風の矢に対しては何の策も無い。百足が燃やされていく度に、中から風元素の矢が炎の壁を拡散され炎の障壁に薄い箇所が出来上がっていった。
やがて炎の壁は百足を燃やせど、風の矢を通すようになってしまい、それは聖司とブレイブドラゴンに襲いかかる。シルバリオンスケイルによって硬度が増した鎧を着ている聖司には衝撃だけが来るが、問題は下のブレイブドラゴン。幾度となく風の矢を受けてダメージに耐えきれなくなり、そのまま姿を消した。
中空に浮かんだ聖司に更に追い討ちをかけるように百足の砲弾が直撃した衝撃をくらい、3人の近くまで吹き飛ばされていく。
「セイジ!」
「俺は問題無い、衝撃だけだ。だが……」
「フハハハハ! ゲハハハハハァ!」
高笑いを挙げる風魔蝍龍の姿を見上げるしか無い4人の中に、姿を消していたパイモンが現れて問いかけた。
「な、なぁ! トワリンはどうするんだよ!? あのままじゃメギドに乗っ取られて終わるぞ!」
「────方法が無いわけでは無い」
聖司のその一言が3人の視線を集める。パイモンは興奮しながら、彼に向けてその方法を使うように促した。
「じゃあ、その方法を使えば!」
「だが、今の俺では無理だ」
「無理!? 無理ってどういう事だよ!?」
「今の俺では、聖剣の持つ分離能力を使えんのだ。それがあればメギドとトワリンを分離できる……だが、そもそも使った事も使えた試しも」
「────だったら、使えるようにすれば良いんだね?」
聖司の嘆きに否と唱えたウェンティに、彼らの視線があつまり、パイモンが訊ねる。
「出来るのか!?」
「出来るかどうかは完全に賭け、それにもし失敗したらセイジは……」
「わかった、やってくれ」
「早いよ。躊躇うものだよ普通はさ」
「それでトワリンを助けられるのであれば、躊躇う必要など何処にも無いだろう」
「────本当に、変わらないね君は。旅人、ディルック」
ウェンティに呼ばれた2人の視線が彼に向かう。
「2人ともお願い、時間を稼いで」
同じタイミングで2人は首肯し、武器を構えて風魔蝍龍へと向き合い、ウェンティは自身の額と聖司の額を合わせて鋼鉄の仮面に触れる。風の障壁と炎の障壁が4人を分断した光景を見て、風魔蝍龍は嘲笑いながら言った。
「コノ期ニ及ンデ何ヲ企ンデイルノカハ知ランガ、所詮無意味ヨ! 我ガ
「そんなこと、させない!」
「芥如キガホザケ! 埋マル事ノナイ
風魔蝍龍が咆え、そのあと百足の濁流とも呼ぶべき無数の百足が4人に向かって放たれる。聖司とウェンティの2人は展開している炎と風の障壁によって阻むことが出来ているため問題はなく、ディルックは火の元素力で構成された炎の鳥を、蛍は飛び上がりながら竜巻を放って火の拡散反応を起こして百足を燃やした。
百足の濁流が収まったものの、更なる追撃として風魔蝍龍は百足を纏った右前足を台座へと叩きつけ、揺れを発生させ、その余波で百足が飛び散っていく。揺れによって一時的ではあるがバランスを崩されたことで、百足が2人の体に張り付き、噛み付いた。
「ぐぅっ!」
「旅人!」
ディルックは露出部分を極力まで減らしていたため百足の噛みつきは服によって阻まれたが、蛍はそうはいかなかない。百足に噛み付かれたことによる痛みで顔を歪ませたが、直後彼女の体の至る所から激しい痛みが襲いかかった。
「ッ゙ア゙ア゙ア゙ア゙?!!」
噛まれた箇所から赤く腫れ上がり、そこから激しい痛みが蛍を蝕んで苦しませる。ディルックは彼女のもとまで百足を燃やしながら向かい、辿り着くと何も言わず彼女を炎と風の障壁の方へと投げ飛ばした。
投げ飛ばされた蛍は炎に一瞬だけ呑まれるが、炎が全ての百足を滅却し風が彼女に癒しを与える。これによって蛍は体の腫れも痛みも消え、再度聖司とウェンティを守るように前へと出た。
「ありがとう、助かった」
「礼なら後で。今はコイツの攻撃を凌ぎ続ける事に集中してくれ」
再度ディルックは武器を構え直し、蛍もそれに続いて武器を構え直す。目の前で飛び続ける風魔蝍龍は、この2人の足掻きに嘲笑して、もっともっと痛めつけられるようにと攻撃を再開した。
【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・メギドによって変質したトワリンを救うための方法を得る為に、ウェンティの力を借りて目覚めさせようとしている。
『蛍(原作主人公)』
・風魔蝍龍という存在に変質したトワリン相手に抵抗している。これを機にもう少し布面積の多い服を着用しようと考えた。
『ディルック』
・炎によって風魔蝍龍の攻撃を何度も防いでいるが、防戦一方のままであることは変わらない。
『ウェンティ』
・オリ主の言った分離能力について何か知っており、それを目覚めさせることに尽力する。